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2010年度「情報公共論論」授業用配付資料および追加補足説明資料
Last update:
July 12, 2010
授業用配付資料および授業補足説明
2010年5月17日
2種類のcopy概念
1)新たなCreationを含む公共的行為におけるcopyや、Educationなど公共的目的のための行為におけるcopy
模写、模造、翻案、パロディ、引用、写経、写生などという形態におけるcopy
この種のcopyのcreativityには、下記のように多様な現象形態がある。
模写・模造といった原作の忠実なcopyプロセスにおけるcreativity --- 原作の創作プロセスを自ら創造的に「再現」することによって、creatorをcreateすること ---
手塚治虫の『鉄腕アトム』シリーズの中の「地上最大のロボット」を原作として、浦沢直樹がアレンジを加えた『PLUTO』のような作品におけるcreativity
Creatorの創作過程や創作手法の学習のために、著作物を自分の手で丸写しする模写や模造は法的にも公共目的的にも許されている。
創造、学習、教育(Creation行為そのもの、Creatorになるための学習、Creatorを育てるための教育)といった行為の遂行に必要とされる要素としてのcopy
From copy to creationにおけるcopy --- 創造的行為や公共的行為のためのcopy、創造的行為を含むものとしてのcopy。次世代のCreatorを「創造」するプロセスという意味で学習や授業も「創造」的行為であるから、そのプロセスにおけるcopyもcreationのためのcopyである。
先行のcreatorに対する敬意respectを表すための原著作者の明示が必要である。
「100%すべてがoriginalであるようなcreationはない」のであり、新しい著作物=作品の中には先行のcreatorによる著作物=作品の何らかの形態におけるcopyが一定程度含まれている。こうした意味でのcopyは著作権による法的な制限や保護の対象外とすべきである。
新しい著作物=作品の中に、それまでにないオリジナルな部分をまったく含んでいない場合には、creationとは認められない。
fair useまたはfair dealingであれば、著作権者に対して無断でのcopyも許される。
2)Businessなど私的利益追求のための行為におけるcopy
Businessなど私的利益追求のための行為における「複製、丸写し、コピー機によるコピー[複写]」といった形態でのcopyは、著作権者の許諾を得ない限り許されない。
著作権者の許諾を得ずにBusinessなど私的利益追求のために無断でおこなわれるcopyは、「パクリ、カンニング、贋作、剽窃、盗用、無断流用」などという形態におけるcopyとして法的には許されない。
「100%すべてがcopyであるようなcreationはありえない」ことから、創造的行為であれば新しい著作物=作品の中には先行のcreatorによる著作物=作品のcopyではないoriginalな要素がある程度以上含まれていなければならない。
ただし公共的行為や公共的目的のための行為の場合とは異なり、Businessなど私的利益追求のための行為においては、それまでにないオリジナルな部分を含んだ新しい著作物=作品のcreationであったとしても、copyの対象として用いた著作物=作品の著作権者に対して許諾を求める必要がある。
原著作者の隠匿をするような行為は許されない。
当日の配付資料および追加解説・追加参考資料
2010年5月24日
- 細井雄介「芸術」『平凡社 世界大百科事典』平凡社
芸術における創作という行為がどのようなものであるかに関しては、1)模倣説、2)表出説、3)形成説という三つの代表的な考え方がある。模倣説では、芸術的創作行為の本質が「模倣」にあるとされている。
- 情報財に関する4区分 --- 「著作権による法的保護の有無」、「追求するInterestの性格(publicかprivateか)の差異」による4区分
授業で取り上げた(あるいは取り上げる予定の)代表的事例を、「著作権による法的保護の有無」という分類軸と、「Public Interestの追求か、Private Interestの追求かという追求するInterestの性格の違い」という分類軸で分類すると下記のようになる。
2010年5月31日
- Gates,Bill(1976) "an open letter to hobbyists" Homebrew Computer Club Newsletter, Volume 2, Issue 1(February 3, 1976)
http://www.digibarn.com/collections/newsletters/homebrew/V2_01/homebrew_V2_01_p2.jpg
http://www.digibarn.com/collections/newsletters/homebrew/V2_01/gatesletter.html
- ソースコードとオブジェクトコード

- 松本直樹(1996)「コンピュータ関係の創作保護についての最近の米国での話題(ロータス対ボーランド事件およびアップル対マイクロソフト事件)」
『法律実務研究』東京弁護士会,第11号(1996年2月)に掲載された論文。内容構成は下記の通りである。
1. プログラム著作権の権利範囲
2. ロータス対ボーランド事件
3. アップル対マイクロソフト事件
4. 両事件判決の影響
2010年6月7日-6月21日
- 営利企業のソフトウェア製品には価格が付けられているが、その製品は「販売」されてはいるわけではない。ソフトウェア製品の利用が「許諾」されているだけである。
マイクロソフトのMS-Officeなど有償のPC用ソフトウェアという製品は、日常的用語法ではPCなどのハードウェアと同じように「販売」されている。しかしながら法的な意味では「販売」されてはいない。
そのことは、ソフトを「購入」した際に付属している使用許諾契約書や、ソフトをインストール際に「同意」する必要がある使用許諾契約に明記されているか、暗に前提されている。
たとえばマイクロソフトのOffice2007のソフト使用許諾契約書(Microsoft Software License Terms)には、「The software is licensed, not sold. This agreement only gives you some rights to use the software.」と書かれている。この文章で最も重要なことは、「licensed」と「sold」の区別である。「This agreement only gives some rights to use the software」という文章はその区別に対応した表現として理解する必要がある。なおマイクロソフトOffice日本語版では同文章は、「本ソフトウェアは許諾されるものであり、販売されるものではありません。本ライセンス条項は、お客様に本ソフトウェアを使用する限定的な権利を付与します。」となっている。
文章の意味をくみ取り、少し言葉を補ってわかりやすくすると、「マイクロソフトは、本ソフトウェアを販売しているのではなく、本ソフトウェアの使用権をライセンスしているだけです。すなわち、本ライセンス契約は、ソフトウェアに関する限定的な使用権をお客様に与えているに過ぎません。」というように意訳できよう。
「販売」と「使用権のライセンス」との違いは、製品に対して何ができるかの違いである。「販売」された製品の場合には、自分で分解して中の構造がどうなっているのかを見たり、不具合があれば自分で直すこともできるし、誰かに貸したり、不要になれば売却することもできる。しかし「使用権のライセンス」の場合には、そうしたことが法的にできないようにすることができる。
- 営利企業によるproprietaryなソフトウェア製品と非営利組織によるOpen Source SoftwareやFree Softwareの決定的違いは、「有償」か「無償」かという点にあるのではなく、ソースコードの共有によるソフトウェアの改変や改良が許されているかどうかという点にある。
例えばAdobeのAcrobat Readerというソフトウェアは無償で利用することができるが、ADOBE ソフトウェア使用許諾契約書http://www.adobe.com/jp/products/acrobat/acrreula.htmlでは下記のように、ソフトウェアの改変等が明確に禁止されている。
2.5 変更の禁止
2.5.1 お客様は本ソフトウェアを修正、改変、翻訳したり、本ソフトウェアの二次的著作物を作成したりすることはできません。また、法律上逆コンパイルが明示的に許容されており、本ソフトウェアが他のソフトウェアと共に正常に動作するためには逆コンパイルが不可欠であり、かつ正常な動作を実現するために必要な情報をAdobeに要求したにもかかわらず、その情報がAdobeから提供されなかった場合を除き、お客様はリバースエンジニアリング、逆コンパイル、逆アセンブルを行わず、またその他の方法で本ソフトウェアのソースコードの解読を試みることはできません。Adobeは、上記のような情報を提供する前に、合理的な条件を付し、かつ合理的な費用を要求する権利を有します。Adobeから提供されたこうした情報またはこうした許可された逆コンパイルによってお客様が入手した情報は、本契約の規定に従い、本契約に定められた目的にのみ使用しうるものとし、第三者に開示してはならず、また、本ソフトウェアと実質的に類似する形態のソフトウェアを作成するために使用することもできません。情報のリクエストは、Adobeカスタマサポート部門で受け付けています。
- 製品の素材(source)がopenでない場合の問題点
中国における再生油
中国における牛乳や乳幼児用調製粉乳へのメラミン混入問題
- ソフトウェア製品の中に含まれるウィルス以外の問題
2010年6月28日-2010年7月5日
2010年7月12日