1970年代後半期におけるアメリカでのPC利用状況 --- ホームブリュー・コンピューター・クラブ(The Homebrew Computer Club)
 佐野正博(明治大学経営学部) 
<ホームブリューHomebrewの単語的意味>
 brewとは、ビールなどの醸造、あるいは醸造されたもの(すなわち、ビールや酒)を意味する単語である。したがってそれにhomeという単語を前に付けたhome 
brewは、自分でビールや酒を作る、あるいは、自分で作ったビールや酒のことを意味する。
   そこから転じて、パソコン関連の文脈では、「自分でコンピュータを手作りすること」を意味するようになった。
 
<ホームブリュー・コンピューター・クラブの構成員ほか>
  MITS社のAltariなどのマイコン・キットが販売され、自分でコンピュータが手作りできるようになった時代に数多くのコンピュータ自作クラブが生まれた。The 
ホームブリュー・コンピューター・クラブはその中でも伝説的な存在のクラブである。そのクラブが発行していた会誌がDr. Dobb's Journal である。
 
第1回目の会合は、1975年3月に、米カリフォルニア州サンタクララ群メンロー・パーク(Menlo Park)に住んでいたメンバーのガレージで開催された。
 
このクラブには、後のアップル社を作り上げたスティーブン・ジョブズ(Steve Jobs)やスティーブン・ウォズニアック(Steven Wozniak)などパソコン業界の数多くの有名人が所属していた。なお創立から1年後にはメンバーの数が約750人になっていた。
 
 The ホームブリュー・コンピューター・クラブについての解説は下記Webページが役に立つ。
 
<ホームブリュー・コンピューター・クラブの会員が利用していたコンピュータのCPUの種別>
下記の表によれば、ホームブリュー・コンピューター・クラブの会員では、8008,8080,Z80というインテル系8bitCPUの利用数が30(79%),44(63%),63(62%)というように過半数を超えていることがわかる。一方、6800,650xというモトローラ系8bitCPUの利用者数は、4(11%)、16(23%),30(30%)というように着実に割合を増やしているが、少数派となっている。
また1976年1月7日と1976年6月9日の調査結果を比較すると、1月7日に制作中と答えた28のほとんどがインテル系8bitCPUを選択したのではないかと推測される。
|  | 1975/ 10/15
 | 1976/ 1/7
 | 1976/ 6/9
 | 
| Intel 4004 |  | 1 | 1 | 
| Intel 8008 | 5 | 7 | 8 | 
| Intel 8080 | 25 | 37 | 53 | 
| Motorola 6800 | 2 | 9 | 12 | 
| MOS Technology 650x | 2 | 7 | 18 | 
| Zilog Z-80 |  |  | 2 | 
| DEC PDP-8 |  |  | 4 | 
| DEC PDP-11/20 |  |  | 1 | 
| DEC LSI-11 |  |  | 3 | 
| その他 | 4 | 9 | 1 | 
| 小計 | 38 | 71 | 103 | 
| 製作中 |  | 28 |  | 
| 合計 | 38 | 98 | 103 | 
[出典]Warren, J.(1977) "Personal and Hobby Computing: an Overview," Computer, Volume: 10 , Issue: 3, p.14
1976/6/9の合計値は上記論文では101となっているが、各CPU別の値を合計した数値である103に訂正した。またホームブリュー・コンピューター・クラブでは、インテル系CPUが全体の過半数を超える割合を占めているが、Mos Technologyの事務所からさほど遠くはない場所にあったNew Jerseyの Amateur Computer Group ではMOS Technology 6502が支配的(dominant)であった(同上論文,p.14) 。
ホームブリュー・コンピューター・クラブのニュースレター
Homebrew Computer Club 30th Anniversary Special Online Exhibit of Homebrew Computer Club Newsletters
http://www.digibarn.com/collections/newsletters/homebrew/newsletters.html
本サイトで、Homebrew Computer Clubの創立1975年から1977年までの3年間のニュースレター(No.1-No.21)をオンラインで見ることができる。