経営技術論2013.04.19

[本日の配付資料]

『2013年度経営技術の授業理解を助けるためのメモ』pp.1-10[A3-5枚]
http://sano.s2.coreblog.jp/wp-content/uploads/2013/04/2013-04-19.pdf

[本日の授業で取り上げなかったが重要な問題]

「製品開発プロセスと消費プロセスの連関」問題(藤本隆宏,キム・B・クラーク(田村明比古訳,1993)『製品開発力』ダイヤモンド社,p.45)は、製品コンセプト、機能設計、構造設計、工程設計、製造工程、製品構造の相互連関を理解・分析するために重要な問題である。

[本日の授業内容メモ]

項目1.先週の授業内容の中の重要事項の再確認、および、先週の配付資料の残りの事項の説明
項目2.Porterの3つの基本戦略(generic strategies)
— Cost Leadership, Differentiation, Focus、および、そのことに関する事例に基づく戦略

1. イノベーションを理解するための理論的視点
(2) Product -> Production ->Business
a. 新製品の生産に関わる諸プロセス
市場的要因と技術的要因に関する分析検討
Analysis & Research of Market factors and Technology Factors
新しい製品アイデアの形成、新しい製品コンセプトの創造、製品計画
Product Idea Generation,Producut Concept Creation, Product Planning
具体的な製品設計[機能設計と構造設計]
Product Design[“function design” and “structure design”]
具体的な工程設計
Production Process Design
実際の製品生産工程
Production Process

組立型製品の技術的構造 — 素材=製品の素材型製品とは異なる技術的構造

製品開発プロセスと消費プロセスの連関

b.ビジネス・プロセスに関わるdesign問題 — 「何を内部化し、何を外部化するのか?」

下記のような各ビジネス・プロセスを構成する諸要素の内で、「何を内部化し、何を外部化するのか?」という判断が企業の相対的競争力を大きく左右している。
 競争力維持のためには、他社が模倣困難な経営資源を形成し保持することに関わる能力、あるいは、他社が模倣困難な経営資源を有することによって可能となる能力が必要とされる。すなわち、競争力維持に関わる中核的な諸要素に関わる能力としての、コア・コンピタンス(Core Competence)を持つことが必要とされる。

調達プロセス
生産プロセス
販売プロセス

c.Product – Production –Businessに関するイノベーション
プロダクト・イノベーション 個別製品レベルにおけるイノベーション
プロセス・イノベーション 個別製品の個別生産レベルにおけるイノベーション
ビジネス・イノベーション ビジネス・プロセスレベルにおけるイノベーション
d. Businessに関わるProductの複数性 — 製品システム論的視点からのイノベーション把握の重要性
ビジネス・イノベーションに対応するのは製品ではなく、ビジネス・システムである。製品それ自身が複数のモジュール、多数の部品から構成されているように、ビジネスの遂行には複数の製品が必要とされることが多い。個々の製品それ単独では顧客の必要性を充足せず、有用性を発揮できないことが多い。複数の製品の適切な組み合わせによって構成される製品システムがビジネスの基礎である。個々の製品はその複合体である製品システムとしてはじめて有用性を発揮する。
イノベーションの遂行に際してはそうした製品システム論的視点からの対応が必要不可欠である。たとえばガソリン自動車から電気自動車へのイノベーションに関しては、下記のような製品システム性の理解に基づく対応が必要である。

製品本体 関連製品1 関連製品2
ガソリン自動車 <-> ガソリンスタンド <-> 一般道路

高速道路(自動車専用道路)
電気自動車 <-> 充電スタンド <->
自動車会社による
製品提供
ガソリン販売業者に
よる製品提供
自動車販売会社・
駐車場・自宅などでの
製品提供
国・地方自治体による
「製品」提供
各種の製品が一つのシステムとして顧客の必要性を満たしたり、有用性を実現しているため、ビジネスという視点からはそうした製品システム性を考慮してはじめてイノベーションがビジネス的に成功することになる。

たとえば、自転車の利便性向上によって販売台数を増加させようとするならば、自転車専用道路の整備・拡充が有用である。これは、高速道路という自動車専用道路の整備・拡充が自動車の利便性を向上させ、自動車の販売台数増加を促したのと同様である。

こうしたことは家電製品の場合には明確に認識されており、ソニーはそうした製品システム性に配慮した事業戦略を意識的に展開している。
製品本体 関連製品1 関連製品2
CD <-> CDプレーヤー SONY:PS
DVD <-> DVDプレーヤー
DVD録画再生機
SONY:PS2
ブルーレイディスク <-> ブルーレイディスク・プレーヤー
ブルーレイディスク録画再生機
SONY:PS3
Sony Music Entertainmentや
Sony Pictures Entertainment
による製品提供
SONYによる製品提供
2.Porterの3つの基本戦略(generic strategies)
— Cost Leadership, Differentiation, Focus —
Competitive Advantage
(競争優位)
Lower Cost
(コストの低減)
Differentiation
(差別化)
Competitive Scope
(競争の範囲)
Broad Target
(広い範囲の
ターゲット)
Cost Leadership
(コストリーダーシップ)
Differentiation
(差別化)
Narrow Target
(狭い範囲の
ターゲット)
Cost Focus
(コスト集中)
Differentiation
Focus

(差別化集中)
競争優位の基本的タイプは「低コスト化」(lower cost)と「差別化」(differentiation)の二種類である。
 ただし「低コスト化」を徹底的に追求しようとすると、新機能実現や性能向上実現による「差別化」の追求はより困難になる。
 またその逆に、「差別化」を徹底的に追求しようとすると、差別化実現のための新規研究開発投資や新規設備投資が必要となり、製造原価低減による「低コスト化」の追求はより困難になる。
 それゆえ「低コスト化」と「差別化」の両方を同時に徹底的に追求することはきわめて困難である。

その結果として、ターゲット顧客を絞り込むことによって相対的競争優位を追求しようとする集中戦略も、それが対象とする製品セグメント領域においてとのどちらを追求するのかによって下記の二つに分けられる。
 a. Cost Focusコスト集中戦略
 b. Differentiation Focus差別化集中戦略

[本日の参考資料]
  1. 本田技研工業株式会社(1955)「専務言行集 — 六有斎」『ホンダ7年史』
    http://www.honda.co.jp/sou50/Yume/7year/s2610_03.html
  2. 佐藤正明(2008)『ホンダ神話〈1〉本田宗一郎と藤沢武夫』文藝春秋(文春文庫)所収のポール・イングラッシア(元ダウ・ジョーンズ ニュース戦略担当副社長)の序文
  3. 四宮正親(2006)「補佐役の企業家活動―盛田昭夫と藤沢武夫―」(日本の企業家活動シリーズNo.39)、法政大学イノベーション・マネジメント研究センター
    http://www.hosei.ac.jp/fujimi/riim/img/img_res/WPNo.22_shinomiya.pdf
  4. 橘川武郎・野中いずみ(1995)「革新的企業者活動の継起 : 本田技研とソニーの事例」由井常彦・橋本寿朗編『革新の経営史 : 戦前・戦後における日本企業の革新行動』有斐閣
  5. スティーブ・ウォズニアック(井口耕二訳,2008)『アップルを創った怪物―もうひとりの創業者、ウォズニアック自伝』ダイヤモンド社
[調べて見よう]
課題1.組立型製品の典型である自動車に関する製品イノベーションに対して、素材のイノベーションがどのような役割を果たしうるのかを調べて見よう。またどのような問題があるのかを調べて見よう。
日本経済新聞社(2012)「帝人、車向け炭素繊維量産。300億円投資、米でGMに供給」『日本経済新聞』2012年2月2日朝刊
影山裕史(2012)「自動車におけるCFRP技術の現状と展望」第2回次世代自動車公開シンポジウム『超軽量化技術の進化をめざして』2012年3月12日
著者の所属:トヨタ自動車 有機材料技術部
CFRP=Carbon Fiber Reinforced. Plastics(炭素繊維強化プラスチック)
著者の所属:三井物産戦略研究所マテリアル&ライフイノベーション室
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経営技術論2013.04.12

[本日の配付資料]

『イノベーションを理解するための視点』[A3-1枚]
http://sano.s2.coreblog.jp/wp-content/uploads/2013/04/d78cff049c30bc8d79348b7b1423c0d0.pdf

[本日の授業内容メモ]
1. イノベーションを理解するための理論的視点

(1) 「製品販売による利益」(=「売上」-「コスト」)の最大化

「製品販売による利益」の最大化のためには、下記のように「売上」の最大化を主として追求する戦略と、「コスト」の最小化を主として追求する戦略が存在する。

a.「売上」=「販売価格」×「販売個数」の最大化
「売上」の最大化の追求には下記のようなことが問題になる。

問題1>「競合製品よりも高い価格で顧客に製品を購入してもらうためには何をなすべきか?」
問題2>「競合製品よりも数多くの製品を顧客に購入してもらうためには何をなすべきか?」

上記のような問題は次のように言い換えることができる。
問題3>「競合製品に対する相対的競争優位性(competitive advantage)はどのようにして確保できるのか?」
この問題に対しては、対立的な二つの基本戦略 — differentiation戦略 vs cost leadership戦略の間での選択が問題となる。
問題4>「競合製品に対する相対的競争優位性を持続させるにはどのようにすべきなのか?」
この問題に対しては、特許権や著作権などの知的財産権による法的保護の利用といった模倣困難性の確保が重要となる。
MicrosoftやIntelといった米系IT企業は約15%という高い研究開発費率により、数多くの特許権や著作権を確保することで模倣困難性の高い「差別化」を実現し、36%や22%という高い営業利益率を実現している。
 それらの企業と比較すると、日本のソニー、パナソニック、シャープといった日系IT企業の研究開発費率は約6%とMicrosoftやIntelの半分以下の割合にとどまっている。そのことの結果が営業利益率が2%や4%と相対的にかなり低いことの背景的要因となっていると考えられる。

[問題4に関連して考察すべきこと]
 Appleは研究開発費率が3%であり、ソニー、パナソニック、シャープの約半分という低さである。それにも関わらず、Appleの営業利益率は19%と高い。このようにAppleが例外的である理由は何であるのかを考察してみよう。

b.「コスト」=「製造コスト」+「販売コスト」の最小化

c.Product Technology/Production Technology視点からの理論的アプローチ
— 製品の機能、性能、製造コスト、販売コストに関するadvantageの追求 —
技術戦略1>新機能(New Function)でadvantageを確保するという戦略
技術戦略2>高性能(High Performance)でadvantageを確保するという戦略
技術戦略1および技術戦略2は、Product Technologyに関するイノベーションで追求されることが多い

技術戦略3>製造コストや販売コストの最小化でadvantageを確保するという戦略
技術戦略3は、ProductのProduction Process(生産プロセス)を支えるTechnologyに関するイノベーションで追求されることが多い

ex.1 多人数の工員を使った生産から少数のロボットを使った自動生産へのイノベーション
ex.2 手書きの伝票による受発注システムから、コンピュータとネット使った受発注システムへのイノベーション

[本日の参照資料]

営業利益率と研究開発比率

資料2.日本における産業分野別の売上高に対する研究開発費および営業利益の割合比較 (2007 年度から2011 年度にかけての5 カ年度平均)
日本における産業分野別の売上高に対する研究開発費および営業利益の割合比較(2007 年度から2011 年度にかけての5 カ年度平均)
上記のグラフでは情報通信機械器具製造業を除いて、研究開発費率と営業利益率は比例している。
なぜ、そうした現象が生じるのかを考えてみよう。

資料3.情報通信機械器具製造業における日米の代表的企業における売上高に対する研究開発費および営業利益の割合比較
rd-profit2
上記のグラフでは、日系IT企業の営業利益率が低く、米系IT企業の営業利益率が高い。
なぜ、そうした現象が生じるのかを考えてみよう。

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教養演習A 2013.04.24

 
[先週のミニ知識の復習]
  1. 過去に存在したWebページに対する閲覧ニーズに対応したサービス
  2. 著作権に関するフェアユース規定とイノベーション
    「なぜ日本ではGoogleが提供したようなサービスを提供できなかったのか?」というような議論との関連でフェアユース規定が論じられている。
  3. Googleの検索サービスを利用して、特定のサイト内のデータを検索する方法
    sanosemi.comの中にあるFAXに関するデータを検索する際には、下記のように入力してください。

    FAX site:sanosemi.com

    そうすると下記のような表示が出てきます。

    [PDF]北米におけるFAX製品の世代別普及
    www.sanosemi.com/biztech/document/FAX01.pdf
    ファイルタイプ: PDF/Adobe Acrobat – クイック ビュー
    1902 年に有線電送写真技術(FAX)が実用化され、世界各地の新聞社によって利用されるようになる —- 利用者は新聞社に限定され、ネットワークはそれ以上の広がりを見せなかった。「文字」による情報伝達技術としては、電報に対する. 技術的優位性が低かっ …

    [PDF] アッターバックのドミナント・デザイン論
    www.sanosemi.com/biztech/document/dominant-design-ver3-3.pdf
    ファイルタイプ: PDF/Adobe Acrobat – クイック ビュー
    7. (1) スイッチング・コスト. (2) 経路依存性 — 製品を取り巻く環境の歴史的規定性. (3) バンドワゴン効果 a. ネットワーク外部性に関わるバンドワゴン効果. FAX. Product Innovation. G4 FAX. G3 FAX b. 補完財に関わるバンドワゴン効果. CD CD. 12. CD-ROM …

    [PDF] ライベンシュタインおよびロルフスのバンドワゴン効果論
    www.sanosemi.com/biztech/document/bandwagon2011.pdf
    ファイルタイプ: PDF/Adobe Acrobat – クイック ビュー
    すなわち、電話網や FAX 網のように一種類の製品. (サービス)で自己完結しており、便益の …. 第1世代および第2世代の FAX は、異なるメーカー間あるいは異なる機種間での互換性がなく、FAX のやり取りをすることができ. なかった。すなわち異なるメーカー間 …

[先週のミニ知識に関連して、下記のことを調べたり、確認したりしてみよう]
  1. 上記二つのサービスの特徴的違いはどこにあるのかをわかりやすく説明してみよう。
  2. なぜ「ウェブ魚拓」のサーバーがアメリカに置かれているのかを調べてみよう。
  3. 上記以外の類似のサービスにどのようなものがあるのか調べてみよう。
  4. 上記のようなサービスの実施に際しては、著作権法との関連が問題になる。日米ではどのような違いがあるのかを、フェアユース規定との関連で調べてみよう。
  5. 米国ではフェアユース規定が存在したが日本では存在しなかったことがGoogleの検索サービス事業の成功とどのように関連しているのかを自分でわかりやすく説明してみよう。
  6. 法的規定とイノベーションの連関に関して、フェアユース規定以外にどのようなものがあるのかを調べてみよう。
[本日の授業内容]
ゼミ生による3分間発表とそれに関する質疑応答、教員によるコメント

  1. HORI Yoshihiro
  2. SANDA Kentarou
  3. YAMASHITA Kazutaka
  4. INAGAKI Kaoru(欠席)

    残念ながら、予定のゼミ生発表ができなかったので、来週の5月1日に「自分が面白いと思ったことや興味があることに関して、経営学部生的視点から発表をおこなう」こととした。

[時間に余裕があればおこなう本日の授業内容]
  1. イノベーション関連の理論的用語としてのnecessity,usefulness,wants,demenadの区別と連関
    Demand形成の構造に関するNecessity/Usefulness-Wants-Demand図式— Productに関するTechnology-Function-Performance論、および、Cost-Benefit論からの考察 —-

    ニーズを構成する4つのファクター

    1.「客観的存在としての必要性/有用性」
    2.「必要性/有用性に関する認識」
    3.「欲求」
    4.「需要」

[次回の授業内容]教養演習A 2013.05.01

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教養演習A 2013.04.17

[先週の授業内容および理解しておいてほしいこと]
  1. イノベーションに関する基礎的知識
    製品に関するイノベーション
    製品の製造プロセスに関するイノベーション
    ビジネスに関するイノベーション

  2. イノベーションによって得られる収益の長期的持続
    模倣困難性の極大化 —- 市場における先行者の優位性
    知的財産権による法的保護の利用

  3. イノベーションの主導的要因に関する伝統的議論
    イノベーションに関わる主要な二つの要因としてのニーズとシーズ

[本日の授業内容]
  1. ゼミ生のホリさんによるミニ発表--- インターネットというイノベーション
  2. インターネットに関わるneedsとseeds
    先行して存在していたニーズ

    「情報伝達」ニーズ
    「情報共有」ニーズ
    先行して存在していたシーズ

    「有線電信」技術
    「コンピュータ」技術

  3. 「情報伝達」ニーズに対応したイノベーションの歴史
    「文字」情報の伝達に関するイノベーション:有線電信→無線電信→電子メール
    「音声」情報の伝達に関するイノベーション:有線電話→無線電話(携帯電話)→インターネット電話(IP電話、skype、Lineなど)
    「画像」情報の伝達に関するイノベーション:FAX→電子メールの添付ファイル→クラウドサービスの利用

  4. 現行インターネットに至る段階的な発展
    1. 「複数ユーザーによる大型計算機の共有」としての個別的ネットワーク[ex.1960年代のTSS=Time-sharing System]
          ↓
    2. inter-networkとしてのinternet[個別的Networkの相互的連結としてのnetwork、ARPANET]    ↓
    3. 通信プロトコルとしてのTCP/IPの採用(1983)    ↓
    4. WWW[World Wide Web]の発明(1990)

[調べてみよう]

課題1.ARPANETは、「核攻撃に耐える指揮統制システムを作るために始まった」という主張を展開しているサイトを調べるとともに、そうした主張を批判しているサイトも調べなさい。
そしてどちらの主張がより正しいと考えられるのかを述べなさい。

[次回の授業内容]教養演習A 2013.04.24

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情報公共論2013.04.16

今回の授業内容
  1. 授業ガイダンス
    1. Open Source Software vs Closed Source Software
    2. 公共的情報財 vs 私的情報財 — 著作権という知的財産権に基づく情報財の多様性
    3. 業務に関する深い理解に基づくプログラム開発の重要性 — 「業務」と「プログラム」という二つの対象に対する理解の必要性
      1. ユーザビリティが高く、追加・改変が容易なプログラムの開発
      2. 初期導入費用および保守管理費用の極小化が可能なプログラムの開発
  2. 配付資料
    1. 「年金「1年決着」の疑問 宙に浮いた5千万件 照合だけ、遠い統合完了」『朝日新聞』2007年6月22日朝刊
       同記事によれば、「まず目を引くのが、過去の経費の巨額さだ。NTTデータと日立製作所、関連会社には、現行のシステム開発や運用・保守の経費年1千億円超が保険料と公費から支払われている。00年度の約940億円から拡大傾向にあり、05年度には約1140億円に達した。過去約40年で合わせて1兆4千億円に達するという。
       なお社保庁のオンラインシステムは、1960年代頃から整備されてきたメインフレーム・コンピューターによるもので、「コボル」と呼ばれるプログラム言語で書かれている。

    2. 「年金プログラム、社保庁、著作権持たず――無競争で発注も(さまよう年金記録)」『日本経済新聞』2007年6月28日朝刊
      社保庁がNTTデータとの間で結んでいる「データ通信サービス契約」では、年金の記録管理部分のシステムを構築したNTTデータが運用・保守を担当しているだけでなく、そのソフトウェア・プログラムの著作権も持っている。
       NTTデータが著作権を持っているプログラムに関しては、NTTデータの了解なしにはプログラムの追加や改変ができないため、社保庁の幹部は「年金記録漏れ対策でのプログラム改変も同社への随意契約になる」としている。
       なお社保庁の年金システムの場合とは異なり、特許庁のシステムでは著作権を特許庁が持つ契約に変えられている。

    3. 「年金システムに著作権の壁:社保庁、随意契約続く」『日経金融新聞』2007年8月27日
      同記事によれば社保庁は新たに開発するプログラムの開発に関して「現行システムに習熟し、改修のもととなる既存のシステムの著作権を有する者と契約を締結」という方針である。

    4. 「厚労省ソフト、業者任せでミス多発 癒着構造、ツケ表面化」『朝日新聞』2007年7月7日朝刊
      同記事では「厚労省在籍時に監修料を受け取っていた社保庁のある職員は、朝日新聞記者から「システムの監査をしたか」と尋ねられて次のように答えた。「私は技術のことは分からない。厚労省に聞いてほしい」」と書かれている。

    5. 「「電子政府」利用進まず:ネット通じた行政手続き 8割が1%未満」『日本経済新聞』2005年11月8日朝刊

    6. 「e-Japan発表から8年 「電子政府」利用促進が課題 省庁ごとに異なるID 縦割り組織見直しを」『日経産業新聞』2009年1月30日

    7. 「電子申請 ひっそり廃止も:制度設計甘く高コストに」『日本経済新聞』2010年9月3日朝刊

    8. 「電子行政手続き 半分の3400種廃止」『日本経済新聞』2012年7月16日朝刊
情報公共論2013.04.16 はコメントを受け付けていません

経営技術特論2013.04.16

今回の授業内容
  1. 産業のあり方の歴史的変化--「家電製品・コンピュータ製品・工作機械などの20世紀における製品イノベーション」
    1. メカニクス製品
    2. メカトロニクス製品、エレクトロニクス製品
    3. メカソフトロニクス製品、ソフトロニクス製品
  2. ソフトウェアの種別–「アプリケーション・ソフトウェア」「OSソフトウェア」「開発言語ソフトウェア」
  3. ソース・コード vs オブジェクト・コード
  4. 情報の単位(bit,byte) — 情報通信速度やCPU性能の単位、情報記録媒体の単位
  5. 「CPUの性能」視点から見たゲーム専用機のイノベーション
    1. 8ビット・ゲーム機
    2. 16ビット・ゲーム機
    3. 32ビット・ゲーム機
    4. 64ビット・ゲーム機
  6. 「メディア」視点から見たゲーム専用機のイノベーション
    1. ロム・カセット<=>ファミコン、スーファミ
    2. CD<=>PS
    3. DVD<=>PS2
    4. ブルーレイ<=>PS
次回の授業内容
次回は、明治大学における外部データベース電子ジャーナルの利用、および、VPN接続サービスによる学外からの利用の案内をおこなう。

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