2026/7/7講義メモ:経営技術論視点から見たコンピュータ製品の歴史的展開-製品開発および技術開発の歴史的展開

1.コンピュータの製品イノベーションを理解するための二つの視点 - ニーズ視点 vs シーズ視点
needs視点(「必要は発明の母」) vs seeds視点(「発明は必要の母」)

needs視点からの問い
  1. コンピュータ製品はどのようなneedsに応えたものなのか?-コンピュータ製品は情報処理機器としてどのような作業の遂行に必要なのか?
  2. どのようなneedsがコンピュータに関する製品イノベーションを引き起こしたのか?
 
seeds視点からの問い
  1. コンピュータ製品の発明はどのようなseedsによって可能となったのか?
  2. どのようなseedsがコンピュータに関する製品イノベーションを引き起こしたのか?
 

の更新需要

2.コンピュータ製品は情報処理機器としてどのようなモノから構成されているのか?(その1)
コンピュータを構成する4つの技術的要素-「演算」装置、「入力」装置、「出力」装置、「記憶」装置
Input – Black Box – Output
「入力」装置(文字入力>キーボード、位置指定>マウスやジョイスティック、画像入力>スキャナーやカメラ[画像センサー] ほか)
「演算」装置(整数演算>CPU、浮動小数点演算>GPU ほか)
「記憶」装置(FDD、HDD、SDD ほか)
「出力」装置(画面表示>ディスプレイ、印刷>プリンター ほか)

needs視点から見たコンピュータ技術の歴史的発展構造

[出典]筆者作成

 
「演算素子」視点から見たコンピュータの歴史的発展構造


[出典]筆者作成

 
3.コンピュータ製品は情報処理機器としてどのようなモノから構成されているのか?(その2)-「ハードウェア」 vs 「ソフトウェア」
ユーザー視点から見たコンピュータ製品の階層的構成-「ハードウェア」 vs 「ソフトウェア」(OSソフトウェア、アプリケーションソフトウェア)

ソフトウェアは、実体的にはハードウェアの中に存在すること、すなわち、ハードディスク、ROM、CD、DVDなど記憶装置の中に保存されていることに注意すること。

[出典]日本語版ウィキペディア「ソフトウェア」の図を一部修正
https://ja.wikipedia.org/wiki/ソフトウェア#/media/ファイル:Operating_system_placement-ja.svg

 

OSソフトウェア(CP/M、MS-DOS、Windows OS、Macintosh用OS[Classic Mac OS、macOS]、Linux OSほか)
アプリケーションソフトウェア(Microsoft Word、Microsoft Excelほか)
開発言語ソフトウェア— BASIC言語ソフトウェア、C言語ソフトウェアほか

 
 
4.コンピュータ製品は情報処理機器としてどのようなモノから構成されているのか?(その3)ソフトウェア開発視点から見た二つの技術的要素 - ソースコード vs オブジェクトコード
 
ソースコード(source code)
プログラミング言語で書かれたコンピュータプログラムのテキストファイル
 ↓
プログラミング言語ソフトウェア
「ソースコード」を「オブジェクトコード」に変換するためのソフトウェア(開発言語ソフトウェア)— BASIC言語ソフトウェア、C言語ソフトウェアほか
 ↓
オブジェクトコード(object code)
コンピュータが直接的に読み書きできるデジタルデータ(バイナリーコードほか)
 
オブジェクト・コード(バイナリー・コード)の作成に関わる三つの方法
  1. 機械語によるオブジェクト・コードの「直接」的作成
  2. アセンブリ言語によるオブジェクト・コードの「間接」的作成
      a.アセンブリ言語によるソースコードの作成
      b.アセンブラーによる、ソースコードからオブジェクト・コードの作成
  3. 高級言語によるオブジェクト・コードの「間接」的作成
      a.高級言語によるソースコードの作成
      b-1.コンパイラー(Compiler)による、ソースコードからオブジェクト・コード(.exeや.comなどの実行プログラム・ソフトウエア)の作成
      b-2.インタープリター(Interpreter)による、ソースコードからオブジェクト・コードの生成(CPUに実行させるためのバイナリーコードの生成)

 

Google Geminiに生成させた「数当てゲーム」のソースコード(Python言語)
https://share.gemini.google/bGzqHoKuOcfs

 
 
5.コンピュータ・ニーズに関する物理的定義 vs 機能的定義
コンピュータ・ニーズに関する物理的定義
20世紀後半におけるコンピュータ製品

メインフレーム ー 1社につき1台の更新需要
ミニコン ー 1社につき数台の更新需要
パソコン ー 従業員一人に1台の更新需要(1社につき平均で数百台~数千台・数万台の更新需要)
[参考資料]PC市場関連データ https://www.sanosemi.com/PC-data01.htm
ワープロ専用機
 

21世紀に普及したコンピュータ関連製品

タブレット
スマートフォン
 
コンピュータ・ニーズに関する機能的定義(その1)-利用主体別の機能的定義
central computingニーズ(価格よりも安全性・信頼性valueを最優先)
departmental computingニーズ
personal computingニーズ
 
コンピュータ・ニーズに関する機能的定義(その1)-作業対象別の機能的定義
「文書」処理ニーズ(文書作成ほか、文字データを対象とした情報処理ニーズ)
「計算」処理ニーズ(表計算ほか、数値データを対象とした情報処理ニーズ)
「画像」処理ニーズ(写真、動画ほか、画像データを対象とした情報処理ニーズ)


[出典]筆者作成

 
6.コンピュータ製品市場の歴史的展開
大きさ、利用形態、処理業務によるコンピュータの分類
— Mainframe Computer, Minicomputer, Personal Workstation, Personal Computerの区別と連関の技術論的根拠 —
各種ソフトウェアおよび各種周辺機器の利用によって各種の情報処理が可能なコンピュータ製品は、その製品の大きさ、利用形態、処理業務に応じて表1のように分類できる。
 
表1 1970年代中頃におけるコンピュータ製品の分類
 
大きさを基本とした
分類名
購入
主体
利用主体および利用形態 処理用途 対応製品セグメント 市場形成
時期
Room-sized computer
(large scale computer)
企業 会社
Central computing
全社的情報処理業務
(基幹業務処理)
メインフレーム 1950年代
Minicomputer 部門
Departmental computing

部門的情報処理業務
 
ミニコンピュータ 1960年代
--- 個人
Personal computing
個人的情報処理業務 パーソナル・ワークステーション 1970年代
Microcomputer 個人 個人的情報ホビー作業 パーソナル・コンピュータ

https://www.sanosemi.com/biztech/data/US-PC-mini-mainframe-1965_1990.htm

■市場データ■PCの出荷台数、市場シェアの歴史的推移


Computer_markethshare_1975-2012

 
7.PCに関わる市場競争の構造
「知的財産権」視点から見た競争優位の確保-知的財産権に基づく「open」戦略 vs 「closed」戦略

「open」戦略 — Apple II , IBM PC, Androidケータイ
  vs
「closed」戦略 — Macintosh, iPhone

工業製品としてのハードウエア==>特許権による「類似製品の排除」、および、特許権による「公開性=公共性の担保」
著作物としてのソフトウエア==>著作権による「類似製品の排除」、および、著作権による「公開性=公共性の担保」
 
「ソースコードなどのソフトウエアは「プログラムの表現」=著作物として著作権(copyright)により法的に保護される。

Microsoftなどのソフトウエアメーカーは、著作権による競合製品の締め出しというClosed戦略を追求している。
IBMは、IBM PCのBIOSソフトウエアのソースコードを「公開」することで、IBM PC用の周辺機器メーカーやソフトウエアメーカーに対するOpen戦略を追求した。またそれとともに、「公開」によって、自社BIOSの互換BIOS販売・互換機販売を阻止しようとした。すなわち自社BIOSの互換BIOS開発における「著作物の依拠性」の存在証明を容易とした。(「公開」されているため、IBMのソースコードに依拠していないことの証明を困難にしようとした。)これに対して互換機メーカーのCompaqは、クリーンルーム方式での開発により、『著作物の依拠性」のないソフトウエア開発を実現した。
LinuxなどのOSS製品は、「オープンソースソフトウェア」(Open Source Software)として著作権に基づく契約によるOpen戦略(派生ソフトウェアをOSSとすることを法的に強制するなど)を追求している。

[関連ドキュメント]
CPUなどのハードウェアは主として特許権(Patent)により法的に保護される。
ただしIntelのマイクロプロセッサは、マイクロプログラムを内蔵したプロセッサー(マイクロプログラミング方式によるプロセッサー)として、著作権でも保護されている。
NECとIntelの8086のマイクロプロセッサーの著作権をめぐる訴訟
 
ハードウェアと一体となったソフトウェアは、「プログラムに関する発明」として特許権(Patent)により法的に保護される。

特定の使用目的に対応した情報処理がハードウェアと一体となったソフトウェアによって実現されている場合、「ハードウェアとソフトウェアが協働して特定の目的を達成する仕組み」が特許法による保護の対象となる。
特許庁(2009)『ソフトウエア特許入門』
https://www.jpo.go.jp/news/kokusai/developing/training/textbook/document/index/introduction_to_software_patents_2009_jp.pdf
Linux Foundation “Patent Commons Project”
https://patentcommons.org/

ユーザーインターフェースは、日本では著作権・意匠権で、アメリカではデザイン特許(Design Patent)などにより法的に保護される。
[関連ドキュメント]
 
 
「互換性」重視戦略 vs 「性能向上」重視戦略

IBM PC vs Macintosh
IBM互換機問題 -- Compaq(Compatible qualityの重視)
AppleII互換機問題 -- 訴訟による対抗および製品イノベーションによる結果的対抗
Mac互換機問題
CP-M OSは8bit時代は成功したが、16bit時代には失敗した。ー「性能向上」重視戦略を取った結果として、「互換性」を相対的に軽視した。

 
「コストリーダーシップ」戦略 vs 「差異化」戦略

C]ommodore Pet2001,Tandy Radio Shack TRS-80 vs Apple AppleII
IBM PC互換機 vs Macintosh
MicrosoftのWindows OSは1980年代~1990年代前半期は相対的に性能が低く、「差異化」戦略を重視したMac OSに勝つことができなかった。
関連参考資料
Porter の競争戦略論的視点から見た経営と技術

 
「水平分業」重視戦略 vs 「垂直統合」重視戦略

Intel, Microsoft 水平分業による「コスト低減」実現ー「互換性」重視戦略やコストリーダーシップ戦略との高い親和性

Intel, Microsoftは、自社製品の異世代間および同世代間での「互換性」重視によるコスト低減(「範囲の経済」効果)を追求している。
Intel, Microsoftは、自社製品に関する特許権や著作権などの知的財産権により、他社競合製品の締め出しというclosed戦略を追求している。
ただしAppleも、自社製品の異世代間および同世代間での「互換性」重視によるコスト低減(「範囲の経済」効果)を追求している。NECとIntelの8086のマイクロプロセッサーの著作権をめぐる訴訟

Apple 垂直統合による「差異化」実現 ー 「性能向上」重視戦略や「差異化」戦略との高い親和性

初代Macは、「性能向上」重視戦略や「差異化」戦略の追求の結果として、あまりにも高コストとなり相対的競争優位を確保することができなかった。
ただしAppleも、自社製品の異世代間および同世代間での「互換性」重視によるコスト低減(「範囲の経済」効果)を追求している。

「iPod classic → iPod touch → iPhone → iPadという製品イノベーションに関する経営技術論的理解Ver.3」
https://www.sanosemi.com/biztech/document/iPod_classic-iPod_touch-iPhone_iPad.pdf

 
■関連参考資料

筆者作成資料
https://www.sanosemi.com/index-sano-articles.htm

 
Apple関連
 
PC関連
 
ソフトウエア関連
 
イノベーション関連
 
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