経営技術論2013.6.21

[先週の授業内容]
[今週の授業内容]
ポイント1.「dominant design成立前に、製品イノベーションが盛んにおこなわれるのはなぜなのか?」「市場で支配的(dominant)な 製品設計(product design)が成立する前には多種多様な製品設計の製品が試されるのはなぜなのか?」

dominant design成立前には、プロダクト・イノベーションに基づく製品の「機能」的差別化や「性能」差別化が重要となる

(1) 一つのneedsに対応可能な技術的手段は一つとは限らない。一般的には多種多様な技術的手段が、同一のneedsを満足させる多種多様な製品(product)を生み出す。
「環境に優しい自動車」というneedsに対応する技術的手段としては、改良型ガソリン・エンジン、改良型ディーゼル・エンジン、独立型電動モーター、インホイール型電動モーター、リチウムイオン電池などの二次電池、燃料電池などの一次電池、キャパシタ(コンデンサー)などがあり、それらの技術的手段を単独で利用した設計、あるいは、組み合わせた設計の製品がつくられる。

(2) 市場形成初期には、ユーザーのneedsを最も満足させる製品設計(product design)がどのようなものであるかは不明確である。ユーザーが求める機能や特性に最適な製品設計(product design)がどれであるかが顧客にもメーカーにもすぐにはわからないので、革新的なアイデアが次々から次へと試行錯誤的に試される。
ex.1 文字を入力するためのマシンにおけるキーボード配列は、QWERTY配列がdominant なproduct designになる前に、多種多様な製品設計(product design)がなされた。ex.2 自転車は、「二つの車輪」「前輪と後輪が同じ大きさ」「後輪駆動」「回転ペダルによるチェーン駆動」というsafety bicycleがdominant なproduct designになる前に、多種多様な製品設計(product design)がなされた。

(3) 顧客がどのようなwantsを欲しているのかは最初から明確なわけではない。

(4) 将来的な発展の可能性、および、その性能的限界はすぐには明確にはならない(あるいは、技術発展に関する将来的予測の原理的不明確性の)ために、ある特定の時点で、どの技術的方式が最も優れているのかはすぐにはわからない。それゆえ、複数の技術的方式の内のどれが最終的に勝利するのかはすぐにはわからない。
ex.1 19世紀末から20世紀初頭にかけては、蒸気自動車、電気自動車、ガソリン自動車という3種類の自動車技術が並存技術間競争がくり広げられていた。
例えば1900年にはアメリカのニューヨーク、シカゴ、ボストンという3大都市で2,370台の自動車があったが、その内訳は蒸気自動車1,170台、電気自動車800台、ガソリン自動車400台というものであった。
アメリカにおける最初の実用的自動車は蒸気自動車であった。またその性能も高かった。スタンレー兄弟会社が1906年に試作した蒸気自動車はその当時最速の時速204Kmの世界記録を出している。(5) 市場形成初期の段階の製品購入者層は、「新しい機能やアイデアを実現した新製品を試す」のが好きな革新的採用者(innovator)や初期少数採用者(early adopter)である。

ポイント2.「dominant design成立後に、製品イノベーションが下火になるのはなぜなのか?」「市場で支配的(dominant)な 製品設計(product design)が成立した後にプロセスイノベーションが盛んになされるのはなぜなのか?」

(1) ある特定時点で実現可能性のあるプロダクト・イノベーションの数の有限性

(2) 技術の発展限界の存在 — 技術発展に関するS字カーブ的構造の存在

(3) 「スイッチング・コスト」、「経路依存性」、「市場で評価される製品性能の上限」、「バンドワゴン効果」に起因する「技術のロックイン」現象

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