受信料制度に関するNHKの見解

 
free riderを排除するシステムへの移行に賛成の意見
上記文書には、NHKでもWOWOWなどと同じくB-CASカードを利用したfree rider排除システムを採用し、受信料未払いの世帯にはNHK放送を視聴させないようにすべきだという趣旨の意見が下記のようになされている。
「CS同様自己申告による有料放送にすべきです。」「BSだけでなくNHK視聴料金を払わない人が非常に多過ぎるので、スクランブル方式にして完全に視聴出来ないようにして欲しい。」、「誰が金なんて払うんでしょうか。さっさと金払わないと放送を受信できない方式にしたらどうですか。」、「受益者負担の原則からも、視聴したい方からは100%徴収すべきですし、衛星放送を視聴したくない方からは、受信機を所有するだけで徴収すべきではありません。」、「いっその事、地上波もBSも全て受信料の支払が確認できなければ、映像そのものを視聴できなくしてはどうか。」
 
スクランブル化に対するNHKの主張
「なぜ、スクランブルを導入しないのか」という文書において、NHKは下記のように主張している。
 
NHKは公共放送の財源として受信料がふさわしいと考えています。「スクランブル」は限られた人だけが情報を入手できる仕組みであり、一見合理的に見えますが、全国どこでも放送を分け隔てなく視聴できるようにする、という公共放送の理念と矛盾し、問題があると考えています。「スクランブル」では、どうしても「よく見られる」番組に偏り、内容が画一化していく懸念があります。視聴者のみなさまにとって、番組視聴の選択肢が狭まり、健全な民主主義社会の発展のうえでも問題があると考えています。
 
上記のような「公共放送」に関するNHKの見解に対しては、下記のような反論が可能である。
 
1.スクランブル放送が「全国どこでも放送を分け隔てなく視聴できるようにする、という公共放送の理念と矛盾」するという主張は、無料でも多数の衛星放送やネット動画を視聴できる21世紀の今日では適切ではない。
NHKのこうした主張は、「公共の福祉のために、あまねく日本全国において受信できるように豊かで、かつ、良い放送番組」を放送することをNHKの使命とする放送法第15条の記述に基づくものであるが、これは放送法制定当時の1940年代後半の状況においてのみ有意味な規定である。
21世紀の今日では、「あまねく日本全国において」民放が少なくとも1局以上は視聴可能であるだけでなく、BS放送やCS放送が全国各地で視聴可能である。
BS放送やCS放送といった衛星放送は、「一つの送信点から一波で全国をカバーすることにより経済的、効率的に全国放送を実現することが可能であり、離島等における難視聴解消にも適している」[総務省 情報流通行政局 衛星・地域放送課(2016)「衛星放送の現状〔平成28年度第1四半期版〕」2016年4月1日]技術的手段である。
また21世紀の現在では、インターネットによって動画が配信可能である。サイバーエージェントとテレビ朝日が合弁で設立したインターネットテレビ局「AbemaTV」は、「無料でテレビ番組が見れる」ことを売り物にしている。それだけでなく「AbemaTV」は、自社1局で22チャンネルを持っている。その中には、24時間ニュースを報道するチャンネルもある。youtubeでは極めて多数の動画を無料で見ることができる。
 またNTTドコモとエイベックスの共同事業である動画見放題サービス「dtv」の会員数、2016年3月27日には会員数500万人を突破した。NHKも会員限定の有料サービスとして、NHKオンデマンドという動画配信サービスをおこなっている。
、このように衛星放送やインターネットといった新しい技術的手段により、「あまねく日本全国において」多数の動画コンテンツを視聴可能となっている。
 
2.教養・教育を目的とした放送番組は、民放も提供している。また放送に限定しなければ、教養・教育に有用な動画は、youtubeなどインターネットでも数多く提供されている。NHKだけが、教養・教育を目的とした無料の動画コンテンツを制作・配信しているわけではない。
 それどころか、NHKオンデマンドにおける動画配信は有料会員限定のサービスである。ネットの世界で教養・教育系動画をpure public goodsとして提供しているのは、youtubeなどの営利企業や、creative commonsなどの情報系非営利組織である。
 
3.「正確かつ広範囲のニュース・報道番組」を提供するということは、NHKだけでなく、民放も行っている。民放のニュース・報道番組を、不正確、あるいは、狭い範囲に限定されているするのは不適切である。
 実際、営利企業の新聞社の報道は、「営利」組織であるため不正確、あるいは、狭い範囲に限定されているとは言えない。しかも編集権の独立は、NHKと同等かそれ以上と考えられる。
 
4.NHKは上記文書やNHK「公共放送とは何か」という文書における「営利を目的とせず、国家の統制からも自立して、公共の福祉のために行う放送」という公共放送の規定などに見られるように、「民放は営利を目的としているから公共放送ではない」という趣旨の主張を展開している。
 しかし、free riderを排除しないテレビ放送をおこなっている民放も、NHKと同じく公共経済学的な意味でのpure public goodsを視聴者に対して提供している。視聴者に対してpure public goodsを提供しているのは、NHKだけではない。
 
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