情報公共論2015.06.16

[前回の授業内容]情報公共論2015.06.09
[次回の授業内容]情報公共論2015.06.23
 
1.イノベーションに関わるpublic/private問題
(1) 技術革新の社会的普及に関わるpublic的要因
1)スタートアップ期における「公共」的規制— 促進 vs 抑制
旧世代の技術システムに対応した法的規制は、新世代の技術システムの社会的普及の妨げになることが多い。イノベーションの不確実性(「新世代製品の市場規模がどの程度になるのか?」や「新世代製品におけるdominant designが何になるのか?」などを事前に正確に予測することはかなり困難である)という問題とならんで、そうした旧い法的規制を変える必要があるという問題が先駆者のdisadvantageを構成する主要な要因の一つである。

a.電動自転車という技術革新の社会的普及の日中における差異の原因としての法的制度の差異
b.セグウェイ・ドローン(遠隔操作の無人飛行機)・自動運転自動車・グーグルグラスという技術革新の社会的普及に関わる法的規制・規制緩和および社会文化
 
[グーグルグラス関連]
 
2)スタートアップ期における「公共」的支援
厚生労働省:病院や医療機関などへの地デジ助成金
文部科学省:学校や教育機関などへの地デジ助成金
学術情報のオープンアクセス化
 
3)将来的方向としての「公共物」化
a. 知的財産権による法的保護期間経過後の著作および発明 — public domain化
b.自動車の「公共」化
 
(2) 情報イノベーションにおけるpublic/private問題
1)国による強制的イノベーションとしての地上波デジタル — 2011/07/24における完全移行
 
2)イノベーションの先導的推進役としての公共的組織の役割
放送イノベーションの先導的遂行者としてのNHK
放送イノベーションに必要な新技術への研究開発投資 — ハード開発
新しいハードに対応した新世代ソフトの作成(プログラム開発とコンテンツ作成)
 
3)イノベーション遂行の基盤,イノベーションの社会的普及の推進要因としての公共財
ソフト系情報財が公共財として利用される理由は、ハードの限界費用とは異なり、ソフトの限界費用はほぼゼロであるためである
ex.1 TV放送システム[「TV放送設備」、「TV放送用電波」、「ブラウン管TV」・「液晶TV」などのハード系情報財+「アナログ地上波放送番組」・「デジタル地上波放送送番組」などのソフト系情報財からなるシステム}のイノベーション遂行における、ソフト系の公共的情報財としてのTV放送コンテンツ
ex.2 電子書籍リーダー[amazon.comのkindle, 楽天のコボ, SonyのReader, SharpのGALAPAGOSなど]やタブレットというハード系情報財に関する製品イノベーションにおける、ソフト系の公共的情報財としての「著作権保護の対象となっていないpublic domain」の著作物
[関連参考資料]朝日新聞社(2012)「はじめての青空文庫— タブレット広まり利用者急増」『朝日新聞』2012年1月23日朝刊
ex.3 1975年のPCイノベーションにおいて、マイクロソフトはpublic domainのBASIC言語ソフトというソフト系の公共的情報財を基に、有料の自社製品としてのBASIC言語ソフトを開発・販売した。
 
2.著作権の法的保護期間の有限性 — public domain問題
前回の「情報財の「私有物」化/「公共物」化」論に関する補足
 
[関連参考資料]
  1. 日本経済新聞社(2013)「「古典」格安販売に暗雲?、著作権延長、TPP交渉で浮上、作品数影響大きく」『日本経済新聞』2013年5月13日朝刊
  2. 朝日新聞社(2006)「期間延長 70年の保護、必要なの? 新たな創作妨げる恐れも」(著作権のふしぎ:上)『朝日新聞』2006年9月12日朝刊
3.著作権侵害に対する社会的処罰
著作権や特許権などといった知的財産権は先駆者に与えられる。先駆者はそうした知的財産権によって模倣困難性を高めることでり競合他社に対する競争優位性を獲得することができる。
他者の著作権を侵害することは「財産」侵害として刑事罰の対象となる
[関連参考資料]
  1. 朝日新聞社(2009)「海外へTV番組-無断でネット配信で業者を逮捕」『朝日新聞』2009年5月29日朝刊
  2. 日本経済新聞社(2013)「人気漫画を複製、自炊業者再逮捕、著作権法違反の疑い」『日本経済新聞』2013年5月28日西部夕刊社会面
  3. 日本経済新聞社(2013)「書籍をスキャナーで電子化、「自炊」代行を逮捕――著作権法違反の疑い]『日本経済新聞』2013年5月2日朝刊
4.著作物の著作物性
著作物とは何か?著作者である要件は何か?
 
5.法とモラルの区別
法律違反とモラル違反の連関と区別

 

関連問題>未成年者飲酒禁止法における未成年飲酒の法的禁止
 

未成年者に酒を販売したり提供した業者、未成年者の飲酒を制止しなかった親権者や監督代行者に対する処罰規定はあるが、飲酒行為をおこなった未成年者本人に対する刑事処分は規定されてはいない。
 

関連問題>「可罰的違法性」問題

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