[前回の授業概要]経営技術論2015.07.16
[今回の論点]
3.技術発展に関するS字曲線的発展と市場セグメント規定(続き)
(4) ある製品セグメントにおいて有意味なものとして評価される性能には上限が存在する。製品は、市場で評価される「性能上限」を超えても製品競争力は増加しない。
(5) ある製品セグメントにおいて有意味なものとして評価される「性能上限」は、時間経過や資源投入量の増大とともに上昇する。
製品がある一定以上の性能を有していても、市場では評価されない。ただし、市場で求められる製品におけるそうした性能の上限は時間経過や製品技術の発展とともに上昇する。
事例1.自動車の最高速度 vs 道路の法定最高速度
電気自動車「Eliica」(エリーカ)の370km/hという「最高速度」性能、7秒で時速160km/hに到達という「加速」性能(ポルシェは9秒)
[関連参考資料]
事例2.TV受像機の画面画素数(画面解像度) vs TV用コンテンツの画面画素数(画面解像度)
TV受像機に関する製品イノベーション
ブラウン管TV(30万-35万画素) →→ ハイビジョン型液晶TV(100万画素) →→ フルハイビジョン型液晶TV(200万画素) →→ 4K型液晶TV(800万画素) →→ 8K型液晶TV(3200万画素)
[関連参考資料]
経営技術論的解説
4Kテレビの社会的普及に関する否定的見解— 4Kテレビという技術的性能の向上による「usefullness」の増大が消費者の「wants」喚起、および、「demand」形成をもたらすことへの疑問
「大画面で高画質が売りで、4Kほどの解像度になれば、あたかもそこに実体があるかのようなリアルな映像が楽しめるのだが、はたして、一般家庭の多くがそれほどの画質を望んでいるのかは定かではない。」
4Kテレビというハードウェアの社会的普及
GFKジャパン「2014年 家電・IT市場動向」2015年2月10日プレスリリースによれば、2014年の薄型テレビ全体の販売台数は前年比5%減の579万台であったが、4Kテレビの販売台数は前年の5.5倍の17万台と伸びている。またGFKジャパン「2014年上期 家電・IT市場動向」2014年8月6日付けプレスリリースによれば、2014年上半期には50インチ以上に占める4Kテレビの構成比は数量ベースで14%、金額ベースで28%であった。
- 本田雅一(2013)「“4K”推進で一致した家電業界、その道のりに横たわる多くの課題」ITmedia LifeStyleニュース, 2013年04月21日
- 加納恵(2013)「薄型テレビのニーズは大画面、高画質で4Kテレビに期待高まる–GfK調べ」CNET Japan>Marketers’>ニュース, 2013/06/03
- 「国内電機メーカー「4Kテレビ」に光明 3Dテレビの「二の舞」にはならない」J-CASTニュース、2013/9/19
- 「4Kテレビの金額構成比、50型以上で51%に GfKジャパン調べ」JCASTニュース、2014/11/13
- 「テレビ購入の検討者のうち92%が4Kテレビを認知 – GfK調査」マイナビニュース 家電fan, 2014/11/12
- 日経TRENDY編集部(2014)「4Kテレビがようやく実用レベルに」『日経TRENDY』2014年7月号, pp.178-181
- 日経TRENDY編集部(2015)「家電 ウエアラブルと4Kがついに“離陸”」『日経TRENDY』2015年2月号, pp.128-129
4Kテレビの補完財としての4Kコンテンツの社会的普及に向けての動き
- 芹澤隆徳(2015)「アクトビラ、“インターネットで4K/8K配信”に意欲」ITmedia LifeStyleニュース, 2013年05月22日
- 芹澤隆徳(2014)「4K試験放送、3つの伝送路で6月2日に一斉スタート」ITmedia LifeStyleニュース, 2014年04月24日
- 臼田勤哉(2015)「自宅で4K放送の迫力。3月1日開始「スカパー! 4K」を早速体験」AV Watch, 2015/3/2
- スカパー!(2015)「スカパー!4K — 一度見ると、常識になる。」(日本初の商用4K放送, 2015年3月1日開始)
- 次世代放送推進フォーラム(2015)「Channel 4K」(無料試験放送, 2015年6月2日開局)
- NHK(2015)「総務省検討会 4K・8Kテレビ放送実用化へ方針」NHK NEWSweb, 2015年7月23日
8Kテレビへの製品イノベーション
- NHK「8Kスーパーハイビジョン」
- NHK「8Kスーパーハイビジョンとは?」
- NHK「2014 FIFA ワールドカップ ブラジル」 8Kスーパーハイビジョンパブリックビューイング(国内4会場)」
- ザテレビジョンWEB(2014)「ワールドカップは臨場感抜群の8Kで! NHKがライブパブリックビューイングを実施!!」2014年5月19日
- Sharp「シャープの次世代TV 8Kテクノロジー」
- shishimaru(2014)「裸眼なのに3Dに見える、シャープが本気を出した「フルスペック8Kテレビ」」2014年10月8日、BUZZAP!
- 日経Trendy(2014)「4Kテレビと8Kテレビは何が違う?」日経トレンディネット2014年06月25日
事例3.SACD,DVD-audio, 高音質CD, そしてハイレゾ音源
昔の4CHステレオから、SACD,DVD-audio, 高音質CDへ、そしてハイレゾ音源へ
[関連参考資料]
- 「最高を極めるには技がある-アナログ音源をデジタル化」『日経パソコン』2004年11月8日号, pp.86-95
- 「良好な音質で聴くための機器・ノウハウ ハイファイ・オーディオ再入門」『日経おとなのOFF』2007年12月号, pp.90-99
- 「デジタルの進化-普及しつつあるSACDとブルーレイ 昔は聴こえなかった音に気付く喜び」『日経おとなのOFF』2007年12月号, pp.106-107
- 広岡延隆(2009)「高音質CD ラジカセでも違い実感」『日経ビジネス』2009年6月1日号, pp.104-106
- 盛田諒(2015)「パイオニア崖っぷち部門の挑戦 iPhoneでハイレゾ聴けるステラノヴァ」『週刊アスキー』2015年04月28日
- 折原一也(2015)「“ハイレゾ”って一体な~に?:Xperiaで楽しむハイレゾの世界」『週刊アスキー』2015年05月22日
4,クリステンセンによるイノベーションのタイプ分類
「技術革新のあり方」基準と、「既存有力企業の存続・非存続」基準という二つの基準軸に基づく、4類型のタイプ分離
radicalなイノベーションの遂行可能性を大きく左右する要因としての、技術的能力・技術的資源・研究開発費
当該製品セグメントにおける新製品開発を実行するための研究開発費がより大きい企業の方が相対的に有利である
当該製品セグメントにおける既存製品(既存モジュール)の持つ機能に関する抜本的性能向上のための技術的資源は既存有力企業の方が相対的に有利である。
当該製品セグメントにおける既存製品(既存モジュール)の持つ機能に関する抜本的性能向上のための技術的能力は既存有力企業の方が相対的に高いと考えられる
当該製品セグメントにおける新製品開発を実行するための研究開発費がより大きい企業の方が相対的に有利である
当該製品セグメントにおける既存製品(既存モジュール)の持つ機能に関する抜本的性能向上のための技術的資源は既存有力企業の方が相対的に有利である。
当該製品セグメントにおける既存製品(既存モジュール)の持つ機能に関する抜本的性能向上のための技術的能力は既存有力企業の方が相対的に高いと考えられる