[前回の授業内容]技術戦略論2015.11.12
[次回の授業内容]技術戦略論2015.12.03
[今回の配付資料]
- 技術戦略論2015.11.12 授業記録メモ
[今回の議論理解に必要な背景的知識]
1.技術視点から見た製品評価に関わる基礎的知識
(1)技術進歩の評価視点の複数性 —-「機能」(function)と「性能」(performance)の区別
a.「機能」(function)は「有無」で判断される —- 「2D画面表示」機能、「3D画面表示」機能、「指紋認証」機能、「音声認識」機能
b.「性能」(performance)」は「高低」で判断される —- 「2D画面表示」機能に関わる性能としての、「表示可能色数」性能、「画面画素数」性能、「コントラスト比」性能
b.「性能」(performance)」は「高低」で判断される —- 「2D画面表示」機能に関わる性能としての、「表示可能色数」性能、「画面画素数」性能、「コントラスト比」性能
(2)現実の製品の持つ「機能」(function)の複数性・多種性
CPUモジュールが主として担う「一般的演算処理」機能、GPUモジュールが主として担う「画像データ処理」機能、マイク装置で入力した音声データを音声認識プログラム・ソフトとCPUモジュールで処理することによる「音声認識」機能、タッチパネル装置で入力した文字を文字認識プログラム・ソフトとCPUモジュールで処理することによる「文字認識」機能
(3)各機能それぞれに関する「性能」(performance)の評価指標の複数性・多様性
2.技術視点から見た製品イノベーションの性格分類に関わる基礎的知識
(1)「機能」(function)の複数性・多種性および「性能」(performance)評価指標の複数性・多様性に起因する製品イノベーションによる「製品進化」および「ポジショニング分類」の複雑性
現実の製品では顧客の製品選択において重視される製品機能が一つではなく複数であるため、ポジショニング分類は実際には単純ではない。現実の製品は複数の機能を持っているが、現実の製品イノベーションにおいてそれぞれの機能に関して性能向上の度合いが必ずしも同じではない。
たとえば音楽ソフトにおけるアナログレコードからカセットテープへの媒体変化の製品イノベーションにおいては、大きさや取り扱いやすさという機能に関しては性能向上があったが、再生可能な音楽の周波数特性やランダムアクセスなどの機能に関しては性能ダウンであった。
たとえば音楽ソフトにおけるアナログレコードからカセットテープへの媒体変化の製品イノベーションにおいては、大きさや取り扱いやすさという機能に関しては性能向上があったが、再生可能な音楽の周波数特性やランダムアクセスなどの機能に関しては性能ダウンであった。
ゲーム専用機でいえば、CPUモジュール以外に、GPUモジュール、ロムカセット、CD、DVD、ブルーレイなどの記憶媒体装置モジュール、入力装置モジュールに関する音声認識機能、タッチパネル機能など、各構成モジュールごとに多種多様な機能が存在する。そしてそれらの各機能のそれぞれにまた多種多様な性能評価指標が存在する。
(2)ゲーム機の製品イノベーション理解において注意すべきポイント
- 製品イノベーションによる「旧世代」製品の陳腐化、および、「新世代」製品に対するニーズ喚起
- スマートフォン製品(アンドロイドケータイ、iPhone)やPC製品と比べて、製品の世代交代間隔が長い。すなわち、同一世代のプラットフォーム持続期間が長い。
- 「旧世代」製品に対して、「新世代」製品では、一般的には研究開発投資額が巨額化するとともに、「新世代」製品用ソフトの開発費も巨額化する
2.製品イノベーションにおける「互換性維持」vs 「非互換」という技術的選択(再論)
ゲーム専用機の製品イノベーションにおける「互換性」分析のための視点(その3)
- 直接的互換性 — プラグイン・コンパチブル的ハードウェア互換性(差し込み口やUSBなどインターフェースも含む)
- 機能的互換性 — 十字キー、ジョイ・スティック装置などの操作性に関する操作互性
- インターフェース的互換性 — コマンド画面における選択肢の選択法など
[今回のポイント]
1.製品イノベーションにおける「互換性維持」重視戦略
事例1.ゲームボーイからゲームボーイカラーへの製品イノベーションにおける互換性維持重視
ゲームボーイカラーの信頼性評価および電子回路設計の担当者へのインタビュー記事。本記事では互換性の検証に関して下記のように書かれている。
1600本ものソフトをプレイしなければならなかったんです
信頼性評価担当ということで、私にはゲームボーイカラーの開発でもっともタイヘンな仕事がまわってきたんです。それは、いままでに発売されたゲームボーイ用ソフトが動くかどうかを確認する作業。なんといっても、サードパーティの作品も含めて、1600本もプレイしなければならないんですからね。私とスーパーマリオクラブとで8人のチームを組んで、なるべく短期間のうちになんとか終わらせようとがんばりましたが、もう、限界を超えていました。もちろん、8人で全部をチェックできるワケもなく、半分くらいは宇治工場のスタッフに手伝ってもらいましたが。さすがに1600本もあると、なかには操作方法が特殊で分からないソフトなんかもあって、作業はかなり難航しました。
上記のように、ゲームボーイアドバンスは、旧世代機のゲームボーイ用ソフトがそのまま遊べるようにという方針のもとに開発された
2.製品イノベーションにおいて互換性維持を実現するための技術的手法の事例
a.任天堂の携帯型ゲーム専用機における互換性確保 —「新世代」機における「旧世代」機CPUの内蔵
b.任天堂のGamecubeとWiiにおける互換性確保 —「新世代」機における「旧世代」機と同一アーキテクチャ・同一世代のCPUの採用
c.任天堂のWiiにおける各種製品との互換性確保 —「新世代」機における「各種製品」のエミュレーション