自動化の技術論的意味

自動化とは、ある特定製品の生産プロセスや、ある特定サービスの提供プロセスにおいて、それまで人間がおこなっていた行為(実践)の一部を、機械・装置等で代替することである。
 
例えば、灌漑目的のために、水田や畑などに川から水をくみ上げる揚水作業プロセスに関する「動力技術」視点および「自動化」視点から見た技術的発展の歴史的構造は次のようなものと考えられる。

  1. 人間動力による揚水装置(作業機)の駆動-人間が足で踏み車を回したり、手でアルキメデス螺旋を回したりして、揚水作業をおこなう。
    (人間は、踏み車やアルキメデス螺旋などの作業用機械装置(作業機)を動かす力の提供源であるとともに、踏み車やアルキメデス螺旋などの作業用機械装置(作業機)をを適切な速度で動かす操作をしている操作者でもある。)

     
  2. 流水による揚水装置(作業機)の駆動-川の流れを利用して水車(揚水車)を回して、揚水作業をおこなう。

    シリアのオロンテス川にあるハマーの揚水車
    [出典]“Noria”, 英語版Wikipedia,https://en.wikipedia.org/wiki/Noria
    [関連参考動画]https://en.wikipedia.org/wiki/File:Noria_in_hama.ogv

 
なお、上記の図にも暗に示されているように、「動力技術」視点および「自動化」視点からから捉えて、「より高次段階の技術」(自動化がより進んだ技術)であることと、「社会」的視点から見て「当該地域・当該社会においてより適切な技術」(appropriate technology)であることは異なることに注意する必要がある。すなわち、「技術」的視点から見て「より低次段階の技術」(自動化が遅れた技術)の方が、当該地域・当該社会ではより適切な技術であることはよくあることである。
 そうした現象が起こるのは、ある特定の機械・装置の「社会」的採用を決定する要因としては、当該の機械・装置の技術的機能・性能というProduct Technology的要因とともに、当該の機械・装置に関わる研究開発コスト、導入コスト(当該機械・装置の運転操作の学習・習熟に関わる教育・訓練コストも含む)、直接的製造コスト(原材料コスト、組立コストなど)、運用コスト、廃棄コストなどのコスト(Total Cost Owenership、Life cylce Cost)という「コスト」的要因、および、当該機械・装置の利用に必要とされる補完財として何がどれだけ利用できるのかといった「補完財のバンドワゴン効果」的制約などの要因が大きく関わるからである。
 
 
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