経営技術論2013.04.12

[本日の配付資料]

『イノベーションを理解するための視点』[A3-1枚]
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[本日の授業内容メモ]
1. イノベーションを理解するための理論的視点

(1) 「製品販売による利益」(=「売上」-「コスト」)の最大化

「製品販売による利益」の最大化のためには、下記のように「売上」の最大化を主として追求する戦略と、「コスト」の最小化を主として追求する戦略が存在する。

a.「売上」=「販売価格」×「販売個数」の最大化
「売上」の最大化の追求には下記のようなことが問題になる。

問題1>「競合製品よりも高い価格で顧客に製品を購入してもらうためには何をなすべきか?」
問題2>「競合製品よりも数多くの製品を顧客に購入してもらうためには何をなすべきか?」

上記のような問題は次のように言い換えることができる。
問題3>「競合製品に対する相対的競争優位性(competitive advantage)はどのようにして確保できるのか?」
この問題に対しては、対立的な二つの基本戦略 — differentiation戦略 vs cost leadership戦略の間での選択が問題となる。
問題4>「競合製品に対する相対的競争優位性を持続させるにはどのようにすべきなのか?」
この問題に対しては、特許権や著作権などの知的財産権による法的保護の利用といった模倣困難性の確保が重要となる。
MicrosoftやIntelといった米系IT企業は約15%という高い研究開発費率により、数多くの特許権や著作権を確保することで模倣困難性の高い「差別化」を実現し、36%や22%という高い営業利益率を実現している。
 それらの企業と比較すると、日本のソニー、パナソニック、シャープといった日系IT企業の研究開発費率は約6%とMicrosoftやIntelの半分以下の割合にとどまっている。そのことの結果が営業利益率が2%や4%と相対的にかなり低いことの背景的要因となっていると考えられる。

[問題4に関連して考察すべきこと]
 Appleは研究開発費率が3%であり、ソニー、パナソニック、シャープの約半分という低さである。それにも関わらず、Appleの営業利益率は19%と高い。このようにAppleが例外的である理由は何であるのかを考察してみよう。

b.「コスト」=「製造コスト」+「販売コスト」の最小化

c.Product Technology/Production Technology視点からの理論的アプローチ
— 製品の機能、性能、製造コスト、販売コストに関するadvantageの追求 —
技術戦略1>新機能(New Function)でadvantageを確保するという戦略
技術戦略2>高性能(High Performance)でadvantageを確保するという戦略
技術戦略1および技術戦略2は、Product Technologyに関するイノベーションで追求されることが多い

技術戦略3>製造コストや販売コストの最小化でadvantageを確保するという戦略
技術戦略3は、ProductのProduction Process(生産プロセス)を支えるTechnologyに関するイノベーションで追求されることが多い

ex.1 多人数の工員を使った生産から少数のロボットを使った自動生産へのイノベーション
ex.2 手書きの伝票による受発注システムから、コンピュータとネット使った受発注システムへのイノベーション

[本日の参照資料]

営業利益率と研究開発比率

資料2.日本における産業分野別の売上高に対する研究開発費および営業利益の割合比較 (2007 年度から2011 年度にかけての5 カ年度平均)
日本における産業分野別の売上高に対する研究開発費および営業利益の割合比較(2007 年度から2011 年度にかけての5 カ年度平均)
上記のグラフでは情報通信機械器具製造業を除いて、研究開発費率と営業利益率は比例している。
なぜ、そうした現象が生じるのかを考えてみよう。

資料3.情報通信機械器具製造業における日米の代表的企業における売上高に対する研究開発費および営業利益の割合比較
rd-profit2
上記のグラフでは、日系IT企業の営業利益率が低く、米系IT企業の営業利益率が高い。
なぜ、そうした現象が生じるのかを考えてみよう。

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