[前回の授業内容]経営技術論2016.06.16
[次回の授業内容]経営技術論2016.06.30
[今回の授業内容]
授業で取り上げた事例
2.前回までの授業内容の再確認および拡張
(1) 社会的普及に成功しなかった新製品開発の典型的失敗例
- 超音速旅客機「コンコルド」
- 「海の新幹線」テクノスーパーライナー
- ソニーのDATウォークマン
[超音速旅客機「コンコルド」]
- Gigazine(2015)「「怪鳥」コンコルドを2020年までに再び空へ飛び立たせるプロジェクトが進行中」2015年09月27日 07時48分00秒
- 伊龍真(2016)「よみがえれ、コンコルドの意志 – 次世代の超音速旅客機は実現するか」
- JAXA「極超音速旅客機技術」JAXA HOME>航空技術部門>研究開発>航空新分野創造プログラム(Sky Frontier)
- 大塚実(2014)「日本発の静かな超音速旅客機−JAXAのD-SENDプロジェクト−」
- 「コンコルドより速くてビジネスクラス程度の低価格で超音速を実現する旅客機「Boom」」Gigazine, 2016年03月22日 13時00分00秒
[テクノスーパーライナー関連参考資料]
- 「超高速船「テクノスーパーライナー」進水 三井造船,空気浮上で抵抗を減らす-東京―小笠原間を16~17時間で結ぶ」『日経ものづくり』1991年11月11日号,p.32
- 「次世代高速船、テクノスーパーライナー 倍速進航「海の新幹線」」『日経ビジネス』1992年6月1日号,pp.58-62
- 「テクノスーパーライナー 時速50ノットの高速船、輸送コスト下げに課題」『日経ビジネス』1994年10月24日号,pp.62-64
- 吉岡陽「造船自動化-」『日経ビジネス』2001年12月17日号,pp.67-70
- 「製鉄業と造船業-テクノスーパーライナー-」『日経ビジネス』2005年01月号,pp.12-19
- 松村竹実(2004)「techno super liner(SF科学物語 ACT:11)」藤子・F・不二雄(2004)『四畳半SL旅行 — 藤子・F・不二雄短編集』小学館、pp.73-76所収
- 「次世代高速船に暗雲――小笠原―東京、就航大幅遅れ、燃料高で「赤字拡大」」『日本経済新聞朝刊』2005年8月19日
- 「東京―小笠原高速船計画、支援「非常に困難」――都、年20億円赤字で二の足」『日本経済新聞』2005年10月19日 地方経済面 東京
- 「小笠原海運の高速船TSL契約、保有会社「解除は無効」――東京地裁に仮処分申請」『日本経済新聞朝刊』2005年10月22日
- 「東京―小笠原間、高速船の運航断念――都、国交省との調整不調」『日本経済新聞』2005年11月9日 地方経済面 静岡
- 「東京―小笠原の高速船TSL就航不可能に――都など支援断念、建造費の法廷闘争焦点」『日本経済新聞朝刊』2005年11月10日
(2) seeds-oriented innovationに取り組む企業が存在する理由に関する考察
理由1
明確なMarket needsすなわちdemandが存在する新製品開発に対しては数多くの企業が熱心に取り組むため、多数のライバルの間での熾烈な競争によるレッドオーシャン的問題が発生することになる。
それとは逆に、Market needsすなわちdemandが存在するのかしないのかが不明確な新製品開発に取り組む場合には、ライバルが存在しないブルーオーシャン的市場環境を享受できる可能性がある。
それとは逆に、Market needsすなわちdemandが存在するのかしないのかが不明確な新製品開発に取り組む場合には、ライバルが存在しないブルーオーシャン的市場環境を享受できる可能性がある。
理由2
特許権・著作権などといった知的財産権によって法的に保護されている技術的seedsを自社が有しているなど、競合他社が模倣困難なseedsを自社で持っている場合には、そうしたseedsを活かす新製品開発の追求が有益である。
3.discovery, invention, innovationの区別
(1) discoveryとinventionの区別
量子力学および半導体現象という科学的「発見」
↓
半導体ダイオード、半導体トランジスタなどを多数集積したLSIという技術的「発明」
(2) inventionとinnovationの区別に関わる二つの論点
ポイント1 「発明そのもの」と「発明されたモノの社会的普及、市場的成功」とは区別すべきである
発明に成功しても、発明品が社会的に普及しないことは良くある — 超音速旅客機、テクノスーパーライナー、ソニーのDATウォークマン
ポイント2 個別的発明だけでは社会的に有用ではないことが良くある。複数の発明が組み合わさって初めて社会的に有用となる。
エジソンの時代には電球の発明だけでは電球の社会的普及=市場的成功はできなかった。エジソンは電球を「発明」するだけでなく、「火力発電所」を自分で造って電気を製造し、製造した電気を「送電線」によって送電し、電球による電気照明を利用する顧客に届ける必要があった。
そのため「送電技術」「ソケット」「電気メーター」に関する「発明」もおこなうことで初めて電球を社会的に有意味なモノとすることができた。
そのため「送電技術」「ソケット」「電気メーター」に関する「発明」もおこなうことで初めて電球を社会的に有意味なモノとすることができた。
[考察すべき問い]
- inventionとinnovationの区別の必要性を示す具体的事例として、自分が興味深いと思うモノを探し出しなさい。
- 電気照明に関する19世紀のイノベーションはseeds-orientedな側面とneeds-orientedな側面の二つを併せ持っている。seeds-orientedな側面とneeds-orientedな側面の二つを併せ持つイノベーションには他にどのような事例があるのかを説明しなさい。
4.FAX製品イノベーションの社会的普及
下記のグラフは下記のことを示している。
- G1 FAXよりは高性能なG2 FAXの方が、低性能なG1 FAXよりも普及度が高い。
- G2 FAXよりも高性能なG3 FAXの方が、低性能なG2 FAXよりも普及度が高い。
- G3 FAXよりも高性能なG4 FAXの方が、低性能なG3 FAXよりも普及度が低い。G4 FAXはG3 FAXよりも高性能であったにも関わらず、社会的普及には失敗した。
- G1 FAX,G2 FAX, G4 FAXは社会的普及の「広範化」に失敗し.G3 FAXのみが社会的に広く普及した。
グラフ1
グラフ2
グラフ3
G3 FAXだけが、G1 FAX, G2 FAX,G4 FAXと桁違いの社会的普及をおこなっているので、下記のグラフ4ように対数グラフにする方法もある
グラフ4