技術戦略論 2016.09.29

[前回の授業内容]技術戦略論2016.9.22
[次回の授業内容]技術戦略論2016.10.06
 
[今回の授業内容]
配付資料
 
授業のポイント
製品イノベーションの分析視点 — 「経営技術」論的視点からの製品分析に基づく、製品イノベーションに対する戦略的対応のための分析視点
分析視点1.製品のシステム的分析 — 「製品本体」と「補完財製品」が構成する各種「製品システム」の相対的競争優位の分析
分類視点2.製品本体の競争力の技術的分析 — 製品本体の相対的競争優位を規定しているコア技術(中核技術)的要因の分析
 
授業中には、film camera(フィルムカメラ、アナログカメラ;銀塩フィルムを記録媒体としてアナログ的に静止画像データを保存するカメラ)からdigital still camera(デジタルカメラ;コンパクトフラッシュなど半導体メモリを記録媒体としてデジタル的に静止画像データを保存するカメラ)へのイノベーションを、上記の視点から分析した。
 
分析視点1.製品のシステム的分析
 
イノベーションの分類視点2--「イノベーションによる企業の存続・非存続を基準とする分類」
業界のトップ企業が率先して取り組まなかった結果として、イノベーションの社会的普及とともに没落(fall)・破滅(disruption)したdisruptive innovation」なのか?、それとも「業界のトップ企業が率先して取り組んだ結果として、イノベーションの社会的普及の後もトップ企業として存続し続けたsustaining innovation」なのか?、という分類
 
 
レポート・サンプル1

馬車からガソリン自動車へのイノベーションは、下記のような意味で、radical innovationかつdisruptive innovationである。
 
20世紀における馬車からガソリン自動車へのイノベーションは、技術的連続性の有無を基準とするイノベーションの分類視点1からは、radical innovationである。
 というのも、馬車は馬という家畜・動物を原動力とする交通手段であるのに対して、ガソリン自動車はガソリンエンジンを原動力とする交通手段だからである。
 馬は動物であるから継続的に場所を引ける時間は限定されるのに対して、ガソリンエンジンは機械であるからル・マン24時間耐久レースが示すように、1日でも継続的に走り続けることができる。そうしたこともあり、馬車からガソリン自動車へのイノベーションが急速に社会的に普及し、20世紀後半には馬車を見ることはほとんどなくなった。
 
20世紀における馬車からガソリン自動車へのイノベーションは、馬車という既存業界のトップ企業が率先して取り組まなかった結果として、フォードやトヨタなどの新規参入企業が成功したという意味で、イノベーションの分類視点2からは、disruptive innovationである。
また自動車業界で有力な企業であるトヨタやフォードの例を見ると、20世紀における馬車からガソリン自動車へのイノベーションは、業界トップ企業の存続・破滅を基準とするイノベーションの分類視点2からは、disruptive innovation である。
というのもアメリカの自動車業界におけるトップ企業の一つであるフォード・モーターは馬車製造メーカーではなかった。同社を創業したヘンリー・フォードの父は、農場経営者であるし、創業者のフォードが最初に就職したのも James F. Flower & Bros. 社の見習い機械工としてであった。
なおフォードは、1891年にエジソン照明会社の技術者となった後、1899年に同社を退職しデトロイト自動車会社を創業したが失敗している。さらにその後、1903年にはフォード・モーターを創業し、1908年に発表したT型フォードで大成功を収め、アメリカだけでなく世界を代表する自動車会社となった。
さらにまたトヨタ自動車も、馬車製造メーカーが転身したものではない。トヨタ自動車の起源は、豊田自動織機製作所(現在の豊田自動織機)の中に、1933年に設立された自動車部である。
 

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