同一のMarket needsに対する、種々の技術的対応・製品的対応の可能性

「同一の市場的ニーズ(Market needs、すなわち、demand)に対して、異なる様々な技術的対応や製品的対応が可能である」ことは、技術選択論、製品選択論の理論的前提である。
 同一のMarket needsに対する技術的対応や製品的対応の多様性は、19世紀末における自動車の製品イノベーションの歴史的存在形態など、多様な典型的事例に示されている。

事例1. 19世紀末~20世紀初頭における人の移動や貨物の輸送という市場的ニーズに対する技術的対応・製品的対応の多様性
 人の移動や貨物の輸送という市場的ニーズに応える交通手段としての製品には、道路という補完財を利用する競合製品として、自転車、馬車、蒸気自動車、電気自動車、ガソリン自動車が存在した。また鉄道という補完財を利用する競合製品として、馬車鉄道(「馬」車+鉄道)、蒸気鉄道(「蒸気機関」車+鉄道)が存在した。
オールタナティブ・テクノロジー-や適正技術(Appropriate Technology)という問題を考察する際には、同一のMarket needsに対するこうした技術的対応・製品的対応の多様性の視点から考察することが必要である。
 
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20世紀初頭における自動車関連雑誌のタイトルに見る技術の多様性
20世紀初頭には下記雑誌のタイトルのように、「馬なし乗り物」(horseless vehicle)=自動車(automobile)製品用のモーターとして、「蒸気」(steam)、ガソリンなどの「炭化水素」(hydro-carbon)、「電気」(electric)、圧縮空気(pneumatic)といった様々な技術的手段を用いたモーターが競合製品として存在した。
自動車に関する製品イノベーションの初期には、アッターバックがdominant design論で論じているように、このように多種多様なproduct designの製品が存在した。そうした製品イノベーション初期の流動期を経て、ガソリン・エンジンを利用する製品が普通乗用車市場でdominant designとなったのである。
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事例2. 同一の技術的seedsに基づく、同一のMarket needsに対する製品的対応の多様性 — 自動車における電動モーターとガソリンエンジンのハイブリッド的実装の製品的多様性
 ガソリンエンジンと電動モーターのハイブリッド的実装という同一の技術的対応を選択した場合でも、下記のように種々の製品的対応が可能である。

  1. 電動モーターをセルモーターとしてエンジン始動に利用する旧来型のガソリン自動車製品
  2. 外部充電ができない従来型HV自動車
  3. 外部充電が可能な新型のPHV自動車
 
<参考資料>20世紀初頭における自動車雑誌の表紙に見るガソリン自動車 — Electic Vehicle社のElctric and Gasolene Automobiles,Mark VIII Columbia Gasolene Runabout

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[出典]
Automobile Review, Vol.4 No.3, March, 1901の表紙Automobile Review, Vol.4, 1901のNo.4, No.5の表紙もこれと同じ画像が使われている。

 
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