経営技術論2015.04.23

[前回の授業概要]経営技術論2015.04.16
[次回の授業概要]経営技術論2015.04.30
 
20世紀後半期~現在における「Technological Change(技術変化、技術変革)によるイノベーション」(Technological Innovation)
「企業は、活動の集合体(a collection of activities)として、技術の集合体(a collection of technologies)でもある。技術は企業のあらゆる価値活動に使われているので、技術の変革(technological change)は、ほとんどあらゆる活動にインパクトを与え、競争に影響を与えることができる。 」Porter(1985)Competitive Advantage: Creating and Sustaining Superior Performance, Free Press, p.167[ポーター(土岐坤訳,1985)『競争優位の戦略』ダイヤモンド社,p.210,引用に際して邦訳の一部を変更している。以下の引用も同じである。]
「技術変革は、競争の主要な推進要因の一つである。技術変革は、新しい諸産業の創出においても、産業構造の変革においても主要な役割を演じている。技術変革は、十分に確立された企業の競争優位を陳腐化させ 、他の企業を上位に押し上げる偉大な平衡装置でもある。現在の大企業の多くは、生かすことができた技術変革を利用して成長した。競争ルールを変えることができるすべての要因の内で技術変革が最も卓越した 要因の一つである。」Porter, Michael E. (1985). Competitive Advantage: Creating and Sustaining Superior Performance, Free Press,pp.164-[ポーター, M.E. (土岐坤訳,1985)『競争優位の戦略』ダイヤモンド社,p.207]
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技術的視点から見た、競争優位の中核的源泉の歴史的変化
製品間競争における競争優位性の技術的規定の中核的要因は、20世紀中頃まではアナログ技術であったが、次第にデジタル技術へと移行している。
デジタル技術採用による競争優位性の変化のあり方には、下記のようにいくつかのパターンがある。
 
パターン1. デジタル技術が大きな規定要因となっているケース
a.ハードウェア的デジタル化
 
b.ソフトウェア的デジタル化
デジタルレコード(CD) → デジタル音楽配信
地図帳 → デジタル・マップ
新聞紙 → ネットニュース
本、雑誌 → 電子書籍
 
パターン2.イノベーション後にもアナログ技術がデジタル技術と並んで重要な規定要因となっているケース
ex.1 「光学レンズ」技術というアナログ技術+「画像関連デジタル回路」技術というデジタル技術
アナログカメラ(ニコン、キヤノン、ミノルタ、コニカ)→デジタルカメラ(ニコン、キヤノン、ソニー、パナソニック)
 
ex.2 「画像表示装置」技術+「画像関連デジタル技術」(画像処理回路技術+ソフトウェア技術)
アナログTV(ブラウン管TV) → デジタルTV(液晶TV[sharp], プラズマTV[パナソニック], 有機EL TV[SONY], FED TV[キヤノン])
 
関連参考記事・資料
(1) ハードウェアの情報化による新たなビジネス展開の一例としての、スマートカー用部品
日本経済新聞社(2015)「スマートカー部品、量産、東芝、歩行者や標識識別、アルプス電気、車同士で通信、スマホ用からシフト」『日本経済新聞』2015年4月3日朝刊
(2) ハードウェアの情報化を利用した新たなビジネス展開としてのライドシェア
「ライドシェア実験も中止指導――ウーバー騒動日本上陸、新興サービス、規制と激突(真相深層)」『日本経済新聞』2015年4月3日朝刊
(3)「従来型携帯の生産終了、国内各社、17年以降に、NECは端末完全撤退」『日本経済新聞』2015年4月24日朝刊

 
 
Porterの基本戦略[lower cost, differentiation, cost focus,differentiation focus]
選択1 — lower costとdifferentiationは互いにトレードオフ関係にあるため、どちらを重視するのかという選択が問題となる
 
選択2 — targetの範囲を広く取るのか(broad target)、狭く限定するのか(narrow target)という選択が問題となる
「アナログ地上波」時代には、一地域で受信可能な放送局の数が限定されていた。そのため、放送局としては視聴対象者をあまり限定しないbroad target 戦略が取られたし、有効であった。(幅広い年齢層が同時に見ることを意図した、いわゆるホームドラマがその象徴である。)
 これに対して、「デジタル地上波」「BS放送波」、「CS放送波」、「インターネットTV」といった多チャンネル時代になると、個人がいわば無数のチャンネンルから「自分の見たい番組」を選択できる(選択する)ようになり、視聴対象者を限定したnarrow target戦略が技術的にも、経営的にも可能になった。
 
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