情報公共論課題 – 行政の電子化とオープン化

「近年、公共データの活用促進、すなわち「オープンデータ」の推進により、行政の透明性・信頼性の向上、国民参加・官民協働の推進、経済の活性化・行政の効率化が三位一体で進むことが期待されています。」とよく言われる。
 米国オバマ政権の「オープンガバメント」戦略などそうした取り組みの具体例を挙げながら、「公共データのオープン化とは何か?」「「公共データのオープン化にはどのような有用性があるのか?」をわかりやすく説明しなさい。
 
参考資料
  1. NTTデータ経営研究所・上瀬剛(2010)「情報のオープン化から見えてくるもの」
  2. 三菱総合研究所・村上文洋「公共データのオープン化は社会や企業にどのような影響をもたらすか- 動き出した日本のオープンデータ戦略」
  3. 経済産業省「オープンガバメントの推進」経済産業省ホーム > 情報政策ホーム > 情報政策の概要 > 電子政府の実現 >
  4. 総務省「オープンデータ戦略の推進」総務省トップ > 政策 > 情報通信(ICT政策) > ICT利活用の促進 >
  5. USA White House. “Open government Initiative”
  6. 英語版wikipedia “Open government”

「だれでもコピー自由 — フリーソフトウエア米から上陸(ビジネスTODAY)」『日経産業新聞』1989年09月14日
「強い米経済「伝道」が支える――コピー”ライト”より”レフト”に利益(地球回覧)」『日本経済新聞』1997年06月03日朝刊
「フリーソフト「教祖」に聞く――「ソフト特許は開発阻害」、利用者の声で改良自在に」『日経産業新聞』2003年05月19日

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「情報の非対称性問題」としてのsource codeの公開・非公開問題

OSS(Open Source Software)は、プログラムのソースコード(source code)を公開している。

しかしマイクロソフトなどの営利企業の製品は、proprietary softwareとしてプログラムのソースコード(source code)を公開していない。

問1 なぜマイクロソフトは営利企業としてソースコードの公開をしていないのか?その理由をわかりやすく説明しなさい。

営利企業における不正問題の頻発は、営利企業およびその組織に属する人々のモラルやコンプライアンス意識が低下していることを示している。フォルクスワーゲンによる不正プログラムは、プログラムのソースコードが公開されていないことによって生じた問題である。

問2 キーロガー問題やバックドア問題に対処する方策の一つは、プログラムのソースコードを公開にすることである。それはどういうことなのかをわかりやすく説明しなさい。

参考WEB記事
@IT情報マネジメント編集部(2003)「プロプライエタリ(proprietary)」『情報システム用語事典』
http://www.itmedia.co.jp/im/articles/0310/27/news002.html

国沢光宏(2015)「視点・論点 「フォルクスワーゲン不正問題と自動車の未来」」NHKオンライン>NHK解説委員室、2015年10月27日
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/400/230652.html

中島みなみ(2015)「VWの不正プログラム組み込み、国内でも確認求める…国交省」Response>自動車>社会>行政>記事、2015年9月25日
http://response.jp/article/2015/09/25/260673.html

「情報の非対称性問題」としてのsource codeの公開・非公開問題 はコメントを受け付けていません

「情報の非対称性」問題

情報公共論 2016.07.12復習用課題(1)
授業では下記資料を配布した。

  1. 朝日新聞社(2007)「偽ミンチ まぜれば分からぬ 安い肉集め利益追求」『朝日新聞』2007年6月20日朝刊
  2. 朝日新聞社(2007)「コロッケに偽ミンチ 北海道の業者が加ト吉に納入 生協が全国販売」『朝日新聞』2007年6月20日朝刊

上記資料で取り扱われている問題は、様々な経営学的視点から論じることができる。

一つは、2015年のフォルクスワーゲンのディーゼル自動車のエンジン制御プログラムの不正問題2016年の三菱自動車工業の燃費データ偽装問題2015年の東芝の不正会計問題などと同じく、企業コンプライアンス(regulatory compliance)視点から論じることができる。

もう一つは、「情報の非対称性」という視点から論じることができる。すなわち、「企業コンプライアンス」が問題となる現実の企業不正問題では、「情報の非対称性」問題が常にセットで問題となる。これはどういうことなのかをわかりやすく説明しなさい。

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OSS(オープンソース・ソフトウェア)/Free software(フリーソフトウェア)

Free software(フリーソフトウェア)
Free software(フリーソフトウェア)

2.Google, Facebook, DeNA, KDDIなどの私的企業がなぜOSSを重視するのか?利用するのか?
Organization of Computer Systems:§ 2: ISA, Machine Language, and Number Systems のFigure 2.1

Stephen Shankland (石橋啓一郎訳、2008)「グーグルのオープンソースは綱渡り–クリス・ディボナ氏インタビュー、2008-06-18 08:00:00
http://builder.japan.zdnet.com/etc/20375521/

OSSであれば、下記の条件を満たす必要がある。

(1) ソースコードの公開
  1. 学習・教育のための社会的基盤としてのソースコード公開 — 優れた先行のソースコードを読むことや模倣することによって、書道教育や絵画教育における「模写」、彫刻教育における「模刻」などと同じような教育的効果を得ることができる
  2. カスタマイズ・改良・バグ取りなどプログラムのproduct innovationのための社会的基盤としてのソースコード公開 — ソースコードの公開は下記に挙げた「ソースコードの修正の自由」を担保するための必要条件である
(2) ソースコードの修正の自由
  1. ソースコードの「カスタマイズ」的修正 — 公開されたソースコードを業務目的に合うように修正すること
  2. ソースコードの「改良」的修正 — キーボード入力だけでなくマウス入力や音声認識入力などにも対応できるという新機能を追加したり、より多様なデータ(固定長データだけでなく不定長データも同時に取り扱えるようにする、文字データだけでなく、音声データ、静止画像データ、動画データなども扱えるようにする)を統合的にうまく取り扱えるようにしたり、最終的な実行速度を高めたりなど、公開されたソースコードの修正によりプログラムソフトに新機能を付け加えたり、性能向上を実現したりすること
  3. ソースコードの「バグ取り」的修正 — ソースコードの公開により多くの眼によるバグ部分の特定が可能となり、ソースコード内のバグ(間違い)を修正すること
(3) ソースコードの配布・再配布の自由
 
OSS(オープンソース・ソフトウェア)/Free software(フリーソフトウェア) はコメントを受け付けていません

公共経営学特別講義A 2016.07.12

「情報財」(information goods)規定と「公共財」(public goods)規定の共通集合としての公共情報財
private goods, common goods, club goods,public goods
 
「情報財」(information goods)に関わるprivate vs public
 
公共的情報財を提供している私的事業体(private enterprise) vs 公的事業体(public enterprise)
動画提供サービス事業(電波によるテレビ放送サービス事業、ネットによるネット動画提供サービス事業)をめぐるイノベーション
 
イノベーション視点から見た公共的情報財
 
 
問題
 

明治大学図書館では、明治大学の学生および教職員であれば、誰でも無料で利用可能な「電子ジャーナル」サービスを下記WEBページで提供している。
http://www.lib.meiji.ac.jp/search/journal/index.html

同サービスは、学内であれば明治大学の12号館のPCや学内のMIND接続で、自宅など学外からであっても明治大学のVPN接続サービス経由で利用できる。

日経BP社が発行している『日経ビジネス』『日経TRENDY』『日経BPガバメントテクノロジー』などの雑誌記事も、pdfデータおよびテキストデータを無料で利用できる。

問1 明治大学図書館が提供している「電子ジャーナル」サービスは、授業で論じた情報財に関する公共経済学的分類のどのタイプに該当するのかをわかりやすく論じなさい。すなわち、private goods, common goods, club goods,public goodsという4類型の内のどれに該当するのかを理由をつけて説明しなさい。(3点)

問2 「電子ジャーナル」サービスを利用して下記雑誌記事を自分でダウンロードし、その記事で論じられているサムスンの主張を擁護するような議論を展開しなさい。なおその際には、模倣と創造に関する授業で論じたこと(例えば、和歌の技法「本歌取り」など)と関連させながら論じなさい。(10点)
丸尾弘志(2011)「サムスンの逆襲!狙いはアップルの「新規性」くずし」『日経デザイン』2011年10月号、pp.6-7

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2016.07.05情報公共論授業復習用任意提出任意提出課題(1)

下記WEB記事などを参考にしながら、「パテント・コモンズ(patent commons)とは何か?どのようなことを理由・契機としてパテント・コモンズ(patent commons)という考え方が提唱されたのか?パテント・コモンズ(patent commons)はなぜ必要なのか?営利企業にとってパテント・コモンズ(patent commons)はどのような役に立つのか?」を説明する500文字以上のレポートを作成しなさい。

Wearden, G.(2005)「OSDLが立ち上げた「パテント・コモンズ」について」CNET Japan インタビュー, 2005/12/01 15:29
http://japan.cnet.com/interview/20091988/

星野智彦(2005)「米IBMの特許公開の真意は何か――担当副社長を直撃」IT Pro by 日経コンピュータ、2005/03/07
http://itpro.nikkeibp.co.jp/free/NC/NEWS/20050307/157090/

ソニー(2008)「IBMらと共同でエコパテントコモンズを設立 −専用サイトで環境関連特許を無償提供」ソニー>CSRニュース、2008年1月15日付プレスリリース
http://www.sony.co.jp/SonyInfo/csr/news/20080115.html

創英(2008)「環境に貢献する特許を開放する試み~「エコ・パテントコモンズ」について」創英>知財トピックス(日本情報),2008-09-16

幡鎌博(2011)「特許制度の根本的問題とコモンズ的制度の可能性」知的財産マネジメント研究会、2011年1月
http://www.smips.jp/110115zentai.pdf

藤野仁三(2015)「トヨタの狙いをIBMのパテントコモンズ構想から考察する — 知財専門家が見る「トヨタ燃料電池車 特許開放」(2)」MONOist、2015年02月26日
http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1502/26/news006.html

トヨタは2015年1月6日に同社が保有する燃料電池自動車に関連特許約5680件の実施権を無償で利用可能にする、と発表した。トヨタが実施権を無償提供する特許は、燃料電池スタック関連が約1970件、高圧水素タンク関連が約290件、燃料電池システム制御が約3350件である。燃料電池自動車の製造や販売を行う場合、トヨタが燃料電池自動車の普及初期段階と想定している2020年末までは燃料電池システムに関する特許を無償で利用できる。また、水素ステーションに関する約70件の特許については、無償提供の期限は設けないとしている。
2016.07.05情報公共論授業復習用任意提出任意提出課題(1) はコメントを受け付けていません

経営技術論2016.06.30

[前回の授業内容]経営技術論2016.06.23
[次回の授業内容]経営技術論2016.07.07
 
[今回の授業内容]
1.ネットワークの有用性(usefulness)/便益(benefit)を規定しているものとしての、ネットワーク構成要素間リンク数(ネットワークの内的システム性に関するバンドワゴン効果)
FAXネットワークや電話ネットワークの有用性・便益を規定しているものとしての、communication link
相互連結していない競合FAXネットワーク間の競争優位性を規定しているものとしての、communication link数の違い —- 構成メンバー数がより多いネットワークの方がより高い競争優位性を持つ
便益の大きさは、構成メンバー数が大きくなると、構成メンバー数の2乗にほぼ比例するようになる
[考察してみよう]こうした「規模の経済」効果的側面とともに、「規模の不経済」的側面がある。そのことを電子メールサービスを例として説明しなさい。
 
2.「イノベーションの普及」問題的現象が生じるメカニズム —- 新機能and/or高性能性を実現した新世代製品システムの相対的競争優位性に起因するstart-up期における一定の普及、および、新世代製品システムと既存の旧世代製品システムとのバンドワゴン効果的効用に関わるシステム間競争における「critical mass突破」問題=「ニワトリと卵」問題
2種類の製品システム性 — 製品内部の諸構成要素(module/part/mateiral)の間のシステム性[製品の内部的システム性] vs 製品セグメントの異なる諸製品の間のシステム性[製品の外部的システム性]
製品の外部的システム性に関わる「補完財」的バンドワゴン効果視点から見た競争優位性 — product designの異質性に起因する「補完財」的バンドワゴン効果の相対的大きさの違い
製品の外部的システム性の具体例
FAX本体-データ伝送回線-法的規制・社会的規制・個別企業的規制(利用契約・ライセンス契約による規制)

自動車-エネルギー補給サービス-道路-法的規制(道路交通法・排ガス規制法ほか)・経済的インセンティブ(エコカー減税ほか)

product designが異なっても、補完財が共通する場合とそうではない場合での「イノベーションの普及」プロセスの違い

 
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情報公共論 2016.07.05

1.営利企業活動における知的財産権をめぐる「commonsの悲劇」問題、「anticommonsの悲劇」問題
a. 「commonsの悲劇」問題⇒知的財産権によるprivate goods化に対する正当化の根拠
ex. Windows系PCのためのWindows OSソフトという情報財は、Microsoftが持つ知的財産権によって囲い込まれており、他者が販売することはできない
 
b. 「anticommonsの悲劇」問題⇒知的財産権によるprivate goods化に対する批判の根拠
ex. フォントの書体作成には多額の費用がかかるが、フォントの書体に対する著作権は認められていない
 
2.「anticommonsの悲劇」問題を考察するための事例としてのGUI OS
a. AppleのMac OS vs MicrosoftのWindows OS
 
b. Apple vs Samsung
 
3. Patent commons vs Patent Troll
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経営技術論2016.06.23

[前回の授業内容]経営技術論2016.06.16
[次回の授業内容]経営技術論2016.06.30
 
[今回の授業内容]
授業で取り上げた事例
2.前回までの授業内容の再確認および拡張
(1) 社会的普及に成功しなかった新製品開発の典型的失敗例
  1. 超音速旅客機「コンコルド」
  2. 「海の新幹線」テクノスーパーライナー
  3. ソニーのDATウォークマン
[テクノスーパーライナー関連参考資料]
  1. 「超高速船「テクノスーパーライナー」進水 三井造船,空気浮上で抵抗を減らす-東京―小笠原間を16~17時間で結ぶ」『日経ものづくり』1991年11月11日号,p.32
  2. 「次世代高速船、テクノスーパーライナー 倍速進航「海の新幹線」」『日経ビジネス』1992年6月1日号,pp.58-62
  3. 「テクノスーパーライナー 時速50ノットの高速船、輸送コスト下げに課題」『日経ビジネス』1994年10月24日号,pp.62-64
  4. 吉岡陽「造船自動化-」『日経ビジネス』2001年12月17日号,pp.67-70
  5. 「製鉄業と造船業-テクノスーパーライナー-」『日経ビジネス』2005年01月号,pp.12-19
  6. 松村竹実(2004)「techno super liner(SF科学物語 ACT:11)」藤子・F・不二雄(2004)『四畳半SL旅行 — 藤子・F・不二雄短編集』小学館、pp.73-76所収
  7. 「次世代高速船に暗雲――小笠原―東京、就航大幅遅れ、燃料高で「赤字拡大」」『日本経済新聞朝刊』2005年8月19日
  8. 「東京―小笠原高速船計画、支援「非常に困難」――都、年20億円赤字で二の足」『日本経済新聞』2005年10月19日 地方経済面 東京
  9. 「小笠原海運の高速船TSL契約、保有会社「解除は無効」――東京地裁に仮処分申請」『日本経済新聞朝刊』2005年10月22日
  10. 「東京―小笠原間、高速船の運航断念――都、国交省との調整不調」『日本経済新聞』2005年11月9日 地方経済面 静岡
  11. 「東京―小笠原の高速船TSL就航不可能に――都など支援断念、建造費の法廷闘争焦点」『日本経済新聞朝刊』2005年11月10日
 
(2) seeds-oriented innovationに取り組む企業が存在する理由に関する考察
理由1
明確なMarket needsすなわちdemandが存在する新製品開発に対しては数多くの企業が熱心に取り組むため、多数のライバルの間での熾烈な競争によるレッドオーシャン的問題が発生することになる。
それとは逆に、Market needsすなわちdemandが存在するのかしないのかが不明確な新製品開発に取り組む場合には、ライバルが存在しないブルーオーシャン的市場環境を享受できる可能性がある。

理由2
特許権・著作権などといった知的財産権によって法的に保護されている技術的seedsを自社が有しているなど、競合他社が模倣困難なseedsを自社で持っている場合には、そうしたseedsを活かす新製品開発の追求が有益である。

3.discovery, invention, innovationの区別
(1) discoveryとinventionの区別
量子力学および半導体現象という科学的「発見」
半導体ダイオード、半導体トランジスタなどを多数集積したLSIという技術的「発明」
 
(2) inventionとinnovationの区別に関わる二つの論点
ポイント1 「発明そのもの」と「発明されたモノの社会的普及、市場的成功」とは区別すべきである
発明に成功しても、発明品が社会的に普及しないことは良くある — 超音速旅客機、テクノスーパーライナー、ソニーのDATウォークマン
 
ポイント2  個別的発明だけでは社会的に有用ではないことが良くある。複数の発明が組み合わさって初めて社会的に有用となる。
エジソンの時代には電球の発明だけでは電球の社会的普及=市場的成功はできなかった。エジソンは電球を「発明」するだけでなく、「火力発電所」を自分で造って電気を製造し、製造した電気を「送電線」によって送電し、電球による電気照明を利用する顧客に届ける必要があった。
 そのため「送電技術」「ソケット」「電気メーター」に関する「発明」もおこなうことで初めて電球を社会的に有意味なモノとすることができた。

[考察すべき問い]
  1. inventionとinnovationの区別の必要性を示す具体的事例として、自分が興味深いと思うモノを探し出しなさい。
  2. 電気照明に関する19世紀のイノベーションはseeds-orientedな側面とneeds-orientedな側面の二つを併せ持っている。seeds-orientedな側面とneeds-orientedな側面の二つを併せ持つイノベーションには他にどのような事例があるのかを説明しなさい。
 
4.FAX製品イノベーションの社会的普及
下記のグラフは下記のことを示している。
  1. G1 FAXよりは高性能なG2 FAXの方が、低性能なG1 FAXよりも普及度が高い。
  2. G2 FAXよりも高性能なG3 FAXの方が、低性能なG2 FAXよりも普及度が高い。
  3. G3 FAXよりも高性能なG4 FAXの方が、低性能なG3 FAXよりも普及度が低い。G4 FAXはG3 FAXよりも高性能であったにも関わらず、社会的普及には失敗した。
  4. G1 FAX,G2 FAX, G4 FAXは社会的普及の「広範化」に失敗し.G3 FAXのみが社会的に広く普及した。
 
グラフ1
FAX-installed_base_1966-1990
 
グラフ2
fig2
 
グラフ3
FAX-fig3a
 
G3 FAXだけが、G1 FAX, G2 FAX,G4 FAXと桁違いの社会的普及をおこなっているので、下記のグラフ4ように対数グラフにする方法もある
 
グラフ4
FAX-fig4
 
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課題>参考資料をもとにした新たな著作物の制作に関わる著作権問題

下記二つのWEBページを読み、以下の問いに答えなさい。
なお解答した問いの数、および、解答の内容に応じて点数をつけます。
 
読むべきWEBページ
 
問1 「著作権法違反に問われないように番組制作をするためには、参考資料の利用に際してどのようなことに気をつけるべきなのか?」に関して、柿沼太一弁護士はどのように主張されているのかをまとめなさい。
 
問2 「参考資料をもとに番組を制作する」ことと、「参考資料をもとに大学での課題レポートを作成する」ことの間には一定の共通性がある。そうした共通性を踏まえて、「著作権法違反に問われないように大学での課題レポートを作成するためには、参考資料の利用に際してどのようなことに気をつけるべきなのか?」を論じなさい。
解答に際しては、「番組制作」から「課題レポート作成」に変えることで問1での自らの解答を再利用してまったく構わない。なおこれも、一種の翻案である。
 
問3 大河ドラマ『武蔵 MUSASHI』」事件(第1審 :東京地裁平成16年12月24日判決,第2審:知財 高裁平成17年6月14日判決)で原告が敗訴した。「裁判所は、どのようなロジックで原告敗訴の判決を下したのか?」ということに関して、柿沼太一弁護士がどのように述べているのかを要約しなさい。
[注]大河ドラマ『武蔵 MUSASHI』」事件とは、NHKが2003年に放送した大河ドラマ「武蔵 MUSASHI」の第1回放送番組のストーリーや場面が、故黒沢明監督の映画「七人の侍」のそれと酷似しているとして、黒沢監督の長男らがNHKと脚本家を相手取って著作権侵害を訴えた訴訟のことである。
 
参考WEBページ
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経営技術論2016.06.16

[前回の授業内容]経営技術論2016.06.09
[次回の授業内容]経営技術論2016.06.23
 
[今回の授業内容]
授業で取り上げた事例
1.就職活動において企業が学生に「求めているモノ」 — needs(狭義)と、その認識に関する社会的ズレ
企業の真のneeds(狭義)は何か?
学生は企業の真のneeds(狭義)を理解・認識しているのか?
企業の採用担当者は企業の真のneeds(狭義)を理解・認識しているのか?
企業は企業の真のneeds(狭義)に対する充足をどのような形で実現しようとしているのか?
学生の成績の内実および学生の真の能力に関する、学生と企業の間での情報の非対称性のもとで、どのような選考・採用を行うのが合理的なのか?
 
学生はあまり認識・意識していないが、日本経済団体連合会(2016)「2015 年度 新卒採用に関するアンケート調査結果の概要」のp.6によれば、「人手不足」=「売り手市場」傾向ということもあり、「選考にあたって学業成績を重視した企業の割合が減少」とはいえ、下記のように、成績を重視しない企業よりも重視する企業の方が相対的に多い。
2015-nk
 
また佐藤恵子(2015)「就活生の素顔「成績」で迫る — 企業、面接対策防止へ活用、「成績表の信頼性、前提」」『朝日新聞』2015年9月4日朝刊では、「合否のカギを握るのは成績表――。大企業を中心に8月から解禁された採用面接で、大学の成績表を使う例が増えている。エントリーシート(ES)に沿った面接では、学生が問答を想定しており、本当の人物像が見えにくい。あまり話題にならない勉強への取り組みをとっかかりに、学生の「素」に迫る作戦だ。」とされている。
同趣旨の記述は、山崎元(2013)「大手企業が続々と方針転換、採用が再び成績重視に?」Diamond Online, 2013年12月11日 「採用、再び成績重視、三菱商事や富士通、客観評価容易に。」『日本経済新聞』2013年12月8日朝刊1面、「就活に成績求める動き 三菱商事、帝人、富士通など約30社」『週刊アエラ』2014年01月20日号などにもある。
さらにまた、日本経済団体連合会(2015)『「採用選考に関する指針」の手引き』の3.選考活動について (3)選考活動における留意点」2015年12月7日、日本経済団体連合会WEBトップ>Policy(提言・報告書)>労働政策、労使関係、人事賃金>における「(選考活動において)大学等の履修履歴(成績証明書等)について一層の活用を検討することが望ましい。」との記述がある。

 

こうした社会的動きにも関わらず、多くの学生は大学での履修履歴や成績をさほど気にしていない。またそうしたことを面接等で特に問わない企業も多い。

参考WEBページ
 

[考察してみよう]
こうした現象を、客観的存在としてのneeds(狭義)、needs(狭義)に関する認識・意識、wants、demandという視点から論じるとどのようになるかを考察してみよう。

 
 
2.前回までの授業内容の再確認および拡張
(1) seeds-oriented vs needs-oriented
 
3.「個人」的視点からの分析 vs 「社会」的視点からの分析
「個人」的 「社会」的
needs(狭義) 「個人」的needs(狭義) Social needs(狭義)
wants 「個人」的wants Social wants
demand 「個人」的demand Market needs(Social demand)

「個人」的needs(狭義)に基づく新製品開発を、needs-orientedと呼ぶことは適切か?
「個人」的demandとMarket needs(Social demand)との関連はどう考えるべきなのか?
「個人」の多様性、すなわち、「個人」的needs(狭義)、「個人」的wants、「個人」的demandのあり方の多様性と、社会全体との関連はどう考えるべきなのか?

 
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情報公共論 2016.06.21

[次回の授業内容]情報公共論2016.06.28
 
1.著作権法における著作権規定
文化庁「著作者の権利」
思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」 としての著作物
 ↓
データは著作物ではない
著作権の対象は、アイデアではなく、表現である
originality(独創性、独りで創るということ) — creativityとの差異に関する理解
 
2.コピペ vs 引用および二次利用
originalityを持った著作物における、先行著作物の「引用」および「二次利用」(模倣的創造)

 
 
3.「模倣」から「創造」へ(From Copy to Creation)— 「守」「破」「離」論
 
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エクセル用課題 — FAX製品イノベーションの社会的普及

FAX製品イノベーションの社会的普及
下記のグラフは下記のことを示している。
  1. G1 FAXよりは高性能なG2 FAXの方が、低性能なG1 FAXよりも普及度が高い。
  2. G2 FAXよりも高性能なG3 FAXの方が、低性能なG2 FAXよりも普及度が高い。
  3. G3 FAXよりも高性能なG4 FAXの方が、低性能なG3 FAXよりも普及度が低い。G4 FAXはG3 FAXよりも高性能であったにも関わらず、社会的普及には失敗した。
  4. G1 FAX,G2 FAX, G4 FAXは社会的普及の「広範化」に失敗し.G3 FAXのみが社会的に広く普及した。
 
グラフ1
FAX-installed_base_1966-1990
 
グラフ2
fig2
 
グラフ3 — 「軸の書式設定」ダイアログで、「軸のオプション-最小値-固定(F)」 -10,「軸のオプション-補助目盛間隔-固定(E)」 5、「軸ラベル(A)」=「下端/左端」に、「横軸との交点-軸の値(E)」 0、というようにそれぞれ設定したグラフ
FAX-fig3a
 
G3 FAXだけが、G1 FAX, G2 FAX,G4 FAXと桁違いの社会的普及をおこなっているので、下記のグラフ4ように対数グラフにする方法もある
 
グラフ4 —「軸の書式設定」ダイアログで、「対数目盛を表示する」にチェックを入れ、その項目の右欄の基数(B)を10に設定した後、「軸のオプション-最小値-固定(F)」 0.1,「軸のオプション-最大値-固定(I)」 1000,「軸のオプション-目盛間隔-固定(X)」 10、「軸ラベル(A)」=「下端/左端」に、「横軸との交点-軸の値(E)」 0.1、というようにそれぞれ設定したグラフ
FAX-fig4
 
エクセル用課題 — FAX製品イノベーションの社会的普及 はコメントを受け付けていません

情報公共論2016.06.14(授業用)

[前回の授業内容]情報公共論2016.06.07
[次回の授業内容]情報公共論2016.06.21
 
1.「情報公共論」的視点の再確認
視点1 「個人的利益(のみ)を追求すること」「特定個人(のみ)に有益であること」(private,「私」的利益の追求) vs 「社会全体の利益を追求すること」「多くの人々に有益であること」(public,「公共」的利益の追求)
 
視点2 free riderの利用・存在を排除するprivate goods(私的財、商品) vs free riderの利用・存在を積極的に認めるpublic goods(公共財、公共的サービス)
 
視点3 知的財産権(特許権、著作権など)に関する法的保護によるfree riderの利用・存在の排除 vs 知的財産権(特許権、著作権など)に関する法的保護期間の有限性によるfree riderの利用・存在の積極的承認
1) 著作権使用料の国際赤字の増大・恒常化による、日本の国益侵害
2) 著作権処理コストの増大による「死蔵」作品の増加
3) 著作権の法的保護期間の増大による、2次創作活動の停滞

大堀達也-2013_12_10-週刊エコノミストp91-fig
[出典]大堀達也(2013)「著作権延長は日本の衰退招く 「ミッキーマウス法」が対米赤字3000億円を拡大させる」『週刊 エコノミスト』〔特集〕著作権の文化経済学, 2013年12月10日号,p.92

 
2.情報分野におけるイノベーション推進におけるpublic vs private問題
著作権法によるprivateな利益の追求 vs 著作権法によるpublicな利益の追求
著作権法によるイノベーションの社会的阻害 vs 著作権法によるイノベーションの社会的推進
 
3.イノベーション vs 著作権
  1. 古川亨(2007)「元米マイクロソフト副社長・古川亨 著作権70年は長すぎ」『日本経済新聞』2007年07月02日朝刊
  2. 中山信弘(2009)「著作権は開発の壁でいいのか — 損せぬ人にもうけなし」
  3. 堀越(2010)「ネット時代の規制を考える3冊 — 「時代にそぐわない著作権法は変えるべき」サイバー法の第一人者、レッシグ教授の著作」『日経コミュニケーション』2010年7月号,p.70
 
4.TPP対応による著作権の法的保護期間の延長問題 — 著作権法によるイノベーションの社会的阻害?
  1. 公益財団法人 著作権情報センター「著作権の保護期間はどれだけ?」
  2. 横山三加子(2015)「著作権70年 2次創作・利用に懸念 政府、払拭に努め」『毎日新聞』2015年12月9日 東京朝刊
  3. 大堀達也(2013)「著作権延長は日本の衰退招く 「ミッキーマウス法」が対米赤字3000億円を拡大させる」『週刊 エコノミスト』〔特集〕著作権の文化経済学, 2013年12月10日号,pp.90-92[配布資料]
  4. 香月啓佑(2013)「著作権延長は日本の衰退招く ウィキリークスが暴露 延長派と反対派が拮抗」『週刊 エコノミスト』〔特集〕著作権の文化経済学, 2013年12月10日号,p.93[配布資料]
  5. 「著作権の保護期間延長で「青空文庫」に余波 山本周五郎や三島由紀夫、無料で読めるのは当分先に」J-CASTニュース、2015/10/ 6 19:48
  6. 「TPP合意対応、保護期間延長や非親告罪含む著作権制度見直し案まとまる」
 
5.新結合としてのイノベーション
 
6.自由な新結合を妨げる法的障害としての著作権
  1. 野口祐子(2011)「著作権法はイノベーションの邪魔をする?」『日経アソシエ』2011年06月21日号,pp.62-63
 
情報公共論2016.06.14(授業用) はコメントを受け付けていません

情報公共論 2016.06.14(授業後、公開版)

[前回の授業内容]情報公共論2016.06.07
[次回の授業内容]情報公共論2016.06.21
 
1.「情報公共論」的視点の再確認
視点1 「個人的利益(のみ)を追求すること」「特定個人(のみ)に有益であること」(private,「私」的利益の追求) vs 「社会全体の利益を追求すること」「多くの人々に有益であること」(public,「公共」的利益の追求)
抽象的には、「公共」的利益の追求と「私」的利益の追求は対立概念である。現実にも「公共」的利益の追求と「私」的利益の追求の対立はある。
とはいえ、「公共」的利益の追求と「私」的利益の追求が一般的に両立しないわけではない。個人的動機として「私」的利益の追求が主であったとしても、「広く社会全体に貢献する」こともある。「他の科学者に先駆けて自分が科学的発見をすることでノーベル賞を獲得するなど自らの社会的地位を高めたい」「他の誰もまだ発明していない製品を発明してイノベーションを引き起こすことで多額の特許料・特許収入を獲得したい」という「私」的利益の追求(個人的動機)は、新しい科学的発見や技術的発明をもたらし社会を発展させるという「公共」的利益の追求(公共的動機)と共存していることが多い。
それゆえ重要なことは、「公共」的利益の追求と「私」的利益の追求の両立をどのように図るのかということである。
 
視点2 free riderの利用・存在を排除するprivate goods(私的財、商品) vs free riderの利用・存在を積極的に認めるpublic goods(公共財、公共的サービス)
営利企業である民間テレビ局は、スポンサー企業からより多くのCM放送(private goods)収入を獲得するために、すなわち、自らの私的利益追求のために、より多くの視聴者に対してより多くの「無料のテレビ放送番組」(public goods)を見てもらうことで「より高い総視聴率」(=より多くのfree rider)を獲得しようと躍起になっている。
営利企業である民間テレビ局は、放送事業を通じて、「無料のテレビ放送番組」というpublic goodsの提供と、「有料のCM放送」というprivate goodsの提供を同時に行っている。民間テレビ局はそのようにすることで、視点1におけるpublicとprivateの両立を図っている。その意味でNHKとは異なる意味においてではあるが、民間テレビ局も公共的存在である。
 
視点3 知的財産権(特許権、著作権など)に関する法的保護によるfree riderの利用・存在の排除 vs 知的財産権(特許権、著作権など)に関する法的保護期間の有限性によるfree riderの利用・存在の積極的承認
著作権の法的保護期間の延長による「私」的利益の追求 vs 著作権の法的保護期間の短縮による「公共」的利益の追求
TPP対応で日本が保護期間を死後70年に延長した場合には、著作物がpublic domainとなるまでの期間が長くなるため、下記のようなことが問題となる。
1) 著作権使用料の国際赤字の増大・恒常化による、日本の国益侵害
「日本は知財分野のうち特許を除く著作権ビジネスで6000億円超の貿易赤字を抱える。このうち対米赤字は約3000億円に上る。日本は古い作品による国外収入はほとんどない。逆に、古い映画や音楽で稼いでいるのが米国だ。このため、延長となれば、日本は赤字が固定化するだけでなく、「年間100億円程度支払いが増えていく」」大堀達也(2013)p.91
2) 著作権処理コストの増大による「死蔵」作品の増加
著作権保護期間にある著作物に関して、著作権者が死亡した場合には著作権を承継した遺族・相続人を見つけて全員の許諾を得る必要があるが、著作者の死亡から時間が経てば経つほど相続人の数が増加し、関係者全員とのコンタクトが取れないとか、たった一人の関係者の反対で利用ができなくなる可能性が高くなる。関係者全員の許諾を取るための著作権処理コストの増大は、死蔵作品の増加につながり、文化活動の社会的発展の阻害要因となる。
3) 著作権の法的保護期間の増大による、2次創作活動の停滞
「実は、原作が著作権切れとなったことで、ヒットした2次創作は意外に多い(表)。劇作家の平田オリザ氏は、「2次創作により原作そのものにも光が当たり、新たな発見が生まれる」と言う。実際、平田氏は最近、この問題に直面した。同氏は来年にもフランスの哲学者で実存主義の巨人サルトルの著作「出口なし」を基にした演劇を上演する予定で公演の準備を進めていた。サルトルの著作権はいまだ切れていないが、これまで他の劇作家が遺族から許諾を得られなかったという話は聞いていなかったので、権利処理については楽観していた。ところが、遺族からは「上演を認めない」という連絡が来た。
原因は平田氏の革新的な試みにあった。というのも、今度の演劇の役者は、人間ではなくロボットだからだ。平田氏が主宰する劇団「青年団」は大阪大学ロボット演劇プロジェクトに参加し、「アンドロイドによる演劇」という新境地を作ろうとしていたが、その先進性が足かせとなって遺族の許可が下りなかった。遺族が許可しない限り、上演できるのはサルトルの著作権が消滅する2030年。もし、死後70に延長されれば2050年に上演可能になるが、「そのころには僕は死んでいる」(平田氏)。」大堀達也(2013)p.91
大堀達也-2013_12_10-週刊エコノミストp91-fig
[出典]大堀達也(2013)「著作権延長は日本の衰退招く 「ミッキーマウス法」が対米赤字3000億円を拡大させる」『週刊 エコノミスト』〔特集〕著作権の文化経済学, 2013年12月10日号,p.92
 
2. 情報分野でのイノベーション推進におけるpublic vs private問題
  1. 著作権法によるprivateな利益の追求 vs 著作権法によるpublicな利益の追求
  2. 著作権法によるイノベーションの社会的阻害 vs 著作権法によるイノベーションの社会的推進
 
3. イノベーション vs 著作権
  1. 古川亨(2007)「元米マイクロソフト副社長・古川亨 著作権70年は長すぎ」『日本経済新聞』2007年07月02日朝刊
  2. 中山信弘(2009)「著作権は開発の壁でいいのか — 損せぬ人にもうけなし」
  3. 堀越(2010)「ネット時代の規制を考える3冊 — 「時代にそぐわない著作権法は変えるべき」サイバー法の第一人者、レッシグ教授の著作」『日経コミュニケーション』2010年7月号,p.70
 
4. TPP対応による著作権の法的保護期間の延長問題
  1. 公益財団法人 著作権情報センター「著作権の保護期間はどれだけ?」
  2. 横山三加子(2015)「著作権70年 2次創作・利用に懸念 政府、払拭に努め」『毎日新聞』2015年12月9日 東京朝刊
  3. 大堀達也(2013)「著作権延長は日本の衰退招く 「ミッキーマウス法」が対米赤字3000億円を拡大させる」『週刊 エコノミスト』〔特集〕著作権の文化経済学, 2013年12月10日号,pp.90-92[配布資料]
  4. 香月啓佑(2013)「著作権延長は日本の衰退招く ウィキリークスが暴露 延長派と反対派が拮抗」『週刊 エコノミスト』〔特集〕著作権の文化経済学, 2013年12月10日号,p.93[配布資料]
  5. 「著作権の保護期間延長で「青空文庫」に余波 山本周五郎や三島由紀夫、無料で読めるのは当分先に」J-CASTニュース、2015/10/ 6 19:48
  6. 「TPP合意対応、保護期間延長や非親告罪含む著作権制度見直し案まとまる」
 
5. 新結合としてのイノベーション
 
6. 自由な新結合を妨げる法的障害としての著作権
  1. 野口祐子(2011)「著作権法はイノベーションの邪魔をする?」『日経アソシエ』2011年06月21日号,pp.62-63
 
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経営技術論 2016.06.09

[今回のpdfデータおよび配布物]
 
[今回の授業内容]
1.コトラー的図式におけるneeds概念に対する、経営技術論的視点からの検討
(1) 意識されたneeds(狭義) vs 意識されていないneeds(狭義)
コトラーは、needs(狭義)に関して有意識性/有認識性の存在を要件としている。すなわち、「欠乏状態に関する意識・認識」がコトラーにおけるneeds(狭義)である。それゆえコトラー的図式では、needs(狭義)は「新規に創出可能なもの」(広告などマーケティング作業によって創り出すもの)ではなく、「前もって既に存在するもの」(マーケティング作業の前提的対象)である。
しかしこれはstaticな見方である。こうしたコトラー的図式では、イノベーションのダイナミズムをうまく説明することができない。
未だ存在していない市場を新規に創出するようなradical innovationでは、「意識されていないneeds(狭義)」に対応したproduct developmentが必要となるだけでなく、「意識されていないneeds(狭義)」の意識化が必要となる。
 
(2) 特定の個人のみが明瞭に意識・認識しているだけで、社会的には意識・認識されてはいないneeds(狭義の個人的needs)
ソニーのカセット・ウォークマン開発の動機としての、個人的needs
 
「若いエンジニアの遊び心」から生まれたものとしての、初代カセット・ウォークマン — 黒木靖夫(1987)『ウォークマン流企画術』p.41
もともと商品として売り出すすとぃう明確な意識で企画されたものではない、というのが真相です。それは、若いエンジニアの遊び心から生まれたもので、テープレコーダー事業部の商品企画のラインナップにはなかた商品でした。いわば筋書きになかったわけでだからこそウォークマン・ス トーリーは面白いのです。
その若いエンジニアは「ブレスマン」という小型の力セット・レコーダーを改造して、自分専用のカセットプレーヤーにして楽しんでいました。どんな改造を施したかという とまずスピーカーを取り去ってステレオの基板を入れ、再生ヘッドをステレオに変え、イヤホンジャックを大きくして二つ作り、そこにヘッドフォンの標準プラグを左右二つに分けたものを差し込んだのです。二つの標準プラグは、差し違えて左右の位相が逆になるのを防ぐためか、接着剤で固定してあったのを覚えています。
 
(3) 社会的に意識・認識されてはいないだけでなく、それまで誰も明瞭には意識・認識してはいなかったneeds(未発見のneeds)
iPhone3G発売時における、NHKも含めたTVにおける数多くの解説番組による、スマホの有用性に関する意識・認識化
ドローンに関する解説記事(参照:「特集ドローンの時代」『日本語版Newsweek』2015年06月16日

雑誌やWEBにおけるSACD関連の解説記事
 
雑誌やWEBにおけるハイレゾ音源関連の解説記事
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保護中: 「特集ドローンの時代」『日本語版Newsweek』2015年06月16日

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経営技術論 2016.06.02

[今回のpdfデータおよび配布物]
授業メモ
 
配布した新聞記事
1.「原発無人ロボ、東電「いらぬ」 JCO事故後、30億円で開発→結局廃棄 」『朝日新聞』2011年05月14日夕刊
2.「業界慢心、ロボ頓挫 「原発で事故起きる?」 原子力災害用の遠隔操作ロボット 」『朝日新聞』2011年05月14日夕刊
3.「原発特殊任務、軍事ロボ出番 米ハイテク3社、支援へ動き 福島原発事故 」『朝日新聞』2011年04月01日朝刊
 
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教養演習 2016.06.07

Product design視点から見た製品イノベーションの基本的方向性
1) 旧世代製品にない新機能を、新世代製品に持たせる(新機能追加)
2) 旧世代製品の性能よりも、新世代製品の性能を向上させる(高性能化)
 
「Product design」視点から見た製品イノベーションの具体的様相
現実の製品イノベーションにおいて、上記の基本的方向性がすべての面で常に満たされているわけではないが、重要な機能に関してはそうした視点から考察することができる。
 
新世代製品と旧世代製品の優劣に関する様々な視点からの考察
新世代製品と旧世代製品の間の製品間競争のあり方、すなわち、新世代製品と旧世代製品の優劣に関しては様々な視点から考察することができる。

現実の製品イノベーションの社会的普及の成功・失敗を規定している要因を製品視点から分析する際には、そうした多面的視点からの考察が有用である。
例えば、下記のような問いの視点から考察することが有用である。

問1 新世代製品はどのような意味において旧世代製品よりも機能面において優れているのか?あるいは、劣っているのか?
問2 新世代製品はどのような意味において旧世代製品よりも性能面において優れているのか?あるいは、劣っているのか?
問3 新世代製品がその本来的な機能・性能を発揮するのに必要な補完財の社会的普及度は、旧世代製品がその本来的な機能・性能を発揮するのに必要な補完財の社会的普及度と比べて一般的には劣っている。補完財製品の普及度向上に関する戦略的対応としてどのようなことが想定されているのか?
 
「製品のシステム性」視点から見た製品イノベーション
 
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情報公共論 2016.06.07

[前回の授業内容]情報公共論2016.05.31
[次回の授業内容]情報公共論2016.06.14
 
イノベーション視点から見た公共的情報財
 
1.イノベーションのseedsとしての公共的情報財
a.新しいproductを生み出すためのresourceとしての先行の公共的情報財
Public domainの著作物[書籍, 論文、softwareなど],Open Contents, Open Source Software
 
b.新しいproductを普及させるための補完財としての公共的情報財
  1. カラーテレビという製品イノベーションの社会的普及に貢献したNHKのカラー放送TV番組(ハードウェアとしてのTVに対する必須補完財としてのソフトウェアとしてのTV番組)
  2. 4Kテレビという製品イノベーションの社会的普及への貢献が期待されているNHKの4K放送TV番組(ハードウェアとしての4K TVに対する必須補完財としてのソフトウェアとしての4K放送TV番組)
 
c.新しいproductを生み出すためのTechnologyという新規の公共的情報財の開発
 
2. テレビ製品のイノベーション
 
3.テレビ製品のイノベーションに対するNHKの貢献
テレビ製品のイノベーションに関して、広告収入に依存している民放では果たせない役割をNHKは果たしている。
 
[関連参考情報]
 
[理解しておこう]
ポイント1 カラー放送開始は1960年であったが、カラーTVの世帯普及率は1966年でも0.3%と低かった。
TV1957-1976
日本のカラー放送が開始されたのは1960年9月10日である。これは、アメリカ、キューバに次いで世界で3番目であった。しかしながらカラーTVの世帯普及率は放送開始から6年後の1966年でも0.3%と低かった。
白黒TVからカラーTVへの製品イノベーションの社会的普及のためには、カラーTV放送番組が必要不可欠である。しかし白黒TVが一般的でカラーTVの社会的普及率がそのように低い1960年代の時期(特にその前半期)には、カラーTVの視聴者が少ないためカラーTV放送番組を制作してカラーTV用CMを流すことのメリットは民放にはまったくなかった。カラーTV放送を行うためには、撮影装置・放送設備のカラー化対応など多額の投資が必要であるが、ほとんどの家庭が白黒TVしかない時期にはカラーTV放送によるCM収入増は期待できない。
[関連参考情報]

 
ポイント2 4Kテレビの215年の世帯普及率は1.9%。また、地上波デジタル放送番組の一般的解像度は1440×1080(約156万画素)である。4K(3840×2160、約830万画素)どころか、2K(1920×1080、約200万画素)のフルハイビジョン放送も一般的ではない。」
2015年の日本国内における薄型TVの出荷台数は512万台であるが、その内で4K対応TVは12.3%の63万台である。4KTVの年間出荷比率は以前よりおかなり増大はしたが、4Kテレビの世帯普及率は、2015年末で約1.9%度である。このように4Kテレビの世帯普及率がまだ低いため「民放の中には設備投資や制作コストがかかる4K放送の本格参入に二の足を踏む局もある。」と言われている。
[関連参考情報]
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原発ロボに関する課題

「原発事故に対応する遠隔操作ロボット」(原子力災害用無人ロボット、以下では原発ロボと略称)に関しても、コトラー的なneeds(狭義), wants, demandという視点から考察することができる。

下記資料を基にして、そのことに関する下記の問いに答えなさい。

1.「原発無人ロボ、東電「いらぬ」 JCO事故後、30億円で開発→結局廃棄 」『朝日新聞』2011年05月14日夕刊
2.「業界慢心、ロボ頓挫 「原発で事故起きる?」 原子力災害用の遠隔操作ロボット 」『朝日新聞』2011年05月14日夕刊
3.「原発特殊任務、軍事ロボ出番 米ハイテク3社、支援へ動き 福島原発事故 」『朝日新聞』2011年04月01日朝刊
4.「原発ロボ、なぜ外国製ばかり 日本製は1台のみ」『朝日新聞』2011年06月25日朝刊、週末be(be report)

(注>上記の記事は、明治大学図書館の外部データベースサービスの「聞蔵II ビジュアル(朝日新聞)」で、そのテキストおよびpdfをダウンロードできる。)

問1 原発ロボに対するコトラー的な意味におけるneedsの有無について論じなさい。すなわち、原発ロボがコトラー的な意味におけるneeds(狭義)を持つと思う人は下記の(1)の問いに、コトラー的な意味におけるneeds(狭義)が持たないと思う人は(2)の問いに答えなさい。

(1) コトラー的な意味におけるneeds(狭義)が有るproductであることは、どのような点に示されているのかを具体的に論じなさい。
(2) コトラー的な意味におけるneeds(狭義)が無いproductであることは、どのような点に示されているのかを具体的に論じなさい。

問2 問1で原発ロボがコトラー的な意味におけるneeds(狭義)を持つと回答した人は下記の(1)の問いに、コトラー的な意味におけるneeds(狭義)を持たないと回答した人は(2)の問いに答えなさい。
(1)  原発ロボがコトラー的な意味におけるneeds(狭義)を持ったproductであったにも関わらず、東京電力がそのproductに対するdemandを持たなかった(すなわち、原発ロボを買わなかった)理由は何かを考察しなさい。また原発ロボを買わなかった東京電力の決断は社会的に妥当なものであったのかどうかを論じなさい。

(2) 原発ロボがコトラー的な意味におけるneeds(狭義)を持たないproductであるにも関わらず、通産省が1999年度の補正予算で原発ロボの開発費として30億円を日立製作所、三菱重工業、東芝などの4社に支出した決断は社会的に妥当なものであったのかどうかを論じなさい。

問3 下記資料を基に、原発ロボの研究開発がどのように進められてきたのかを分析しなさい。

「国産ロボット解体の訳 110億円投じて開発したのに」『週刊アエラ』2011年05月02日号
SanD!!!「災害用ロボットの歴史」

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受信料制度に関するNHKの見解

 
free riderを排除するシステムへの移行に賛成の意見
上記文書には、NHKでもWOWOWなどと同じくB-CASカードを利用したfree rider排除システムを採用し、受信料未払いの世帯にはNHK放送を視聴させないようにすべきだという趣旨の意見が下記のようになされている。
「CS同様自己申告による有料放送にすべきです。」「BSだけでなくNHK視聴料金を払わない人が非常に多過ぎるので、スクランブル方式にして完全に視聴出来ないようにして欲しい。」、「誰が金なんて払うんでしょうか。さっさと金払わないと放送を受信できない方式にしたらどうですか。」、「受益者負担の原則からも、視聴したい方からは100%徴収すべきですし、衛星放送を視聴したくない方からは、受信機を所有するだけで徴収すべきではありません。」、「いっその事、地上波もBSも全て受信料の支払が確認できなければ、映像そのものを視聴できなくしてはどうか。」
 
スクランブル化に対するNHKの主張
「なぜ、スクランブルを導入しないのか」という文書において、NHKは下記のように主張している。
 
NHKは公共放送の財源として受信料がふさわしいと考えています。「スクランブル」は限られた人だけが情報を入手できる仕組みであり、一見合理的に見えますが、全国どこでも放送を分け隔てなく視聴できるようにする、という公共放送の理念と矛盾し、問題があると考えています。「スクランブル」では、どうしても「よく見られる」番組に偏り、内容が画一化していく懸念があります。視聴者のみなさまにとって、番組視聴の選択肢が狭まり、健全な民主主義社会の発展のうえでも問題があると考えています。
 
上記のような「公共放送」に関するNHKの見解に対しては、下記のような反論が可能である。
 
1.スクランブル放送が「全国どこでも放送を分け隔てなく視聴できるようにする、という公共放送の理念と矛盾」するという主張は、無料でも多数の衛星放送やネット動画を視聴できる21世紀の今日では適切ではない。
NHKのこうした主張は、「公共の福祉のために、あまねく日本全国において受信できるように豊かで、かつ、良い放送番組」を放送することをNHKの使命とする放送法第15条の記述に基づくものであるが、これは放送法制定当時の1940年代後半の状況においてのみ有意味な規定である。
21世紀の今日では、「あまねく日本全国において」民放が少なくとも1局以上は視聴可能であるだけでなく、BS放送やCS放送が全国各地で視聴可能である。
BS放送やCS放送といった衛星放送は、「一つの送信点から一波で全国をカバーすることにより経済的、効率的に全国放送を実現することが可能であり、離島等における難視聴解消にも適している」[総務省 情報流通行政局 衛星・地域放送課(2016)「衛星放送の現状〔平成28年度第1四半期版〕」2016年4月1日]技術的手段である。
また21世紀の現在では、インターネットによって動画が配信可能である。サイバーエージェントとテレビ朝日が合弁で設立したインターネットテレビ局「AbemaTV」は、「無料でテレビ番組が見れる」ことを売り物にしている。それだけでなく「AbemaTV」は、自社1局で22チャンネルを持っている。その中には、24時間ニュースを報道するチャンネルもある。youtubeでは極めて多数の動画を無料で見ることができる。
 またNTTドコモとエイベックスの共同事業である動画見放題サービス「dtv」の会員数、2016年3月27日には会員数500万人を突破した。NHKも会員限定の有料サービスとして、NHKオンデマンドという動画配信サービスをおこなっている。
、このように衛星放送やインターネットといった新しい技術的手段により、「あまねく日本全国において」多数の動画コンテンツを視聴可能となっている。
 
2.教養・教育を目的とした放送番組は、民放も提供している。また放送に限定しなければ、教養・教育に有用な動画は、youtubeなどインターネットでも数多く提供されている。NHKだけが、教養・教育を目的とした無料の動画コンテンツを制作・配信しているわけではない。
 それどころか、NHKオンデマンドにおける動画配信は有料会員限定のサービスである。ネットの世界で教養・教育系動画をpure public goodsとして提供しているのは、youtubeなどの営利企業や、creative commonsなどの情報系非営利組織である。
 
3.「正確かつ広範囲のニュース・報道番組」を提供するということは、NHKだけでなく、民放も行っている。民放のニュース・報道番組を、不正確、あるいは、狭い範囲に限定されているするのは不適切である。
 実際、営利企業の新聞社の報道は、「営利」組織であるため不正確、あるいは、狭い範囲に限定されているとは言えない。しかも編集権の独立は、NHKと同等かそれ以上と考えられる。
 
4.NHKは上記文書やNHK「公共放送とは何か」という文書における「営利を目的とせず、国家の統制からも自立して、公共の福祉のために行う放送」という公共放送の規定などに見られるように、「民放は営利を目的としているから公共放送ではない」という趣旨の主張を展開している。
 しかし、free riderを排除しないテレビ放送をおこなっている民放も、NHKと同じく公共経済学的な意味でのpure public goodsを視聴者に対して提供している。視聴者に対してpure public goodsを提供しているのは、NHKだけではない。
 
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情報公共論 2016.05.31

[前回の授業内容]情報公共論2016.05.24
[次回の授業内容]情報公共論2016.06.07
 
同種のgoodsを生産・提供している公営企業・NPOと営利企業の競合問題
非営利組織(公営企業・NPOなど営利を追求していない組織という広義の意味での非営利組織)と営利企業が、同種のgoodsを生産・提供している場合がある。こうした場合には、次のようなことが問題にされる場合がある。
同種のgoodsを生産・提供している営利企業が存在しているにも関わらず、非営利組織がそうしたgoodsを生産・提供することは「非営利組織による民への圧迫」と位置づけれることができるのではないか?すなわち、非営利組織の活動規模が大きくなればなるほど、営利企業の収益が悪化し、事業継続が困難になり、最悪の場合には営利企業の倒産が起きる、といった事態も予想される。
こうした問題は、いわゆる「官による民への圧迫」問題と同種の問題である。同問題が一般的に受容されている背景には、「民間営利企業ができることは、官のような公的組織ではなく、民間営利企業に任せた方がより効率的である」(官から民へ」「民間でできることは民間に」)という認識とともに、「税金などの公的資金を使った組織が、民間企業の営利活動を妨害するのは社会的に妥当ではない」といった認識があるからである。
 
[考察してみよう]
問題1 大学授業料問題
高等教育を提供している組織としては、国立大学のような公的組織と、私立大学のような民間非営利組織がある。国立大学の授業料は1960年代は年間12,000円と極めて低かった。1971年まで同金額であったが、国立大学授業料の受益者負担主義を打ち出した1971年の中教審答申(四六答申)に基づき,「私立大学との格差是正」をスローガンに授業料の継続的値上げが実施された。1971年後期にはまず授業料の3倍化が実施された。2015年度には国立大学の授業料の標準額は1970年度までの約45倍の553,800円となっている。
さて国立大学がさらに値上げを実施し、私立大学の授業料と同水準になれば、「官による民の圧迫」がなくなったというように、現象的には捉えることができる。
「実際にそのようにすることは社会的に妥当だろうか?」「大学授業料の問題はどのように考えるべきか?」ということを、給付型奨学金などの制度設計とも関連付けながら論じなさい。
 
 
問題2 NHK受信料問題
NHKと民放はどちらもデジタル地上波放送やBSデジタル放送というnon-excludableなgoodsとしての情報財を提供している。TVを持っている人から「強制的」に受信料を徴収しているNHKという非営利組織が必要な理由は何かを考察しなさい。
具体的には下記のような視点から考察をおこないなさい。
  1. 「NHKが視聴率の高い番組を制作・配信することは、民放の広告収入減をもたらす。これは、受信料収入に依存しているNHKという公的組織が民放という民間組織の業務を圧迫することであり、社会的に妥当なことではないのではないか?」
  2. 「NHKという公的組織の存在が、民放の業務を間接的であれ助けているといった側面はあるのか?」
  3. 「なぜ受信料をNHKだけが独占し、他の情報系非営利組織に配分しないのか?そうしたことは社会的に妥当とは言えないのではないか?(例えばインターネット経由で無料のニュース動画、教養系動画、高等教育系動画を提供している民間非営利組織の事業に配分すべきではないのか?例えば、NHK教育テレビと同種のgoodsを制作・提供しているMOOC(ムーク)事業creative commonsライセンスに基づく動画制作・配信事業に受信料を配分すべきではないのか?)」
  4. 「NHK受信料が高額であることが日本におけるTV市場の停滞を招き、日本のテレビメーカーの赤字および事業撤退をもたらしたのではないか?価格.comによれば、32インチTVの最安値は2016/5/31現在で23,500円である。32インチTVの価格よりも、NHKの衛星契約の口座振替による1年間前払のNHK受信料24,770円の方が高いのである。また50インチTVの最安値は2016/5/31現在で63,466円である。10年近くは使用可能と思われる50インチTVの価格はNHK受信料の3年分にも満たない。NHK受信料が減額あるいはゼロになれば、日本でもっとTVが数多く売れるようになるのではないか?NHKの受信料はテレビメーカーの事業を圧迫していると言うべきではないのか?」
  5. 「NHK以外の様々な組織体が、NHKが提供しているのと同種の公共的情報財を制作・配信している。こうした状況下においてNHKの存在意義はどこにあるのか?NHKが他の組織体にはできない公共的情報財を提供しているのか?提供しているとすれば、それはどのようなものなのか?」
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情報公共論2016.05.24

[前回の授業内容]情報公共論2016.05.17
[次回の授業内容]情報公共論2016.05.31
 
private goods, common goods, club goods, public goods再論
今回のポイント
  1. 事業・活動継続のためにコストがかかる場合には、事業・活動の資金を何らかの形で調達する必要があるが、excludableであれば、顧客・利用者から代金・料金を徴収することでそうした資金調達が可能となる。
  2. rivalrousであれば、希望する全員が利用することはできない。希望者全員に制限なく引き渡しや利用を認めれれば、「コモンズの悲劇」で示されているような問題が生じる。そうした問題の発生により社会的利益・公共的利益が損なわれることを防ぐためには、何らかの形で利用の制限が必要となる。そのための一つの方法が顧客・利用者から代金・料金を徴収することである。
  3. non-rivalrousであれば、希望する全員が利用できる。希望者全員に制限なく引き渡しや利用を認めても、「コモンズの悲劇」で示されているような問題は生じない。したがってnon-rivalrous goodsをexcludableとするか、non-excludableとするかは、non-rivalrous goodsの維持・管理・再生産のための資金を、どのような形で調達するかということにより規定される。引き渡しや利用に応じて代金・料金を徴収することで資金調達するのであれば、excludableに、そうではなく、引き渡しや利用とは無関係に資金を調達するのであればnon-excludableとすることになる。
  4. non-excludableとし、代金・料金を支払わないfree riderを際限なく認める場合には、goodsの維持・管理・再生産のための資金を「税金」「受信料」「寄付金」などの方式で調達する必要がある。
  5. non-excludableなgoodsで、そのgoodsの維持・管理・再生産のためのコストが基本的には引き渡し数・利用数に応じて増加しない場合(すなわちfixed costはかかるが、variable costがゼロとなる場合)には、「税金」方式で調達するのが資金調達コストが最小となり経済的には合理的である。また社会的公平性にもかなっている。
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情報公共論 任意提出課題>2016/5/31授業 予習用課題

NHKは「公共放送は本当に必要なのか」というWEBページにおいてNHKの存在意義に関する説明をおこなっている。
http://www.nhk.or.jp/faq-corner/01nhk/01/01-01-18.htm

同WEBページを読んだ上で下記の問いの一つ以上に関して、レポートを書きなさい。

問1 NHKの報道番組に限らず、報道に関しては「公正性が必要である」ことや「編集権の独立が重要である」と主張されている。このことは、日本新聞協会の下記声明にも示されている。

日本新聞協会(1948)「日本新聞協会の編集権声明」1948(昭和23)年3月16日
http://www.pressnet.or.jp/statement/report/480316_107.html

 報道に関するこうした社会的要請は、NHKのような非営利組織に限らず、民放や新聞社のような営利企業も遵守すべきだと考えられている。そうだとすれば、「放送の自主自律を貫き」ということはNHKの独自の公共性を意味するものではなく、報道に携わるすべての非営利組織や営利企業が遵守すべき普遍的な公共性である。
NHKのWEBページ「公共放送は本当に必要なのか」に関して、「営利企業という形態でもNHKという形態でも持ちえる公共性には何があるのか?」、「営利企業という形態では持ちえないNHK独自の公共性には何があるのか?」という視点から分析的に論じなさい。

 
問2 NHKの籾井会長の発言に関しては、下記の記事を含め、「NHK報道の公共性を疑わせるものだ」との批判的意見がある。
NHKの籾井会長の発言を問題視する下記の記事以外にどのようなものがあるのかを調べて、下記記事のような形で列挙するとともに、「NHK報道の公共性を疑わせるものだという主張の根拠とされている事実はどのようなものであるのか?」「自分はどう思うか?」を述べなさい。
 
問3 下記の記事を読み、「政治家からの放送の自立性確保のためには、どのようにすべきと主張されているのか?」、「そうした主張に対して自分はどのように思うのか?」を論じなさい。
 
問4 NHKのWEBページでは、「放送の自主自律を貫き」と書かれているが、これに対する批判的意見も少なくない。下記新聞記事、および、それに関するWiki記事、ブログ記事を読んだ上で、NHKが「放送の自主自律を貫く」ことを制約していると思われる制度的背景は何かを論じなさい。
1.川本裕司(2009)「(私の視点 記者の視点)NHK番組改変 検証番組つくり説明果たせ」『朝日新聞』2009年06月11日朝刊
2.「NHK番組改変問題」日本語版ウィキペディア
3.佐原(2009)「番組改変「NHKの自立性疑問」BPO審議へ(4日の日記) 」
http://plaza.rakuten.co.jp/bluestone998/diary/200902040000/

[関連参考資料]
  1. 朝日新聞(2005)「幹部「圧力と感じた」 NHK側に2議員意見で番組改変<解説>」 『朝日新聞』2005年01月12日朝刊
  2. 朝日新聞(2005)「NHK番組改変、朝日新聞社の取材・報道」『朝日新聞』 2005年01月18日 朝刊
  3. 朝日新聞(2005)「検証・番組改変の経緯 NHK番組改変問題報告」『朝日新聞』2005年07月25日 朝刊
  4. 朝日新聞(2009)「NHK会長「事前説明せぬ」 関係者ら「第一歩」「時間かかった」 番組改変問題」『朝日新聞』2009年05月13日 朝刊
  5. 朝日新聞(2010)「(書評)NHK、鉄の沈黙はだれのために 番組改変事件10年目の告白 永田浩三著」『朝日新聞』2010年10月03日 朝刊
 
問5 NHKのWEBページでは、「インターネットを活用した新たなサービスやスーパーハイビジョンなど、視聴者のみなさまに新たな価値を提供できるサービスに積極的に取り組むこと」を公共放送の役割としている。「こうしたNHKの主張はどのような意味で正当と言えるのか?それとも正当ではないかのか?」を考察しなさい。
 
問6 日本語版ウィキペディア「公共放送」および日本語版ウィキペディア「公共放送サービス」を読み、日本のNHKのような形態での公共放送局以外にどのような形態がありうるのかかを考察しなさい。
 
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経営技術論 2016.05.26

[今回のpdfデータおよび配布物]
前回配布資料の一部訂正・追加版、pdf版のみ
 
2.ウォークマン関連資料(その3)
「ウォークマン発売 54年7月1日 街の風景が違って見えた日」『朝日新聞』2009年12月05日朝刊
 
3.ウォークマン関連資料(その2)

ウォークマンの製品イノベーション・プロセスに関するseeds-oriented(technology-driven)的説明
ウォークマンの製品イノベーション・プロセスに関するneeds-oriented的説明

 
[今回の授業内容]
1.product designの変化として、product innovationを捉える(再論)
(1) 携帯音楽機器のproduct innovation — product designの歴史的変遷としての製品イノベーション
記録メディア視点から見たproduct designの歴史的変遷
前回配布資料>携帯音楽機器の歴史的変遷の略図
(2) 同一technologyに基づく多種多様なproduct designの存在
携帯音楽機器のproduct designの歴史的な多種多様性=dominant designの短時間における歴史的変遷という具体例に基づく説明
 
2.ウォークマンの製品イノベーション・プロセスに関するseeds-oriented(technology-driven)的説明
 
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SONY ウォークマン関連資料

SONY ウォークマン関連WEB記事
 
ソニー株式会社『Sony History』の中の各記事
 
 
 
 
SONY ウォークマン関連新聞記事
朝日新聞(2009)「ウォークマン発売 54年7月1日 街の風景が違って見えた日」『朝日新聞』2009年12月05日朝刊
日経産業新聞(2010)「ソニー、王座奪還へ猛攻、新ウォークマン12機種――差異化、不可欠に」『日経産業新聞』2010年9月16日
日経産業新聞(2011)「ウォークマン、MD型9月出荷終了、ソニー、CDタイプは継続」『日経産業新聞』2011年07月08日
日本経済新聞(2010)「カセット式ウォークマン終了」『日本経済新聞』2010年10月23日朝刊
日本経済新聞(2011)「ソニー、MDウォークマン、9月に出荷終了」『日本経済新聞』2011年07月08日朝刊
 
SONY ウォークマン関連図書・雑誌論文
ドゥ・ゲイ, ポールほか(2000)『実践カルチュラル・スタディーズ ― ソニー・ウォークマンの戦略』大修館書店, 251pp
ぴあ(2014)『ウォークマンぴあ』ぴあMOOK
ワールドフォトプレス(1999)『20周年記念ウォークマン年鑑 ― 1979ー1999』ワールドフォトプレス (ワールド・ムック 213), 80pp
Nakamoto, Shinichi(1999)「Cultural Study:The Production and Circulation of Meaning in the Case of Sony Walkman」『産業技術短期大学誌』(尼崎 : 産業技術短期大学)33,pp.181-185
鵜飼明夫(2003)『ソニー流商品企画』H&I
黒木靖夫(1987)『ウォークマン流企画術』筑摩書房
黒木靖夫(1987)『ウォークマンかく戦えり』筑摩書房(ちくま文庫), 323pp
黒木靖夫(2004)「ウォークマン流ブランド構築術」『日経ビズテック』2004年10月15日号, pp.168-175
土居輝彦編(1989)「ウォークマン」『機能する道具・傑作品―20世紀の文化を象徴する道具たち』グリーンアロー出版社、pp.194-202
細川周平(1981)『ウォークマンの修辞学』朝日出版社(エピステーメー叢書), 245pp
谷口修平(2012)『うぉーくまん・すかいせんさー ― ありがとういとしの』早稲田出版, 202pp
山際康之(2014)「基調講演 ウォークマンを生み出した開発空間 : 自由闊達にして愉快なる理想工場 (第14回日本オフィス学会大会)」『日本オフィス学会誌』 6(1), pp.24-33
水原紹(2007)「ランドマーク商品としての携帯オーディオ機器–ソニーのウォークマンの事例を中心に」『社会科学』(同志社大学人文科学研究) 78, pp.1-21
https://doors.doshisha.ac.jp/duar/repository/ir/13319/007000780001.pdf
水原紹(2009)「ランドマーク商品としてのウォークマンとiPod–携帯音楽プレーヤーの進化の事例を中心に」(特集 ランドマーク商品に関する商品史的研究)『社会科学』(同志社大学人文科学研究) 84, pp.33-55
カテゴリー: SONY, ウォークマン, 事例分析 | SONY ウォークマン関連資料 はコメントを受け付けていません

経営技術論 2016.05.19

[今回の配布物]
前回配布を忘れたため、配布する。
 
2.ウォークマン関連資料(その1)
 
3.ウォークマン関連資料(その2)
前回配布資料の一部訂正版
 
[今回の授業内容]
1.product designの変化として、product innovationを捉える
(1) design概念の二義性
日本語的意味1>「デザイン」(製品の外形的形状、意匠)としてのdesign
日本語的意味2>「設計」(製品の機能・性能に関する技術的決断、製品の構成module/parts/materialに関する技術的決断としての構造設計)としてのdesign
(2) 同一technologyに基づく多種多様なproduct designの存在
自転車のproduct designの歴史的な多種多様性(dominant design確立前の多種多様性)という具体例に基づく説明
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キーボード配列に関するイノベーションの現代的試み ー フリック入力ほか

Godan配列
 
フリック入力式かな文字配列
「若者のキーボード離れ加速 レポート・卒論でフリック入力も」News ポストセブン、2014/10/21

josh_harn(2016)「実はガラパゴス化している文字フリック入力」NAVERまとめ、更新日: 2016年04月01日
スマートフォンやタブレットなど、スクリーン上に表示されたソフト・キーボードを利用することで日本語文字を入力する技術的方式としてはフリック入力が市場でdominantなproduct designとなっている。

フリック入力の技術的利点
フリック入力はアルファベット文字の入力や、濁音・半濁音・小文字の入力操作ではQWERTY配列に劣るが、かな文字入力としては下記のようにQWERTY配列などよりも技術的利点が高い言われている。

  1. 一般的には、タップの回数を減らすことができる
  2. 片手で入力できる。
  3. 片手で入力した場合のスピードが速い。というのも、「く」と入力するのに、単純なテンキー配列入力では5回、QWERTY配列入力でも「k」「u」と2回タップする必要があるからである。
    キー配列がQWERTY配列入力では26文字分(日本語のみに限定した場合には、母音5個、清音用子音8個+濁音用子音4個+促音用キー(x)1個+であるから23個)
 
スマホにおけるフリック入力方式普及の技術的理由
スマホ画面の大きさによる技術的制約—
スマホ画面の中に、データ表示部分とボタン配列表示分の二つが必要である。そのため、ボタン配列画面はスマホ画面の半分以下の大きさになる。横型表示ではなく縦型表示の場合には特に小さい。
そのためPCのキーボードのようにブラインドタッチでの両手打ちは困難である。
一段に配列可能なボタンの数には技術的制約がある。QWERTY配列のように、1段に10個以上を配列した場合には押しボタンの大きさがかなり小さくなるために押しにくいだけでなく、押し間違いが増える。
 
 
カーブフリック入力
 
PCにおけるフリック入力

「パソコンでもフリック入力!! FlickKeyboard」対応OS : Windows 8.1, 8, 7, Vista

なぜ、PCでフリック入力が普及しないのか?

スイッチングコスト

日本語入力に関わる技術革新

アルテ on Mozc

Okuma, N.(2016)「QWERTY、フリックに次ぐスマホの入力方式になるか?Androidキーボード「アルテ on Mozc」リリース」TechCrunch Japan,2016年2月16日
by Nozomi Okuma (@skyidentity)”

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情報公共論 2016.05.17

[前回の授業内容]情報公共論2016.05.10
[次回の授業内容]情報公共論2016.05.24
 
誰でも自由に無料で利用できるものとしてのcommons(共有地、共有物)に関する「コモンズの悲劇」問題
  1. 利用者が制限できなければ、「許容限度を超えた多数の人々の同時利用」や「ほかの人の迷惑を顧みない自分勝手な利用の横行」といった問題が生じる可能性がある。
  2. free riderの利用を認めると、commonsの維持管理などの費用の強制的徴収ができないため、commonsとしての機能維持が困難になる可能性がある。
 
free riderの排除可能性(excludability)に関する基本的ポイント議論
free riderの排除可能性(excludability)はgoodsの自然的性質の問題ではない。
教育サービスに関しては私学教育サービスに見られるようにfree riderを排除可能である。それゆえ公教育においてもfree riderを排除可能ではあるが、実際には排除してはいない。それゆえ私学教育はexcludableに、公教育はnon-excludableに位置づけられることになる。
同じようにB-CASカードを用いた顧客管理が可能なデジタル放送サービスは、WOWOW放送のようにfree riderを排除可能である。それゆえNHK放送においてもfree riderを排除可能ではあるが、実際には排除してはいない。それゆえWOWOW放送はexcludableに、NHK放送はnon-excludableに位置づけられることになる。

NHK放送において技術的にはfree riderの排除が可能なことは、BSデジタル受信機の利用開始から30日後に受信設備の設置確認メッセージが表示され、そのメッセージの消去には利用者の氏名、住所などの登録が必要になることに示されている。なおNHKはその情報を放送受信料の契約業務に利用している。
[関連WEBページ]
NHK受信料の窓口
NHK受信料の金額
NHKオンライン > 受信料の窓口トップ > BSデジタル放送 メッセージ消去のお申込み
NHK「BSデジタル放送メッセージ消去」

 
論点1:non-excludableなgoodsに関わる基本的論点
料金を支払わずに利用しようとするフリーライダーを排除困難(non-excludable)ではあるが、社会的に必要とされるようなgoodsで、なおかつ、その維持・管理・再生産・提供のための費用がかかるgoodsの場合には、何らかの形で資金・人手などを確保する必要がある。
 
論点2:rivalrousなgoodsに関わる基本的論点
多数の人々の同時利用が困難な場合には、利用できる人と利用できない人を分けることが必要になる。その区別には、必要度に応じた区別、利用対価の支払いの有無による区別など多様な方法がある。
 
論点3:法的および技術的にexcludableであることと、実際の場面でexclusionすることの区別
フリーライダーを技術的あるいは法的には排除可能であるが、そのことがどのような社会的意味を持つのかを慎重に検討する必要がある。例えば、一般的なテレビ放送離れの社会的状況の中での、NHK受信料問題の意味を考える必要がある。
 
non-excludableな公共サービスの典型例としての、道路、軍事、警察、消防、救急、灯台
これらの公共サービスは良好な社会生活のために必要不可欠であると同時にnon-excludableであるから(あるいは、non-excludableであるべきであるから)、これらのサービスは税金で賄わることになる。
またこれらの公共サービスの多くはnon-rivalrousであるから(あるいは、公共の福祉・安全の確保という観点から考えて社会的にnon-rivalrousの状態とすべきであるから)、これらのサービスは税金で賄わることになる。
 
[考察してみよう。]
non-excludableな公共サービスとして一般に挙げれているもの(例えば、道路、軍事、警察、消防、救急、灯台)の内で、「公共の福祉・安全の確保という観点から考えて社会的にnon-rivalrousの状態とすべきである」にも関わらず、現在の日本の公共投資・税金投入のあり方の結果として、実際にはrivalrousの状態に置かれているものをすべて挙げるとともに、「現にどのようになっているのか?」「現状のままで良いのか?現状のままで仕方ないのか?将来的には変えるべきなのか?」を考察しなさい。
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経営技術論 2016.05.12

[今回の授業内容]

自転車のproduct designの歴史的変化に関する、アッターバックのdominant design論的性格
 初期におけるproduct designの多様性
 dominant designの長期的持続性 — safety bicycle

アルファベット文字配列のproduct designや、自転車のproduct designは、19世紀から21世紀の今日に至るまで基本的には変化していない。
(変化は部分的である)

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2016.05.10 教養演習A 復習用課題

下記の問いの内のどれか一つを選択し、レポートを書きなさい。
なお来週は、未提出課題がある方および提出の遅かった方から順に、授業中にレポート発表をしていただきます。

ある特定の製品セグメントでは、特定のproduct designが市場でdominantとなっている。そうしたdominant designは、通常の時期には変化しない。dominant designが変化するのは、radicalなproduct innovationが起きている革命的な時期だけである。
 それゆえdominant designの変化として、製品の世代的変化としてのproduct innovationを論じることができる。
例えば電話製品では、ダイヤル式電話機からプッシュホン式電話機への世代交代というradical innovationの時期に、旧来の「円環状」配列から、現在の電話機型数字キー配列(3列4段方式)へとdominant designが変化した。
そして授業中に説明したように、そうした歴史的経緯の関係で電話機では123が上で0が最下段に来る現在の配列というように電卓とは異なるdominant designが採用されたのである。
 
 
数字キー配列に関しては、「電卓」型配列と「電話機」型配列という二つの異なるdominant designが共に使われている。視覚障がい者団体は、どちらか一方への統一を要望しているが、数字キー配列に関してそうしたuniversal design的対応は現在のところはまだ取られてはいない。
 これに対してアルファベット文字入力のための文字配列に関しては、製品セグメントによる違いはなく、ほとんどの製品でQWERTY配列が採用されている。例えば、タイプライター製品(19世紀に発明され20世紀中頃まで広く使われた製品)セグメント、大型コンピュータ製品(1950年代から社会的普及を開始した製品)セグメント、PC製品(1970年代中頃以降に製品市場が立ち上がった製品)セグメント、ローマ字かな入力変換方式の日本語ワープロ専用機製品(1980年代-1990年代末まで広く日本で使われた製品)セグメント、電子辞書製品セグメントなどで、QWERTY配列がdominant designとなり、広く一般に使われている。
 
 
問1 「数字キー」配列と「アルファベット文字キー」配列とでは、product designに関するdominant designのあり方がこのように異なる理由は何かを説明しなさい。
 
 
アルファベット文字キー配列に関して、「QWERTY配列が技術的に最も優れているわけではない。
 英文入力のためのアルファベット文字キー配列としては、「QWERTY配列よりもDVORAK配列の方がより優れている」と一般的に言われている。また、日本語のローマ字かな変換入力のためのアルファベット文字キー配列としては「QWERTY配列よりもNECのM式配列の方がより優れている」というのが一般的見解である。
 GoogleがGodanキーボード配列を最近になり提唱しているのも、QWERTY配列よりも技術的に優れたキーボード配列のproduct designにより、AppleのiPhonとのdifferentiationを考えているからである。
 
 
問2  DVORAK配列やNECのM式配列といった、QWERTY配列よりも優れたproduct designが一定の注目を浴びながらも、なぜ製品市場でdominant designのQWERTY配列に打ち勝つことができなかったのかに関して、きちんとその根拠がわかるように説明しなさい。すなわちDVORAK配列、NECのM式配列、あるいはその他の配列のどれか一つを取り上げて具体的かつ理論的に説明しなさい。
 
 
問3  GoogleのGodanキーボード配列に関して、{DVORAK配列やNECのM式配列といった過去のproduct designと同じく、QWERTY配列に打ち勝つことができないのか?それとも、過去のproduct designとは異なり、QWERTY配列に打ち勝つことができるのか?」ということを具体的かつ理論的に説明しなさい。
 

godan2

[参考図]Godanキーボード配列
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情報公共論 2016.05.10

[前回の授業内容]情報公共論2016.04.28
[次回の授業内容]情報公共論2015.05.17
1.私的財の必要性・有用性を示す「コモンズの悲劇」 vs 共有財の必要性の必要性・有用性を示す「アンチコモンズの悲劇」
「コモンズの悲劇」で取り上げられているコモンズとしての牧草地は、ある場所の牧草を一頭の牛が食べると、その牛が食べた場所の牧草を他の牛が食べることができない。その意味で、「コモンズの悲劇」問題は「消費における競合性」(rivalrousness)問題でもある。
もちろん一頭の牛が食べる量には一定の限度があるので、牧草地の面積に対してその牧草地にいる牛の数が少ない場合にはそうした「消費における競合性」は顕在的な問題とはならない。
 「コモンズの悲劇」が問題としているのは、牛の頭数が牧草地が許容する限界頭数を超えた場合に生じる状況である。これは「宇宙船地球号」という概念を利用しながらローマクラブが問題提起した人間社会の成長・発展に対する地球資源の有限性問題と同じ論理的構造である。
すなわち、地球環境問題などで問題とされる地球資源の有限性問題は、大気や海などの地球資源が19世紀までの人間社会の「生産=消費」活動レベルでは「消費における競合性」が問題とはならなかったが、20世紀後半以降になり「消費における競合性」が問題となったということを意味している。

[参考図]資源エネルギー庁(2013)「世界のエネルギー消費量と人口の推移」『エネルギー白書』p.8 [pdf版]

2013html_1-1-1_001

 
[考察してみよう]
コモンズに該当する具体的対象としては、 地球レベルものから地域社会レベルのものまで多様なものが存在する。したがってコモンズとして捉えることができるすべての具体的対象に関して「コモンズの悲劇」が成立するわけではない。
それはどういうことなのかを具体例を挙げて説明しなさい。すなわち、「コモンズの悲劇」問題が成立しないようなコモンズの具体例を挙げるとともに、コモンズであるにも関わらずなぜ「コモンズの悲劇」問題が成立しないのかを説明しなさい。
 

2.公共財の公共経済学的定義 — 「消費における非-競合性(non-rivalrous)」と「フリーライダーの非-排除性(non-excludable)」という二つの特性を持つ財としての公共財
三省堂『大辞林』では、「公共」という用語は「おおやけのものとして共有すること」として定義されている。また岩波書店『広辞苑』第4版では、「公共財」という用語は「その便益を多くの個人が同時に享受でき、しかも対価の支払者だけに限定できないような財貨・サービス」として定義されている。公共財に関する後者の『広辞苑』第4版の定義は、公共財に関する公共経済学的定義に基づくものである。
公共財(public goods)は、公共経済学においては、「消費における非競合性」「フリーライダーの排除不能性」という二つの特性との関連で定義されている。
そのように定義されている主要な理由のうち、いくつかを下記に挙げる。
 
ポイント1. rivalrousという特性を持つ財に関しては、「利用者から料金を取ることが正当である」と考えられる。
rivalrousな財の利用は制限せざるを得ない(そうでないとコモンズの悲劇と類似の問題が発生する)が、そうした制限の手段の一つが料金の徴収である。首都高速道路の利用料を無料にすると混雑が極めて激しくなり、高速道路としての意味がなくなってしまう。excludable(フリーライダーを排除する)とすることで、すなわち、利用料を払った人だけが利用できるようにすることで、高速道路というgoodsがその本来的機能を果たすことができる。
 そのようにexcludableにできるgoodsに関しては、その提供を政府・自治体・非営利組織など公共的組織のみに限定する意味はあまりない。利用対価や販売代金を取ることができるそうしたgoodsに関しては、なるべく数多くの企業に提供させて、goodsの「質」、「提供可能な量」、「価格」などに関する自由競争をさせる方が社会的により好ましい、と一般には考えられている。

ポイント2. 上記とは逆にnon-rivalrousという特性を持つ財に関しては、財の維持・管理・再生産の費用が「一定数の顧客からの利用料金・販売代金でまかなうことができる」財[すなわち、一定以上の固定費はかかるが変動費がゼロに近い財]であれば、その一定数を超えた顧客・利用者から料金を取らないことも選択肢として考えられる。また財の維持・管理・再生産の費用がほぼゼロに近いような財[すなわち、固定費も変動費もほぼゼロに近い財]であれば、「free riderを排除せず、利用者から料金をまったく取らないことが正当である」と考えられる。
[考察してみよう]明治大学図書館も、その維持・管理・再生産の費用を一定数の学生からの授業料収入でまかなうことができる。そのため、rivalrousにならない範囲内で、free riderの利用を認めている。それは具体的にはどういうことなのかを考えてみよう。
 
ポイント3. free riderを排除できない(利用料金や販売代金を徴収することができない)non-excludableな財に関しては、営利企業による持続的提供は期待できない。非営利組織・政府・自治体など公共的組織に期待するほかない。
広告・宣伝など結果的に自社の売上拡大や営業利益増大につながる場合には、営利企業もnon-excludableな財を提供し続けることができる。しかしそうではなく、結果的にも自社の売上拡大や営業利益増大につながらないようなnon-excludableな財を自社の営業活動の一環として継続的に提供し続けることは一般的には困難である。

料金を支払わずに
利用しようとする
free riderを排除可能
(excludable)
料金を支払わずに
利用しようとする
free riderを排除困難
(non-excludable)
多数の人々による
同時利用が困難
(rivalrous)
私的財
(private goods)
common goods
多数の人々による
同時利用が可能
(non-rivalrous)
club goods 公共財
(public goods)
 
[考察してみよう]
授業では、rivalrousかつnon-excludableなgoods(common goods,Common-pool resource)の例を取り上げなかったが、英語版wikipedia「Common-pool resource」では下記のようにfish stocks, timber, coalが例として挙げられている。
(1) common goods(common-pool resource)に該当するgoodをどれか一つを取り上げて、「それがどのような意味でRivalrousかつNon-excludableな財(goods)とされているのか?」に関して説明をおこなうこと。
(2) 次に、自らがcommon goods(common-pool resource)に該当するものとして取り上げたgoodが、本当にrivalrousかつnon-excludableなgoodであるのかどうかに関して考察をおこなうこと。
 
excludable non-excludable
rivalrous private goods
food, clothing, cars,
parking spaces
common goods
fish stocks, timber, coal
non-rivalrous club goods
cinemas, private parks,
satellite television
public goods
free-to-air television, air,
national defense
[出典]英語版wikipedia「Common-pool resource」,理論的整合性を保つため、Common-pool resourceをcommon goodsとするなど、表現を一部訂正した。

 
3.club goodsの具体例
下記では、上記のポイント2で論じられている「一定以上の固定費はかかるが、変動費がゼロに近い財」という理論的定義に当てはまる具体的事例として、一定の範囲内でnon-rivalrousである(それゆえ一定の会員数に限定する必要がある)とともに、free riderの排除が法的・技術的に可能なexcludableであるclub goodsとしての、TV電波、BS(放送衛星)電波、CS(通信衛星)電波、携帯電波、公衆無線LAN電波などを利用したテレビ放送サービス、動画配信サービスを取り上げる。
 
4.消費における競合性(rivalry, rivalrousness)に関する複数の視点からの議論 — free rider排除の社会的妥当性
 
本日の授業では 「消費における競合性」(rivalrous)概念に関する、下記三つの主要論点の内の第1の論点を主として取り上げた。
 
論点1.「一定限度=許容限度内における消費の非競合性」と「一定限度=許容限度を超えた場合における消費の競合性」
論点2. 同一財における 「消費の非競合性」と「消費の競合性」という二つの特性の共在(利用法・利用場面の差異による特性の違い)
論点3. 「共時」的消費における競合性 vs 「通時」的消費における競合性

 
消費の競合性の相対性という第一の論点に関する理解が必要—「コモンズの悲劇」問題も利用者数が一定以上を超えた時に発生する問題である。一定数以下であれば、消費の競合は問題にならずsustainableな利用が可能である。
個々の座席で見れば、新幹線の指定席や自由席、および、図書館における座席などは、「ある人が利用している座席を他の人が利用できない」という意味のおいて排他的利用が問題となるが、利用者の全体的数が座席数全体に対して相対的に少ない場合には、「ある時間帯の新幹線の便全体、あるいは、図書館全体では、空いている席を必ず見つけて利用できる」という意味において、新幹線の着席利用、および、図書館の着席利用それ自体はrivalrousではない。
 
[考察してみよう]
日本語版ウィキペディア「非競合性」で非競合性を持つgoodsに位置づけられている「映画」、「図書館」についても、そうであるのはある一定の制約条件のもとにおいてであり、実際には競合性が問題となる場合もある。
それはどういうことなのかをわかりやすく説明しなさい。
 
5.free riderの排除可能性(excludability)に関する複数の視点からの議論 — Free rider排除の根拠および方法に関する法的議論(法的権利)、経済的議論(経済的合理性)、技術的議論(技術的可能性)[次回論じる予定の論点]
 
[関連復習事項]
1.スマホの製造メーカーが「無料」で利用できるGoogleのAndroid OS
 
2.公共財(public goods)と情報財(information goods)の共通集合としての公共的情報財(public information goods)
公共財(public goods)の定義と情報財(information goods)の定義および特性の両方を理解することが必要
 
3.情報財(information goods)の定義および特性
情報財を構成する2種類の財・・・「コンテンツ」系情報財と「プログラム」系情報財
情報財の特有性としての、「限界費用の低さ」と「私的占有の困難性」

 
情報公共論 2016.05.10 はコメントを受け付けていません

経営技術論 2016.04.28

 
[今回の事項]
1. product conceptの具体化としてのproduct designを規定している諸要因
product innovationにおけるproduct designの選択・決定を規定している要因としては下記のようなものがある。
 
(1) 「技術」的要因
a.旧世代製品のdominant designに起因する技術的経路依存性
先行技術との関係による技術的スイッチングコスト・技術的制約 — 東日本と西日本における電源周波数の違い、京王線と井の頭線の線路幅の違い、直通運転の技術的可能性
b.製品の形状・機能・性能などに起因する技術的制約
ダイヤル式電話機における数字配列が1,2,3, — ,9, 0というように、9の後に0が来るようになっている理由
 
(2) 技術に関わる「法」的要因および「社会制度」的要因
法律(乗物に対する道路交通法の規制など)・政令・法的規格(日本工業規格、日本農業規格などのde jure standard)・法的ガイドラインなどの法的規制や公共的規制に起因するもの
液体ミルク、セグウェイなどのproduct innovationの社会的普及の制約要因としての法
 
(3) 技術に関わる「身体」的要因および「社会」的要因
数多くの人間の身体的形状のあり方に起因する規定
  1. はさみ、急須、電車の自動読み取り機などは右利きの人向けのproduct designになっている
  2. エレベーターにおける車椅子利用者向けの押しボタン配列は横向き配列のproduct designになっている
なお、product designに関する下記のような問いも、「右利きの人の方が多い」という社会的要因によって規定されていると考えられる。
  1. 「ダイヤル式電話機における数字配列1,2,3, — ,9, 0はなぜ反時計回り配列のproduct designになっているのか?」
  2. 昔のTVにおけるダイヤル式チャンネル選択装置における数字配列1,2,3, — ,9,10,11,12は、なぜ時計回り配列のproduct designになっているのか?」
 
2. アッターバックのドミナント・デザイン論的視点からの考察 — 「固定期」市場におけるdominantなproduct designの固定性
固定期には、ある特定の製品セグメントでは、特定のproduct designが市場でdominantとなっている。dominant designが変化するのは、先行の成熟市場の創造的破壊(creative destruction)が起きている市場の「流動期」、すなわち、radicalなproduct innovationが起きている革命的な時期だけである。そうしたdominant designの変化として、製品の「世代」的変化としてのproduct innovationを論じることができる。
例えば電話製品では、ダイヤル式電話機からプッシュホン式電話機への世代交代というradical innovationの時期に、旧来の「円環状」配列から、現在の電話機型「長方形」配列(3列4段方式)へとdominant designが変化した。
そして授業中に説明したように、米国などなどでのダイヤル式電話機における「数字とアルファベット文字の同時配置」というproduct designに起因する歴史的経路依存性により、電話機では123が上で0が最下段に来る現在の配列というように電卓とは異なるdominant designが採用されたのである。
 
(1) 数字キー配列
数字キー配列に関しては、「電卓」型配列と「電話機」型配列という二つの異なるdominant designが共に使われている。視覚障がい者団体は、どちらか一方への統一を要望しているが、数字キー配列に関してそうしたuniversal design的対応は現在のところはまだ取られてはいない。
 これに対してアルファベット文字入力のための文字配列に関しては、製品セグメントによる違いはなく、ほとんどの製品でQWERTY配列が採用されている。例えば、タイプライター製品(19世紀に発明され20世紀中頃まで広く使われた製品)セグメント、大型コンピュータ製品(1950年代から社会的普及を開始した製品)セグメント、PC製品(1970年代中頃以降に製品市場が立ち上がった製品)セグメント、ローマ字かな入力変換方式の日本語ワープロ専用機製品(1980年代-1990年代末まで広く日本で使われた製品)セグメント、電子辞書製品セグメントなどで、QWERTY配列がdominant designとなり、広く一般に使われている。
 
[考察してみよう。]
課題1 「数字キー」配列と「アルファベット文字キー」配列とでは、product designに関するdominant designのあり方がこのように異なる理由は何かを説明しなさい。
 
 
(2) アルファベット文字キー配列
アルファベット文字キー配列に関して、「QWERTY配列が技術的に最も優れているわけではない。
 英文入力のためのアルファベット文字キー配列としては、「QWERTY配列よりもDVORAK配列の方がより優れている」と一般的に言われている。また、日本語のローマ字かな変換入力のためのアルファベット文字キー配列としては「QWERTY配列よりもNECのM式配列の方がより優れている」というのが一般的見解である。
 GoogleがGodanキーボード配列を最近になり提唱しているのも、QWERTY配列よりも技術的に優れたキーボード配列のproduct designにより、AppleのiPhonとのdifferentiationを考えているからである。
 
[考察してみよう。]
課題2  DVORAK配列やNECのM式配列といった、QWERTY配列よりも優れたproduct designが一定の注目を浴びながらも、なぜ製品市場でdominant designのQWERTY配列に打ち勝つことができなかったのかに関して、きちんとその根拠がわかるように説明しなさい。すなわちDVORAK配列、NECのM式配列、あるいはその他の配列のどれか一つを取り上げて具体的かつ理論的に説明しなさい。
 
課題3  GoogleのGodanキーボード配列に関して、「DVORAK配列やNECのM式配列といった過去のproduct designと同じく、QWERTY配列に打ち勝つことができないのか?それとも、過去のproduct designとは異なり、QWERTY配列に打ち勝つことができるのか?」ということを具体的かつ理論的に説明しなさい。
なおその際には、20世紀以前の製品はハードウェア型キーボードであったのに、スマホではソフトウェア型キーボードに変化していることを考慮に入れた上で考察を加えなさい。
 

godan2

[参考図]Godanキーボード配列
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product technology vs production technology

product technology vs production technology — 「今までにない製品」、「画期的新製品」を生み出す技術 vs 製品を製造する技術
「モノづくり企業にとっては、「サイエンス」と「テクノロジー」、これら二つの本質的価値を見極めたうえで、その融合を図ることが競争力の強化に極めて重要である。このことは、富士写真フィルムとのインタビューで特に感じたことである。/ここでいうサイエンスとは、いままでにないモノを生み出す技術である。テクノロジーとは、実際に応用する技術のことをさしている。/これを加工組立型製造業に当てはめてみれば、サイエンスはいままでにない素材や部品を開発する技術であり、テクノロジーは開発された素材・部品を加工.組み立てて製品にする技術ということができる。」日本能率協会編(2001)『競争優位をめざすモノづくり経営革新』日本能率協会マネジメントセンター、pp.40-41
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経営技術論 2016.04.21

[次回の授業内容]経営技術論 2016.04.28
 
[先週の復習と追加確認事項]
1. 経営における技術Technologyの意味 —- 技術革新のManagementの意義と必要性
(1) 経営技術論の対象領域としてのProductとProduction
a. Produceの派生語としてのProductおよびProduction
b. 相対的競争優位の重要な規定要因の一つとしての技術
d. 二種類の技術 — 既存技術と新規技術 — と技術革新
e. 科学的管理法 vs 経営技術論
 
(2) Innovationのタイプ分類(1) —- Product Innovation とProcess Innovation
a. Product Innovationに関する相対的区別の必要性 — 「新機能(New Function)を実現するInnovation」と「性能向上(Performance)を実現するInnovation」
b. Process Innovationの主たる二つの目的 — 「品質(Quality)向上」と「製造コスト低減」
c. Product Innovation とProcess Innovationの区別と連関を示す諸事例
 
(3) 製品に関する Function(機能)、Performance(性能)、Cost(費用)、Quality(品質)の区別と連関 — radical innovationとincremental innovationの相対的区別のための基本的視点
a. Function(機能)に関わる評価視点 — 「有る vs無い」、「多機能 vs 単機能」
b. Performance(性能)に関わる評価視点 — 「高いvs低い」、「顧客が必要とする最低性能 vs顧客が有意義と評価する最高性能」
c. Cost(費用)に関わる評価視点 — 「高い、低い」、「上限価格 vs 下限価格」
d. Quality(品質)に関わる評価視点 — 「高い、低い」、「上限品質 vs 下限品質」
e. Cost-Performance(コストパフォーマンス、費用対効果)に関わる評価視点 — 「高い、低い」
 
(4) Technology に対する Management の意義
a. 市場(Market)と技術(Technology)という二つの要素 — 市場分析(Market Analysis)/市場調査(Market Research)と同時に、技術分析(Technology Analysis)/技術調査(Technology Research)が重要
「技術の天才」の本田宗一郎と、「財務と経営の天才」の藤沢武夫—佐藤正明『ホンダ神話〈1〉本田宗一郎と藤沢武夫』
四宮正親(2006)「補佐役の企業家活動―盛田昭夫と藤沢武夫―」(日本の企業家活動シリーズNo.39)、法政大学イノベーション・マネジメント研究センター
b. 利用技術・技術開発に関わる戦略的選択としての技術戦略に関わる技術分析(Technology Analysis)/技術調査(Technology Research) — 企業の戦略決定における技術的次元
 
(5) 技術的リーダーシップ戦略vs 技術的追随戦略
 
(6) 製品イノベーションを通じた相対的競争優位の追求法に関する、ポーター的視点からの分類
 
2.技術選択・技術統合としてのproduct design
佐野正博「生産管理」『経営学への扉』白桃書房,p.91の図5-1「イノベーション・ライフサイクル」
経営学への扉-p91
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経路依存性(path-dependency)現象 —- 過去の技術的選択による現在的制約

鉄道経営に関する経路依存性
過去の技術的選択が、企業経営の現在的あり方を制約している。鉄道経営に関する経路依存性に関しては次のような問いを考えてみれば良いであろう。

問1 東京都心部の地下鉄のうち、東京地下鉄株式会社(旧称:帝都高速度交通営団)が経営する東京メトロの銀座線・丸ノ内線および東京都交通局が経営する都営地下鉄の大江戸線を除くすべての路線で郊外鉄道との直通運転が実施されている。ではなぜ、銀座線・丸ノ内線及び大江戸線では郊外鉄道との直通運転が実施されていないのか?その理由を調べなさい。(なお2014年時点で東京圏の相直路線延長は約880kmで、東京圏の鉄道総延長1,520Kmの約36%を占めるまでになっている。)
問2 渋谷と吉祥寺を結ぶ京王井の頭線(12.7km)は渋谷が終点駅となっている。また渋谷と浅草を結ぶ営団地下鉄銀座線[1927年に浅草 – 上野間で営業を開始した日本で最初の地下鉄。現在の路線距離:14.3km]も渋谷が終点駅となっている。渋谷駅で京王井の頭線と、東京メトロ・銀座線が直通運転で結ばればとても便利と思われるが、直通運転の計画はない。それはなぜか?
問3 京王電鉄は、新宿で京王線と都営新宿線と直通運転を行っている。しかし京王高尾線は高尾駅でJRと直通運転していないし、都営新宿線はその終点の本八幡駅でJRと直通運転をしていない。それはなぜか?
1927年開業の銀座線の軌間(ゲージ)は、丸の内線と同じく1,435 mmである。これに対して、帝都電鉄株式会社が1933年に開業した井の頭線[1933年8月1日に渋谷駅 – 井の頭公園駅間を開業させ、1934年4月1日に吉祥寺駅まで全通させた]の軌間(ゲージ)は1,067mmである。井の頭線が小田急電鉄系の帝都電鉄の路線として開業したため、小田急電鉄の軌間と同じにされた。そうしたこともあり、戦時中から戦後しばらくは小田急小田原線と代田連絡線を介して繋がっていたが、同連絡線の廃止後は他路線と線路が繋がっておらず、独立した路線となっている。[帝都電鉄は、小田原急行鉄道(現、小田急電鉄の前身)を経営していた利光鶴松の傘下にあった。帝都電鉄は1940年に小田急に統合されている。1942年には小田急電鉄株式会社が京浜電気鉄道と共に東京横浜電鉄に合併し、東京急行電鉄株式会社が成立。小田急帝都線は東急井の頭線となった1944年には京王電気軌道株式会社も東京急行電鉄株式会社に合併されている。1947年12月に東京急行電鉄株式会社から京王帝都電鉄株式会社・小田急電鉄株式会社・京浜急行電鉄株式会社が分離することが決定され、1948年に京王線と井の頭線は京王帝都電鉄株式会社として東京急行電鉄株式会社(東急)から分離された。]
京王電気軌道株式会社が、1913年4月に笹塚駅 – 調布駅間の12.2キロの営業を開始した。この時の軌間が1,372 mm(馬車軌)であった。玉南電気鉄道株式会社が、1925年3月に府中駅 – 京王八王子駅間を営業開始した。この時の軌間が1,067 mmであった。その後、1926年12月1日に京王電気軌道が玉南電気鉄道を併合し、直通運転を可能とするため、軌間を1,067 mm から1,372 mm へ改軌した。(工事終了は1927年6月。新宿-京王八王子間の直通運転開始は1928年5月。)こうした改軌は、その後、都営浅草線および京浜急行電鉄への乗り入れを実施した京成電鉄が子会社の新京成電鉄と共に1959年に1,372 mmから1,435mmへの改軌を実施している。京王線も都営新宿線との直通運転計画に際して、1,372 mmから1435mmへの改軌を打診されたが、実行していない。
[関連参考資料]
  1. 東京都公文書館編(1989)『東京馬車鉄道j](都史紀要33)
  2. 青木栄一(2002)「3フィート6インチ・ゲージ採用についてのノート」『文化情報学:駿河台大学文化情報学部紀要』第9巻第1号
  3. 「井の頭線、消えた延伸計画と「日本一」の三鷹球場」日経電子版、2013年6月14日
  4. 杉山淳一(2012)「銀座線にも相互乗り入れ計画があった」マイナビニュースの連載:鉄道トリビア
  5. 国土交通省(2014)「東京圏の都市鉄道に係る答申のフォローアップ等について」平成26年度第1回(第10回)交通政策審議会陸上交通分科会鉄道部会 資料2-1
  6. 「東京圏における都市鉄道の現状と課題について(補足資料)」平成26年度第1回(第10回)交通政策審議会陸上交通分科会鉄道部会 参考資料1
  7. 国土交通省(2016)「速達性の向上の現状と今後の取組のあり方について」国土交通省 東京圏における今後の都市鉄道のあり方に関する小委員会 第16回 配付資料4-2
  8. 国土交通省(2016)「シームレス化の現状と今後の取組のあり方について」国土交通省 東京圏における今後の都市鉄道のあり方に関する小委員会 第16回 配付資料4-3
  9. 「国交省資料で見えてきた東京圏「次の新線」。JR羽田アクセス線と地下鉄品川線、豊住線は有力か。りんかい線・京葉線直通にも可能性」旅行総合研究所タビリス2016/01/21
  10. 松田康治(2001)「東京圏における相互直通運転の効果と課題」土木学会第56回年次学術講演会
  11. 家田仁(2005)「都市鉄道における軌間の異なる路線間の直通運転の可能性」鉄道整備等基調調査報告シンポジウム 第3回「活力ある暮らしを支える鉄道を目指して」
  12. 金子雄一郎・伊東誠(2007)「鉄道整備事業の事後評価手法に関する諸検討-実際の評価の経験を踏まえて-」『運輸政策研究』Vol.10 No.3
 
[参考資料]
医療制度に関する経路依存性
経路依存性(path-dependency)現象 —- 過去の技術的選択による現在的制約 はコメントを受け付けていません

情報公共論 2016.04.19 – 04.26

[次回の授業内容]情報公共論2016.04.26
前回の授業で残された論点 —- 無主物(だれのものでもないもの)の維持・管理・更新・新規創造はどのようなメカニズムの下で実現するのか?
コモンズの悲劇問題
 
[参考サイト]
 
[今回の配布資料]
「ソフト特許は開発阻害—利用者の声で改良自在に」『日本経済新聞』2003年5月19日朝刊
佐伯啓思「所有」『平凡社 世界大百科事典 第1版』
柴田弘文「公共財(public goods)」『平凡社 世界大百科事典 第1版』
『平凡社 世界大百科事典 第2版』は、コトバンク経由で利用可能。ただし無料サービスのため、「公共財」のように簡単な解説しか読めない。
 
[今回の授業内容 — 前回の授業内容の復習を含む]
1.情報公共論の前提としての「公共」および「公共性」概念について
(1) 「公共」とはなにか?「公共性」とは何か?
  
  
(3) コモンズの悲劇、アンチコモンズの悲劇
  
(4) 公共の諸形態
public goodsに関する公共経済学的定義、public domain、creative commons、Open Source Software、Freeware、OpenOffice.org、青空文庫)

  
2.公共財
(1) 「所有」視点からの考察 — 国有、公有、私有、無主物/public domain
公海 vs 領海
著作権による著作物の私有財産化(知的財産としての著作権) vs 著作権保護期間の切れたpublic domainとしての著作物
Public DomainおよびOpen Contents系情報財
  1. Wikipaedia
  2. Open Library
  3. Open contents
  4. Internet Archive
  5. HathiTrust Digital Library,
  6. National Library of Australiaほか)
  7. 青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)
  8. プロジェクト杉田玄白(http://www.genpaku.org/)
  9. グーテンベルクプロジェクト(http://promo.net/pg/)
    グーテンベルク百科事典としての『ブリタニカ百科事典』第11版など
  10. creative commons(http://creativecommons.org/)
  11. VOANews(http://www.voanews.com/)
    VOANews(http://www.voanews.com/) の著作物は、public domainとされている。
    http://www.voanews.com/disclaim/の中のCopyright
    Statementの箇所に、"All text, audio and video material produced exclusively
    by the Voice of America is public domain." と書かれている。
  12. オンラインのフリー百科事典『ウィキペディア (Wikipedia) 』 (http://ja.wikipedia.org/wiki/)
  13. The FreeDictionary.Com(http://encyclopedia.thefreedictionary.com/)
    これらは、GNU Free Documentation Licenseに基づく百科事典(公共財としてのネット百科事典)であり、英語版をはじめとした、様々な言語版の百科事典が現在作成中である。
    『ウィキペディア (Wikipedia) 』プロジェクトを統括しているのは、ウィキメディア財団(Wikimedia Foundation Inc.)である。 ウィキメディア財団は、『ウィキペディア (Wikipedia)』以外にも多くのオンラインプロジェクト活動を行っている。
  

(2) 「利用」視点からの考察 — 独占的利用/排他的利用 vs 自由な利用/非排他的利用
(3) 「公共経済学」視点からの考察 — 財の非競合性と非-排除性
(4) 「特許」視点からの考察 — 特許による囲い込み vs 特許の共有的利用(patent commons)
 
3.情報公共論の前提としての「情報財」概念については、別な機会に論じる
  
[今回の授業内容をさらに深く理解するための議論および資料]
情報公共論 2016.04.19 – 04.26 はコメントを受け付けていません

2016.04.12 教養演習A

[今週の授業内容]ガイダンス的実習授業
1.技術イノベーション(技術革新)vs ビジネス・イノベーション
技術イノベーション(技術革新)のための研究開発投資

売上高に対する営業利益率・研究開発費率に関する日系企業と米国系企業の比較
[関連問題]
(1) 「売上高に対する営業利益率・研究開発費率に関する日系企業と米国系企業の比較」および「参考表>経済産業省『企業活動基本調査確報』に基づく日本における産業分野別の研究開発費」という二つの表の数値を最新のものに更新しよう。
(2) 数値を更新した「参考表>経済産業省『企業活動基本調査確報』に基づく日本における産業分野別の研究開発費」をグラフ化するとともに、そのことが何を意味しているのかを考察しよう。
(3) 数値を更新した「売上高に対する営業利益率・研究開発費率に関する日系企業と米国系企業の比較」が何を意味しているのかを考察しよう。

 
2.家庭用据置型ゲーム専用機における技術イノベーション(技術革新)
http://www.sanosemi.com/biztech/document/game-console-performance-innovation-ver2.pdfに示されているように、家庭用据置型ゲーム専用機という製品の歴史的変化は、それぞれの製品が使用しているマイクロプロセッサーの「ビット数」で捉えることができる。
 
(1) 基本的発展方向としての「ビット数」の増大
任天堂・ファミコン(1983, 8bit機)
 ↓
======
 ↓
任天堂・スーファミ(1990, 16bit機)
 ↓
======
 ↓
ソニー・PS(1994,32bit機)
 ↓
======
 ↓
任天堂・N64(1996,64bit機)
ソニー・PS2(2000,64bit機)
ソニー・PS3(2006,64bit機)

[関連問題]
家庭用据置型ゲーム専用機の64bit化は上記のように1996年と早かったが、PCやケータイの64bit化はそれよりも遅い。特にケータイにおける64bit化は、2013年のiPhone5Sと10数年も遅い。
問1 PCにおける64bit化の開始時期をマイクロプロセッサーの64bit化とOSの64bitに分けて考察しなさい。またなぜマイクロプロセッサーの64bit化とOSの64bitの時期が異なるのかについて、その理由を推測しなさい。
問2 なぜ家庭用据置型ゲーム専用機に比べて、PCやケータイの64bit化が時期的に遅かったのか?その理由を推測しなさい。
問3 iPhone5Sにおけるケータイの64bit化にはどのような意味があるのかを、海上忍(2013)「「iPhone 5s」の64bit CPU採用が意味するもの」Ascii.jp他の記事をもとにまとめなさい。
 

(2) 任天堂のGAMECUBE以降の製品開発 — 「ビット数」に関する技術的「退行」
任天堂は、ソニーのPS2(2000)の4年前に64bit機のN64(1994)を開発・出荷したにも関わらず、N64以降の世代の各マシンはGAMECUBE(2001),Wii(2006),Wii U(2011)とすべて32bit機である。
 そのようにマイクロプロセッサー技術として「旧世代」の技術を利用しているという意味で、「技術的に遅れた」マシンである。

[関連問題]
GAMECUBE(2001)とWii U(2011)はビジネス的には相対的に「失敗」(WiiUは特にそうである)であるが、Wii(2006)は競合機種のソニー・PS3(2006)やMicrosoft・XBOX360(2005)に対して「ビジネス」的には相対的に成功であった。
 このことは、「技術」的には「相対的に遅れた」マシンであっても、「技術」的には「相対的に進んだ」マシンに対して競争優位性を持ちうることを意味している。

問1 任天堂が「技術的に最先端のものを追求することで他社に対する競争優位を確保する」のではなく、「相対的に遅れた技術を利用することで他社に対する競争優位を確保する」戦略をとっていることに関して、任天堂の有名な経営理念(ヒント:ゲーム&ウオッチ、ゲームボーイなどの開発に携わった横井軍平の×××技術の水平思考)、および、ポーターの競争戦略論との関係で説明しなさい。
問2 それはどういうことなのかについて、Wii(2006)とPS3(2006)それぞれの販売開始3年目までの販売台数のデータをもとに説明しなさい。
問3 Wii(2006)は後半期には販売量が失速し、ビジネス的数字としては競合製品のPS3(2006)やXBOX360(2005)と最終的にはさほど大きくは変わらない結果となった。それはどういうことなのかについて、GAMECUBE(2001) vs PS2(2000)、Wii(2006) vs PS3(2006)というように同時期の競合製品どうし販売データの比較をもとに説明するとともに、その理由を推測しなさい。
問4 Wii U(2011)はその販売数量が示しているように、ビジネス的に「失敗」であった。そのことを販売数量データおよび任天堂の損益データをもとにわかりやすく説明するとともに、そのようになった理由をソニー・PS4(2013)、Microsoft・XBOX One(2013)といった競合製品との関連で推測しなさい。

2016.04.12 教養演習A はコメントを受け付けていません

Product Technology vs Production Technology

Product Technology vs Production Technologyの区別と連関
関連参考資料
「複雑な人工物は,多くの機能設計要素構造設計要素,工程設計要素からなる多次元的な存在であるので,通常は複数の固有技術が関わっている。その人工物が市場に供される製品である場合,その製品の価格設定(価値実現)に顕著な影響を与える固有技術を,とくにコア技術と呼ぶこともある(延岡,2006)。いずれにせよ,固有技術には,人工物の構造要素と機能要素の間の因果関係を表す「製品技術」と,人工物の生産に関わる工程要素と,生み出される製品の構造・機能要素の間の因果関係を表す「工程技術(生産技術)」とに分かれる(図1-5)。」藤本隆宏(2009)「ものづくり分析・アーキテクチャ分析のフレームワーク」藤本隆宏、桑嶋健一編『日本型プロセス産業 — ものづくり経営学による競争力分析』第1章、p.26
fujimoto-2009-Product-Production-Technology
カテゴリー: Product Technology, Production Technology, 理論的分析 | Product Technology vs Production Technology はコメントを受け付けていません

技術戦略論2016.1.21(補講日授業)

[前回の授業内容]技術戦略論2016.1.14
[今回の授業内容]
http://www.sanosemi.com/history_of_Intel_CPU_techspecs0.htm

CPU=マイクロプロセッサーの先行的開発

4bit CPU ——————————————
Intel:4004(1971)
—————————————————

8bit CPU ——————————————
Intel:8008(1972)
Intel:8080(1974) Motolora:6800(1974)
Zilog:Z80(1976) MOS Technology:6502(1975)
—————————————————

16bit CPU —————————————–
Intel:8086(1978)
Intel:8088(1979) Motolora:68000(1979)
—————————————————
  ↓
32bit CPU —————————————–
Motolora:68020(1984)
Intel:80386(1985)
—————————————————
Compaq:DESKPRO386 (1986)

マイクロプロセッサー関連資料 - 売上高シェア1977,1981,1890,1995
PCの販売台数シェアおよび総販売台数の推移 1976-1982
日本におけるPCの年度別出荷台数・出荷金額ほか
IBM PC,IBM PC/XT,IBM PC/ATの出荷台数の歴史的推移(1981-1987、単位:万台)

カテゴリー: PC, 事例分析 | 技術戦略論2016.1.21(補講日授業) はコメントを受け付けていません

技術戦略論2015.1.14

[前回の授業内容]技術戦略論2016.1.7
 
[今回の授業内容]
1.共通Moduleをコア部分に持つ諸Product — PC、タブレット、スマートフォン、ゲーム専用機、日本語ワープロ専用機、自動車の電子制御機構およびナビゲーション・システム
共通Moduleとしては下記のようなものがある。
1) CPU(Central Processing Unit,中央演算処理装置)
その大きさから、マイクロプロセッサ(Microprocessor)と呼ばれることもある。
2) GPU(Graphic Processing Unit,画像処理装置)
3) Software(OSソフト、アプリケーションなど)
 
上記Moduleに関する技術革新は、上記の共通Moduleをコア部分に持つPC、タブレット、スマートフォン、ゲーム専用機などの諸Productの製品イノベーションのseeds的要因となる。
Moduleに関する技術革新がProduct Innovationの遂行プロセスの一環として同時になされる場合もあれば、Product Innovationに先行しそれと独立になされる場合もある。Moduleに関する技術革新がProduct Innovationに先行する場合には、Product Innovationはseeds-oriented innovationとなる。
 
2.IBMとコンピュータ製品
(1)コンピュータ製品市場に属する三つの製品セグメントに対する、IBMの市場参入時期
ニーズ            Product
Central Computing用途 -> Mainframe(1950年代) —- 先発者としてのIBM
Departmental Computing用途 -> Minicomputer(1960年代) —- 後発者としてのIBM(先発者はDEC)
Personal Computing用途 -> Microcomputer = Personal Computer(1970年代) — 後発者としてのIBM

 
3.PC製品イノベーションの世代分類
ゲーム専用機の製品イノベーションの世代分類と同じような構造、最初はPCが先行したが、64bit機に関してはゲーム専用機が先行した。
8bit PC — CPU開発がPC製品イノベーションに先行(CPUというシーズが主導する製品イノベーション)
8bit PC製品の技術イノベーションの源泉は、PC製品メーカーの内部ではなく、外部にあった。[シュンペーターMarkI型モデル]
 
カテゴリー: PC, コンピュータ, 事例分析 | 技術戦略論2015.1.14 はコメントを受け付けていません

技術戦略論2016.01.07

[前回の授業内容]技術戦略論2015.12.17
[次回の授業内容]技術戦略論2016.1.14
[今回の授業内容]
1.計算機・コンピューター製品に関する技術革新の歴史的概観
(1)技術の段階的発展 — 計算道具(そろばんほか)→ 機械式計算機(手動歯車式→電動歯車式・電磁リレー式)→ 電子式計算機=コンピューター(真空管式→個別半導体式→LSIC式)、ゲーム機

技術革新1 — 「道具」から「機械」への技術革新[計算道具 → 機械式計算機]
技術革新2 — 「機械式」から「電子式」への技術革新

 
(2)ハードウェアとしてのコンピュータの分類 — 機能・性能・価格などという基準からの4分類
  1. スーパーコンピュータ(supercomputer)
  2. 大型コンピュータ(large scale computer)[メインフレーム(mainframe)、汎用コンピュータ(general purpose computer)]
  3. ミッドレンジコンピュータ(midrange computer)[ミニコンピュータ(minicomputer)、ワークステーション(Workstation,WS)]
  4. パーソナルコンピュータ(Personal Computers,PC)

また上記の2~4のコンピュータは、コンピュータの利用主体が「会社全体であるのか、部門であるのか、個人であるのか」によって下記のように呼ばれることもある。

利用主体別
製品分類
大きさによる
製品分類
一般的名称 登場年代
central computing
(全社的業務用computing)
room-size computer
large scale computer
(大型計算機)
mainframe computer
(メインフレーム)
1950年代
departmental computing
(部門的業務用computing)
minicomputer
(ミニコンピュータ)
minicomputer
(ミニコン、
ミッドレンジコンピュータ)
1960年代
persnal computing
(個人的作業用computing)
microcomputer
(マイクロコンピュータ)
パーソナルコンピュータ 1950年代
2.Product-Module視点から見た製品イノベーション事例としての、製品イノベーションに対するCPUに関する技術革新の先行
CPUに関する技術革新
電卓製品セグメントにおける市場環境の変化に対する技術的対応の結果としての、マイクロプロセッサーの技術的発明

電卓における製品差異化、および、高級電卓の多品種少量生産への技術的対応の一つの試みとしてのマイクロプロセッサー — 電卓上がりのマイクロプロセッサーとしてのIntel4004
マイクロプロセッサーおよびパーソナルコンピュータの歴史的発達過程と技術戦略
Intel社が開発したマイクロプロセッサーの技術的スペックの歴史的変遷
マイクロプロセッサーIntel 4004の製品開発プロセス

互換性維持重視戦略に基づくIntelのマイクロプセッサー開発 vs 性能向上重視略に基づくMotorolaのマイクロプセッサー開発
   ↓
PC製品イノベーションおよび家庭用ゲーム専用機製品イノベーションの社会的成功

 

米国におけるPC、ミニコン、メインフレームの出荷台数および金額(1965-1990)

 
 
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技術戦略論2015.12.10

[前回の授業内容]技術戦略論2015.12.03
[次回の授業内容]技術戦略論2015.12.17
1.技術的過渡期におけるハイブリッド製品の登場
 
「製品技術」(product technology) vs 「生産技術」(production technology)
技術のS字曲線的発展を具体的事例で考える場合には、「製品技術」 vs 「生産技術」という技術に関する二種類の区別に基づく下記のような論点を理解しておく必要がある。
 
1) 新世代機は、研究開発開始時点では旧世代機よりも「性能が低い」。また性能的に対抗できるようになった時点でも「コストが高い」
研究開発に十分な時間や投資をかけた旧世代「製品技術」に基づく製品は、研究開発が始まったばかりで十分な時間や投資がかけられてはいない新世代「製品技術」に基づく製品よりも性能が高いことが多い。下記の図で言えば、新世代「製品技術」に基づく製品開発が始まったばかりのt1時点では、旧世代「製品技術」に基づく製品の性能P1の方が、新世代「製品技術」に基づく製品の性能P2よりも高い、ということである。
       ↓
研究開発時間および研究開発投資の増加とともに、新世代「製品技術」に基づく製品の性能が旧世代「製品技術」に基づく製品の性能に追いつき、やがて追い越すようになる。下記の図で言えば、t2時点で新世代「製品技術」に基づく製品の性能が旧世代に追いつき、t3時点では新世代「製品技術」に基づく製品の性能が旧世代「製品技術」に基づく製品の性能よりも有意味に高くなっている。
       ↓
しかし、製品の製造コスト低減に関わる「生産技術」(production technology)のS字曲線的発展は、アッターバックのドミナント・デザイン論でも論じられていたように、製品の新機能や性能向上の実現に関わる「製品技術」(product technology)のS字曲線的発展よりも遅れる。
       ↓
そのため新世代「製品技術」に基づく製品の性能が旧世代に追いついたt2時点では、新世代「製品技術」に基づく製品に関する「生産技術」の発展がまだ十分にはなされてはいないため、コスト的には新世代製品は旧世代製品よりも劣っている。
       ↓
さらなる研究開発時間や研究開発投資の継続により、そのため新世代「製品技術」に基づく製品の性能が旧世代を追い抜くとともに、新世代「製品技術」に基づく製品に関する「生産技術」の発展により新世代製品が旧世代製品とコスト的に対抗できるようになるt3時点が到来する。
 
図1 製品の性能向上曲線 図2 製品の低コスト化度曲線
製品の性能向上曲線 製品の低コスト化度曲線
 
 
 
2) 旧世代「製品技術」に基づく互換性の確保、旧世代製品に関する「生産技術」に基づく低コスト性の実現、および、 新世代「製品技術」に基づく高性能性の実現を目標とするハイブリッド製品
図3 蒸気機関と水車のハイブリッド製品 図4 帆と蒸気動力機関のハイブリッド製品としての黒船
Waterwheel-vapor_engine_-Ree-p249 Japanese_1854_print_Commodore_Perry-1
 
2.性能向上と互換性維持の同時達成を目指す4種類の両立戦略
 
(1) 両立戦略(その1)— 新規ハードウェア・モジュールによる性能向上実現
            +旧世代ハードウェア・モジュール利用による互換性確保
(2) 両立戦略(その2)— 既存高性能ハードウェア・モジュールによる性能向上実現
            +旧世代ハードウェア・モジュール利用による互換性確保
(3) 両立戦略(その3)— 既存高性能ハードウェア・モジュールによる性能向上実現
            +エミュレーション・ソフト新規開発による互換性確保
(4) 両立戦略(その4)— 新規ハードウェア・モジュールによる性能向上実現
            +エミュレーション・ソフト新規開発による互換性確保
 
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技術戦略論2015.12.03

[前回の授業内容]技術戦略論2015.11.26
[次回の授業内容]技術戦略論2015.12.10
[今回の授業内容]
製品イノベーションにおける「radical/incremental」、「非互換/互換」という二つの技術的選択
技術的にradicalなイノベーションでは、旧世代機に対する飛躍的な性能向上の実現が一般に期待できるが、製品技術(product technology)や製造技術(production technology)に関しては旧世代技術に関わる様々なresourceを利用できないことが多いし、コスト増なしに旧世代製品との互換性確保を実現できないことが多い。(製品イノベーションにおいてすぐに製品の飛躍的な性能向上を実現することは、「他企業で既に開発済みであるが、当該製品セグメントでまだ未利用である」ような既存技術を利用する場合には可能であるけれども、新技術開発が必要な場合には、技術のS字曲線的発展に示されているように、飛躍的な性能向上の実現には、一定の時間がかかることが多い。)
その逆に技術的にincrementalなイノベーションでは、旧世代機に対する飛躍的な性能向上の実現が困難になることが多いが、製品技術(product technology)や製造技術(production technology)に関しては旧世代技術に関わる様々なresourceを利用できることが多いし、コスト増なしに旧世代製品との互換性確保を実現できることも多い。

ここでは、「性能向上よりも先行製品との互換性をなるべく維持する方向で製品開発をおこなう」ことを「互換性維持」重視戦略と呼び、「先行製品との互換性維持よりもなるべく性能向上を実現する方向で製品開発をおこなう」ことを「性能向上」重視戦略と呼ぶことにしよう。

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技術戦略論2015.11.26

[前回の授業内容]技術戦略論2015.11.12
[次回の授業内容]技術戦略論2015.12.03
[今回の配付資料]
  1. 技術戦略論2015.11.12 授業記録メモ
[今回の議論理解に必要な背景的知識]
1.技術視点から見た製品評価に関わる基礎的知識
(1)技術進歩の評価視点の複数性 —-「機能」(function)と「性能」(performance)の区別
a.「機能」(function)は「有無」で判断される —- 「2D画面表示」機能、「3D画面表示」機能、「指紋認証」機能、「音声認識」機能
b.「性能」(performance)」は「高低」で判断される —- 「2D画面表示」機能に関わる性能としての、「表示可能色数」性能、「画面画素数」性能、「コントラスト比」性能
 
(2)現実の製品の持つ「機能」(function)の複数性・多種性
CPUモジュールが主として担う「一般的演算処理」機能、GPUモジュールが主として担う「画像データ処理」機能、マイク装置で入力した音声データを音声認識プログラム・ソフトとCPUモジュールで処理することによる「音声認識」機能、タッチパネル装置で入力した文字を文字認識プログラム・ソフトとCPUモジュールで処理することによる「文字認識」機能
 
(3)各機能それぞれに関する「性能」(performance)の評価指標の複数性・多様性
 
 
2.技術視点から見た製品イノベーションの性格分類に関わる基礎的知識
(1)「機能」(function)の複数性・多種性および「性能」(performance)評価指標の複数性・多様性に起因する製品イノベーションによる「製品進化」および「ポジショニング分類」の複雑性
現実の製品では顧客の製品選択において重視される製品機能が一つではなく複数であるため、ポジショニング分類は実際には単純ではない。現実の製品は複数の機能を持っているが、現実の製品イノベーションにおいてそれぞれの機能に関して性能向上の度合いが必ずしも同じではない。
 たとえば音楽ソフトにおけるアナログレコードからカセットテープへの媒体変化の製品イノベーションにおいては、大きさや取り扱いやすさという機能に関しては性能向上があったが、再生可能な音楽の周波数特性やランダムアクセスなどの機能に関しては性能ダウンであった。
 
ゲーム専用機でいえば、CPUモジュール以外に、GPUモジュール、ロムカセット、CD、DVD、ブルーレイなどの記憶媒体装置モジュール、入力装置モジュールに関する音声認識機能、タッチパネル機能など、各構成モジュールごとに多種多様な機能が存在する。そしてそれらの各機能のそれぞれにまた多種多様な性能評価指標が存在する。
 
(2)ゲーム機の製品イノベーション理解において注意すべきポイント
  1. 製品イノベーションによる「旧世代」製品の陳腐化、および、「新世代」製品に対するニーズ喚起
  2. スマートフォン製品(アンドロイドケータイ、iPhone)やPC製品と比べて、製品の世代交代間隔が長い。すなわち、同一世代のプラットフォーム持続期間が長い。
  3. 「旧世代」製品に対して、「新世代」製品では、一般的には研究開発投資額が巨額化するとともに、「新世代」製品用ソフトの開発費も巨額化する
 
2.製品イノベーションにおける「互換性維持」vs 「非互換」という技術的選択(再論)
ゲーム専用機の製品イノベーションにおける「互換性」分析のための視点(その3)
  1. 直接的互換性 — プラグイン・コンパチブル的ハードウェア互換性(差し込み口やUSBなどインターフェースも含む)
  2. 機能的互換性 — 十字キー、ジョイ・スティック装置などの操作性に関する操作互性
  3. インターフェース的互換性 — コマンド画面における選択肢の選択法など
 
[今回のポイント]
1.製品イノベーションにおける「互換性維持」重視戦略
事例1.ゲームボーイからゲームボーイカラーへの製品イノベーションにおける互換性維持重視
 
ゲームボーイカラーの信頼性評価および電子回路設計の担当者へのインタビュー記事。本記事では互換性の検証に関して下記のように書かれている。
1600本ものソフトをプレイしなければならなかったんです
 信頼性評価担当ということで、私にはゲームボーイカラーの開発でもっともタイヘンな仕事がまわってきたんです。それは、いままでに発売されたゲームボーイ用ソフトが動くかどうかを確認する作業。なんといっても、サードパーティの作品も含めて、1600本もプレイしなければならないんですからね。私とスーパーマリオクラブとで8人のチームを組んで、なるべく短期間のうちになんとか終わらせようとがんばりましたが、もう、限界を超えていました。もちろん、8人で全部をチェックできるワケもなく、半分くらいは宇治工場のスタッフに手伝ってもらいましたが。さすがに1600本もあると、なかには操作方法が特殊で分からないソフトなんかもあって、作業はかなり難航しました。
 
上記のように、ゲームボーイアドバンスは、旧世代機のゲームボーイ用ソフトがそのまま遊べるようにという方針のもとに開発された
 
2.製品イノベーションにおいて互換性維持を実現するための技術的手法の事例
a.任天堂の携帯型ゲーム専用機における互換性確保 —「新世代」機における「旧世代」機CPUの内蔵
Nintendo_Gameboy-3DS-compatibility
 
b.任天堂のGamecubeとWiiにおける互換性確保 —「新世代」機における「旧世代」機と同一アーキテクチャ・同一世代のCPUの採用
 
c.任天堂のWiiにおける各種製品との互換性確保 —「新世代」機における「各種製品」のエミュレーション
 
カテゴリー: 事例分析, 家庭用ゲーム専用機, 理論的分析, 製品セグメント, 重要-家庭用ゲーム機 | 技術戦略論2015.11.26 はコメントを受け付けていません

技術戦略論2015.11.12

[前回の授業内容]技術戦略論2015.11.05
[次回の授業内容]技術戦略論2015.11.26
[今回の配付資料]
  1. 技術戦略論2015.11.05 授業記録メモ
 
[今回の議論に関わる背景的知識]
1.Economy of scale(規模の経済) vs Economy of scope(範囲の経済)
(1)Economy of scale(規模の経済)— 「同一製品の大量生産」による製造単価の低減(研究開発費用などの固定費に関する、一製品単位当たりの負担減少)という経済的効果
ファミコン(1983年販売開始、6,191万台)、初代PS(1994年販売開始、1億249万台)、PS2(2000年販売開始、1億5,540万台)など大量販売されるゲーム専用機
 
(2)Economy of scope(範囲の経済)— 「同一要素の多種類の領域・範囲での利用」による新製品開発コストの低減という経済効果
アーケードゲーム機用に開発したソフトの家庭用ゲーム専用機への移植、PCなどの既存製品で利用されていたCPUやGPUのゲーム専用機における利用
 
2.ゲーム機市場の製品セグメント構成
ゲーム機製品のセグメント構成
業務用TVビデオゲーム機(アーケードゲーム機) — 1972年のアタリ社PONGなど
家庭用TVビデオゲーム機(据置型) — 1972年のマグナボックス社Odysseyなど
 
[今回のポイント]
1.製品イノベーションにおける「互換性維持」vs 「非互換」という技術的選択
製品イノベーションにおける製品設計として、「新世代製品に対して旧世代製品に対する互換性維持を実現するのか?それとも非互換とするのか?」という技術的選択が製品間競争のあり方を大きく規定している。
「互換性を維持することのメリット/デメリット」は、「互換性を維持しないことのメリット/デメリット」とちょうど裏返しの関係にある。
ゲーム機の製品イノベーションにおける互換性維持に関して任天堂は20世紀中は据置型TVゲーム専用機と携帯型ゲーム専用機とでは異なる技術戦略を取っていた。
 
(1) ゲーム専用機の製品イノベーションにおける「互換性」分析のための視点(その1)— 「共時」的互換性 vs 「通時」的互換性
 
a.「共時」的互換性 — 同世代製品間での互換性
「同世代に属する異なる製品の間で互いに互換性があるのか?ないのか?」
「同世代製品と互換性を持たせるのか?持たせないのか?」
 
b.「通時」的互換性 — 世代を超えた互換性
「新世代製品は旧世代製品と互換性があるのか?ないのか?」
「新世代製品に旧世代製品との互換性を持たせるのか?持たせないのか?」
 
(2) ゲーム専用機の製品イノベーションにおける「互換性」分析のための二つの視点(その2)
 
a.「ユーザー」視点から見た互換性
「旧世代製品のソフトウェア製品や周辺機器製品が、新世代のハードウェア製品でも利用可能なのかどうか?」
 
b.「メーカー」視点から見た互換性
「旧世代のハードウェア製品、ソフトウェア製品、周辺機器製品に関わる研究開発能力・開発ソフト・開発装置・製造設備が、新世代の製品開発や製品製造でも利用可能なのかどうか?」
 
カテゴリー: 事例分析, 家庭用ゲーム専用機, 理論的分析, 製品セグメント, 重要-家庭用ゲーム機 | 技術戦略論2015.11.12 はコメントを受け付けていません

技術戦略論2015.11.5

[前回の授業内容]技術戦略論2015.10.29
[次回の授業内容]技術戦略論2015.11.12
[今回の配付資料]
 
[今回の参考資料]
[今回のポイント]
1.製品イノベーションによる持続的競争優位追及の3類型
製品イノベーションの技術的意義は、単純化して言えば、1)「新機能」追加、2)「高機能」化、3)「低コスト」化の3つである。それゆえ製品イノベーションにおいて、新世代製品が旧世代製品に対して競争優位性を持つ仕方は、単純化して言えば下記のような3類型に分類することができる。ポーターの競争戦略論的に言えば、下記の(1),(2)はdifferentiation、(3)はcost leadershipと位置づけることができる。
 
(1) 当該製品セグメントで利用されていない、あるいは、どの製品セグメントでも利用されていない「新機能」を搭載する
ex.1 「ファミコン」→→「漢字」利用機能の搭載→→「スーファミ」
 
ex.2 「ゲームボーイ」→→「カラー表示」機能および「赤外線通信」機能の搭載→→「ゲームボーイカラー」
 
図1 「カラー表示」という新機能の搭載による製品のusefulnessの増大– ゲーム画面の比較
ゲームボーイの
モノクロ画面
  ゲームボーイカラーの
カラー画面
kyo_gb カラー化 kyo_col
no_gb カラー化 no_col
mono-3col-GBR 色による服の区別
緑の通常服
青の防御服
赤の攻撃服
color-3col-GBR
 
ex.3 「ゲームボーイアドバンス」→→「音声認識」機能、「手書き文字認識」機能、「ワイヤレス通信」機能、「3D描画処理」機能の搭載 →→「ニンテンドーDS」
 
各機能を利用したミニゲームの紹介
 
[関連事項]ニンテンドーDSにおける新機能の搭載による、「脳活性化ソフト」という新しいゲームソフト製品サブ・セグメントの成立
[参考WEB]
1) 「東北大学未来科学技術共同研究センター川島隆太教授監修 脳を鍛える大人のDSトレーニング」公式WEBサイト
2) 「東北大学未来科学技術共同研究センター川島隆太教授監修 もっと脳を鍛える大人のDSトレーニング」公式WEBサイト
 
ex.4 「ゲームボーイでの通信ケーブルによる有線通信機能」→「ゲームボーイカラーでの赤外線による無線通信(ワイヤレス通信)機能」→「DSでのWifiによる無線通信機能」
通信対戦、データのやり取り、すれ違い通信
 
(2) 当該製品セグメントにおける同価格帯の旧世代製品よりも「高性能化」する
ex.1 「ファミコン」→→ 8bit CPUから16bit CPUへの性能向上 →→「スーファミ」
ex.2 「ゲームボーイ」→→ 8bit CPUが倍速動作可能、メイン・メモリ(RAM)容量が4倍化、VRAM容量が2倍化 →→「ゲームボーイカラー」
ex.3 「ゲームボーイカラー」→→→ 8bit CPUから32bit CPUへの性能向上,画面サイズが1.5倍化、VRAM容量が6倍化, 同時表示発色可能数が56色から32,768色へ585倍化,画素数が1.7倍化 →→→「ゲームボーイアドバンス」
ex.4 「ゲームボーイアドバンス」→→→ 画面サイズはほぼ同じだが2画面化、メインメモリが約15倍化、同時表示発色可能数が8倍化 →→→「ニンテンドーDS」
 
(3) 当該製品セグメントにおける同性能の旧世代製品よりも「低価格化」する
 
2.携帯型ゲーム機の製品イノベーションにおける任天堂DSの技術戦略 vs ソニーPSPの技術戦略
(1)「旧世代製品にない新機能」による競争優位の追及 vs 「旧世代製品に対する高性能化」による競争優位の追及
 
旧世代製品 「ゲームボーイアドバンス」
(2001年3月21日発売開始)
新世代製品の
開発意図
旧世代製品にない新機能 旧世代製品に対する高性能化
開発された
新世代製品
「ニンテンドーDS」
(2004年11月21日発売開始)
「PSP-1000」
(2004年12月12日発売開始)
結果としての
ポジショニング
同世代製品にない新機能
によるdifferentiation
同世代製品に対する高性能化
によるdifferentiation
 
[参考図]
図2 ゲームボーイアドバンス
Game-Boy-Advance-1stGen
 
図3 ニンテンドーDS
Nintendo_DS_Trans
 
図4 ソニー PSP-1000
Sony-PSP-1000-Body
 
カテゴリー: 事例分析, 家庭用ゲーム専用機, 重要-家庭用ゲーム機 | 技術戦略論2015.11.5 はコメントを受け付けていません

任天堂のニンテンドーDS用の脳トレ — ハードウェア的新機能を利用した新ジャンルのソフトウェア

2005年に発売開始された『脳を鍛える大人のDSトレーニング』(2005/05/19)、『もっと脳を鍛える大人のDSトレーニング』(2005/12/29)は、2015年9月末までの累計販売本数がそれぞれ 1,901万本(4位)、 1,488万本(7位)というように、どちらも任天堂がニンテンドーDS用に販売したソフトのベスト10に入る売り上げをあげている。

これらのソフトは、どちらもニンテンドーDSで搭載された新機能を利用した新ジャンルのソフトウェアである。

[考察してみよう]
『脳を鍛える大人のDSトレーニング』、『もっと脳を鍛える大人のDSトレーニング』というproduct innovationは、「needs-oriented」(ニーズ主導的)、「seeds-oriented」(シーズ主導的)、「needs=seeds co-oriented」(ニーズ=シーズ協働的)のどのタイプに分類するのが最も適切か?
needsの意味をusefulness(有用性)、wants(欲求)、demand(需要)の3種類に区分するとともに、seedsの意味をtechnology(技術)、parts/module(部品・モジュール)、product(製品)の3種類に区分した上で、わかりやすく説明しなさい。
 

data_ds_004

「音声認識」機能を利用したゲーム
【音声計算】 【色彩識別】
音声計算 色彩識別
計算問題の結果を声で答える 画面に表示される「色の名前」の文字が何色で書かれているのかを声で答える
【高速数え】
1から120までの数字を読み上げる。
 
「タッチスクリーン」認識機能を利用したゲーム
【瞬間記憶】 【順番線引】
ディスプレイ画面にある枠に数字が一瞬だけ表示されます。タッチスクリーンに同じ形の枠が表示されるので、数字の小さい順にタッチしてください。 A→ア→B→イ→C→ウ・・・といった順番で文字から文字へできるだけ速く線を引いてください。目的の文字でないものに触れないように注意してください。
 
「手書き文字」認識機能を利用したゲーム
【単語記憶】
単語記憶
画面に表示される28個の単語を覚え、その後、表示されていた単語を1つずつ書いてゆく
「手書き数字」認識機能を利用したゲーム
【計算20】
【計算100】
【文字数え】
計算結果の数字を書く ディスプレイ画面に表示されている文字をひらがなにすると何文字になるのかを書く
【人数数え】 【三角暗算】
人が家の中を出たり入ったりした後で、最後まで家に残っている人数を書く。 上の段から順に、記号に従って隣り合う数字を足したり引いたりして、最終的結果の数字を書く。
【時計計測】 【数字数え】
上の時計の時刻から下の時計の時刻まで経過した時間を書く。 ディスプレイ画面に表示されている様々な色の数字に関して、問いに該当する数字の数を書く。
 

data_ds_005

「手書き文字認識」機能を利用したゲーム
【漢字書取】 【漢字合成】
漢字書取 漢字合成
カナの文字を漢字で書く 漢字のパーツを組み合わせた漢字を書く
【日付計算】 【四字熟語】
日付計算 四字熟語
曜日を漢字で書く 四字熟語を完成させる
【聖徳太子】 【音読差分】
聖徳太子 音読差分
読み上げられた3文字の単語を聞き取り、ひらがなで書く 画面に順次表示される二つの文章の違っている箇所の漢字を書く
 
「音声認識」機能を利用したゲーム
【後出勝負】
後出勝負
画面に表示される「グー・チョキ・パー」の絵を見ながら、条件に合わせて「グー」「チョキ」「パー」を音声で答える
[図の出典]
 

任天堂のニンテンドーDS用の脳トレ — ハードウェア的新機能を利用した新ジャンルのソフトウェア はコメントを受け付けていません

radical innovationにおける互換性実現に関する技術的困難性

Microsoftによる「2015年秋までにXbox One上で動作するXbox 360のエミュレーターを開発し、360のソフト、100タイトルを提供することを予定している」という趣旨のE3 2015における発表に対する、SonyのPS4のソフト開発責任者・吉田修平氏(SCEワールドワイド・スタジオ代表)のコメントに関する記事。
本記事によれば、吉田氏は、「PS4でPS3のソフトを動かすことは超困難(super challenging)な作業になるだろう」と述べている。その理由は、「ほとんどのPS3ソフトはPS3のアーキテクチャーに最適化されており、更に、ソフトによってはSPUに依存した作りとなっている」ということである。

[原文]
Wesley Yin-Poole(2015) ”Don’t hold your breath for PS4 backwards compatibility — “PS3 is such a unique architecture…” ” eurogamer.net, 2015/06/19

radical innovationにおける互換性実現に関する技術的困難性 はコメントを受け付けていません

技術戦略論2015.10.29

[前回の授業内容]技術戦略論2015.10.22
[次回の授業内容]技術戦略論2015.11.5
 
[今回の配付資料]
[今回の参考資料]
 
[今回のポイント] [pdf版]
1.ファミコン vs SG-1000(再論)

ファミコン SG-1000
ゲームソフト 既存 既存
メディア 既存 既存
CPU 既存 既存
GPU 新規開発 既存
コントローラー 新規開発 既存
(1) 製品イノベーションに関するneeds視点およびseeds視点からの理解
a. needs視点からの理解 —- 関連する既存製品市場が示すusefulness、wants、潜在的需要(Potential demand)というneedsの存在
  1. アーケードゲーム機に対するneeds — 専用LSIを利用した非家庭用ゲーム専用機[ゲームセンターや喫茶店などに設置されたマシン]、特定のゲームのみに対応する専用機
  2. 家庭用TVゲーム機に対するneeds — 専用LSIを利用した家庭用TVゲーム専用機、特定のゲーム専用のマシン(第一世代)、および、ROMカートリッジの差し替えによる複数ゲームを遊べるマシン(第二世代)
  3. ミニコンピュータ上でプレイするゲームやPC用ゲームソフトに対するneeds —- ミニコン用ゲームソフト、および、PC用ゲームソフト(Microsoft社のBASIC言語プログラムソフトの対象顧客の重要な構成要素の一つ)に対するneeds
 
b. seeds視点からの理解 —- 既存seedsの活用 vs 新規技術開発・新規module開発
  1. アーケード機用ゲームという既存ゲームソフトの転用(移植)— 任天堂の『ドンキーコング』、『ドンキーコングJR.』、『ポパイ』、セガの『トランキライザーガン』(Tranquilizer Gun)[SG-1000ではサファリハンティングという名称のゲームソフトとして移植されたもの]、ナムコ(現・バンダイナムコエンターテイメント)の『ギャラガ』
  2. ROMカートリッジ(ROMカセット)という既存メディアに収納されたゲームソフト — ROMカートリッジの差し変えにより様々なゲームソフトが利用できる第2世代ゲーム機は1976頃には既に存在した。(ex.フェアチャイルドセミコンダクターのチャンネルF(1976)のVideocartsというROMカートリッジ
  3. 「十字ボタン、A / Bボタン、START、SELECTボタン」からなるコントローラという新規開発moduleで「差異」化を追求したファミコン VS ジョイスティックという既存module利用で「同質」化を追求したSG-1000
 
C. 参考図
図1 任天堂のアーケード機用ゲーム『ドンキーコングJR.』

Video_Games_Volume_1_Number_06_1983-03_p46

[出典]Video Games,1(6), 1983-03, p.46
 
図2 フェアチャイルドセミコンダクターのチャンネルF(1976)のVideocartsというROMカートリッジ
 Video_Games_Volume_1_Number_06_1983-03_p73-ROM
[出典]Dionne, R.(1983) “Channel F: The System Nobody Knows,” Video Games,1(6), 1983-03, p.73
 
図3 任天堂のファミコンとそのコントローラー
Famicom-Console-Set 
[出典]https://en.wikipedia.org/wiki/Nintendo_Entertainment_System#/media/File:Famicom-Console-Set.png
 
図4 ファミコンの日本国内出荷台数の推移 1983-1988[単位:万台]
 
famicom-1983_1988

出荷台数 累積出荷台数
1983 44 44
1984 167 211
1985 368 579
1986 390 969
1987 178 1,147
1988 159 1,306
 
[引用元]『情報化白書1989』p.105
[原出典]任天堂発表資料
 
図5 ファミコンの日本国内出荷台数の推移
上村雅之-1990-ファミコンメディア_その技術背景について-計測と制御』-29_6-p551-data
 
図6 既存moduleとしてのジョイ・スティック装置 — アーケードゲーム機およびPC用ゲームソフトにおける利用
Video_Games_Volume_1_Number_06_1983-03_Pumpkin_Press_p35
[出典]Blanchet,M.(1983) “Beating the Top 15 Coin-ops,” Video Games,1(6), 1983-03, p.35
 
図7 既存moduleとしてのジョイ・スティック装置 — セガのSG-1000に付属のジョイ・スティック(SJ-200)
Sega-SG-1000-joy

 
技術戦略論的視点から見た技術イノベーションと、「製品」レベルにおける機能的意味・性能的意味
  1. 8ビットゲーム機から16ビットゲーム機への製品イノベーションの技術的意味と製品的意味 —- 28=256から216=65,536への技術的「性能」向上が可能とした、製品イノベーションとしての「漢字処理」機能の新規実現(ex.ファミコン版ドラクエ vs スーファミ版ドラクエ)
  2. 16ビットゲーム機から32ビットゲーム機への製品イノベーションの技術的意味と製品的意味 —- 216=65,536=64Kから232=4Gへの技術的「性能」向上が可能とした、製品イノベーションとしてのCD利用、3Dデータ処理(ポリゴン処理)、画面のフルカラー表示対応
  3. 32ビットゲーム機から64ビットゲーム機への製品イノベーションの技術的意味と製品的意味 —- 232=4Gから264=4Gの40億倍への飛躍的な技術的「性能」向上が可能とした、製品イノベーションとしてのDVD対応、ブルーレイディスク対応
 

図8 ひらがなとカタカナだけのファミコン版ドラクエのコマンド画面 図9 漢字使用のスーファミ版ドラクエのコマンド画面
ドラゴンクエストIII -ファミコン2 ドラクエIII-sfc
図10 ひらがなとカタカナだけのファミコン版ドラクエのエンディング画面 図11 漢字使用のスーファミ版ドラクエののエンディング画面
ドラゴンクエストIII -ファミコン-01-24 ドラクエIII-sfc2
ドラクエIII-sfc-04-10
[出典]
 
 
[関連参考資料]
 
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技術戦略論2015.10.22

 
[今回の配付資料]
 
[今回のポイント] [pdf版]
1.Technology, Market, Productの関係(再論)
Technology + Market
  ↓
Product Concept(製品コンセプト)
  ↓
Product Design(製品デザイン・製品設計)
 
(1) Technologyの経営学的分類 —- 既利用の既存技術,未利用の既存技術,新規利用の新規開発技術
Tecnnologyに関しては、「既存」技術(「開発済み」技術)と「新規開発」技術という区分、および、既存技術に関する「既利用」既存技術と「未利用」既存技術という区分から理解することが必要である。
後者の区分はシュンペータの新結合論的イノベーション論の基本的問題意識である。すなわち、「当該分野で既に利用されている既存技術」(既利用既存技術)に関するこれまでにない新しい組み合わせ[ハイブリッド自動車]や、「当該分野でこれまでにまだ利用されていないが、既に開発済で他製品セグメントで既に利用されている既存技術」(未利用既存技術)の新規利用による新しい組み合わせ[家庭用ゲーム専用機セグメントにおけるCPUの利用]もまたイノベーション論的には重要である。
technology00
 
 
(2) Marketの経営学的分類 —- 既存製品Marketの中の既存製品セグメント、既存製品Marketの中の新規製品セグメントの創出、新規製品Marketの創出
Marketに関しては下記の三つを区分することが技術戦略論的には必要である。

1)「既存製品Marketの中の既存製品セグメントに属する新製品開発を行う」
2)「既存製品Marketに属するものではあるが新規製品セグメントの創出を目的とした新製品開発を行う」
3)「それまでに存在していない新規製品Marketの創出を目的とした新製品開発を行う」
 
上記の区分は、「ターゲットとする新規顧客あるいは既存顧客に対してどのようなusefulnessを提供するのか?」「どのように新規wantsや新規demandを形成しようとするのか?」「どのような既存wantsや既存demandに対応しようとするのか?」といった判断・決定との関連で理解する必要がある。
 
既存製品Marketと、いまだ存在していない未知の製品Marketでは、技術開発や製品開発のあり方が異なる。Market Creation、すなわち、新市場創造を主たる目的として技術開発や製品開発をおこなってきた(あるいは、おこなっている)企業としては、20世紀におけるソニーや、20世紀末から21世紀にかけてのアップルが代表的である、とされている。
 
usefulness、wants、demandをきわめて抽象的レベルで捉えると、新しいusefulnessや新しいwantsというものは存在しない。
例えば、「遊びに役立つ」というusefulness、「遊びたい」というwants、「遊び」関連製品に対するdemandなどといった抽象的なレベルで考えてしまえば、どのような「画期的新製品」であっても、既存のusefulness、既存のwants、既存のdemandに導かれて開発された製品ということになってしまう。
 ファミコンによって社会的に明確となった家庭用TVゲーム専用機という新製品市場も、「遊びに役立つ」という既存usefulness、「遊びたい」というwants、「遊び」関連製品に対するdemandに導かれて開発された製品に過ぎないことになってしまう。
 「イノベーションはneeds-orientedである」、あるいは、「イノベーションはneeds-orientedであるべきである」というイノベーションに関するneeds-oriented説の「正当性」をこうした抽象的レベルで考えることは無意味である。
 というのも、どの社会にも存在する古代から不変のusefulness、wants、demandという要素だけでは、「なぜある特定の社会で、ある特定の歴史的時点で、それまでにない新しい製品が新規開発されたのか?」という新規性の説明ができないからである。普遍的要素、不変の要素によって、特定の場所・特定の時期における新規性の出現を説明・予測することはできない。
 
(3) Product designに関する技術戦略論的分類
a. 新技術の開発 and/or 既存技術の利用
 
b. Integral vs Modular/closed vs open
Modular製品としてのレゴブロック
 
2.家庭用ゲーム専用機製品に関する技術戦略論的分析
(1) 直接的に関連する市場的視点 — 関連する先行の製品市場が示す、家庭用ゲーム専用に対する潜在需要(potential demand)の存在という既存needs
[関連参考資料]
 
a.ゲームセンターや喫茶店などでの「アーケードゲーム」機
ex.1インベーダーゲーム
タイトーが1978年に発売開始したアーケードゲーム『スペースインベーダー』(Space Invaders)が推定約20-30万台とヒットし、数多くの類似商品や模倣品が出た。それらを総称してインベーダーゲームと呼ぶ。ヒット状況に関しては、日本語版ウィキペディアの「スペースインベーダー」の中の「販売前後」の記述「流行と影響」の記述が参考になる。

タイトーの『スペースインベーダー』のプレイ画面
 
b. 日本初の家庭用TVゲーム機[TVを表示装置として利用するゲーム機]であるエポック社『テレビテニス』(定価 19,500円)が1975年9月に販売開始(約2万台)
 
c. 米国におけるミニコンピュータ上でプレイするゲームやPC用ゲームソフト —- Microsoft社のBASIC言語プログラムソフトの対象顧客の重要な構成要素の一つ

(2) 直接的に関連する技術的視点 — 関連する先行の製品で用いられている既存Technologyおよび既存moduleという既存seeds
PC製品を実用化可能とした技術としてのLSI製造技術
LSI製造技術によって製造されたモジュールとしての「汎用的演算処理装置」CPU(マイクロプロセッサ)、および、「画像演算処理専用装置」 GPU(画像処理チップ)

 
(3) 基本設計のための製品分析
プレイヤー

[入力(プレイ)]

入力装置
汎用的演算処理装置 CPU
画像演算処理専用装置 GPU

[画像出力]

画像表示装置
 
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技術戦略論2015.10.8

[前回の授業内容]技術戦略論2015.10.1
[次回の授業内容]技術戦略論2015.10.22
 
[今回のポイント] PDF表示
1.「同一の技術をcore technology(持続的競争優位確保のための中核的技術)とした、異なる製品セグメントに属する製品
燃料電池技術による技術イノベーション —- 燃料電池技術をcore technologyとした各種の既存製品および新製品開発
  1. ガス会社のエネファーム(燃料電池を利用した給湯と発電)製品 —電力会社の「オール電化」戦略に対抗したガス会社の「オールガス化」戦略に基づく製品開発
  2. トヨタやホンダの燃料電池自動車
  3. 戸田建設やヤマハ発動機の燃料電池船
  4. 豊田自動織機の燃料電池を使ったフォークリフト
  5. 日野自動車の燃料電池バス
[考察してみよう]
燃料電池技術を用いた各種製品に関する下記のような記事などを参考にしながら、「同一の技術をcore technology(持続的競争優位確保のための中核的技術)としながら、どのように異なる製品セグメントに属する新製品が開発されているのか?」という事例を燃料電池技術以外で挙げなさい。
  1. 日本経済新聞(2015)「戸田建設やヤマハ発、燃料電池船開発 今夏に試験運航 」『日本経済新聞』2015/6/16朝刊
  2. 日本経済新聞(2015)「戸田建設、国内初の燃料電池船完成」日本経済新聞>速報>企業>記事、2015/8/5 19:43
  3. 香取啓介(2015)「燃料電池船、走り出す 国内初、実証実験スタート」朝日新聞DIGITAL,2015年8月8日20時29分
  4. 「「水素革命」船や鉄道に — 戸田建設など、排ガスなく静か、鉄道総研、架線要らず」『日本産業新聞』2015/10/01の一面記事
  5. 陰山遼将(2015)「日本初の燃料電池船が完成、船も水素でCO2フリーに」ITメディア、スマートジャパン、2015年8月10日
  6. 「トヨタ自動車株式会社/日野自動車株式会社のFCHV-BUS」水素・燃料電池実証プロジェクト パンフレット
  7. 日野自動車(2014)「日野自動車のFCバスへの取組みと課題」2014/03/26
  8. 小川賢一ほか(2010)「燃料電池車両の開発」『RRR』2010年7月号(特集:鉄道の将来に向けた研究開発-環境と調和した鉄道/低コストの鉄道)
  9. 熊谷則道(2001)”Development of Fuel Cell Vehicles”(燃料電池車両の開発)Quarterly Report of RTRI, 42(3), p.120
  10. 豊田自動織機(2013)「豊田自動織機、燃料電池フォークリフトを開発— 北九州市にて実証実験を開始」2013年2月7日プレスリリース
  11. 豊田自動織機 技術・開発本部 開発第二部 一条恒(2014)「燃料電池(FC)フォークリフトの取組について」
  12. 豊田自動織機(2014)「燃料電池(FC)フォークリフトの取組について」2014年3月26日
    日野自動車
2.「製品を構成するcore technology(持続的競争優位確保のための中核的技術)の複数性に起因する、異なるProduct designの各週製品
ex.1 自動車エンジンに関する既存技術を利用した環境対応製品
自動車関連の既存Technology — 既存技術としてのガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、電動モーター、二次電池(充電池)
走行時のCO2排出量やNOx排出量をゼロまたは従来よりもかなり低減した自動車製品に対するMarket needsの存在
既存技術と既存市場ニーズに基づくProduct Concept
Product Concept B>「走行時のCO2排出量やNOx排出量を既存製品よりも低減させた上で、走行可能距離が既存製品と変わらない」という製品コンセプト
製品コンセプトの具体化としてのProduct Design
Product Design B-1>「ハイブリッド」自動車
a.充電スタンドを利用できない「ハイブリッド」自動車(HV)
b.充電スタンドを利用できる「ハイブリッド」自動車(PHV)
Product Design B-2>「ガソリン・エンジン」自動車のincremental innovation
Product Design B-3>「ディーゼル・エンジン」自動車のincremental innovation

 

ex.2 ウエアラブル製品
アッターバックのドミナントデザイン論などで主張されているように、市場形成期には多種多様なproduct designの製品が登場することが多い。下記資料に示されているように、ウエアラブル製品市場もそうである。
  1. 2015.10.1配付のウエアラブル端末に関する参考資料
  2. 佐野正博(2015)「ウェアラブル端末」佐野授業メモ
  3. 佐野正博(2015)「ウェアラブル端末-記事分類に関する解答例」佐野授業メモ
3.「新結合」的イノベーション — 既存技術に基づく部品・モジュールの「新結合」的設計による新製品開発
 技術イノベーションとビジネスイノベーションの区別の根拠の一つは、新技術開発抜きに新製品開発が可能だということにある。
 製品が複数の部品・モジュールから構成されているということは、既存技術に基づく部品・モジュールの組み合わせや結合の仕方を新しくすることで新製品を生み出せることを意味する。シュンペーターの新結合論はまさにそうした点を突いたものである。
 茶運び人形や弓曳き童子などのからくり人形は、画期的な製品イノベーションとして位置づけることができる機械的製品であるが、ぜんまい、歯車、カム、レバー、棒てんぷ、糸など既存技術に基づく部品で構成されている。江戸時代末期の田中久重[芝浦製作所(後の東芝の重電部門)の創業者、からくり儀右衛門とも呼ばれる]の万年時計も同じく既存技術に基づく部品で構成されている。
 既存技術に基づく部品をそれまでにない新しい設計(design)で結び合わせることにより、それまでにない新しい製品を生み出すことができるのである。
 ソニーのカセット・ウォークマンという「新製品」も、既存のトランジスタ技術、小型カセットテープレコーダ技術に基づく部品・モジュールで開発された。そうであるからこそカセット・ウォークマンは製品開発開始決定からたった4ヶ月で製品販売開始にこぎ着けることができたのである。
 
 
[関連参考動画]
カテゴリー: core technology, seeds vs needs, ウエアラブル端末, 事例分析, 新結合, 理論的分析 | 技術戦略論2015.10.8 はコメントを受け付けていません

保護中: 2015.10.1配付のウエアラブル端末に関する参考資料

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「環境に優しい製品」(エコプロダクツ)

下記のように様々な企業が各種の「環境に優しい製品」(エコ製品、エコプロダクツ)を製造・販売している。
 
 
またそうした「環境に優しい製品」(エコ製品、エコプロダクツ)の社会的普及を推進しようとする様々な試みがある。
 
「環境に優しい製品」(エコプロダクツ) はコメントを受け付けていません

技術戦略論2015.10.01

[次週の授業内容]技術戦略論2015.10.8
 
[授業関連WEBサイト]
  
[今回のポイント]
1.技術戦略を理解するための前提的視点 — Technology, Product, Business, Market
(1) 新しいproduct(製品)の production process(生産プロセス)に関する図式的把握
Technology + Market
  ↓
Product Concept(製品コンセプト)
  ↓
Product Design(製品デザイン・製品設計)
  ↓
Product Manufacturing(製品製造)

(2) 上記の図式理解において注意すべき事項
a. Technology開発とProduct開発を区別すること
「同一の技術を用いて異なる製品コンセプトの下に、多種多様な新製品が開発されている」
「複数の技術を用いて新製品が開発されている」

 
2.Product Concept(製品コンセプト)、Product Design(製品デザイン・製品設計)、Product Manufacturing(製品製造)に関する理論的理解と具体的事例
 
ex.1 「自動車」というProductに関する製品イノベーションの分析
 
「環境に優しい技術」というTechnology seeds
a. 電動モーター技術
 
b-1. 電池技術(その1) — 燃料電池技術
18世紀末におけるボルタの電池の「発明」を利用して、1800年頃には水の電気分解という科学的現象が発見された。「水に電気を流すことで、水を水素と酸素に分解できる」という水の電気分解現象(2H2O+電気→2H2+O2)は、その逆のプロセス「水素と酸素を結合することで、水と電気を生成できる」という水素燃料電池の技術的可能性を示すものであった。1839年にはSir William Robert Grove水素と酸素を結合させて水と電気を発生させる装置を実際に作っている。

b-2. 電池技術(その2) — 充電池技術
ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、ニッケル亜鉛電池、空気亜鉛電池

走行時のCO2排出量やNOx排出量をゼロまたは従来よりもかなり低減した自動車製品
Product Concept
1) Product Concept A>「走行時のCO2排出量やNOx排出量がゼロであるクリーンな自動車」
次回に論じるように、同一のTechnologyおよびMarketを基に創出可能なProduct Conceptは、数多くある。ただし今回は説明の単純化のため下記のように一つのProduct Conceptだけを論じる。
多様なProduct Designの展開
Product Concept Aに基づく諸Product Design
A-1.「燃料電池」車(「一次電池=燃料電池」型電気自動車, Fuel Cell Vehicle, FCV)
A-2.「電気自動車」車(「二次電池=充電池」型電気自動車)(その1)— 従来型電気自動車
A-2-1 「ニッケル水素電池」型電気自動車
A-2-2 「リチウムイオン電池」型電気自動車
A-3.「電気自動車」車(「二次電池=充電池」型電気自動車)(その2)— インホイールモーター(In-wheel motor)型電気自動車
Product Conceptをどのようにproduct designとして具体化するのかは技術的選択の問題として複数の選択肢が一般に存在する。ここでは、「走行時のCO2排出量やNOx排出量がゼロゼロであるクリーンな自動車」というProduct Conceptを満たすproduct designが下記のように複数存在することを取り上げる。
 
[注意事項]
電気自動車というproduct design自体は新しいものではない。電気自動車という製品自体はすでに19世紀末には商品化され、一定程度販売されていた。またエジソンも自らが開発した充電池の販売拡大のために電気自動車の普及を図っている。ただし電気自動車はガソリン自動車との競争に敗れ、社会的普及に失敗した。
 
 
[関連参考資料]
充電池技術
 
Product Design A-1>「燃料電池」車(「一次電池=燃料電池」型電気自動車, Fuel Cell Vehicle, FCV)
 
Product Design A-2>「電気自動車」車(「二次電池=充電池」型電気自動車)(その1)—- 従来型電気自動車
 
Product Design A-3>「電気自動車」車(二次電池=充電池型電気自動車)(その2)—- インホイールモーター(In-wheel motor)型電気自動車 —-
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ウェアラブル端末

ウエアラブル端末関連記事
下記にウエアラブル端末に関連するWEB記事、および、明治大学図書館 探す・調べる>電子情報源>電子ジャーナルの中の「日経BP記事検索サービス」に収録されている記事の一部を下記に挙げた。
 下記の記事一覧に関する課題について考察しなさい。

  1. 塚本昌彦(2014)「ウェアラブルコンピューティングの動向」『インターネット白書2013-2014』インプレスR&D、pp.175-179
  2. 東芝(2015)「「東芝グラス」で情報を身につける時代へ — メガネ型デバイスとして注目が集まる」日経テクノロジーonline、”明日”をつむぐテクノロジー Special
  3. 東芝「東芝メガネ型ウェアラブル端末」東芝>スマートコミュニティ
  4. 大下淳一(2015)「“難産”の大型新薬、救世主はウエアラブル?」日経テクノロジーonline、2015/07/23
  5. 園部修(2015)「社長交代会見で明言:カシオ、“時計メーカーらしい”ウェアラブルデバイスを開発中 2016年1月のCESで発表」ITmediaニュース>ヘルスケア>ガジェット、2015年05月12日
  6. 園部修(2015)「「次世代スマートウォッチ」をにらむカシオの過去と未来」ITmediaニュース>ヘルスケア>ガジェット、2015年06月05日
  7. 村上万純(2015)「“すずまり”流ウェアラブル動画解説:1分で分かる!! ウェアラブル市場の今後」ITmedia Mobile, 2015年03月23日
  8. すずまり(2015)「Mobile World Congress 2015:MWC 2015で見つけたウェアラブル端末を総チェック! 」ITmedia Mobile, 2015年03月06日
  9. 谷島宣之(2015)「「どの技術が本命か」は難問 全体像を描き、価値を考える」『日経コンピュータ』2015年2月5日号, pp.102-103
  10. 末次章(2015)「ウエアラプル端末が本格活用、使い膀手良いスマートグラスに注目」『日経コンピュータ』2015年3月19日号, pp.82ー85
  11. 末次章(2015)「スマートグラスの主要製品を比較する」日経ITPro, 2015年2月26日
  12. 矢野経済研究所(2014)「ウェアラブルデバイス市場に関する調査結果 2014~2015年には世界で1億台、日本は700万台市場へ、当面はスマートバンドが中心に将来的にはスマートウォッチが拡大~」矢野経済研究所プレスリリース、2014年10月14日
  13. Clark, L.(MINORI YAGURA訳、2014)「軍事活用されつつある「Oculus Rift」(オキュラス・リフト):ノルウェー軍の戦車システム — ノルウェー軍は戦車を扱う兵士向けに、VRヘッドセット「Oculus Rift」を採用する。戦車周囲の情報を、ゲームの要領で入手できるようにするものだ。」Wired News, 2014.5.9
  14. ソニー(2015)「透過式メガネ型端末『SmartEyeglass Developer Edition』を発売- ソフトウェア開発キット提供と合わせて幅広いアプリ開発を促進」ソニーのプレスリリース、2015年02月17日
  15. Epson「MOVERIO スマートグラスで広がる世界」
  16. 「EPSON「MOVERIO BT-200AV」体験会参加レポート」2015年3月19日
  17. Vuzix「スマートグラス 比較」
  18. 野澤哲生(2014)「肌に溶け込むエレクトロニクス」『日経エレクトロニクス』2014年11月24日号
課題1.ウエアラブル端末に関する上記の記事を、下記に指定されたやり方で分類しなさい。

解答例

 
スマートグラスの写真
タイプ1 片眼式・透過型スマートグラス
タイプ2 両眼式・透過型スマートグラス
2-1 エプソンのMOVERIO BT-200
 
タイプ3 両眼式・非透過型スマートグラス
3-1 オキュラスVRのOculus Rift
カテゴリー: ウエアラブル端末, 事例分析 | ウェアラブル端末 はコメントを受け付けていません

ウエアラブル端末-記事分類に関する解答例

ウエアラブル端末に関する複数の記事を、整理・分類する一つのやり方は、下記のようなものである。
ウエアラブル端末に関しては下記に挙げた記事以外にも様々な記事が存在する。どのような記事があるのかを調べてみよう。
 
1. ウエアラブル端末製品の市場関連データ
 
2. ウエアラブル端末製品の製品設計に関する技術的多様性
  1. 谷島宣之(2015)「「どの技術が本命か」は難問 全体像を描き、価値を考える」『日経コンピュータ』2015年2月5日号, pp.102-103
 
3. ウエアラブル端末製品の包括的紹介記事
4. ウエアラブル端末製品を製造している各企業別データ — 個別紹介記事およびプレスリリース
4-1 ソニー
 
4-2 東芝
 
4-3 EPSON
 
4-4 カシオ
 
4-5 VUZIX
 
4-6 Oculus VR, Inc.
 
5. ウエアラブル端末製品の用途
5-1 研究開発のためのデータ収集用装置としてのウエアラブル端末
6. ウエアラブル端末製品のための要素技術
6-1 生体情報データを取り込むための要素技術 — 体外デバイス、体表デバイス、電子皮膚デバイス、体内デバイス
カテゴリー: ウエアラブル端末, 事例分析 | ウエアラブル端末-記事分類に関する解答例 はコメントを受け付けていません

素材に関するイノベーション

炭素繊維
 
超極細生糸による「世界一薄い絹織物」(フェアリー・フェザー)の機械による量産化
通常のウェディングドレスは約10kg。齊栄織物株式会社のフェアリー・フェザー(妖精の羽)[1平方メートル当たり10g以下の重量]を利用したウェディングドレスは600gと1/10以下の重量と軽い。
齊栄織物株式会社は、「化学繊維を入れずにシルク繊維100%で弾力性を確保するともに、洗濯機で洗えるシルク製品の機械的量産化」というSilk Innovationを現在は追及している。

  1. 齋栄織物株式会社「シルク製品誕生秘話」
  2. 齋栄織物株式会社「研究開発」
  3. 「世界一薄いシルク「フェアリーフェザー」開発 齊栄織物株式会社 齊藤泰行」東京FM『フロンティアーズ—明日への挑戦』第183回
  4. みつばち社(2014)「齊栄織物株式会社」(キラリと光る会社05)みつばち社『キラリ』
  5. リンカーズ「世界最薄!わずか8デニールの先染絹糸を使用した絹織物「フェアリーフェザー(妖精の羽)」 」expo.jp
  6. 朝日新聞(2015)「世界一軽く薄い絹、総がかりで」(けいざい深話・つなぐ復興3)『朝日新聞』2015年5月22日朝刊
素材に関するイノベーション はコメントを受け付けていません

経営技術論2015.07.23

[前回の授業概要]経営技術論2015.07.16
 
[今回の論点]
3.技術発展に関するS字曲線的発展と市場セグメント規定(続き)
(4) ある製品セグメントにおいて有意味なものとして評価される性能には上限が存在する。製品は、市場で評価される「性能上限」を超えても製品競争力は増加しない。
(5) ある製品セグメントにおいて有意味なものとして評価される「性能上限」は、時間経過や資源投入量の増大とともに上昇する。
製品がある一定以上の性能を有していても、市場では評価されない。ただし、市場で求められる製品におけるそうした性能の上限は時間経過や製品技術の発展とともに上昇する。
 
事例1.自動車の最高速度 vs 道路の法定最高速度
 
事例2.TV受像機の画面画素数(画面解像度) vs TV用コンテンツの画面画素数(画面解像度)
TV受像機に関する製品イノベーション
ブラウン管TV(30万-35万画素) →→ ハイビジョン型液晶TV(100万画素) →→ フルハイビジョン型液晶TV(200万画素) →→ 4K型液晶TV(800万画素) →→ 8K型液晶TV(3200万画素)
 
[関連参考資料]
経営技術論的解説
4Kテレビの社会的普及に関する否定的見解— 4Kテレビという技術的性能の向上による「usefullness」の増大が消費者の「wants」喚起、および、「demand」形成をもたらすことへの疑問
    横田一輝「4Kテレビ」『知恵蔵2013』
    http://kotobank.jp/word/4Kテレビ

「大画面で高画質が売りで、4Kほどの解像度になれば、あたかもそこに実体があるかのようなリアルな映像が楽しめるのだが、はたして、一般家庭の多くがそれほどの画質を望んでいるのかは定かではない。」

4Kテレビというハードウェアの社会的普及
GFKジャパン「2014年 家電・IT市場動向」2015年2月10日プレスリリースによれば、2014年の薄型テレビ全体の販売台数は前年比5%減の579万台であったが、4Kテレビの販売台数は前年の5.5倍の17万台と伸びている。またGFKジャパン「2014年上期 家電・IT市場動向」2014年8月6日付けプレスリリースによれば、2014年上半期には50インチ以上に占める4Kテレビの構成比は数量ベースで14%、金額ベースで28%であった。
  1. 本田雅一(2013)「“4K”推進で一致した家電業界、その道のりに横たわる多くの課題」ITmedia LifeStyleニュース, 2013年04月21日
  2. 加納恵(2013)「薄型テレビのニーズは大画面、高画質で4Kテレビに期待高まる–GfK調べ」CNET Japan>Marketers’>ニュース, 2013/06/03
  3. 「国内電機メーカー「4Kテレビ」に光明 3Dテレビの「二の舞」にはならない」J-CASTニュース、2013/9/19
  4. 「4Kテレビの金額構成比、50型以上で51%に GfKジャパン調べ」JCASTニュース、2014/11/13
  5. 「テレビ購入の検討者のうち92%が4Kテレビを認知 – GfK調査」マイナビニュース 家電fan, 2014/11/12
  6. 日経TRENDY編集部(2014)「4Kテレビがようやく実用レベルに」『日経TRENDY』2014年7月号, pp.178-181
  7. 日経TRENDY編集部(2015)「家電 ウエアラブルと4Kがついに“離陸”」『日経TRENDY』2015年2月号, pp.128-129
4Kテレビの補完財としての4Kコンテンツの社会的普及に向けての動き
8Kテレビへの製品イノベーション
 
事例3.SACD,DVD-audio, 高音質CD, そしてハイレゾ音源
昔の4CHステレオから、SACD,DVD-audio, 高音質CDへ、そしてハイレゾ音源へ

[関連参考資料]
  1. 「最高を極めるには技がある-アナログ音源をデジタル化」『日経パソコン』2004年11月8日号, pp.86-95
  2. 「良好な音質で聴くための機器・ノウハウ ハイファイ・オーディオ再入門」『日経おとなのOFF』2007年12月号, pp.90-99
  3. 「デジタルの進化-普及しつつあるSACDとブルーレイ 昔は聴こえなかった音に気付く喜び」『日経おとなのOFF』2007年12月号, pp.106-107
  4. 広岡延隆(2009)「高音質CD ラジカセでも違い実感」『日経ビジネス』2009年6月1日号, pp.104-106
  5. 盛田諒(2015)「パイオニア崖っぷち部門の挑戦 iPhoneでハイレゾ聴けるステラノヴァ」『週刊アスキー』2015年04月28日
  6. 折原一也(2015)「“ハイレゾ”って一体な~に?:Xperiaで楽しむハイレゾの世界」『週刊アスキー』2015年05月22日
 
4,クリステンセンによるイノベーションのタイプ分類
「技術革新のあり方」基準と、「既存有力企業の存続・非存続」基準という二つの基準軸に基づく、4類型のタイプ分離

Christensen-Innovation-Theory1

radicalなイノベーションの遂行可能性を大きく左右する要因としての、技術的能力・技術的資源・研究開発費
当該製品セグメントにおける新製品開発を実行するための研究開発費がより大きい企業の方が相対的に有利である
当該製品セグメントにおける既存製品(既存モジュール)の持つ機能に関する抜本的性能向上のための技術的資源は既存有力企業の方が相対的に有利である。
当該製品セグメントにおける既存製品(既存モジュール)の持つ機能に関する抜本的性能向上のための技術的能力は既存有力企業の方が相対的に高いと考えられる
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情報公共論2015.07.21

[前回の授業内容]情報公共論2015.07.14
 
[今回の論点]

OSS2015-p1

 

OSS2015_p2

 

図3 「著作権の保持 vs 著作権の放棄」軸と「無料 vs 有料」軸による分類

1.Firefox や Thunderbird などオープンソース製品を提供しているMozilla Japan
Mozilla マニフェストにおける原則
原則2. インターネットは世界的な公共のリソースであり、オープンかつアクセス可能なものであり続けなければなりません。
原則6. 公共のリソースとしてのインターネットが効果を上げるためには、相互運用性 (プロトコル、データ形式、コンテンツ)、革新、そして世界的かつ分散的な参加が必要です。
原則7. フリーでオープンソースなソフトウェアは、公共のリソースとしてのインターネットの発展を促進します。
原則10. インターネットの公共の利益という側面を拡大することは重要な目標であり、時間を費やし、注目し、参加する意義のあることです。
 
[関連資料]
 
2.OSSの定義
 
3.製品の中身の非公開の問題点
(1) 食品における中身の非公開や中身が点検できないことの問題点
 
(2) プログラム系ソフトウェアにおける中身の非公開や中身が点検できないことの問題点
 
4.プロプライエタリ・ソフトウェア
(1) プロプライエタリ・ソフトウェアの定義
 
(2) プロプライエタリ・ソフトウェアの「販売」形態 — 製品販売ではなく、ライセンス販売という形態を取ることの意味
「製品販売」ではなく、「利用許諾」
本ソフトウェア製品は、著作権法及び著作権に関する条約をはじめ、その他の無体財産権に関する法律および条約によって保護されています。本ソフトウェア製品は許諾されるもので、販売されるものではありません。

リバースエンジニアリング、逆コンパイル、逆アセンブルの制限
お客様は、本ソフトウェア製品をリバースエンジニアリング、逆コンパイル、または逆アセンブルすることはできません。ただし、適用される法律により明示に許可されている場合はこの限りではありません。
 
The application is licensed, not sold. This agreement only gives you some rights to use the application.”
“you must comply with any technical limitations in the application that only allow you to use it in certain ways. You may not: ・・・ b. Reverse engineer, decompile or disassemble the application, except and only to the extent that it is expressly permitted by applicable copyright law provisions for computer programmes.”
 
5.ソースコード「公開」の意味
(1)社会的チェックのため — 食品の原材料・原産地表示(公開)と同様の機能
食品において原材料や原産地を表示(公開)するということは、食品の製造元および販売元が食品の原材料をきちんとチェックすべきこと、あるいは、チェックしようとしていることを示すものである。製造元がきちんとしていなくても、販売元がきちんとチェックしていれば問題の発生の抑止につながる。(アメリカ産牛肉で万一、狂牛病等の問題が発生した場合でも、牛肉の中身をきちんとチェックできるシステムが機能していれば重大問題の発生の抑止につながる。)
すなわち「自分でチェックできなくても、誰かがチェックできる」システム、「不正があれば責任を追及できる」システムが重要である。
ソフトウェアの場合であれば、ソースコードがopenになっていれば、closedである場合よりも、問題発生の原因をすみやかに突き止め、迅速に対応策を取ることがより容易である。
 
(2) 社会的な知の共有 — 料理のレシピの公開と同様の機能
a. ソフトの生産性向上 — モジュール化されたソフトでは、ソフトの再利用がより容易になる
b. ソフト技術を学ぼうとする者に対する教材としての機能 — 優れたソフトウェアのソースコードを「まねる」=「学ぶ」ことによる学習
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情報化社会におけるイノベーションと公共性

1.公共性
a. 「社会全体の利益を追求すること」「多くの人々に有益であること」(公益的公共性)vs 「個人的利益(のみ)を追求すること」「特定個人(のみ)に有益であること」
「公共」的利益の追求と「私」的利益の追求が一般的に両立しないわけではない。個人的動機として「私」的利益の追求が主であったとしても、「広く社会全体に貢献する」こともある
ex. ノーベル賞追求と社会貢献
 
b. Freeriderの利用を積極的に認めるpublic goods(公共財、公共的サービス) vs Freeriderの利用を排除するprivate goods(私的財としての商品)
単純化して言えば、

public goods ⇒ 無料(代金を支払わないor支払えないFreeriderを排除しない)

private goods ⇒ 有料(代金を支払わないor支払えないFreeriderを排除する)

上記は「必要」条件について述べたもので、「十分」条件ではない。

public goodsは、上記のnon-excludabilityという条件とともに、「多数の人が同時に利用可能であること」という「消費の非競合性」という条件を満たす必要がある。
private goddsは、上記のexcludabilityという条件とともに、「ある利用者が利用すると他社の利用ができない」という「消費の競合性」という条件を満たす必要がある。
 
2.Google, Facebook, DeNA, KDDIなどの私的企業がなぜOSSを重視するのか?利用するのか?
Organization of Computer Systems:§ 2: ISA, Machine Language, and Number Systems のFigure 2.1

OSSであれば、下記の条件を満たす必要がある。

(1) ソースコードの公開
  1. 学習・教育のための社会的基盤としてのソースコード公開 — 優れた先行のソースコードを読むことや模倣することによって、書道教育や絵画教育における「模写」、彫刻教育における「模刻」などと同じような教育的効果を得ることができる
  2. カスタマイズ・改良・バグ取りなどプログラムのproduct innovationのための社会的基盤としてのソースコード公開 — ソースコードの公開は下記に挙げた「ソースコードの修正の自由」を担保するための必要条件である
(2) ソースコードの修正の自由
  1. ソースコードの「カスタマイズ」的修正 — 公開されたソースコードを業務目的に合うように修正すること
  2. ソースコードの「改良」的修正 — キーボード入力だけでなくマウス入力や音声認識入力などにも対応できるという新機能を追加したり、より多様なデータ(固定長データだけでなく不定長データも同時に取り扱えるようにする、文字データだけでなく、音声データ、静止画像データ、動画データなども扱えるようにする)を統合的にうまく取り扱えるようにしたり、最終的な実行速度を高めたりなど、公開されたソースコードの修正によりプログラムソフトに新機能を付け加えたり、性能向上を実現したりすること
  3. ソースコードの「バグ取り」的修正 — ソースコードの公開により多くの眼によるバグ部分の特定が可能となり、ソースコード内のバグ(間違い)を修正すること
(3) ソースコードの配布・再配布の自由
 
3.ソフトウェア系情報財(コンテンツやプログラム)は無料提供しやすいのに、ハードウェア系情報財はなぜ無料提供しにくいのか?
総費用=固定費用+可変費用、限界費用の問題
 
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経営技術論2015.07.16

[前回の授業概要]経営技術論2015.07.09
[次回の授業概要]経営技術論2015.07.23
1. 雑誌の「定額読み放題」サービス・システムに関する「先駆者/後発者」論、「補完財的バンドワゴン効果」論、「市場需要獲得に必要な最低限度の性能」(コストに見合う、あるいは、コストを上回る便益)論という視点からの考察
 
(1) 先駆者(1st mover)としてのソフトバンクの「ビューン」サービス事業(2010年6月サービス提供開始
 
a. 「先駆者」的事業をソフトバンク会員専用サービス(限定サービス)として提供することに関わるソフトバンクの経営戦略的判断 — ソフトバンク・ケータイ事業のdifferentiationによる競争優位性の確保
 
b. ビューンの「先駆者」としてのdisadvantage、および、「コストを上回る有用性の確保」=「市場で求められる最低限度の性能を超えること」の必要性
下記のエルネオス出版社(2011)におけるビューン関係者の話によれば、最初の無料サービス時に登録会員数が12万人であったが、有料会員として継続したのは1万人以下であった。
藤井涼(2013)では、ビューン代表取締役社長の蓮実一隆の話として、ビューンのサービス開始から3年近くになる2013年4月時点においても、「現在はまだ、アーリーアダプターや本当にこういったサービスが好きな方だけが電子書籍を読んでいる状態」であることが紹介されている。
 
 
(2) 後発者(follower)としてのNTTドコモの「dマガジン」サービス事業
a. 後発者による「同質化」戦略としての「dマガジン」サービス事業
ケータイ・サービスの機能に関して他社にはないものを先駆者として提供したソフトバンクに対抗するため、「同種のサービスを提供する」という「同質化」戦略をauおよびNTTドコモは採用した。ただし、ケータイ・サービスの機能に関する「同質化」戦略の展開の仕方は、auとNTTドコモでは異なっている。
 
b.「同質化」戦略における競争優位性の確保法
機能に関する「同質化」戦略における競争優位の確保法としては、性能に関する「差異化」、あるいは、「低コスト化」という二つのアプローチがある。
NTTドコモは、「読み放題対象雑誌」数に関して、ビューンの70誌を上回る雑誌数(現在、130誌)を確保することで数的競争優位を獲得した。(対抗策として、2015年7月になりビューンも130誌としたが、新規会員募集はしておらず自己防衛策としての意味合いが強い。)
 NTTドコモの「dマガジン」事業は、そうした性能による「差異化」によって顧客拡大を実現することで、「読み放題対象雑誌」数の拡大のために雑誌社のインセンティブを高めた。雑誌社としてはより顧客数の多い「読み放題定額サービス」に自社コンテンツを提供する方が、自社の収益をより拡大できる。
 なおNTTドコモは顧客拡大のために、ソフトバンクとは異なり、NTTドコモ・ケータイ会員専用サービス(限定サービス)とはしなかった。自社ケータイ会員だけでなく、ソフトバンクケータイ会員やauケータイ会員も対象とすることで潜在的顧客数を他社よりも大きくすることで会員数拡大を図った。
 これはNTTドコモが、自社ケータイサービス事業を優先しケータイサービス事業の競争力確保のための付加的事業として事業展開するのではなく、コンテンツ・プロバイダー事業を優先しコンテンツ収益の拡大を目的として事業展開を図ったことを意味するものと解釈できる。
 NTTドコモは会員数拡大によって「読み放題対象雑誌」数の拡大するとともに、「読み放題対象雑誌」数を拡大し顧客ごとに異なるキラーコンテンツの拡大によって海員数拡大を実現する、というバンドワゴン的効果の利用を図っているのである。
 
c. NTTドコモの「dマガジン」サービスの急速な普及
ソフトバンクの「ビューン」は2010年6月にサービス開始という先駆者である。これに対して後発者の「dマガジン」のサービス開始は2014年6月と4年も遅れた。
 それにも関わらず後発者の「dマガジン」は、9か月間で190万人を超える会員数を獲得するという急速な普及を遂げた。先駆者のビューンは、まだ事業を継続するとともに、読み放題の雑誌数を6月までは約70誌であったのを7月には「dマガジン」に並ぶ130誌以上にするなど努力を続けているが、2015年6月23日で新規申込みの受け付けをやめるとともに、新サービスとして「ブック放題」の利用を推奨している。

なお「dマガジン」は、「ビューン」に対して開始が遅れただけでなく、NTTドコモにおける定額サービスとしても後発である。NTTドコモは定額動画配信サービスのdtv(旧dビデオ)を2011年11月に、定額音楽配信サービスのdヒッツ、定額アニメ配信サービスのdアニメストアを2012年7月にサービス開始しているのに対して、定額雑誌配信サービスの「dマガジン」は2014年6月と遅かった。それにも関わらず2年も前にサービス開始している先行のdアニメストアを超える会員数となっている。

NTTドコモ関連の定額制デジタル配信サービスの会員数(2015年3月末現在)
サービス名 月額 提供開始 会員数 備考
dTV 500円 2011年11月18日 468万人
dヒッツ 300円/500円 2012年7月3日 304万人
dアニメストア 400円 2012年7月3日 183万人
dマガジン 400円 2014年6月 191万人
 
(3) ソフトバンクの対抗策:「ブック放題」サービス —- NTTドコモの「dマガジン」サービスへの対抗策としての新規サービス事業
ソフトバンクは、NTTドコモの「dマガジン」サービスに対して競争力を失ったビューンに代わる新しいサービスとして、2015年6月に「ブック放題」という新しい定額読み放題サービスの提供を開始した。定額読み放題の対象となる雑誌数は、NTTドコモのdマガジンと同じ130誌以上となっているだけでなく、マンガを1,000作品以上も読み放題となるなど、サービス本体それ自体としてはdマガジンよりも高い競争力を持っている。
しかしこのサービスには、「補完財に関するバンドワゴン効果」という理論的視点から考察すると、会員数拡大に向けて下記のような問題点がある。
1) 利用可能な顧客対象範囲の限定性 — ソフトバンク利用者限定という問題点
利用開始に際しての会員登録時にソフトバンク携帯電話の利用申込時に設定した暗証番号が必要であるなど、利用にはソフトバンク携帯電話契約者であることが必要である。ビューンと同じく、ソフトバンク携帯を利用していない顧客は、本サービスを利用できない。
2) 利用可能デバイスの限定性 — 一般PCで利用できないという問題点
利用可能なデバイスがiPhone、iPad、SoftBank スマートフォン・タブレットに限られており、auのブックパスのように一般PCでの利用は許されていない。この点ではdマガジンと同じである。
 
[参考資料]

[考察してみよう]
Amazon.comのkindle、楽天のKoboといった電子書籍サービスと、NTTドコモのdマガジンの差異に関して、「個別販売」型 vs 「定額読み放題」型という視点以外にどのような視点から論じることができるのかを考えてみよう。
 例えば、専用機 vs 汎用機という視点からも分析してみよう。

 
2.先駆者コスト(pioneering costs)問題
先駆者は、新しい技術的方式の研究開発・実用化・社会的受容および新規市場の形成期における小規模さなどのために下記のような「先駆者コスト」pioneering costs を負担することが必要となる。
 
  1. 行政当局の承認(regulatory approvals)の獲得
  2. 法的規制(code compliance)の達成
  3. 買い手の教育
  4. サービス設備や訓練などのインフラ基盤(infrastructure)の開発
  5. 原材料(raw material sources)や新型機械(new types ofmachinery)など必要資材(needed inputs)の開発
  6. 補完製品(complementary products)の開発に対する投資
  7. 供給不足(scarcity of supply)またはニーズの小規模さ(small scale of needs)による初期資源(early inputs)の高コスト性
[考察してみよう]
課題1 先駆者コストとしての「買い手の教育」ということの意味を具体的事例で説明しよう。なおその際に、経営技術論におけるusefulness, wants, dmeandの区別という視点との関連で説明しなさい。
 
課題2 先駆者コストとしての「補完製品(complementary products)の開発に対する投資」ということの意味を具体的事例で説明しよう。なおその際に、補完財に関するバンドワゴン効果という視点との関連で説明しなさい。
 
3.技術発展に関するS字曲線的発展と市場セグメント規定
製品イノベーションが普及する場合と普及しない場合を説明するための理論的モデル
ある顧客が製品イノベーションが採用されない場合と採用されない場合を説明するための理論的モデル
2015-07-16-fig1
 
 
 
(1) 製品性能の技術的発展は、学習曲線と同じようなS字曲線を描く
図1に示したように、ある特定の製品の性能は、1) 初期にはさほど向上しないが、2) やがて一定コストを超えると急激な性能向上が始まり、3) しばらくすると技術発展のための研究開発にどれだけ時間をかけても、あるいは研究費をかけてもほとんど性能が向上しない、ようになる。
 
(2) 製品が一定以上の需要を持つためには、一定以上の性能を持つ必要がある。すなわち、「性能下限」以下の性能しか持たない製品に対しては市場における大きな需要は期待できない。
(3) 製品が一定以上の需要を持つために必要な「性能下限」は、時間経過や資源投入量の増大とともに上昇する。
製品セグメントの規定は、製品の機能や性能に関する規定でもある。製品がある製品セグメントに属するということは、製品が定めらた機能を持っていること、および、それぞれの機能に関して一定以上の性能を持っていることを意味する。ただし、市場で求められる製品におけるそうした性能の最低限度(「性能下限」)は時間経過や製品技術の発展とともに上昇する。
 
[関連事例1]ケータイにおけるカメラ機能の性能進化
「多機能携帯端末」(ケータイ)製品セグメントに属する製品であるためには、音声通話機能以外に、カメラ機能、PDA機能、WEBブラウザ機能などを持つことが最低限度として必要である。
カメラ機能が最初に搭載された1999-2000年当時の性能は11万画素に過ぎなかった。1999年9月発売の京セラ製のDDIポケット用端末「VP-210」に搭載されたカメラは、テレビ電話用途を想定したインカメラのみであり、市場でそれほど高い評価を得ることができなかった。2000年11月発売のシャープ製のJフォン(現ソフトバンク)用端末は、11万画素という低性能ではあったが、市場で高く評価され、「写メール」というJフォンの登録商標が流行語として社会的に定着したことに示されるように大ヒットした。その結果として、Jフォンは2002年3月にはauのシェアを抜き、携帯業界でNTTドコモに次ぐ2位になった。

[参考資料]鈴木孝知(2002)「ドコモ版「写メール」が5月にも登場,J-フォンを突き放せるか?」ITpro by 日経コンピュータ, 2002/03/18

Mobile-phone-Camera
 最近ではソニーのXperia Z4 SO-03G(2014年6月発売開始)で2070万画素、サムスンのGalaxy S6で約1,600万画素、相対的に低性能のアップルのiPhone6でも800万画素と高性能化が急速に進んでいる。15年間でケータイ搭載カメラの画素数は、約200倍に達するほどまでの高性能化を遂げたのである。

 ケータイは、カメラ機能、ビデオカメラ機能、PDA機能、WEBブラウザ機能、音楽再生機能、動画再生機能など多様な機能を次々と付け加えるという製品イノベーションで製品進化を遂げてきた。現在では、音声通話専用の携帯型機械という「携帯電話」製品セグメントに属する製品とは異なり、「多機能携帯端末」(ケータイ)製品セグメントに属する製品ではカメラ機能が必須である。

 
[関連事例2]徹底した低コスト化を追求したインドのタタ自動車の「ナノ(Nano)」(2009)
インドの自動車大手メーカーのタタは、インドにおける2輪車ユーザーの多くを乗用車に移行させることを目的に、10万ルピー(28万円)という極めて低価格な自動車の構想を2003年に打ち上げた。そして2009年には目標を少し上回る約11万3千ルピー(当時の交換レートで約21万7千円)という価格で4ドア小型自動車「タタ・ナノ」を販売開始した。
ナノは低価格のため下記のように、通常の自動車が標準的に持っている機構や機能を持っていない。
  1. 「助手席側のドアミラーを省略し、運転席側のみに装備」
  2. 「ワイパーは2本ではなく、1本のみ」
  3. 「ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)機構はない」
  4. 「衝突時の安全確保のためのエアバッグ機構もない」
  5. 「エアコンは標準装備ではない」(エアコン付きは16万ルピーと4割ほど高くなる)
 
 ナノのそうした技術的構成により部品点数が通常の2/3から半分程度まで減少させたことで低価格化を実現し、cost leadership的な競争優位性の確保には成功したが、安全性の面で市場で求められている性能を満たしていないのではないかということが問題となり、積極的な広告・宣伝、販売促進の努力にもかかわらず、年間販売台数はピーク時で7万5千台(2012)、最近は約2万台程度と「年間販売台数24-25万台」という初期目標を大きく下回る数値となっている。
川野義昭(2015)によれば、ナノが本来の対象としている「初めて乗用車を購入する」顧客(「1台目需要層」)にとって、ナノの機能・性能は必要最低限度を下回るものであった。ナノを購入しているのは、すでに1台は乗用車を持っている顧客が追加で購入する「2台目需要層」であるが、その数は「1台目需要層」に比べ少ない。
 
[関連参考資料] (1)-(5)のみ配布
(1) 小林明(2014)「印タタ自動車工場ルポ 「ナノ」に試乗してみた」日本経済新聞電子版, 2014/7/11
(2) 「インド自動車市場、低価格から100万円にシフト」日本経済新聞電子版2014/3/11
(3) 森脇稔(2014)「タタの超低価格車、ナノ …インドの衝突安全テストに失格」2014年2月3日
(4) マシュー・デボード(2010)「タタ自動車の「ナノ」は炎上する」newsweekjapan.jp, 2010年3月24日
(5) Siler,W.(2010)”Four Tata Nanos Go Up In Flames In India” jalopnik.com, 2010/3/22
(6) 川野義昭(2015)「「Nano」の失地回復なるか、成長するJaguar Land Rover 第6回:Tata Motors社」日経Automotive, 2015/03/10
[原出典]『日経Automotive』2015年4月号、pp.90-93
(7) 日経ビジネス編集部(2013)「コモディティー化最前線、インド 世界の「激安車」工場」(特集 50万円カーの衝撃 1章)『日経ビジネス』2013年3月25日号, pp.28-33
(8)「新たな発想の低価格車づくりを支える 「ナノベーション」の秘密」(連載 グローバルセンス インドを知る タタ流ものづくりの研究第3回)『日経ものづくり』2012年3月号, pp.82-86
(8) 江村英哲(2010)「インド「国民車」に解約多発」『日経ビジネス』2010年01月18日号,p.11
(9) Penny MacRae(2010)「苦しむ低価格車「ナノ」、11月の販売たった509台」2010年12月27日、AFPニュース(10) Brandon Turkus(2015)「安すぎて売れない? 激安車タタ「ナノ」の意外な盲点とは?」 Autoblog Japan、2015年03月08日
 
(4) ある製品セグメントにおいて有意味なものとして評価される性能には上限が存在する。製品は、市場で評価される「性能上限」を超えても製品競争力は増加しない。
(5) ある製品セグメントにおいて有意味なものとして評価される「性能上限」は、時間経過や資源投入量の増大とともに上昇する。
製品がある一定以上の性能を有していても、市場では評価されない。ただし、市場で求められる製品におけるそうした性能の上限は時間経過や製品技術の発展とともに上昇する。
 
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保護中: ゲーム専用機の機種別週間販売台数の推移2015/05/11-06/21

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経営技術論2015.07.09

[前回の授業概要]経営技術論2015.07.02 [pdf版]
[次回の授業概要]経営技術論2015.07.16
 
[今回の授業のポイントおよび前回の授業の補足]
1 自動車に関わる補完財的バンドワゴン効果
ガソリン自動車とガソリンスタンド、電気自動車と充電スタンド、燃料電池車と水素ステーションは互いに補完的である。
 

1) 実際に走行している自動車としては、ガソリン自動車などガソリンを必要とする自動車が最も普及している。(非ブラグイン型ハイブリッド自動車も燃料としてガソリンを必要とする。電気自動車の普及台数は少ない。燃料電池車の普及台数はもっと小さい。)
    ↓
2) ガソリン補給(ガソリンスタンド)に対する需要が最も大きい。電気補給(充電スタンド)や水素補給(水素ステーション)の需要はかなり小さい。(ガソリン補給に対する需要が、電気自動車に対する充電の需要や、燃料電池車に対する水素補給の需要よりもかなり大きい。)、
    ↓
3) 需要が大きいほど、供給業者の数も多い。すなわち、ガソリンスタンドの数は、充電スタンドや水素ステーションよりも圧倒的に多い。市場規模の小さい充電スタンドや水素ステーションの普及はなかなか進まない。
    ↓
4) 補給という「補完財」の競争力は、電気自動車や燃料電池車よりもガソリン自動車の方が高い。
    ↓
5) このことが電気自動車や燃料電池車という製品イノベーションの普及に立ちはだかる壁となり、電気自動車や燃料電池車という製品イノベーションの普及が遅れる。
    ↓
6) 電気自動車や燃料電池車の普及台数が小さいため、充電スタンドや水素ステーションの普及がなかなか進まない。
    ↓
7) 充電スタンドや水素ステーションの普及がなかなか進まないため、補給という「補完財」の競争力において、電気自動車や燃料電池車はガソリン自動車に比べてかなり低い。
    ↓
5’) このことが電気自動車や燃料電池車という製品イノベーションの普及に立ちはだかる壁となり、電気自動車や燃料電池車という製品イノベーションの普及が遅れる。
(以下、「電気自動車や燃料電池車の普及が進まないので、充電スタンドや水素ステーションの普及が進まない。」→「充電スタンドや水素ステーションが進まないので、電気自動車や燃料電池車の普及の普及が進まない。」という「鶏と卵」的循環が続くことになる。)

 
 上記のような議論から考えれば、電気自動車の社会的普及のためには、電気自動車という「製品本体」に関する製品イノベーションやプロセスイノベーションによる性能向上やコスト低減も重要であるが、その一方でまた、充電スタンドという「補完財」の社会的普及も必要不可欠である。
 充電スタンドという「補完財」の社会的普及は下記のように、24時間営業のコンビニやへの充電器の設置など様々な形で追及されている。その結果としてCHAdeMO協議会(2015)「急速充電器都道府県別一覧」によれば、急速充電器の設置個所数は日本全国で4,870箇所(2015/06/30現在)となり、長期的現象を続けているガソリンスタンド数34,706か所(2013年度末現在)の約1/7にまでに達している。
 なお株式会社ゴーゴーラボ「GoGoEV」によれば、2015年7月現在で登録充電スタンド数は、普通が9262ヶ所、急速が5845ヶ所(前月新規充電スタンド数
普通482ヶ所、急速78ヶ所)となっている。
 ガソリンスタンド数の減少傾向および充電スタンド数の増加傾向がこのまま続けば、やがて両者が同じになり、逆転する日もさほど遠くはない。
 
 
[ガソリンスタンド数の減少傾向]
ガソリンスタンドの数は、経済産業省資源エネルギー庁資源・燃料部石油流通課(2014)『揮発油販売業者数及び給油所数の推移(登録ベース)』によれば、長期間にわたり減少を続け2013年度末で34,706か所にまで減っている。
なおJX日鉱日石エネルギー「主要国の給油所数の推移」『石油便覧』資料・参考図の表20によれば、ガソリンスタンド数の減少は日本だけの現象ではない。下記のように、米国、英国、フランス、ドイツでもかなり減少している。
日本 米国 英国 ドイツ フランス
1975 52,789 279,090 31,426 33,123 45,000
1985 59,082 21,140 18,179 32,000
1995 59,990 190,246 16,244 17,957 18,406
2005 47,584 167,476 9,764 15,187 13,570
2012 36,349 152,995 8,714 14,328 11,168
 
[燃料電池車に関する参考資料]
 
[TIPS的情報(その1) — 水素ガスを充填したツェッペリン型飛行船の爆発事故]
ヒンデンブルク号爆発事故(1937年)の瞬間。この事故の社会的衝撃により飛行船の安全性に対する社会的信頼がなくなり、飛行船の社会的普及が停滞した。
 
[水素ガスを充填したツェッペリン型飛行船の爆発事故関連資料]
 
[TIPS的情報(その2) — 飛行船によるインターネット網]
 
2. 「VTR(Video Tape Recorder)」と「レンタルビデオ」という相互補完的製品における補完財的バンドワゴン効果の時期的変化
補完財が競合製品間で共通な場合(共通補完財、汎用的補完財の場合)
1970年代後半期におけるVTR製品の主要な補完財は、スポーツ中継やTV映画などTV番組(放送コンテンツ)であった。TV番組は、VHS(Video Home System)型VTRとβ(Betamax)型VTRという競合製品がそうであるように、競合製品間で補完財製品が共通であれば、補完財製品が競合製品の競争関係に影響を与えることはない。
録画用ビデオテープは、製品としてはVHS「専用」テープとβ「専用」テープというように専用補完財となっている。しかしVHS「専用」テープとβ「専用」テープとでは性能などで技術的には差はない。両者はともに幅が1/2インチの磁気テープである。大きさが違うのは、βのテープ長が150mであるのに、VHSのテープ長が248mとかなり長いためである。また売り切り用
1980年代以降になるとTV番組と並ぶ主要な補完財として、レンタルビデオが登場することになる。のVHSとβという競合製品に対するそれぞれの専用レンタルビデオ市場の登場がそうであるように、競合製品に対する補完財製品がそれぞれの競合製品に専用の製品である場合には、補完財的バンドワゴン効果によって製品本体の製品競争力に大きな影響を与えることになる。
 
 
3. ゲーム専用機とゲームソフトという相互補完的製品における補完財的バンドワゴン効果
 
(1) 製品本体の性能は変化していないにも関わらず、市場シェアが大きく変動する例としての、日本における8ビットゲーム専用機市場におけるシェア推移1983-1986

   1983 1984 1985 1986
任天堂:ファミコン 68.8% 87.0% 92.5% 95.3%
セガ:SG-1000 31.3% 13.0% 7.5% 4.7%
 
(2) 製品本体の性能は変化していないにも関わらず、市場シェアが大きく変動する例としての、日本国内におけるゲーム専用機の機種別週間販売台数の推移(2015/05/11-6/21
Wii_U-PS4-2015-06
   5/11-5/17 5/18-5/24 5/25-5/31 6/1-6/7 6/8-6/14 6/15-6/21
Wii U 6,698 6,836 15,787 17,104 16,740 14,868
Splatoon 156,610 81,764 60,175 50,008
PS4 10,945 10,846 11,327 10,137 10,117 12,748
PS3 2,663 2,426 2,708 2,444 2,326 2,448
XBOX One 155 252 348 248 118 178
New 3DS 14,486 13,859 14,638 15,764 23,976 21,176
リズム天国 155,784 69,512
PS Vita 11,335 11,141 13,408 11,594 11,022 11,535
3DS 1,524 1,622 1,703 1,740 1,794 3,102
 
Wii Uの週間販売台数が5/25-5/31の週にそれ以前の2倍以上に伸びた理由としては、Splatoon(任天堂)というWii U専用ソフトが5/28に販売開始されたことが大きい、と考えられる。
New 3DSの週間販売台数が6/8-6/14の週にそれ以前の5割以上も増加した理由としては、リズム天国 ザ・ベスト+(任天堂)やドラゴンボールZ 超究極武闘伝(バンダイナムコ)といった3DS専用ソフトが6/11に販売開始されたことが大きい、と考えられる。
 
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情報公共論2015.07.14

[前回の授業内容]情報公共論2015.07.07
[次回の授業内容]情報公共論2015.07.21
 
[前回の論点の復習および今回の論点]
1.creatorの再生産におけるcopyの意義 — 「学び」における「まねる」ことの意義、優れた先行作品の「書き写し」「模写」「模造」の意義
絵・山水画・書など平面的な作品をまねて写すことが模写であり、彫刻など立体的な作品を実物に似せて造ることが模造である。模写された作品、模造された作品そのもは「本物ではないもの」として評価が低いが、creatorの再生産プロセスにおいては、模写行為や模造行為が重要な教育的意味を持っている。
東京藝術大学美術学部絵画科日本画専攻の学部教育のカリキュラムに古典模写の実習が含まれているのもそのためである。グレコ・ローマン時代(ギリシアからローマへの過渡期で、B.C.140年頃からA.D.300年頃の時代)のローマでギリシア時代の彫刻が数多く大理石に模刻されたり、鎌倉時代の仏師である快慶が天平時代の東大寺法華堂・執金剛神像を模刻したり、室町時代の雪舟が中国南宋時代(1127‐1279)の山水画を模写したりしたことに示されているように、「古典を模写・模造することは、洋の東西に共通する美術制作の基本のひとつ」であり、「古典を模写して、その造形精神を忠実に学び取ることは、新たな創造を生み出す原点」[東京国立博物館(2005)「模写・模造と日本美術―うつす・まなぶ・つたえる―」2005年7月20日付けプレスリリース]なのである。

 
関連参考資料>東京藝術大学美術館で2001年4月27日~6月10日に開催された「よみがえる日本画 – 伝統とその継承・1000年の知恵」展のテーマの一つは、「巨匠たちはみな模写の名手だった」というものであった。
 
<関連参考WEB>
 
2.オープンソース
(1) ソースコードと機械語— ソフトウェア開発におけるソース・コード vs オブジェクト・コード

Organization of Computer Systems:§ 2: ISA, Machine Language, and Number Systems のFig2.1

    オブジェクト・コード(バイナリー・コード)=実行プログラムの作成形態

    1. 機械語によるオブジェクト・コードの直接的作成
    2. アセンブリ言語によるオブジェクト・コードの段階的作成
        a.アセンブリ言語によるソースコードの作成
        b.アセンブラーによる、ソースコードからオブジェクト・コードの作成
    3. 高級言語によるオブジェクト・コードの段階的作成
        a.高級言語によるソースコードの作成
        b.コンパイラーによる、ソースコードからオブジェクト・コードの作成

 
(2) ソースコードを公開したソフトウェアとしてのOSSの意味
 
3.IT企業におけるオープンソース
    DeNAのモバゲー
  1. 永井美智子(2008)「DeNA、「モバゲー」のウェブアプリフレームワークをオープンソースとして公開」CNET Japan ニュース 情報システム, 2008/05/16
  2. @IT 編集部(2010)「DeNAのPerl使いたちに聞く モバゲーオープン化の裏にPerlアリ!」
     
    Google
  3. 高橋信頼(2006)「Googleとオープンソースの知られざる関係」ITpro, 2006/03/09
  4. Shankland, Stephen(石橋啓一郎訳 2008)「グーグルのオープンソースは綱渡り — クリス・ディボナ氏インタビュー」
  5. 松島浩道(2010)「Google日本語入力、「Mozc」という名称でオープンソース化」OSDN Magazine, 2010年5月11日
  6. 「GoogleがオープンソースのAndroidから利益を生み出すカラクリとは?」Gigazine, 2014年01月24日–文末の訂正に注意
    Asay, M.(2014)「グーグルの直面する「Androidのオープンソース問題」とは」readwrite.jp, 2014年8月19日

     
    Facebook
  7. 末岡洋子(2012)「米Facebook、社内で利用しているC++ライブラリ「Folly」をApacheライセンスで公開」OSDN Magazine, 2012年6月5日
  8. 末岡洋子(2014)「米FacebookがC/C++プリプロセッサ「warp」をオープンソースで公開、高速な処理が特徴」OSDN Magazine, 2014年4月1日
  9. 末岡洋子(2014)「米Facebook、半年で64のオープンソースプロジェクトを立ち上げる」OSDN Magazine, 2014年6月30日
  10. 末岡洋子(2014)「米FacebookやGoogle、GitHubなどがオープンソース利用を促進する「TODO」プロジェクトを立ち上げ」2014年9月16日
     
    その他
  11. 末岡洋子(2014)「Linux Foundationが富士通、Google、Microsoftらとオープンソースプロジェクト向け基金を設立、まずはOpenSSLを支援へ」2014年4月25日
  12. 末岡洋子(2015)「米Microsoft、「MSBuild」をオープンソース化」OSDN Magazine, 2015年3月20日
  13. 末岡洋子(2015)「「Mono 4.0」リリース、オープンソース化された.NET関連コードを初めて採用」OSDN Magazine, 2015年5月7日
  14. 末岡洋子(2015)「米Microsoftが.NET Core向け「Windows Communication Foundation(WCF)」をオープンソース化」OSDN Magazine, 2015年5月21日
  15. 末岡洋子(2015)「米Appleが「Swift 2.0」を発表、年内にオープンソース化へ」OSDN Magazine, 2015年6月9日
  16. 末岡洋子(2015)「米Amazon、オープンソースのTLS実装「s2n」を公開」OSDN Magazine,2015年7月1日
 
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情報公共論2015.07.07

[前回の授業内容]情報公共論2015.06.30
[関連資料]
(1) アニメ映画・ディズニー(2001)「アトランティス」とTVアニメ・ガイナックス(1990)「ナディア」の類似性の高さに関連する記事
(2)TVアニメ・ガイナックス(1990)「ふしぎの海のナディア」に関連する日本語記事
[次回の授業内容]情報公共論2015.07.14
 
[今回の論点]
1.2種類のcreation — 「creatorによるcreation行為としての創作」と「creatorのcreation行為としての教育・学習」
 
2.2種類のcreation行為それぞれにおけるcopyの社会的な必要性・有用性
自由に「複写」・「模倣」できる公共的情報財の社会的な必要性=有用性
(1)教育・学習プロセスにおける「複写」・「模倣」という形態におけるcopyの意味
  1. 授業用資料に関するcopyの自由 — 著作権の法的保護期間内であっても、著作権者の了解なしに無償でcopyできること
  2. 授業における模写、模刻の自由 — 「書道」「絵画」「彫刻」などにおける学習としてのcopy行為の自由
 
(2)研究・創造プロセスにおける「引用」・「翻案」という形態におけるcopyの意味
著作物における「一次著作物」性vs 「二次著作物」性 — 「From copy to creation」的行為としての創作
  1. 研究用資料に関する、図書館でのcopyの自由
  2. 新たな創造におけるcopy的利用の自由 — 「引用」・「翻案」
    先行著作物をseedsとして利用した創作行為
    ex.本歌取り、写真をトレースした漫画のカット、写真をもとにしたイラスト
4.オープンデータ
著作権法の保護対象となるためには、「思想又は感情」が表現された著作物でなければならない。
自動車部品メーカー及びカーエレクトロニクス部品メーカー等の会社名、納入先の自動車メーカー別の自動車部品の調達量及び納入量、シェア割合等の調達状況や相互関係のデータをまとめたものであって、そこに記載された各データは、客観的な事実ないし事象そのものであり、思想又は感情が表現されたものではないことは明らかである。
 原告は、本件データは原告が独自に取材、調査し、それを総合的に判断し研究した結果であり、そこには原告の思想が創作的に表現されていると主張する。しかし、原告が主張していることは、原告の一定の理念あるいは思想のもとに本件データの集積行為が行われたということにすぎないのであって、集積された客観的データ自体が思想性を帯びることはないから、原告の右主張は失当というべきである。
 よって、本件データは著作物性を有しない。ものでなければならない。
 しかしながら、本件データは、自動車部品メーカー及びカーエレクトロニクス部品メーカー等の会社名、納入先の自動車メーカー別の自動車部品の調達量及び納入量、シェア割合等の調達状況や相互関係のデータをまとめたものであって、そこに記載された各データは、客観的な事実ないし事象そのものであり、思想又は感情が表現されたものではないことは明らかである。
 原告は、本件データは原告が独自に取材、調査し、それを総合的に判断し研究した結果であり、そこには原告の思想が創作的に表現されていると主張する。しかし、原告が主張していることは、原告の一定の理念あるいは思想のもとに本件データの集積行為が行われたということにすぎないのであって、集積された客観的データ自体が思想性を帯びることはないから、原告の右主張は失当というべきである。
 よって、本件データは著作物性を有しない。
 
(2)文化庁著作権課(2013)「著作権法の基本的な枠組みについて(オープンデータ関連) 」2013年1月24日の1.「政府が保有するデータ」
著作物は、「思想又は感情」を表現したものであるから、単なる事実やデータは、それ自体としては、著作物としての保護対象にはならず、例え当該データ等を得るために高度の知識や多大な労力、資金を必要としたとしても、著作物としての保護対象にはならない。
 
 
「オープンデータ(Open Data)とは、特定のデータが、一切の著作権、特許などの制御メカニズムの制限なしで、全ての人が望むように利用・再掲載できるような形で入手できるべきであるというアイデアである。オープンデータ運動のゴールは、オープンソース、オープンコンテント、オープンアクセスなどの、他の「オープン」運動と似ている。オープンデータを支える哲学は古くから確立されているが(マートン・テーゼのように)、「オープンデータ」という言葉自体は、インターネットやワールドワイドウェブの興隆、特に、Data.govのようなオープンデータガバメントイニシアティブによって、近年一般的になってきた。」

[考えてみよう]単なる事実やデータは、それ自体としては、著作物としての保護対象にはならない。それにも関わらず、オープンデータ運動がなぜ運動として必要なのかを考察してみよう。

5.知的創作行為におけるoriginality問題
(1) 創作性
デットコピー(単なるコピペ)にはまったくoriginalityがない、すなわち、創作性がまったくないので、二次的著作物として法的保護の対象とはならない。
創作性がない著作物は法的保護の対象にはならない。
客観的な事実やデータに関する記述(個別表現それ自体に創作性がない著作物)
アイウエオ順やアルファベット順に氏名・住所・電話番号を記載した電話帳(編集という行為の中にも創作性がない著作物)

著作権法の第十条の2「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は、前項第一号に掲げる著作物に該当しない。」

 

(2) Originality, Novelty, Creativity(独創性、新奇性、創造性)
Originality — 「著作のoriginが他者ではなく自らにあること」「独りで創り出すこと」としての独創性
 
著作と発明の差異 — 「originalityはあるけれども、noveltyがないものが存在する」著作物、「originalityも、noveltyも必要とする」発明
 
ただし、同一の事実やデータなど同一の素材をseedsとして創造行為がなされた場合には、同一の成果が生み出されることになる
科学における「同時」発見、技術における「同時」発明
 

 

6.「新たな創造という善き目的によって許されるコピペ」と「新たな創造という善き目的であっても許されないコピペ」に関するスペクトル分布的あり方 — グレーゾーンの存在とその範囲に関する社会的合意の歴史的変遷

7.新しい著作物の創作行為における一次創作性と二次創作性
a.最低限度以上の一次創作性の必要性—「単なる剽窃」は不可、新たなoriginalityの必要性
 
b.先行著作物に対する正当なseeds的利用 —- 著作権者の許諾 or 無断利用可能性
漫画における一次創作性と二次創作性
トレースした場合における「許されない模倣」 vs 「許される模倣」— 「利用許諾の必要性の有無」および「二次創作性の有無」
 

 

8.著作者人格権の問題
[関連資料]
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経営技術論2015.07.02

[前回の授業概要]経営技術論2015.06.25
[次回の授業概要]経営技術論2015.07.09
 
[今回の授業のポイントおよび前回の授業の補足]
 
1. 「乗り換えなしで直通で行くことができる駅の数の増大」に起因するネットワーク的バンドワゴン効果
線路幅が同一であれば、異なる路線間をつなぐ直通運行が可能になる。鉄道に関する直通ネットワークの拡大は、乗り換え作業が不要になることによる駅間移動時間の短縮という意味における便益増大(有用性の増大)という視点からだけでなく、「直通駅リンクの数」の増大によるネットワーク的バンドワゴン効果の増大という視点からも評価することができる。
このことは次のような形で理解することができる。
 
「旅客」視点から見た、「乗り換えなしに直通で行くことができる駅」というネットワーク集合と「乗り換えなしに直通では行くことができない駅」というネットワーク集合の区別
「宇都宮線と横須賀線」、および、「高崎線と東海道線」を新宿経由で相互直通運転する湘南新宿ラインの開通がそうであったように、「宇都宮線、高崎線、常磐線内の駅から東京駅・品川駅に直通でいける」とか、「東海道線の各駅から上野駅に直通でいける」ようにした上野東京ラインの開通は、一種の「イノベーション」である。上野東京ラインができる以前は東京駅と直通では結ばれてはいなかった高崎線内や宇都宮線内の各駅が東京駅と直通で結ばれるようになったことは、「新幹線への乗り換え作業が2回から一回へと半減する」という意味でも大きな便益増大である。新幹線での長距離旅行では旅の荷物が多くなるため、乗り換え回数が1/2になるということは大きな有用性を持っている。
「直通で結ばれている駅」というネットワーク集合、すなわち、直通駅ネットワークにおける相互直通リンクの数が、上野東京ライン開通という「イノベーション」によってどのように変化したのかをモデル的に考えると次のようになる。(下図の上半分は、上野東京ライン開通前の直通駅ネットワークのあり方を示したもので、分断された二つの直通駅ネットワークが描かれている。下図の下半分は、そのように分裂していた二つの直通駅ネットワークが上野東京ライン開通によって一つの直通駅ネットワークへと統合された後の直通駅ネットワークを示したものである。)
station-network2015-07-02
 
上に示したように、「直通」できない路線ネットワークとして分断されていた鉄道路線を「結合」して一つの統合的ネットワークへと改編させることは、「直通」可能な駅というネットワーク集合に属するメンバー数を大幅に増大させ、直通駅リンクの数を大幅に増大させる。
電話ネットワークやFAXネットワークの場合には、直接的に音声やFAXでコミュニケーションを取ることのできるリンク、すなわち、コミュニケーション・リンクの数によってネットワークの便益を評価することができる。それと同じく、鉄道ネットワークの場合には、駅と駅の間をつなぐ相互直通リンクの数によって直通駅ネットワークの便益を評価することができる。
 互いにコミュニケーションを取ることができる電話ネットワークやFAXネットワークにおける電話やFAXの数に対応するのは、直通で結ばれている駅の数である。互いにコミュニケーションを取ることができる電話やFAXの数が増大するとコミュニケーション・リンクの数が増大したように、直通で行くことができる駅の数が増大すると直通駅リンクの数が増大する。
 その意味で電話ネットワークやFAXネットワークにおけるネットワーク効果的バンドワゴン効果と同様のことが、直通駅ネットワークにも該当すると考えることができる。
 
[考察してみよう]
東京都心部におけるコミュニティーサークル社会的普及のための対応策を、下記の記事を参考にしながら上記の視点から議論し、考えてみよう。
「コミュニティーサークル「ちょい乗り」普及足踏み — 手続き煩雑・拠点少なく」『日本経済新聞』2015年7月4日朝刊
「千代田区コミュニティーサークル実証実験」
「江東区コミュニティーサークル実証実験」
「港区コミュニティーサークル実証実験」
 
[参考]ネットワーク的バンドワゴン効果とは区別すべき、直通運行に関わるネットワーク結合の意味
1) 「貨物」視点から見たネットワーク効果 — 「積み替えなしで直送できる」こととしての直通運行ネットワークの有用性
2) 「鉄道」会社視点から見たネットワーク効果 — 「直通運転が可能な路線・駅の数」「車両の滞泊・整備・検査、列車の組成などの作業をおこうな車両基地が直通運転によって対応可能な路線・駅の数」が増大することに起因する直通運行ネットワークの有用性
ネットワーク効果利用のための、鉄道ネットワークの物理的連結に関する例外的対応(秋田新幹線的対応)
3) 「車両製造」会社視点から見たネットワーク効果 — 「製造した車両を直送できる路線の数」が増大することに起因する直通運行ネットワークの有用性
JRや大手私鉄など全国の鉄道会社向けに車輛を製造している東急車輛製造の工場は京急線の金沢八景駅に隣接する場所にある。同工場から車両出荷を出荷する場合には、同工場から金沢文庫駅の手前で京急線と合流させて、京急線内を運行させた後、京急線の神武寺駅付近で京急線からJR在来線・逗子駅につなぐ専用線路を利用してJR在来線に運べるようにしてある。
 同工場から延びた線路の軌道幅は、JR在来線と同一の1,067mmであるが、京急線の線路幅は新幹線と同じ1,435mmとなっているため、車両出荷のために経由線として利用する京急線の線路の一部は、レールを3本(3線軌条)として両方の線路幅に対応できるようにしてある。
[参考資料]
  1. 杉山淳一(2009)「線路幅は違うのに……実は、京浜急行とJR横須賀線の線路は繋がっている」マイナビニュース・鉄道トリビア13, 2009/07/31
  2. JR東日本「秋田新幹線の歴史」
  3. 三線軌条部分の場所を示す地図
  4. 新潟県商工会議所連合会(2009)「[参考資料]直通運転化の手法(ミニ新幹線、フリーゲージトレイン)について」
  5. 北海道庁 総合政策部 交通政策局新幹線推進室「北海道新幹線に関するQ&A」のQ.9
  6. 国土交通省鉄道局「青青函共用走行の検討状況について」
 
 
2. G3 FAXという製品イノベーションの社会的普及を促進した二つの要因 — G2 FAXからG3 FAXへの切り替えに伴う2種類の「便益」(benefit)増大
G3 FAXという製品イノベーションの社会的普及は、下記に詳しく述べるように、
(1) イノベーション初期における性能差異化に基づく製品普及
(2) イノベーション中期におけるFAXネットワークのコミュニケーション・リンクの数の大きさによる差異化に基づく製品普及
という2段階に分けて理解することが有用である。
顧客にとって、A1「旧世代製品それ自体の便益」(旧世代製品の機能や性能によって規定される便益)+A2「旧世代製品ネットワークの便益」(旧世代製品FAX間のコミュニケーション・リンク数の大きさに比例する便益)よりも、B1「新世代製品それ自体の便益」(新世代製品の機能や性能によって規定される便益)+B2「新世代製品ネットワークの便益」(新世代製品FAX間のコミュニケーション・リンク数の大きさに比例する便益)の方が大きい場合に、旧世代製品から新世代製品への切り替えが検討されることになる。
 新世代製品が販売開始されたばかりの製品イノベーション初期段階では一般にそうであるが、「新世代製品」のG2 FAX製品の登場初期には「旧世代製品」のG1 FAX製品よりも総設置台数が少なかった。それゆえ製品イノベーション初期段階では、B2「新世代製品ネットワーク便益」はB1「旧世代製品ネットワーク便益」よりも小さい。
 それゆえ「新世代製品FAXでの新機能や性能向上の実現による便益増大」A2A1の大きさが「新世代製品FAXネットワーク便益」と「旧世代製品FAXネットワーク便益」の差strong>B1B2を上回るような顧客のみが新世代製品の採用を検討することになる。
 しかも短期的な視点から新世代製品の採用の経済的合理性が判断された場合には、便益増大の総和1[(A2B2)-(A1+B1)]が、新世代製品の採用のスイッチング・コストの総和(旧世代製品に代わって新製品を採用しようとした時に必要とされるコストの総和)よりも大きくなければならない。
 
[考察してみよう]
下記の記事を上記の視点から議論してみよう。
「IC乗車券延伸なるか 主要10カード 全国利用めざす」『朝日新聞』2015年6月27日朝刊
 
(1) 製品本体の大幅な性能向上に伴う有用性の増大— 性能向上に基づく差異化による製品競争力の増大
1) 解像度が100dpiから200dpiに向上(「解像度」性能の2倍化)
2) A4一枚を送信するのかかる時間が3分間から1分間へと1/3に短縮した(「送信速度」性能の3倍化)
 
性能向上に基づく差異化による製品競争力の増大にも関わらず、新世代製品への切り替えにかなりの時間を要する理由
G1 FAXからG2 FAXへの製品イノベーションは、新世代製品が旧世代製品よりも性能が大幅に向上(送信性能が2倍に向上)していたことで、1972年の登場から10年後の1982年には前世代機のG1 FAXよりも設置台数で上回ることができた。
 新世代製品が旧世代製品よりも性能が大幅に向上(送信性能が2倍に向上)していたにも関わらず、新世代製品の社会的普及がなかなか進展しなかったのは、旧世代製品間で構成されているネットワークのコミュニケーション・リンク(FAXを互いに送受信可能なリンク)の数が、新世代製品が構成するネットワークのコミュニケーション・リンク(FAXを互いに送受信可能なリンク)の数よりも最初は多いためである。
 G2 FAXという製品イノベーションの初期段階では、FAXを互いに送受信できるという便益の大きさにおいて新世代製品は旧世代製品に比べて劣っている。地域を超えて送受信可能であるという機能、および、送信性能向上という便益をより高く評価するイノベーター顧客層 — たとえば、締切時間が毎日定時に来る新聞社では、他社を出し抜いて特ダネを掲載できることは競争優位確保に重要であった。逆に、同業他社がすべて報じているニュースを一社だけ掲載できないという「特落ち」は自社の競争優位を大きく損なうものである。そのようにニュースの速報性を最上位の価値(value)とする新聞社では、文字だけでなく画像を瞬間的に送ることができるFAXは競争優位確保のための重要な技術的手段であった。
 また警察ではFAXは捜査情報や指名手配情報の正確でより素早い技術的伝達手段として大きな意味を持っていた。
 そのような新聞社や警察といったFAX製品に対するイノベーター顧客にとって、旧世代製品よりも技術的性能が大幅に高いとか、旧世代製品にない機能を持っているといった特性を持つ新世代製品の便益は、製品価格の多少の高さや、コミュニケーション・リンクの数の低さという問題点を上回るものであった。
 新聞社や警察でのそうしたFAX利用では、他組織との送受信は基本的に重要ではなく、同一組織内での一定数の部署間での利用における快適さだけが重要な問題であった。同一組織内での利用という点からは、互いにFAXを送受信する部署の数だけFAXを購入すればそれで済むため、G1 FAXから G2 FAXへの製品イノベーション、G2 FAXから G3 FAXへの製品イノベーションの速やかな採用の採用によって得られる便益の増大は、そうした製品イノベーションの採用に要するコストの大きさを上回るものであった、と推定される。
 限られた数の部署間でのより素早い送受信や、よりきれいな画像の送受信が重要視される業務のためのFAXに関しては、旧世代製品から新世代製品への置き換えは比較的スムーズに進んだと考えられる。しかしそうではなく、発注書送信や注文書受信といった不特定多数の顧客からの送受信のためのFAXに関しては、送受信可能なネットワーク・リンクの数の大きさがより重要であるため、ネットワーク効果的バンドワゴン効果がイノベーションの受容・社会的普及に大きな影響を与えた。
 
(2) G3FAX製品本体どうしのネットワーク効果的バンドワゴン効果による有用性の増大 — コミュニケーション・リンク数の飛躍的増大という差異化による製品競争力の増大
「同一ネットワークに所属するメンバー数がn倍になると、ネットワークにおけるコミュニケーションリンクの数はn2になる」というネットワーク効果の特性に基づく製品競争力の増大
地域の壁、メーカーの壁で分断されていたG1 FAXネットワーク、メーカーの壁で分断されていたG2 FAXネットワークに対する、G3 FAXの優位性
G2 FAXでは基本的には同一メーカー間(あるいは同一製品間)でのみでしかFAXの送受信ができないというclosedなネットワーク・システムであったので、送受信可能なネットワーク・メンバーの数はかなり限定的であった。
 これに対して、G3 FAXでは異なるメーカー間(異なる製品間)でもFAXの送受信ができるというopenなネットワーク・システムであったので、G3 FAX登場の1976年から数年後の1982前後には、送受信可能なネットワーク・メンバーの数が、旧世代製品であるG1 FAXやG2 FAXのネットワーク・メンバーの数を追い越したのではないか、と推定される。
参考資料の北米におけるFAX設置台数の歴史的推移表から判断すると、1982年前後にはG3 FAXという新世代製品の送受信可能ネットワーク・メンバー数が、G1 FAXやG2 FAXという旧世代製品を追い越したため、 同一の製品種別の製品同士のネットワーク性に起因するバンドワゴン効果(ネットワーク効果)により、対前年比数十%以上の大幅な増加を続け、社会的普及が加速度的に進んだ、と推定することができる。
 
図3 北米におけるG3 FAX設置台数、および、対前年比の伸び率の1980年代における推移(1981-1989)
G3FAX-rate
 
3. G4 FAXという製品イノベーションの社会的普及の失敗に関わる理論的分析
G3 FAXからG4 FAXへの切り替えに伴うトータルの「便益」(benefit)増大とトータルの「切り替えコスト」(初期購入コスト、ランニングコスト、廃棄コスト、新規学習コストなどを含む全体的コスト)の相対的大小の問題
FAXにおける補完財的バンドワゴン効果に起因するG4 FAXという製品イノベーションの社会的普及の失敗問題の理解のためには、FAXという製品本体の製品イノベーションに関するcost/benefit分析だけでなく、FAXという製品の利用に必要不可欠な補完財製品(FAXの伝送回線)の製品イノベーションに関するcost/benefit分析も必要である。しかもその際には、互いの製品普及のために必要不可欠な相互補完財であるFAXと伝送回線それぞれを独立に取り扱うのではなく、総合的に取り扱う必要がある。
FAX_G1_G2_G3-b

FAXの社会的普及に関しては、新聞社など同一企業内における業務用途あるいは事務連絡用途のための業務用FAX、多数の異なる企業間における受発注作業や情報連絡用のための業務用FAX、一般家庭用FAXに分けての分析も必要である。

 
経営技術論2015.07.02 はコメントを受け付けていません

教養演習2015.06.30

データを用いた考察
(1)データの入手先
 
(2) グラフの作成サンプルおよび作成課題
上記サイトから入手したデータの加工により、下記のように販売開始年から売上台数の変化のグラフを作成することができる。
Sony-hard-PS2-PS3-PSP

[やってみよう]
課題1 任天堂に関して、同様の作業をやってみよう。
課題2 グラフに基づいて、任天堂のゲーム機とソニーのゲーム機の比較をおこなってみよう。

教養演習2015.06.30 はコメントを受け付けていません

情報公共論2015.06.30

[前回の授業内容]情報公共論2015.06.23
[次回の授業内容]情報公共論2015.07.07
 
[今回の論点]
1.ソフトウェア系情報財に関するpublic/private問題
1) 著作権の利用による、情報財の「私有財産」化 vs 「公共財産」化
著作権は情報財を「私有財産」化するためだけでなく、「公共財産」化のためにも利用することができる。
2) 著作権の法的保護の社会的意味
3) 著作権の法的保護期間が有限であることの社会的意味=公共的意味
4) 著作権の法的保護の利用に制限を設けることの社会的意味=公共的意味
情報公共論2015.06.30 はコメントを受け付けていません

経営技術論2015.06.25

[前回の授業概要]経営技術論2015.06.18
[次回の授業概要]経営技術論2015.07.02
 
[配付資料]
A.JRの新幹線と在来線
  1. 日本経済新聞社(1991)「変わる市場支える技術1991 第12回 高速・大量輸送 ―― 超高速鉄道、”独仏特急”追う日本、在来線への乗り入れ課題」『日経産業新聞』1991年12月19日
  2. 朝日新聞社(2015)「フリーゲージ実用化暗雲、新幹線長崎デビュー目指すが・・・不具合のため耐久試験が中断」『朝日新聞』2015年6月19日夕刊(カラー版)
  3. 日本経済新聞社(2014)「フリーゲージ列車実験、JR西、2016年度から、北陸新幹線延伸にらむ」『日本経済新聞』2014年9月18日地方経済面、兵庫
  4. 日本経済新聞社(2015)「JR西社長 敦賀からフリーゲージ開始、2022年度に間に合わず」『日本経済新聞』2015年度2月20日地方経済面、近畿B
  5. 日本経済新聞社(2015)「北陸新幹線きょう開業、在来線も利用した高速鉄道網の整備による日本海側高速鉄道網の構築、新潟-富山-敦賀-大阪の直通視野に、新潟県「大阪へ一気通貫」」『日本経済新聞』2015年3月14日、地方経済面、新潟
B.電力ネットワーク問題— 東日本と西日本での電源周波数の差異、および、多国間送電網
C.FAXイノベーションの社会的普及問題
D.VTRイノベーションの社会的普及問題
 
[今回の授業ポイント]
1.製品イノベーションにおける経路依存性現象視点から見た鉄道の線路幅 — 既存ネットワークとの物理的結合に起因する経路依存性(その1)
(1) 京王本線 vs 井の頭線
京王電鉄という同一企業が管理・運営しているにも関わらず、井の頭線はその他の路線と線路幅が異なる。井の頭線の線路幅が1,067mmなのに対して、京王本線などそれ以外の路線の線路幅は1,372mmとなっている。京王電鉄が「新宿=吉祥寺」、「新宿=渋谷」、「吉祥寺=調布=京王八王子」、「渋谷=調布=京王八王子」といった列車運行を実現しない理由の一つは、線路幅の差異により「京王線と井の頭線とで電車の相互乗り入れができない」ためである。
 このように京王電鉄の現在の事業戦略を制約している線路幅の違いは、経路依存性に対する京王電鉄の歴史的選択の結果という視点から分析=理解することができる。
 
  1. 1882年開業の東京馬車鉄道(日本最初の馬車鉄道、私営の鉄道)は線路幅として1,372mmを採用した。東京馬車鉄道はその後、動力源として電気を使用するようになり東京電車鉄道と改称したが、線路は東京馬車鉄道時代のものを利用した。
  2. 東京電車鉄道、東京市街鉄道、東京電気鉄道の3社が合併して東京鉄道(のちの東京都電)が創られたが、3社とも鉄道の線路幅は1,372mmであった。
  3. 京王電鉄はその創業期に東京鉄道(のちの東京都電)への乗り入れを計画していたことなどから、線路幅を1,372mmとした。
  4. 府中駅 – 京王八王子駅(当時は東八王子駅)間は、最初から京王電鉄の路線であったわけではない。同区間の開業は1925年で玉南電気鉄道株式会社によるものであり、その当時の線路幅は1,067mmであった。
  5. 京王電鉄(当時は京王電気鉄道)は、1926年に玉南電気鉄道株式会社を買収し、1927年には線路幅を1,327mmに改修し、新宿駅=八王子間の直通運転を可能とした。
(2) JR在来線 vs JR新幹線
線路幅
JR在来線 1,067mm
JR新幹線 1,435mm
 
日本最初の蒸気鉄道に起因するJR在来線の線路幅に関する経路依存性
1872年(明治5年)における新橋=横浜間の蒸気機関車による鉄道営業(29キロメートル、所要時間ノンストップで53分)の「革新」性については下記参考資料の1が参考になる。同Webページの記述によれば、当時は1日に10里(約40km)を歩くのが普通であったため、同鉄道は1日近い行程を53分で行くことになり、初めて鉄道に乗った青年は「早キ事神の如し」という印象を持った。
 馬車鉄道の開業は蒸気鉄道よりも遅れ、1882年(明治15年)の東京馬車鉄道(私営の鉄道、新橋と日本橋の間での営業)であった。

 この日本の最初の鉄道である新橋駅=横浜駅(現 桜木町駅)間の蒸気鉄道の開業(1872年、明治5年)時に線路幅として1,067mmを採用したことが原因となり、JRの在来線の線路幅は1,067mmとなった。
 
高速走行時の安定性重視などを理由とする、新幹線でのより広い線路幅の採用
JRの在来線と新幹線では線路幅が異なっている。現在の新幹線車両の多くが在来線を走行できないのは、在来線の線路幅が1,067mm(狭軌)であるのに対して、新幹線の線路幅が1,435mm(標準軌)というように異なっているからである。そのため山形新幹線では、在来線の奥羽本線の狭軌を標準軌に改変することで新幹線の運行を可能にした。長崎新幹線では線路側の改変ではなく列車側の改変により新幹線車両が在来線を走行できるようにするフリーゲージトレイン(FGT)技術の採用が予定されている。
 
[考察してみよう]
問題1-1
日本のJRの在来線の線路幅が1,067mmという狭軌となったことを、経路依存性という視点から考察してみよう。また狭軌から広軌への改築という議論は、軍事輸送能力の強化を目的として展開された1880年代後半の議論、日清戦争(1894-1895)後の1896年に発足した逓信省軌制取調委員会(1896-1899)における調査・検討、鉄道院(1908年設立)初代総裁の後藤新平による標準軌への改軌案(「改主建従」案)と立憲政友会による反対論(「建主改従」案)の1910-1911年の改軌論争、内閣鉄道院総裁の仙石貢・添田壽一による広軌検討調査(1914-1916)、日中戦争開始後の1938年頃からの弾丸列車計画における広軌改築論など様々な議論があったにも関わらず、新幹線(1964)の登場までJRは狭軌がdominantであり続けた理由・メカニズムを考察してみよう。
 
問題1-2
満州における鉄道の線路幅の歴史的変遷、および、その変化の理由を調べて見よう。なおその際には、ロシア帝国や日本の影響、および、朝鮮半島における鉄道路線との関係の議論を必ず含めなさい。
[線路幅に関する参考資料]
  1. 青木栄一(1996)「鉄道ゲージの歴史地理学」『地理』41(11), pp.30~40.
  2. 青木栄一(2002)「書評 原田勝正:『日本鉄道史』」『歴史地理学』209(44-3), pp.39~41.
  3. 青木栄一(2002)「3フィート6インチ・ゲージ採用についてのノート」『文化情報学』(駿河台大学文化情報学部紀要) 9(1), pp.29-39.
  4. 朝日新聞社(1992)「狭軌の誕生 レールの幅:2(なんでもQ&A)」『朝日新聞』1992年12月09日朝刊
  5. 朝日新聞社(1992)「整備新幹線 レールの幅:4(なんでもQ&A)」『朝日新聞』1992年12月15日朝刊
  6. 井上勝(1909)「帝国鉄道の創業」鉄道時報局編『拾年紀念 日本の鉄道論 』鉄道時報局, p.32
    「ケージのことは第一の問題なりし、予もいささか欧人の所論を研究せしが、我国のごとき山も河も多くまた屈曲も多き地形上にありては3フィート6インチケージを適当とす。英国等のごとく4フィート8インチのケージにては過大に失し不経済なりとの説多きを占めたり。ことに現下の勢いにては広軌に100哩造るよりは狭軌にて130哩造る方が利もっとも多からんと予も思考したり。よってその説を隈公[大隈重信]に勧めたることもありしが、廟議終に3フィート6インチケージを採用するに決定せられたり。」
  7. 大隈重信「ゲージ論など鉄道創業の回顧」沢和哉編(1981)『鉄道-明治創業回顧談』築地書館
  8. 久保田博(2005)「軌間の選定」『日本の鉄道史セミナー』グランプリ出版、第4章
  9. 鉄道省(1921)「軌制問題」『日本鉄道史』中篇、鉄道省、第16章
  10. 永井信弘(2001)「京王 – 都営地下鉄新宿線相互直通運転開始の頃」『鉄道ピクトリアル』2001年7月臨時増刊号通巻704号
  11. 西沢泰彦(2000,2015)『図説 満鉄』河出書房新社 
  12. 原田勝正(2001)『日本鉄道史 ― 技術と人間』刀水書房
 
問題1-3
日本では在来線の広軌化論が何度も退けられてきた。それにも関わらずなぜ新幹線の線路幅として在来線と異なる標準軌が採用されたのかを考察しなさい。
 その際には、新幹線網という「新世代」製品ネットワークの設計に際して、「旧世代」製品ネットワークである在来線(既存の鉄道レール、枕木、道床、路盤、橋梁、踏切などから構成されているシステム製品)をそのまま利用することのメリットとデメリットを比較考量しながら論じなさい。
 
問題1-4
在来線と新幹線とで線路幅が異なることは、「新幹線というイノベーションの社会的普及に際してどのような問題を引き起こしているのか?」「JRはそのことに対してどのような対応をしようとしているのか?」を考察しなさい。
 
[新幹線と在来線の関係に関する参考資料]
  1. 朝日新聞社(2015)「フリーゲージ実用化暗雲、新幹線長崎デビュー目指すが・・・不具合のため耐久試験が中断」『朝日新聞』2015年6月19日夕刊
  2. 日本経済新聞社(1991)「変わる市場支える技術1991 第12回 高速・大量輸送 ―― 超高速鉄道、”独仏特急”追う日本、在来線への乗り入れ課題」『日経産業新聞』1991年12月19日
  3. 日本経済新聞社(2014)「フリーゲージ列車実験、JR西、2016年度から、北陸新幹線延伸にらむ」『日本経済新聞』2014年9月18日地方経済面、兵庫
  4. 日本経済新聞社(2015)「JR西社長 敦賀からフリーゲージ開始、2022年度に間に合わず」『日本経済新聞』2015年度2月20日地方経済面、近畿B
  5. 日本経済新聞社(2015)「北陸新幹線きょう開業、在来線も利用した高速鉄道網の整備による日本海側高速鉄道網の構築、新潟-富山-敦賀-大阪の直通視野に、新潟県「大阪へ一気通貫」」『日本経済新聞』2015年3月14日、地方経済面、新潟
  6. 福井新聞社(2014)「 敦賀にフリーゲージトレイン実験線 北陸新幹線延伸合わせ導入目指す」2014年9月18日午前7時10分
  7. 鉄道新聞社(2014)「車輪の幅を変えられる新幹線!「フリーゲージトレイン」の最新型がお披露目」鉄道新聞2014/04/19 17:20
  8. 軌間可変技術評価委員会(2010)「軌間可変電車の技術開発に関する技術評価」
  9. 国土交通省鉄道局(2012)「軌間可変電車(フリーゲージトレイン)の技術開発状況について」第2回整備新幹線小委員会 配布資料
  10. 国土交通省鉄道局「軌間可変電車(フリーゲージトレイン)」
    参考動画として、新試験車両走行状況(H26.7)軌間変換イメージ動画などのリンクを含むWeb

2.経路依存性現象としての、日本における電源周波数問題 — 既存ネットワークとの物理的結合に起因する経路依存性(その2)
日本の電力会社が生産している交流電源という「製品」に関して問題なのは、東日本の電源周波数が50Hz、西日本の電源周波数が60Hzと異なっていることである。
 これは、交流の電源周波数をどの値にするかという歴史的過去における技術的決定が、東日本と西日本では異なっていたことによる経路依存性現象である。
 こうした差異は、日本の電力ネットワークを二つに分断するものであり、社会的=経済的に大きなコスト負担をもたらしている。
 
[参考資料]
  1. 日本経済新聞社(2015)「電力、東西融通2.5倍に、原発3基分、越境販売後押し、経産省、段階的に設備増強」『日本経済新聞』2015年4月16日朝刊1面
  2. 日本経済新聞社(2015)「電力の東西融通、最高、原発停止や卸取引拡大、昨年度62%増」『日本産業新聞』2015年4月16日
 
3.経路依存性現象の生成要因としての、製品のシステム性
製品イノベーションの展開過程が社会的普及に成功できるかどうかは、経路依存性に適切に対応できるかどうかに大きく左右される。経路依存性現象を生み出す重要な要因の一つが、製品のシステム性である。
製品のシステム性に起因する経路依存性現象は下記の二種類に分類することができる。
 
(1) 同一の製品種別の製品同士のネットワーク性に起因するバンドワゴン効果(ネットワーク効果的バンドワゴン効果)
ex.1 日本の電源周波数:東日本の電源ネットワーク 50Hz、西日本の電源ネットワーク 60Hz
ex.2 JRの線路幅:在来線ネットワーク 1,067mm、新幹線ネットワーク 1,435mm
ex.3 都営新宿線の線路幅を京王線と同じ1,327mmと共通化することによる相互乗り入れの実現
ex.4 FAX普及度の世代的差異:G1 FAX,G2 FAXは社会的普及の「広範化」に失敗したが、G3 FAXは成功した。G3 FAXよりも技術的に高性能なG4 FAXは社会的普及に失敗した。
FAX-installed_base_1966-1990
 
(2) 異なる製品種別の製品同士のシステム性(「製品」=「補完財」関係システム)に起因する補完財的バンドワゴン効果
FAX_G1_G2_G3-b
 
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経営技術論2015.06.18

[前回の授業概要]経営技術論2015.06.4
[次回の授業概要]経営技術論2015.06.25
 
[授業中に論じることができなかった問題]
製品設計の変化という視点から見た、電卓の製品イノベーション
 
[授業展開テーマ]
1.イノベーション・ライフサイクルの「繰り返し」による製品の機能・性能の螺旋的発展
▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼ 製品セグメント1(誕生)▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼
【流動期1】機能・性能での差異化による競争優位追求
新しい製品セグメント市場の創造を可能とするradical innovationの形成=発生
innovationの主導者から見ると形成、innovationの受容者・利用者から見ると発生
   ↓
【移行期1】市場におけるproduct designの共通化
固定=不変のdominant designの確立
   ↓
【固定期1a】低コスト化による競争優位追求
dominant designの確立およびproduct innovationの発生率低下による製品の差異化追求の困難化、それにより研究開発の焦点がproduct innovationからprocess innovationへ移行
   ↓
【固定期1b】製品のcommodity化の進行
process innovationの発生率低下による市場の成熟化
▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲ 製品セグメント1(終焉)▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲
   ↓↓
   ↓↓
 脱成熟化に向けた研究開発・製品開発の取り組み1
   ↓↓
   ↓↓
▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼ 製品セグメント2(誕生)▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼
【流動期2】新たな機能・性能での差異化による競争優位追求
   ↓
【移行期2】市場におけるproduct designの共通化
   ↓
【固定期2a】低コスト化による競争優位追求
【固定期2b】製品のcommodity化の進行
▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲ 製品セグメント2(終焉)▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲
   ↓↓
   ↓↓
 脱成熟化に向けた研究開発・製品開発の取り組み2
   ↓↓
   ↓↓
▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼ 製品セグメント3(誕生)▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼
【流動期3】新たな機能・性能での差異化による競争優位追求
   ↓
【移行期3】市場におけるproduct designの共通化
   ↓
【固定期3a】低コスト化による競争優位追求
【固定期3b】製品のcommodity化の進行
▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲ 製品セグメント3(終焉)▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲
   ↓↓
   ↓↓
(以下、脱成熟化に向けた研究開発・製品開発の取り組み⇒⇒「流動期→移行期→固定期」というサイクルの繰り返し)
 
2.新機能・性能向上の実現による「differentiation」の追求を主目的とするproduct innovation vs コスト低減の実現による「cost leadership」を主目的とするprocess innovation
 
3.顧客特性に関するロジャースの理論
 
4.生産財に関するイノベーション vs 消費財に関するイノベーション
 
[今回の授業ポイント]
1.自転車のproduct designの歴史的変化に関する経営技術論的視点からの分析
(1) 市場初期におけるproduct designの多様性
(2) 市場初期におけるproduct designの競争優位性を左右した要因
a.初期市場における「スピード」重視による差異化での競争優位の追求 — スポーツとしての自転車に対する社会的関心
b.社会的普及初期における「安全性」確保重視による差異化での競争優位の追求 — 移動の道具としての自転車
(3) 市場におけるdominantなproduct designの決定 —- スピードと安全性を両立させるproduct designとしてのsafety bicycle
 
[考察してみよう]
問題1-1
自転車市場形成初期におけるproduct designの多様性について、その製品仕様という視点から分析してみよう。
 
問題1-2
アナログレコード市場はCD市場の登場とともに市場がほぼ消滅した。これに対して、自転車市場は原動機付き自転車(オートバイ)や電動自転車・電気自転車などといった新市場の形成にも関わらず生き残っている。その理由を経営技術論的視点から分析してみよう。
 
問題1-3
自転車市場に限らず、交通=輸送機関市場では「旧世代技術に基づく製品」と「新世代技術に基づく製品」とが競争しながらも共存している。飛行機と新幹線の競争と棲み分けに関して、北陸新幹線などの具体的事例をもとに説明しなさい。
 
2.数字キー配列に関するproduct designに関する経営技術論的視点からの分析
(1) 数字キーインターフェースを利用するマシンの種別
a.数値計算処理作業用マシン
電卓(電子式卓上計算機、electronic calculator)
電子計算機(computer)
 
b.音声通話用マシン
ダイヤル式固定電話機
押しボタン式固定電話機(プッシュホン)
フィーチャーフォン式携帯電話機
スマートフォン式携帯電話機
 
c.TV用リモコン
 
d.銀行のATMにおける暗証番号や金額指定のための数字キー
 
(2) 数字キーインターフェースに関するdominant designの変化と非-変化
 
[考察してみよう]
問題2-1
スマートフォン式携帯電話機は、その電話機能を利用する場合の数字キー配列は押しボタン式固定電話機(プッシュホン)やフィーチャーフォン式携帯電話機と同じ配列になっているが、その計算機能を利用する場合の数字キー配列は電卓と同じ配列になっている。
 新しく開発された製品のproduct designがそれ以前の同種の製品セグメントのdominant designを受け継ぐというこうした現象は、製品開発における経路依存性を示すものである。
 製品開発における経路依存性を示す現象としては他にどのようなものがあるのかを調べるとともに、経路依存性が生じる理由を考察してみよう。
 
問題2-2
押しボタン式固定電話機(プッシュホン)の数字キー配列はそれ以前の同種の製品セグメントのダイヤル式固定電話機とは異なる配列になっている。押しボタン式固定電話機のproduct designの決定に際しては、ダイヤル式固定電話機のダイヤル配列や、電卓型のダイヤル配列なども検討されたが、それらとは異なる別のダイヤル配列が選択されている。
 押しボタン式固定電話機(プッシュホン)からフィーチャーフォン式携帯電話機への製品イノベーション、フィーチャーフォン式携帯電話機からスマートフォン式携帯電話機への製品イノベーションでは、数字キーの配列が変化していないのに、ダイヤル式電話機から押しボタン式固定電話機へ製品イノベーションでは数字キー配列が変化している。
 押しボタン式固定電話機の数字キー配列というproduct designの決定に関して、技術的理由および経路依存性の視点から考察してみよう。
 

3.製品イノベーションにおける経路依存性現象
経路依存性(path dependency)現象とは、下記のように、製品のproduct designの決定=選択が、製品イノベーションが遂行される歴史的経路によって規定=制約される現象のことである。「製品イノベーションがどのような歴史的経路で遂行されてきたのか?」という歴史的視点からの製品イノベーション理解が重要なのは、このように新世代製品のproduct designが旧世代製品のproduct designによって規定=拘束されることがあるからである。また新たに製品イノベーションを実行しようとする場合には、経路依存性による規定=制約に対する分析・配慮が必要不可欠である。
 
ex.1 電卓と電話機で数字キーの配列が異なること
ex.2 家庭用電源の電圧や電源プラグの形が国・地域によって異なること
ex.3 日本における電源周波数のdominant designが東日本と西日本で異なること
ex.4 JRの在来線の線路幅が1,067mmという狭軌となっていること
ex.5 鉄道会社や鉄道路線によって線路幅(2本のレールの内側間隔)が異なること
 そうした経路依存性現象は、製品イノベーションの遂行に関わる企業が有する技術的resourceに起因するものだけでなく、新世代製品の開発企業がネットワーク効果によるバンドワゴン効果や、補完財によるバンドワゴン効果を利用しようとした場合に生ずる。
 経路依存性は、「アルファベット文字の入力インターフェースに関するproduct designのQWERTY配列が、19世紀末期から現在に至るまでdominantである」という現象に典型的に示されている。
 
QWERTY配列は、19世紀末期には「手動の機械式英文タイプライター」におけるdominant designとなった。その後、「電動の機械式英文タイプライター」、「テレタイプ(タイプライタ式電信機)」、「電子計算機」、「ワープロ専用機」、「PC」、「スマートフォン」といった様々な製品イノベーションにおいても、英文字入力インターフェースのproduct designとしてはQWERTY配列がdominant designとしての地位を保ち続けている。
 日本語入力のためのインターフェースとしては、日本語ワープロ専用機においてNECのM式配列や富士通の親指シフト式配列(NICOLA)などが「発明」され、一定の市場シェアを獲得することができたが、PCにおける日本語入力方式としてはQWERTY配列を利用したローマ字入力・かな変換方式が一般的である。
 
[テレタイプに関する参考資料]
 
 
4.製品イノベーションにおけるproduct design決定に関わる諸cost
製品イノベーションにおけるproduct designの決定に際しては、製品イノベーションの実行に関わる企業側のcostとともに、製品イノベーションの採用に関わる顧客のcostを考慮する必要がある。
19世紀後半期に考案されたQWERTY配列というproduct designが現代のスマホでもdominant designとなっている理由・メカニズムもそうした視点から分析することができる。
ライフサイクル論的視点から見ると、顧客のコストは下記のように分類することができる。

  1. initial cost(初期購入コスト) — 新世代の製品本体、周辺機器、補完製品を購入するコスト
  2. running cost(ランニングコスト) — 電気代・燃料費などの運転費用、消耗品費、修理費、保守費用など機器の継続的利用に必要なコスト
  3. disposal cost(廃棄コスト) — ゴミ処理費用、家電4品目のリサイクル料金、機密書類の溶解処理費用
  4. sunk cost(埋没費用) — 新世代製品の利用に伴って、不要となる旧世代の製品本体、周辺機器、補完製品。JRにおける新幹線という新世代鉄道システムの採用は、在来線の線路、線路基盤、車両、駅のプラットフォーム、駅施設そのものなど旧世代鉄道システムを「不用」なものとしてしまう。

この点に関して下記資料を参照しておくこと。
佐野正博(2015)「製品イノベーションの採用に関わる顧客のcost」

 
[今回の授業に関連するポイント]
1.数値計算処理作業用マシンに関わる技術発展の構造
  1. 「機械」式計算機から「電子」式計算機という相対的にradicalなinnovation
  2. 「機械」式計算機における、「手動」式から「電動」式への相対的にincrementalなinnovation
  3. 「電子」式計算機の「表示装置」における、ニキシー管→蛍光表示管→液晶という相対的にincrementalなinnovation
  4. 「電子」式計算機の「演算素子」の素材における、ゲルマニウムからシリンコンへという相対的にincrementalなinnovation
  5. 「電子」式計算機の「演算素子」における、真空管→トランジスタ、ダイオード→IC→LSI(大規模集積回路)という相対的にradicalなinnovation
2.音声通話用マシンに関わる技術発展の構造
  1. アナログ回線・パルス信号利用の「ダイヤル」式固定電話機
  2. アナログ回線・トーン信号(Dial Tone Multi Frequency信号)利用の「押しボタン」式固定電話機
  3. 光ファイバー回線(デジタル回線)・デジタル信号利用の光IP電話式固定電話機

[参考資料]
応用物理学会「固定電話のあゆみ(1933-)、公衆電話のあゆみ(1955-)
都築伸二「日本における自動車 / 携帯電話事業の歩み」

 
経営技術論2015.06.18 はコメントを受け付けていません

情報公共論2015.06.23

[前回の授業内容]情報公共論2015.06.16
2015.06.16の配付資料
[次回の授業内容]情報公共論2015.06.30
 
[今回の論点]
1.レポート・論文における剽窃(盗用)行為をめぐる大学における対応
「レポート・論文における剽窃(盗用)とは何なのか?」「レポート・論文における剽窃(盗用)の事例にはどのようなものがあるのか?」「レポート・論文における剽窃(盗用)はなぜ不適切なのか?」「レポート・論文における剽窃(盗用)に対する社会・大学における最近の対応はどのようになっているのか?」を考えてみよう。
 
[参考資料]
 
2.著作物の著作物性について
(1) 日本における著作権保護の対象となる著作物であるための要件=著作物性
著作権法2条1項1号の規定における著作物の規定
a.「思想又は感情」を
b.「創作的」に
c.「表現」したもの
d.「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」
 
上記の定義におけるaの規定は、著作権保護の対象となるのは「思想や感情の表現」であり、「単なる事実やデータ」は著作権保護の対象とならない、ということを意味している。
上記の定義におけるbの規定は、著作権保護の対象となるのは「著作者自らが創り上げたもの」であり、「他社の著作物の単なる模倣やcopy」は著作権保護の対象とならない、ということを意味している。
上記の定義におけるCの規定は、著作権保護の対象となるのは「表現」であり、「アイデア」は著作権保護の対象とならない、ということを意味している。「アイデア」の法的保護に関わる権利は、特許権である。
上記の定義におけるdの規定は、著作権保護の対象となるのは「文芸、学術、美術又は音楽に関わるもの」であり、「それ以外の著作物」は著作権保護の対象とならない、ということを意味している。そのため、プログラム・ソフトウェアなど情報財が著作権保護の対象となるのかどうかは歴史的に大きな問題であった。
 
[参考資料]
 
(2) 創作性=独創性(originality) vs 創造性(creativity)
「表現」の「起源」(origin)が自分にあること、すんわち、「独」りで「創」ることとしての、独創性(originality)
辞書的定義もそうであるが、日常的用語法における「独創性」「独創的」という単語には、創造性(creativity)や新規性・新奇性(novelty)という要素も含んでいる。これは、「自分独りで創ればその創造の成果はこれまでにないものになるはずである」という期待、あるいは、「意味ある創造行為は自分独りでこれまでにない新奇なものを創ることである」という発想が一般的だからである。
しかし情報公共論の授業では、「独りで創ること」「創作のoriginが自分にあること」というoriginalityの意味で独創性という単語を用いるので注意すること。
 
(3) 有意味な自然科学的実験における、実験「行為」の創作性=独創性(originality)、実験「行為」の新奇性(novelty)、実験「結果」の創造性(creativity)や新奇性(novelty)という三者の区別
originalityのある実験「行為」であっても、同一の対象に対する同一の手続き(同一のやり方)でなされた実験研究によって生み出される成果は同一のものになる。originalityがある複数の研究が同一の成果を生み出す。
客観的で正当な実験研究という創造的行為の結果は、コピペ行為のないまったくのoriginalな研究であるにも関わらず、まったく同一になる。逆に、まったく同一の結果が生み出されなければ科学的におかしいということになる。(科学的実験の必須的要件としての、再現可能性)
 
(4)著作権は「表現」(expression)に対する知的財産権であるのに対して、特許権は「アイデア」(idea)に対する知的財産権である
表現(expression)に対する法的保護の要件は、originalityだけである。creativityのない表現(expression)であっても、noveltyのない表現(expression)であっても、法的には著作権という権利が作成と同時に与えられる。

これに対して、特許権は、申請主義による法的権利であり、originalityだけでなく、creativityやnoveltyが必要とされる。
 

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情報公共論2015.06.16

[前回の授業内容]情報公共論2015.06.09
[次回の授業内容]情報公共論2015.06.23
 
1.イノベーションに関わるpublic/private問題
(1) 技術革新の社会的普及に関わるpublic的要因
1)スタートアップ期における「公共」的規制— 促進 vs 抑制
旧世代の技術システムに対応した法的規制は、新世代の技術システムの社会的普及の妨げになることが多い。イノベーションの不確実性(「新世代製品の市場規模がどの程度になるのか?」や「新世代製品におけるdominant designが何になるのか?」などを事前に正確に予測することはかなり困難である)という問題とならんで、そうした旧い法的規制を変える必要があるという問題が先駆者のdisadvantageを構成する主要な要因の一つである。

a.電動自転車という技術革新の社会的普及の日中における差異の原因としての法的制度の差異
b.セグウェイ・ドローン(遠隔操作の無人飛行機)・自動運転自動車・グーグルグラスという技術革新の社会的普及に関わる法的規制・規制緩和および社会文化
 
[グーグルグラス関連]
 
2)スタートアップ期における「公共」的支援
厚生労働省:病院や医療機関などへの地デジ助成金
文部科学省:学校や教育機関などへの地デジ助成金
学術情報のオープンアクセス化
 
3)将来的方向としての「公共物」化
a. 知的財産権による法的保護期間経過後の著作および発明 — public domain化
b.自動車の「公共」化
 
(2) 情報イノベーションにおけるpublic/private問題
1)国による強制的イノベーションとしての地上波デジタル — 2011/07/24における完全移行
 
2)イノベーションの先導的推進役としての公共的組織の役割
放送イノベーションの先導的遂行者としてのNHK
放送イノベーションに必要な新技術への研究開発投資 — ハード開発
新しいハードに対応した新世代ソフトの作成(プログラム開発とコンテンツ作成)
 
3)イノベーション遂行の基盤,イノベーションの社会的普及の推進要因としての公共財
ソフト系情報財が公共財として利用される理由は、ハードの限界費用とは異なり、ソフトの限界費用はほぼゼロであるためである
ex.1 TV放送システム[「TV放送設備」、「TV放送用電波」、「ブラウン管TV」・「液晶TV」などのハード系情報財+「アナログ地上波放送番組」・「デジタル地上波放送送番組」などのソフト系情報財からなるシステム}のイノベーション遂行における、ソフト系の公共的情報財としてのTV放送コンテンツ
ex.2 電子書籍リーダー[amazon.comのkindle, 楽天のコボ, SonyのReader, SharpのGALAPAGOSなど]やタブレットというハード系情報財に関する製品イノベーションにおける、ソフト系の公共的情報財としての「著作権保護の対象となっていないpublic domain」の著作物
[関連参考資料]朝日新聞社(2012)「はじめての青空文庫— タブレット広まり利用者急増」『朝日新聞』2012年1月23日朝刊
ex.3 1975年のPCイノベーションにおいて、マイクロソフトはpublic domainのBASIC言語ソフトというソフト系の公共的情報財を基に、有料の自社製品としてのBASIC言語ソフトを開発・販売した。
 
2.著作権の法的保護期間の有限性 — public domain問題
前回の「情報財の「私有物」化/「公共物」化」論に関する補足
 
[関連参考資料]
  1. 日本経済新聞社(2013)「「古典」格安販売に暗雲?、著作権延長、TPP交渉で浮上、作品数影響大きく」『日本経済新聞』2013年5月13日朝刊
  2. 朝日新聞社(2006)「期間延長 70年の保護、必要なの? 新たな創作妨げる恐れも」(著作権のふしぎ:上)『朝日新聞』2006年9月12日朝刊
3.著作権侵害に対する社会的処罰
著作権や特許権などといった知的財産権は先駆者に与えられる。先駆者はそうした知的財産権によって模倣困難性を高めることでり競合他社に対する競争優位性を獲得することができる。
他者の著作権を侵害することは「財産」侵害として刑事罰の対象となる
[関連参考資料]
  1. 朝日新聞社(2009)「海外へTV番組-無断でネット配信で業者を逮捕」『朝日新聞』2009年5月29日朝刊
  2. 日本経済新聞社(2013)「人気漫画を複製、自炊業者再逮捕、著作権法違反の疑い」『日本経済新聞』2013年5月28日西部夕刊社会面
  3. 日本経済新聞社(2013)「書籍をスキャナーで電子化、「自炊」代行を逮捕――著作権法違反の疑い]『日本経済新聞』2013年5月2日朝刊
4.著作物の著作物性
著作物とは何か?著作者である要件は何か?
 
5.法とモラルの区別
法律違反とモラル違反の連関と区別

 

関連問題>未成年者飲酒禁止法における未成年飲酒の法的禁止
 

未成年者に酒を販売したり提供した業者、未成年者の飲酒を制止しなかった親権者や監督代行者に対する処罰規定はあるが、飲酒行為をおこなった未成年者本人に対する刑事処分は規定されてはいない。
 

関連問題>「可罰的違法性」問題

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教養演習A 2015.06.09

[前回の授業内容]教養演習A 2015.06.02
[次回の授業内容]教養演習A 2015.06.16
 
[今回の授業内容]
[考察してみよう]
大学におけるコピペ、剽窃、引用などの不適切行為への厳正な処置」という資料に示したように、最近になり日本の大学では社会的ニーズ=社会的要請に対応すべくコピペ問題に対して厳正な処分を下す方向での変革が進んでいる。これも広い意味でのneeds-oriented innovationの例ととらえることができる。
 このことについて下記のようなことを考えてみよう。
 

  1) 「コピペへの厳正な対処」に対する社会的ニーズ=社会的要請の存在を示す資料を探してみよう。
  2) 「コピペへの厳正な対処」に対する社会的ニーズ=社会的要請が大学において強く求められる理由は何なのか?社会的価値観の変化、知財立国論などとの関連、IT技術の進歩、社会における大学生の階層的位置づけの変化=多様化などとの関連で考えてみよう。
  3) 課題レポートの作成における不適切なコピペ行為に対して厳正な処分をおこなうことの意味・メリットは何か?またそうした処分をおこなうことに関わるデメリットや問題点は何か?
  4) 「コピペへの厳正な対処」に関して、学生側におけるusefulness, wantsはあるのか?それはどのようなモノなのか?どの程度のモノなのか?
  5) 「コピペへの厳正な対処」に関して、教員側におけるusefulness, wantsはあるのか?それはどのようなモノなのか?どの程度のモノなのか?
  6) 「コピペへの厳正な対処」に関して、学生の家計支持者(あるいは学費負担者)の側におけるusefulness, wantsはあるのか?それはどのようなモノなのか?どの程度のモノなのか?
  7) 「コピペへの厳正な対処」に関して、企業側におけるusefulness, wantsはあるのか?それはどのようなモノなのか?どの程度のモノなのか?
  8) 「コピペへの厳正な対処」に関わる技術開発、製品開発にはどのようなものがあるのか?技術開発の進展はどの程度のモノなのか?製品の機能・性能はどの程度のモノなのか?製品に対するdemandはどの程度なのか?
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情報公共論2015.06.09

[前回の授業内容]情報公共論2015.06.02
[次回の授業内容]情報公共論2015.06.16
 
[情報公共論的視点から見た放送事業に関する追加的論点]

  1. 放送電波の有限性(希少性) — アナログ地上波放送やデジタル地上波放送におけるチャンネル数の有限性に示されている放送電波の制約性。視聴者にとって放送電波はnon-rivalrousであるが、放送事業者にとって放送電波はrivalrousである。放送免許制の公共経済学的根拠。
     

  2. 「放送と通信の融合」時代、「放送と通信のデジタル化」時代における事業者間・動画提供サービス間の競合関係の変化、公共放送事業者の役割の変化
 
[これまでの授業内容の補足的レジュメ]
 
[今回の授業理解に必要な先行授業の内容]
情報財の種別
  1. ソフト系情報財(コンテンツ、プログラム)
  2. ハード系情報財(放送電波、無線電波、光ケーブル利用のインターネット回線、銅線[メタル線]電話回線、スマホ、タブレット、パソコン)

[今回の授業内容]
1.TV放送のハードに関するイノベーション — 画面解像度視点から見たTVハードの技術進化
第1世代TV放送
「30万画素」TV放送(20世紀後半)
640(or 720)ドット×480ドットの画面構成, VHSやDVDなどの録画メディア・録画装置
   ↓
第2世代TV放送
「200万画素」TV放送=「2K」TV放送(21世紀初頭~現在)
1920ドット×980ドットの画面構成, ブルーレイなどの録画メディア・録画装置
   ↓
第3世代TV放送
「800万画素」TV放送=「4K」TV放送(現在~)
3840ドット×1960ドットの画面構成
   ↓
第4世代TV放送
「3200万画素」TV放送=「8K」TV放送
7680ドット×4320ドットの画面構成
 
[関連参考資料]
2.TV放送システムのイノベーション — 製品システム論的視点から見たハードとソフトの「共進化」的発展
第1世代TVシステム
「30万画素」TVとしてのブラウン管式アナログTVアナログ地上波放送VHS方式ビデオテープレコーダー(VTR)、DVD方式ビデオレコーダー(20世紀後半)
   ↓
第2世代TVシステム
「200万画素」TVとしてのフルハイビジョン方式液晶TV、プラズマTVデジタル地上波放送,デジタルBS放送, デジタルCS放送ブルーレイ・ディスク・レコーダー(21世紀初頭~現在)
   ↓
第3世代TVシステム
「800万画素」TVとしての4K方式液晶TVスカパー!4K(日本初の商用4K放送, 2015年3月1日開始)Channel 4K(無料試験放送, 2015年6月2日開局)??(現在~)
 
[関連参考資料]

 
3.情報財をめぐるpublic/privateに関する法的規定
(1) copyrightとしての著作権 — 「著作物のcopyに関する許諾権」としての著作権
著作物のcopyに対する許諾、すなわち、copyという形態での著作物の「利用」に対する対価[著作物利用料]の支払いの必要性
 
[著作物利用料に関する契約書の例]
 
[音楽著作物の使用料]
 
(2) 著作権、特許権などの知的財産権による情報財の「私有物」化/「公共物」化
情報財の「私有物」化
法的保護期間内の著作物や発明は、法的権利によってfreeriderを排除可能であるため、excludableである
 
情報財の「公共物」化
法的保護期間終了後の著作物や発明は、法的権利によってfreeriderを排除することが許されないpublic domainとなり、non-exculdableである
 
 
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経営技術論2015.06.04

[前回の授業概要]経営技術論2015.05.28
[次回の授業概要]経営技術論2015.06.18
 
[今回の授業概要]
1.分析視点
生産・販売
(生産者・販売者)
顧客
(購買者・ユーザー)
消費財 生産者 消費者
生産財 生産者 生産者
 
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経営技術論2015.05.28

[前回の授業概要]経営技術論2015.05.21
[次回の授業概要]]経営技術論2015.06.04
 
[今回の授業概要]
1.イノベーションの階層
  1. Technology
  2. Business
  3. Industry
  4. Society
 
2.技術イノベーションの対象
  1. Production
  2. Product
 
3.Productの階層 — Productの性格の差異
  1. Product(1) — 消費財(最終消費財)
  2. Product(2) — 生産財(1) > module
  3. Product(3) — 生産財(2) > parts
  4. Product(4) — 生産財(3) > material
 
4.Product階層視点から見た「新結合」としてのイノベーション
  1. 複数の最終消費財の「新結合」によるイノベーション — 1980年代におけるVTRとレンタルビデオ
  2. 複数のmoduleの「新結合」によるイノベーション — ハイブリッド自動車、音声通話機能のみの携帯電話(音声通話モジュールによる最終消費財)から多機能携帯端末としてのケータイ(音声通話モジュール、電話帳モジュール、カレンダー/スケジュール管理モジュール、カメラモジュール、ビデオカメラモジュール、指紋認証モジュール)へのイノベーション
  3. 複数のpartsの「新結合」によるイノベーション
  4. 複数のmaterialの「新結合」によるイノベーション
 
5.製品イノベーションの起点 — 生産者 vs 消費者
  1. 「生産者→消費者」型イノベーション
  2. 「消費者→生産者」型イノベーション
 
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教養演習A 2015.06.02

[前回の授業内容]教養演習A 2015.05.26
[次回の授業内容]教養演習A 2015.06.09
 
[今回の授業内容]
1.レポートにおける引用表記に関する確認
a.レポートは学術論文とは性格が異なるが、引用表記の仕方などに関しては下記要項を遵守すること

 
b.レポートの内容に関しては5W1Hを、引用資料表記に関しては4Wを意識すること
レポートの内容としては、Who、When、What、Where、Why、Howという6つの要素を網羅することが必要である。
なおレポート中で引用した資料や、レポート作成に際して参考にした資料に関しても、その資料が特定できる情報を明示する必要がある。これは、資料作成者の知的労働の成果を無断かつ無償で「引用」・「利用」することに対する代償として、先行の知的努力への敬意・感謝の念を示すことが必要だからである。
単行本の引用表記・参考資料表記においては、下記の例のように、Who(誰が書いたのか?翻訳書の場合には誰が訳したのか?誰が編集したのか?)、When(いつ書いたのか?)、What(どんなタイトルで公表したのか?)、Where(どの出版社から出したのか?引用の場合には該当のページはどこなのか?)という4つの要素に関する情報の明記が必要である。

[直接引用の場合の引用表記例]
ポーター、M.E. (土岐坤訳,1985)『競争優位の戦略』ダイヤモンド社、pp.72-73
[参考文献として挙げる場合の表記例]
明治大学経営学研究会編(2015)『経営学への扉』第5版、白桃書房
 
2.Wordの見出し設定機能を利用したレポートの形式に関する確認
a.レポートに小見出しを付け、見出し設定をする
 
b.目次挿入機能を利用して目次を挿入する
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情報公共論2015.06.02

[前回の授業内容]情報公共論2015.05.26
[次回の授業内容]情報公共論2015.06.09
 
1.NHKの公共性をめぐる諸議論(続き)
(4)放送に関するイノベーションのための財源としての受信料
放送法の第15条における「放送及びその受信の進歩発達に必要な業務」という文言
NHK「8Kスーパーハイビジョン」
NHK「8Kスーパーハイビジョンとは?」
NHK「2014 FIFA ワールドカップ ブラジル」 8Kスーパーハイビジョンパブリックビューイング(国内4会場)」
 
[配布資料]
 
[さらに進んで調べるための参考資料・データ]
1.「放送の公共性」関連
(3)渡辺武達(1995)「メディアの公共性と公益性」『評論・社会科学』(同志社大学人文学会)52, pp.81-198
(4)放送の公共性に関する調査研究会(1990)『放送の公共性に関する調査研究会報告書』郵政省放送行政局, 115pp
 
3.「放送と通信の融合」によるイノベーション関連
Youtubeニコニコ動画Huludビデオなど、インターネット回線を利用した動画提供サービスというイノベーションの社会的普及が進んでいる。
こうした「通信回線によるTV番組提供」市場に対して、NHK、日本テレビ、フジテレビなどといった既存テレビ放送局も参入をおこなっている。すなわち、NHKオンデマンド日テレオンデマンドフジテレビオンデマンドなどといった新しいサービスが提供されている。
 こうしたネット回線を利用した動画番組提供は、地上波デジタル放送やBS放送など電波技術によるテレビ「放送」に対して、インターネット通信技術によるテレビ「放送」とでも呼ぶことができる。
 そうした意味において「放送と通信の融合」によるイノベーションがネット分野で急速に進行しつつある。

[考察してみよう]

この問題は本年度の授業では主題的には取り上げなかった。しかし今年度の授業内容に関連した応用問題として下記の問題を考察してみよう。

  1. 4Kテレビ放送番組や8Kテレビ放送番組の充実に関してNHKが大きな寄与をおこなうことはpublic goodsの充実という社会的意味において理解できるが、オンデマンド番組の充実に関してNHKが受信料を使って大きな関与をおこなうことにどのような意味があるのだろうか?
  2. 全国どこでも同一のサービスを提供するというユニバーサル化との関連で、「放送と通信の融合」によるイノベーションはどのような意味を持っているのだろうか?
 
[関連参考資料]
 
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情報公共論2015.05.26

[前回の授業内容]情報公共論2015.05.19
[次回の授業内容]情報公共論2015.06.02
 
[今回の授業内容]
1.NHKの受信料契約の義務性
日経の下記記事にあるように、東京高裁の難波孝一裁判長はNHKの受信契約に関して「受信者が受信契約に応じる意思を示さなくても、NHK側が契約締結を申し入れて2週間たてば契約が成立する」という判決を2013年10月30日に出した。

 

しかしその一方で同判決とまったく対立する判決が同じ東京高裁で別の裁判長によって出された。すなわち、下記の記事にあるように、NHKが受信者に受信料の支払いを求めた訴訟に対する東京高裁の2013年12月18日の控訴審判決において下田文男裁判長は、「NHKの契約申し込みと、受信者の承諾の意思が一致しなければ受信契約は成立しない」という判断を示したのである。

 

J-CASTの同記事に書かれているように、裁判官によってこのように判断が分かれるということは、NHKの受信契約の現在のあり方に関して再検討が必要なことを示している。
NHKの受信契約の現在のあり方に関しては、J-CASTの同記事に紹介されているように、下記のような意見がある。

  1. 「受信料を支払わない受信者に対しては放送にスクランブルをかけるなどの手段で見れないようにすれば良いのではないか?」
  2. 「NHKの放送を見ながらも受信料を払う人と拒否する人がいるのは不公平なのは事実。他方、さまざまなメディアが存在し受け手側の選択肢も拡大している。それだけに、「NHKを見たくない人でもテレビを設置しているだけで課金されるというシステムそのものを議論し、新たな徴収、課金方法を検討すべき」(放送関係者)時期にさしかかっているといえそうだ。」
 

こうした意見に対してどう答えるべきであろうか?

 
2.NHKの公共性をめぐる諸議論
(1) NHKの政治的中立性と受信料を関連づける議論

今回の授業では取り上げなかったが、NHKの受信料の正当化論として一般的になされている議論の一つは、下記の1に挙げた「NHKの政治的中立性を保つためには視聴料ではなく、受信料という形態が必要である」という議論である。
 
資料1-1>NHK受信料をめぐる2010年6月29日東京高裁の判決
[出典]http://web.archive.org/web/20130119005420/http://www.tsukuru.co.jp/nhk_hanketsu.pdf
「放送事業が・・・国営企業又は公営企業のみで経営されると,国から独立して番組等を作成する放送番組の編集の自由,ひいては表現の自由との関係で問題を生じるおそれがある」
 
資料1-2>朝日新聞「用語解説:公共放送」『朝日新聞』2014年1月29日朝刊
[出典]http://www.asahi.com/topics/word/受信料.html
朝日新聞の本用語解説では「政府からの独立性や政治的な中立性を確保するため、受信料や寄付などで運営される」ものとして公共放送を定義している。
 
NHKの籾井勝人会長は2014年1月25日の就任記者会見において「私の任務はボルトやナットを締め直すこと。放送法を順守しながらいろいろな課題に取り組んでいく」とした上で、「国際放送では日本の立場を政府見解そのままに伝えるつもりか」という質問に対して「政府が右と言うことを左と言うわけにはいかない。」とか、憲法上の疑義が問題となる総理大臣の靖国神社の参拝と合祀について「総理が信念で行かれたということで、それはそれでよろしい。いいの悪いのという立場にない。行かれたという事実だけ。」というようにまったく批判すべきことではないとし、NHKの報道姿勢としては「ただ、淡々と総理は靖国に参拝しましたでピリオドだろう。」として批判的見解の紹介などはすべきではないと発言している。
 こうした発言に対しては、NHK放送の国、政府からの独立・中立という点で問題があるとする見解が下記のようにある。
 
 
資料1-5>「「受信料で運営、政治的中立性保つため」 あす、「NHKと民主主義」シンポ/徳島県」『朝日新聞』2014年5月17日徳島地方版
NHK会長の籾井勝人、NHK経営委員の百田尚樹氏や長谷川三千子氏らの言動などによって、NHKの政治的中立性への社会的信頼が大きく揺らいでいる。このことに関して、本記事は、徳島大学の饗場和彦教授の下記のような発言を紹介している。

「放送法が視聴者に支払いを義務づけた受信料でNHKが運営されているのは、政府からの独立性や政治的中立性を確保するためだ。公共放送の機能を果たさず、政府の広報機関に成り下がるのであれば、受信料を払う合理性はない」
 
本Webページで紹介されている緊急署名では、「NHK籾井会長は、就任記者会見で、「従軍慰安婦は戦争地域にはどこにでもあった」、国際放送について「政府が右ということを左とは言えない」、特定秘密保護法は「とりあえず受けて様子をみるしかない」などと発言し、政権寄りの姿勢だとして、視聴者の厳しい批判を浴びました。/とくに日本軍「慰安婦」に関する発言は、歴史的事実に反するばかりか、過去の戦争への反省を欠き、国際問題に発展しかねないものです。このような考えを持つ人物は、政府から自立し、不偏不党の精神を守るべき公共的な放送機関のトップにはまったくふさわしくありません。」としてNHKの中立性を強調している。
 

資料1-7>NHK全国退職者有志(2014)「NHK籾井会長に辞任を勧告するか、または罷免されるよう求めます」2014年7月

本Webページは、「籾井氏が会長にとどまることは、政府・政治権力から独立した放送機関であるべきNHKにとって、重大な脅威となっています。」などと主張している。またこうした呼びかけをしているのは、「NHKが政府から独立した自立的な放送機関として、日本の民主主義の発達に資する存在であることをあらためて求め、現在の危機を回避することを要求するのが趣旨です。」としている。
 
 
 
本WEBページでは、BBC放送を例として、放送の国・政府からの独立問題と受信料収入の関係について論じている
 
[上記の問題に関してさらに進んで考えて見よう]
上記の1の議論に関連して下記のような問題を考察して見よう。
問a.裁判官の「政治」的中立性の担保の議論においては裁判業務を支える資金の出所が直接的には問題とはされないにも関わらず、なぜNHKの放送業務の場合にはそうしたことが問題となるのか?

問b.行政官僚の「政治」的中立性の担保の議論においては行政業務を支える資金の出所が直接的には問題とはされないにも関わらず、なぜNHKの放送業務の場合にはそうしたことが問題となるのか?

問c.放送法の第4条では、放送事業者に対して「一  公安及び善良な風俗を害しないこと。、二  政治的に公平であること。、三  報道は事実をまげないですること。、四  意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。」という4つの法的義務を課している。したがって政治的中立性はNHKだけでなく、民間放送事業者にも等しく課せられた法的義務である。
したがって「政治的中立性の確保」という目的の実現のためであれば、NHKだけではなく、民間放送局にも受信料を配分すべきではないのか?言い換えれば、政治的中立性の確保ということだけから、受信料をNHKだけに独占的に配分することは正当化できないのではないか?

(2) NHKの放送事業のユニバーサル性を根拠とする議論

NHKの受信料の正当化論として一般的になされている第二の議論としては、「ユニバーサルサービス(universal service)の提供のためには受信料によって支えられた公共放送が必要である」というものがある。すなわち、「東京や大阪などの大都市だけでなく、人口過疎地でもあまねく放送サービスを提供するためには、CM料金収入に依存しない公共放送局が必要である」というものである。こうした議論は、下記の資料4や資料5に見ることができる。
 資料2-1や資料2-2のような議論に対しては、インターネットの社会的普及という視点からの批判がある。すなわち資料2-1のような議論は、「テレビ放送に関するユニバーサルサービスの提供が困難であった地上波アナログ放送時代では妥当するが、衛星放送やインターネット「放送」などの新しい技術的手段が登場した現代ではあまり適切ではない」という批判がある。
「ユニバーサルサービス」論によるNHK擁護論に対する批判としては、授業や小テストで論じたように、「放送」番組を提供する技術的手段としては、電波塔(放送塔)によるテレビ電波送信という従来的手段だけでなく、衛星電波やインターネット通信といった新しい技術的手段が利用可能である、というものがある。
放送衛星(Broadcasting Satelite)を利用するBS放送や通信衛星(Communication Satelite)を利用するCS放送は、一つの衛星で日本全国に番組放送が可能であるから、全国に同一の番組を届けるという点ではテレビ電波を利用する地上波デジタル放送よりも、かなり効率的な技術的手段である。
またインターネットは、電子メール、ホームページ閲覧(WEBページ閲覧)とともに、ニコニコ動画やYoutubeなど動画配信も可能な「汎用」的な通信手段として、もっと効率的な技術的手段である。インターネット「放送」であれば、ブラジルなど日本から遠く離れた海外でも自由に日本の放送番組を視聴することができるから、視聴者にとっては優れた技術的手段である。

 
資料2-1>NHK受信料をめぐる2010年6月29日東京高裁の判決
[出典]http://web.archive.org/web/20130119005420/http://www.tsukuru.co.jp/nhk_hanketsu.pdf
「民営企業でのみ経営されると,放送事業が都市部に集中傾斜して,営利性の乏しいそれ以外の地域は顧みられなくなるおそれがある」
 
資料2-2>放送法 第15条
[出典]http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S25/S25HO132.html
「協会は、公共の福祉のために、あまねく日本全国において受信できるように豊かで、かつ、良い放送番組による国内基幹放送(国内放送である基幹放送をいう。以下同じ。)を行うとともに、放送及びその受信の進歩発達に必要な業務を行い、あわせて国際放送及び協会国際衛星放送を行うことを目的とする。」
 
資料2-3>放送法 第15条
 

電話サービスに関するユニバーサルサービス

 
(3) 良質かつ良心的な番組の提供を可能にするための財源としての受信料
放送法の第15条における「豊かで、かつ、良い放送番組」という文言
視聴率競争から独立した番組づくり
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経営技術論2015.05.21

[前回の授業概要]経営技術論2015.05.14
[次回の授業概要]経営技術論2015.05.28
 
[今回の授業概要]
1.前回授業内容の発展的確認
(1) シュンペーターのイノベーション論に関する「新結合」論的理解
イノベーションに関する二つの類型 — 「新発明なき新結合」によるイノベーション vs 「新発明」によるイノベーション
新結合論的視点からのイノベーション理解は、技術と製品の区別という議論、技術統合の遂行者としての企業家という議論との関連で理解すべき問題である。具体的には下記のような例を考察すべきであろう。

  1. 蒸気機関と動力水車のハイブリッド機関
  2. メカトロニクス(機械技術+電子技術)的技術革新
  3. ソフトメカトロニクス(ソフト技術+機械技術+電子技術)的技術革新
  4. ソフトロニクス(ソフト技術+電子技術)的技術革新
  5. ハイブリッド自動車
  6. 蒸気機関と動力水車における遠心振り子式調速機の「新結合」としての、ワットの蒸気機関
  7. 初期ガソリン自動車とセルモーター(エンジン・スターター、電動モーター+充電池)の「新結合」としての、現行ガソリン自動車
  8. ユニクロやZARAなどのSPA(speciality store retailer of private label apparel, 製造小売業)

[SPA関連の参考文献]
衣服の製造プロセスと販売プロセスを異なる企業間で水平的に分離するという従前の水平分業的在り方に対する「革新」として、ユニクロやZARAは製造プロセスと販売プロセスの一企業における結合(垂直的統合)をおこなった。
すなわち、衣服を製造するメーカーとしての縫製会社(アパレルメーカー)と、衣服を消費者に販売する百貨店などの小売業者との間での分業的関係を廃止して、製造プロセスと小売プロセスを一社で統合的に行う形態へとビジネス・プロセスに関する変革をおこなった。
製造 販売
縫製会社 百貨店、衣料店
SPA(ユニクロ、ZARAなど)
  1. 新田都志子(2008)「SPA のビジネスシステム革新Ⅱ――ユニクロとZARA を事例として――」『経営論集(文教大学)』18(1) pp.67-81
  2. 張 LEI (2012)「SPAにおける俊敏かつ適応的な垂直統合型SCM――ザラの事例を通して」『経営学研究論集(明治大学)』36
 
 
 
(2) 「インターネットによるモノの<新結合>による産業革命」としてのIoT(Internet of Things)
蒸気機関、電力、オートメーションに続く「第4の産業革命」
 
関連新聞記事1.「IoTで「製造業革命」日本に焦り、企業間連携で出遅れ、ドイツ、国挙げ規格作り(ビジネスTODAY)」『日本経済新聞』2015年4月17日朝刊
関連新聞記事2.「ドイツ発製造業×ICT=「インダストリー4.0」、来るか第4の産業革命、ビジネスモデル構築続く、通信で先行の日本も商機」『日経産業新聞』2015年5月12日
 
 
2.携帯音楽機器の製品イノベーションに関するseeds-oriented的視点からの理解
(1) seeds-oriented型製品開発の産物(product-out型製品イノベーション)としての、ソニーのカセット・ウォークマン
ソニーのカセット・ウォークマンは、1979年7月の販売開始から2010年3月までの約20年間あまりで約2億2千万台を世界で販売されている大ヒット製品である。
 
ポイント1 旧世代製品の主要機能の削減と新機能実現による製品イノベーション
「録音も再生もできるマシン」から「再生しかできないできないマシン」へという製品変化としてより劣った製品になった。しかし「電池駆動できないマシン」から「電池駆動できるマシン」へという製品変化としてはより優れた製品になった。すなわちそうした製品変化により、「外で歩きながら音楽を楽しめる」という携帯音楽機器製品市場セグメントという新しい「市場の創造」(market creation)がなされた。
 
ポイント2 発売前には否定的見解がほとんどであった
「発売前からこの「ウォークマン」には、否定的、悲観的な意見が大半を占めていた。「再生専用機なんて聞いたことがない。録音機能が付いていないと絶対に売れませんよ」。そう口々に言われて、[当時のソニー会長の]盛田は思わず「自分のクビをかけてもやる決意だ」とまで言ってしまった。」
「販売部門の担当者が、特約店に「今度、こんなものを出します」と説明しに行くと、「何で録音機能がないの? どうやって使うの?」と納得のいかぬ顔ばかりだった。」
「マスコミ紙面の反応は冷ややかだった。新聞はほとんど無視、載せても本当に申し訳程度の記事である。7月1日に予定どおり発売したものの、7月が終わってみると、売れたのはたったの3000台程度だった。「やはり、駄目なのか……」」
ソニー『Sony History』第6章「理屈をこねる前にやってみよう <ウォークマン>」
 
ポイント3 先行製品としてのプレスマン(1978)の存在
新聞記者用にモノラルではあるが電池駆動で録音・再生が可能な携帯マシンとしてのプレスマンがウォークマン開発前年の1978年には販売されていた。プレスマンは、ウォークマン開発時点ですでに50万台の生産実績を有していた製品である。当時、ソニーの名誉会長であった井深大は、海外出張時に飛行機の中で音楽を聞くために肩掛け式テープレコーダーのデンスケTC-D5を利用していたが、ステレオ再生が可能でよりより軽量な携帯マシンを欲していた。そこでプレスマンから録音機能用の電子回路を取り除き、代わりにステレオ再生機能用の電子回路を組み込んだ改造型プレスマンを1978年10月までに試作させていた。
最初のカセット・ウォークマン「TPS-L2」を製造するための金型は、プレスマンの金型を流用したものであった。
録音機能用電子回路を取り去る代わりに、ステレオ再生用の電子回路を組み込んだ改造プレスマン

録音機能用電子回路を取り去る代わりに、ステレオ再生用の電子回路を組み込んだ改造プレスマン

[図の出典および参照資料]ソニー『Sony History』第5章「コンパクトカセットの世界普及」 第3話「歩きながらステレオが聴ける」
 
 
旧世代
製品
カセット・
テープレコーダー
録音も再生もできる「汎用」的マシン、
しかし電池駆動はできない
新世代
製品
カセット・
ウォークマン
録音できず再生しかできない「専用」的マシン、
しかし電池駆動はできる
 
[考察してみよう]
  1. 上記の旧世代製品から新世代製品への製品イノベーションの表は、実際の歴史をかなり単純化したものである。中間的形態の製品が省略されている。中間的形態の製品を取り上げて、製品イノベーションの実際の展開過程を経営技術論的視点から考察してみよう。
  2. 上記の製品イノベーションは、differentiation focus戦略に沿ったものとして理解することができる。それはどのような意味においてであるのかを考えてみよう。
  3. 録音機能を持たないカセットウォークマンを利用するためには、録音機能を持ったカセットレコーダーで音楽を録音するか、録音済みの音楽カセットテープを購入する必要がある。このことはソニーという企業にとってどのようなことを意味しているのかを考えてみよう。
  4. 既に開発済みのseeds-oriented的製品イノベーションであることは、カセットウォークマンという製品の開発期間、および、同製品の模倣困難性に関してどのようなことを意味するのかを考えてみよう。なおその際に、ソニーの関係者がそのことに関してどのように語っているのかも調べてみよう。
  5. 旧世代製品が有していた主要機能の一部削減、および、旧世代製品にない新機能の実現による製品イノベーションの具体例として、他にどのような事例があるのかを考えてみよう。
 
 
ウォークマン関連新聞記事
  1. 「ウォークマン発売 54年7月1日」(街の風景が違って見えた日 昭和史探訪)『朝日新聞』2009年12月5日朝刊
  2. 「さらば、カセットウォークマン 国内向け、今春生産終了」『朝日新聞』2010年10月23日朝刊
  3. 「(惜別)元ソニー社長・大賀典雄さん ウォークマンを世に、生き方に華」『朝日新聞』2011年7月9日夕刊
 
ウォークマン関連文献
  1. 鵜飼明夫(2003)『ソニー流商品規格』H&I
  2. 黒木靖夫(1987)『ウォークマン流企画術』筑摩書房, 295頁
  3. 黒木靖夫(1990)『ウォークマンかく戦えり』筑摩書房(ちくま文庫), 323頁
  4. 黒木靖夫(2004)『日経ビズテック』2004年10月15日号, pp.168-175
  5. ゲイ, ポール ドゥほか(暮沢剛己訳, 2000)『実践カルチュラル・スタディーズ ― ソニー・ウォークマンの戦略』大修館書店, 251頁(Gay,Paul du and Stuart Hall,Linda Janes, Hugh Mackay, Keith Negus,Doing Cultural Studies : The Story of Sony Walkman, Sage Pub., 1997 の邦訳)

 
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経営技術論2015.05.14

[前回の授業概要]経営技術論2015.05.07
[次回の授業概要]経営技術論2015.05.21
 
[今回の授業概要]
1. innovationに関するneeds視点 vs seeds視点
innovation理解には二つの複合的視点が必要である。「社会」的needsや「市場」的needsがないinnovationは社会的あるいは市場的に無意味であるし、「技術」的seedsがないinnovationは実行不可能である。

needs視点 seeds視点
needs-oriented seeds-oriented
market-in product-out
market-pull technology-push
market-driven technology–driven
 
[考察してみよう]
「技術」的seedsがないinnovationは実行不可能であるということを言い換えると、新しい「技術」的seedsの形成に応じて新しいinnovationが実行されるということである。電池技術に関するボルタの発明という新しい「技術」的seedsの形成が1800年であることを踏まえながら、電気技術を利用した製品イノベーションがいつどこでどのように歴史的に展開されたのかを調べてみよう。
 
2. 素材に関する技術革新を利用したinnovationに関する経営技術論的視点からの理解
 
(1) usefulness, wants, demandの継時的進行
第1ステージ:usefulness
(役に立つ)
有用性の科学的解明(発見)
有用性の技術的実現(発明)
  ↓
第2ステージ:wants
(欲しい)
有用性・必要性に関する社会的認識の形成
有用なproductの生産
  ↓
第3ステージ:demand
(購入する)
競合製品に対する競争優位性の獲得
「有用度>コスト」関係の実現
画期的新機能、高性能化、and/or低コスと化
 
ex.1 産業革命期における、産業用素材に関する「木」から「鉄」への技術革新
ex.2 21世紀における産業用素材に関する「鉄」から「炭素繊維」への技術革新

[関連資料]
  1. 東レ(2014)「ボーイング777X向け炭素繊維“トレカ®”プリプレグの供給」東レ、2014年11月17日付けプレスリリース
  2. 遠藤邦生(2014)「東レの炭素繊維、米国で飛躍 ボーイングと1兆円契約:米に工場新設 生産量、日本上回る」日本経済新聞Web刊速報、2014/11/17 22:59
  3. 週刊ダイヤモンド編集部(2014)「ボーイングから1兆円受注:鼻息荒い東レの炭素繊維」Daiamond Online, 2014年11月26日
  4. 日本経済新聞社(2014)「東レ、BMWに炭素繊維 車体用 生産増強へ300億円」日本経済新聞 電子版、2014/12/30 2:00
  5. 齊藤美保(2014)「「炭素繊維」は未来の車を変えるか:立ちはだかる2つの壁」日経ビジネスonline, 2014年10月29日
  6. 吉田恒(2015)「東レ、米ボーイングの次は独BMWに炭素繊維を供給。メキシコ工場から」Economic News, 2015年01月05日 19:35
  7. 日経ビジネス編集部(2014)「石の上にも50年 執念で生き残る」(特集 東レ 勝つまでやり切る経営 Part 2)『日経ビジネス』2014年10月27日号, pp.34-39
  8. 日経ものづくり編集部(2014)「化学の底力でイノベーション 先端材料で新しい時代を開拓:東レ」『日経ものづくり』2014年05月号(特集1:製造業 次の一手)、pp.40-43
  9. 日本経済新聞社(2013)「世界シェア調査、日本勢、得意分野で明暗、炭素繊維、東レが首位堅持」『日本経済新聞』2013年7月1日朝刊

 
(2) イノベーション・ライフサイクル
 
市場A1

  市場形成期
     ↓
  市場発展期
     ↓
  市場成熟期(市場固定器)
     ↓
 ~~~~~~~~~~ radical innovationによる新しい市場セグメントの形成
 ~~~~~~~~~~
     ↓

市場A2

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教養演習A 2015.05.26

[次回の授業内容]教養演習A 2015.06.02
 
[今回の授業内容]
1.前回までの授業内容の再確認
(1) seeds-oriented vs needs-oriented
 
(2) 社会的普及に成功しなかった新製品開発の典型的失敗例
  1. 超音速旅客機コンコルド
  2. テクノスーパーライナー
  3. ソニーのDATウォークマン
 
(3) seeds-oriented innovationに取り組む企業が存在する理由に関する考察
理由1
明確なMarket needsすなわちdemandが存在する新製品開発に対しては数多くの企業が熱心に取り組むため、多数のライバルの間での熾烈な競争によるレッドオーシャン的問題が発生することになる。
それとは逆に、Market needsすなわちdemandが存在するのかしないのかが不明確な新製品開発に取り組む場合には、ライバルが存在しないブルーオーシャン的市場環境を享受できる可能性がある。

理由2
特許権・著作権などといった知的財産権によって法的に保護されている技術的seedsを自社が有しているなど、競合他社が模倣困難なseedsを自社で持っている場合には、そうしたseedsを活かす新製品開発の追求が有益である。

2.discovery, invention, innovationの区別
(1) discoveryとinventionの区別
量子力学および半導体現象という科学的「発見」
半導体ダイオード、半導体トランジスタなどを多数集積したLSIという技術的「発明」
 
(2) inventionとinnovationの区別に関わる二つの論点
ポイント1 「発明そのもの」と「発明されたモノの社会的普及、市場的成功」とは区別すべきである
発明に成功しても、発明品が社会的に普及しないことは良くある — 超音速旅客機、テクノスーパーライナー、ソニーのDATウォークマン
 
ポイント2  個別的発明だけでは社会的に有用ではないことが良くある。複数の発明が組み合わさって初めて社会的に有用となる。
エジソンの時代には電球の発明だけでは電球の社会的普及=市場的成功はできなかった。エジソンは電球を「発明」するだけでなく、「火力発電所」を自分で造って電気を製造し、製造した電気を「送電線」によって送電し、電球による電気照明を利用する顧客に届ける必要があった。
 そのため「送電技術」「ソケット」「電気メーター」に関する「発明」もおこなうことで初めて電球を社会的に有意味なモノとすることができた。

[考察すべき問い]
  1. inventionとinnovationの区別の必要性を示す具体的事例として、自分が興味深いと思うモノを探し出しなさい。
  2. 電気照明に関する19世紀のイノベーションはseeds-orientedな側面とneeds-orientedな側面の二つを併せ持っている。seeds-orientedな側面とneeds-orientedな側面の二つを併せ持つイノベーションには他にどのような事例があるのかを説明しなさい。
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教養演習A 2015.05.19 — イノベーションの規定要因

[前回の授業内容]教養演習A 2015.05.12
[次回の授業内容]教養演習A 2015.05.26
 
イノベーション現象をより適確に理解・分析するための諸視点
 
1.イノベーションの起点は何か?
「何を出発点としてイノベーションを行うのか?」「何を想定してイノベーションを行うのか?」
(1) seeds
     vs
(2) needs
needs(その1) — usefulness
needs(その2) — wants
needs(その3) — demand
 
2.イノベーションの「成功」とは何か?「失敗」とは何か?
(1) usefulnessの実現に関する「成功」/「失敗」
(2) wantsの獲得に関する「成功」/「失敗」
(3) demandの獲得に関する「成功」/「失敗」
 
[考察すべき問い]
  1. 「役に立つ製品なのに、販売開始初期に欲しいと思う人があまりいなかった製品にはどのようなものがあるのか?またそうしたことが生じた理由は何か?どのようにしてそうしたギャップを克服したのか?」(usefulnessとwantsの差異に関する基本的理解に関わる問い)
  2. 「欲しいと考えている人がかなりいるのに、さほど売れなかった製品にはどのようなものがあるのか?またそうしたことが生じた理由は何か?どのようにしてそうしたギャップを克服したのか?」(wantsとdemandの差異に関する基本的理解に関わる問い)
  3. 「大きなdemandの獲得に成功しなければ、イノベーションとして成功したことにならないのか?」
  4. 「segweyはどのような意味で成功であり、どのような意味で失敗なのか?」
  5. 「それぞれの段階で成功を収め次の段階に進むために、企業は何をすべきなのか?」
  6. 「それぞれの段階で成功を収めるためにはどのようなことを考慮すべきなのか?」
 
[今後、考察予定の残された問題]
1. discovery, invention, innovationの区別と連関
(1) 「新しい」科学的現象の発見(discovery)
(2) 「新しい」製品の発明(invention)
(3) イノベーション(innovation) — product innovation, process innovation
 
2. material, parts、module, productの区別と連関
 
教養演習A 2015.05.19 — イノベーションの規定要因 はコメントを受け付けていません

情報公共論2015.05.19

[前回の授業内容]情報公共論2015.05.12
[次回の授業内容]情報公共論2015.05.26
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情報公共論2015.05.12

[前回の授業内容]情報公共論2015.04.28
[次回の授業内容]情報公共論2015.05.19
 
誰でも自由に無料で利用できるものとしてのcommons(共有地、共有物)に関する「コモンズの悲劇」問題
  1. 利用者が制限できなければ、「許容限度を超えた多数の人々の同時利用」や「ほかの人の迷惑を顧みない自分勝手な利用の横行」といった問題が生じる可能性がある。
  2. freeriderの利用を認めると、commonsの維持管理などの費用の強制的徴収ができないため、commonsとしての機能維持が困難になる可能性がある。
 
freeriderの排除可能性(excludability)に関する議論
freeriderの排除可能性(excludability)はgoodsの自然的性質の問題ではない。
教育サービスに関しては私学教育サービスに見られるようにfreeriderを排除可能である。それゆえ公教育においてもfreeriderを排除可能ではあるが、実際には排除してはいない。それゆえ私学教育はexcludableに、公教育はnon-excludableに位置づけられることになる。
同じようにB-CASカードを用いた顧客管理が可能なデジタル放送サービスは、WOWOW放送のようにfreeriderを排除可能である。それゆえNHK放送においてもfreeriderを排除可能ではあるが、実際には排除してはいない。それゆえWOWOW放送はexcludableに、NHK放送はnon-excludableに位置づけられることになる。

NHK放送において技術的にはfreeriderの排除が可能なことは、BSデジタル受信機の利用開始から30日後に受信設備の設置確認メッセージが表示され、そのメッセージの消去には利用者の氏名、住所などの登録が必要になることに示されている。なおNHKはその情報を放送受信料の契約業務に利用している。
[関連WEBページ]
NHKオンライン > 受信料の窓口トップ > BSデジタル放送 メッセージ消去のお申込み
NHK「BSデジタル放送メッセージ消去」

 
論点1
料金を支払わずに利用しようとするフリーライダーを排除困難(non-excludable)ではあるが、社会的に必要とされるgoodsを提供・維持するためには、何らかの形で資金・人手などのサポートが必要になる。
 
論点2
多数の人々の同時利用が困難な場合には、利用できる人と利用できない人を分けることが必要になる。その区別には、必要度に応じた区別、利用対価の支払いの有無による区別など多様な方法がある。
 
non-excludableな公共サービスの典型例としての、一般道路、軍事、警察、消防、救急、灯台
これらの公共サービスは良好な社会生活のために必要不可欠であると同時にnon-excludableであるから(あるいは、non-excludableであるべきであるから)、これらのサービスは税金で賄わることになる。
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経営技術論2015.05.07

[前回の授業概要]経営技術論2015.04.30
[次回の授業概要]経営技術論2015.05.14
 
[今回の授業概要]
1.コトラーにおけるneeds, wants, demand
コトラーは、マーケティングの中核的概念(core concept)として、needs, wants, demandという三要素の区別を論じている。そのことを踏まえながら、本授業では少し修正を加えながら議論した。
 
1. needs 「・・・を必要とする」
2. wants 「・・・を欲しい」
3. demand 「・・・を購入する」
 
食事の場合を例にとると、下記のようになる。
 
(1) needsとしての食事(usefulなものとしての食事)
[カロリー摂取、栄養摂取、水分摂取などの必要性に対応したものとしての食事、すなわち、人間の生命維持に役立つものとしての食事]
人間は生命維持のためにカロリー、栄養、水分などを摂取する必要がある。すなわち、食事によりカロリー、栄養、水分などを摂取することは、人間が生命を維持するのに役立つ。偏食や拒食症などのように必要量に足りなければ体を壊すし、何日も食事をとらなければ死亡してしまう。
 
(2) wantsとしての食事
[健康な人間であれば一定の時間経過とともに空腹感により、食事をしたいと欲するようになる。]
人は「お腹がすいた」と感じ、「何かを食べたい」と欲するようになる。
 
(3) demandとしての食事
[人は財布の中に入っているお金(自分の収入の内で食事にまわせるお金)という制約の中で、「食べたい」モノを買う。]
焼肉、和牛ステーキ、焼き魚、日本料理、中華料理、フランス料理、ロシア料理、タイ料理、カレーライス、分子調理法による料理など、たくさんの「食べたい」モノの中から、人は自分の財布と相談しながら何を食べるかを決定する。
 
 コトラー自身は、needsを食物、衣服、住居(shelter)、安全、[社会的]帰属(belonging)、[社会的]評価(esteem)などといった人間的生存に必要なモノとの関係で規定している、そしてそれら人間的生存に必要なモノに関わる「基本的充足の欠乏を感じている状態(a state of felt deprivation of some basic satisfaction)」と規定している。
 A useful distinction can be drawn between needs,wants,anddemands. A human need is a state of felt deprivation of some basic satisfaction. People require food, clothing,shelter,safety, belonging, esteem,and a few other things for survival.These needs are not created by their society or by marketers; they exist in the very texture of human biology and the human condition.
[出典]Kotler, P.(1967,1994) Marketing Management, 8th Edition, Prentice-Hall, p.7
 
2.経営技術論におけるusefulness, wants, demand
コトラーがneedsとしている要因は、経営技術論的にはusefulness[「・・・の役に立つ」「・・にとって有用である」]という要因として解釈することとする。すなわち経営技術論の授業ではコトラー的区別を下記のように一部修正して利用する。
1. usefulnees 「・・・の役に立つ」
2. wants 「・・・を欲しい」
3. demand 「・・・を購入する」
 
[関連参考文献]
  1. 石川伸一(2014)『料理と科学のおいしい出会い: 分子調理が食の常識を変える』(DOJIN選書)化学同人、220頁
 
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情報公共論 2015.04.28

[前回の授業内容]情報公共論2015.04.21
[次回の授業内容]情報公共論2015.05.12
  
スマホの製造メーカーが「無料」で利用できるGoogleのAndroid OS
Freeriderの排除可能性(excludability)に関する複数の視点からの議論 — 法的議論(法的権利)、経済的議論(経済的合理性)、技術的議論(技術的可能性)
  
  
消費における競合性(rivalry, rivalrousness)に関する複数の視点からの議論 — Freeriderの排除の社会的妥当性
  
  
私的財の必要性・有用性を示す「コモンズの悲劇」 vs 共有財の必要性の必要性・有用性を示す「アンチコモンズの悲劇」
  
  

公共財の公共経済学的定義 — 「消費における非-競合性(non-rivalrous)」と「フリーライダーの非-排除性(non-excludable)」という二つの特性を持つ財としての公共財
(1)公共財の公共経済学的定義
 三省堂『大辞林』では、「公共」という用語は「おおやけのものとして共有すること」として定義されている。また岩波書店『広辞苑』第4版では、「公共財」という用語は「その便益を多くの個人が同時に享受でき、しかも対価の支払者だけに限定できないような財貨・サービス」として定義されている。公共財に関する後者の『広辞苑』第4版の定義は、公共財に関する公共経済学的定義に基づくものである。
公共財(public goods)は、公共経済学においては、「消費における非競合性」と「フリーライダーの排除不能性」という二つの特性との関連で定義されている。

料金を支払わずに
利用しようとする
フリーライダーを排除可能
(excludable)
料金を支払わずに
利用しようとする
フリーライダーを排除困難
(non-excludable)
多数の人々による
同時利用が困難
(rivalrous)
私的財
(private goods)
Common goods
多数の人々による
同時利用が可能
(non-rivalrous)
Club goods 公共財
(public goods)

[関連復習事項]
公共財(public goods)と情報財(information goods)の共通集合としての公共的情報財(public information goods)
公共財(public goods)の定義と情報財(information goods)の定義および特性の両方を理解することが必要
 

情報財(information goods)の定義および特性

情報財を構成する2種類の財・・・「コンテンツ」系情報財と「プログラム」系情報財
情報財の特有性としての、「限界費用の低さ」と「私的占有の困難性」
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経営技術論2015.04.30

[前回の授業概要]経営技術論2015.04.23
[次回の授業概要]経営技術論2015.05.07
 
[今回の授業概要]
Porterのfocus戦略(再論)
「targetの範囲を広く取るのか(broad target)?狭く限定するのか(narrow target)?」という選択の問題は、経営技術論的には、「汎用」 vs 「専用」ということとして問題となる
 
ex.デジタル機器における「汎用」製品と「専用」製品の間での製品競合関係
「汎用」
製品
スマートフォン
(音楽再生、写真撮影、ゲーム、電話など数多くの機能を持った汎用製品)
vs
「専用」
製品
音楽再生
専用機
(iPod,ウォークマン)
写真撮影
専用機
(デジタル・カメラ)
ゲーム
専用機
(Wii, PS3)
電話
専用機
(mova時代の
携帯電話)
「targetの範囲を広く取るのか(broad target)?狭く限定するのか(narrow target)?」という選択の問題は、経営技術論的には、「汎用」 vs 「専用」ということとして問題となる
 
経営技術論2015.04.30 はコメントを受け付けていません

経営技術論2015.04.23

[前回の授業概要]経営技術論2015.04.16
[次回の授業概要]経営技術論2015.04.30
 
20世紀後半期~現在における「Technological Change(技術変化、技術変革)によるイノベーション」(Technological Innovation)
「企業は、活動の集合体(a collection of activities)として、技術の集合体(a collection of technologies)でもある。技術は企業のあらゆる価値活動に使われているので、技術の変革(technological change)は、ほとんどあらゆる活動にインパクトを与え、競争に影響を与えることができる。 」Porter(1985)Competitive Advantage: Creating and Sustaining Superior Performance, Free Press, p.167[ポーター(土岐坤訳,1985)『競争優位の戦略』ダイヤモンド社,p.210,引用に際して邦訳の一部を変更している。以下の引用も同じである。]
「技術変革は、競争の主要な推進要因の一つである。技術変革は、新しい諸産業の創出においても、産業構造の変革においても主要な役割を演じている。技術変革は、十分に確立された企業の競争優位を陳腐化させ 、他の企業を上位に押し上げる偉大な平衡装置でもある。現在の大企業の多くは、生かすことができた技術変革を利用して成長した。競争ルールを変えることができるすべての要因の内で技術変革が最も卓越した 要因の一つである。」Porter, Michael E. (1985). Competitive Advantage: Creating and Sustaining Superior Performance, Free Press,pp.164-[ポーター, M.E. (土岐坤訳,1985)『競争優位の戦略』ダイヤモンド社,p.207]
 ↓
技術的視点から見た、競争優位の中核的源泉の歴史的変化
製品間競争における競争優位性の技術的規定の中核的要因は、20世紀中頃まではアナログ技術であったが、次第にデジタル技術へと移行している。
デジタル技術採用による競争優位性の変化のあり方には、下記のようにいくつかのパターンがある。
 
パターン1. デジタル技術が大きな規定要因となっているケース
a.ハードウェア的デジタル化
 
b.ソフトウェア的デジタル化
デジタルレコード(CD) → デジタル音楽配信
地図帳 → デジタル・マップ
新聞紙 → ネットニュース
本、雑誌 → 電子書籍
 
パターン2.イノベーション後にもアナログ技術がデジタル技術と並んで重要な規定要因となっているケース
ex.1 「光学レンズ」技術というアナログ技術+「画像関連デジタル回路」技術というデジタル技術
アナログカメラ(ニコン、キヤノン、ミノルタ、コニカ)→デジタルカメラ(ニコン、キヤノン、ソニー、パナソニック)
 
ex.2 「画像表示装置」技術+「画像関連デジタル技術」(画像処理回路技術+ソフトウェア技術)
アナログTV(ブラウン管TV) → デジタルTV(液晶TV[sharp], プラズマTV[パナソニック], 有機EL TV[SONY], FED TV[キヤノン])
 
関連参考記事・資料
(1) ハードウェアの情報化による新たなビジネス展開の一例としての、スマートカー用部品
日本経済新聞社(2015)「スマートカー部品、量産、東芝、歩行者や標識識別、アルプス電気、車同士で通信、スマホ用からシフト」『日本経済新聞』2015年4月3日朝刊
(2) ハードウェアの情報化を利用した新たなビジネス展開としてのライドシェア
「ライドシェア実験も中止指導――ウーバー騒動日本上陸、新興サービス、規制と激突(真相深層)」『日本経済新聞』2015年4月3日朝刊
(3)「従来型携帯の生産終了、国内各社、17年以降に、NECは端末完全撤退」『日本経済新聞』2015年4月24日朝刊

 
 
Porterの基本戦略[lower cost, differentiation, cost focus,differentiation focus]
選択1 — lower costとdifferentiationは互いにトレードオフ関係にあるため、どちらを重視するのかという選択が問題となる
 
選択2 — targetの範囲を広く取るのか(broad target)、狭く限定するのか(narrow target)という選択が問題となる
「アナログ地上波」時代には、一地域で受信可能な放送局の数が限定されていた。そのため、放送局としては視聴対象者をあまり限定しないbroad target 戦略が取られたし、有効であった。(幅広い年齢層が同時に見ることを意図した、いわゆるホームドラマがその象徴である。)
 これに対して、「デジタル地上波」「BS放送波」、「CS放送波」、「インターネットTV」といった多チャンネル時代になると、個人がいわば無数のチャンネンルから「自分の見たい番組」を選択できる(選択する)ようになり、視聴対象者を限定したnarrow target戦略が技術的にも、経営的にも可能になった。
 
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教養演習A 2015.04.21 — イノベーションの分類

[本日の授業におけるtips]
1.google検索における””指定によるキーワード検索
「ユーザーイノベーション」と入力した場合と、「”ユーザーイノベーション”」と入力した場合の違いを理解すること
2.WEBページの中の文字検索法 — CTRL+F
3.pdfファイルの中の文字検索法 — CTRL+F、shift+CTRL+F
透明テキスト付きpdfでは、文字検索して引用したい部分をコピペすることができる。
4.WEBページにおける表示文字の拡大・縮小法 — CTRL+「+」(プラス)キーで拡大、CTRL+「-」(マイナス)キーで拡大
 
[本日の授業における利用サイト]
佐野ゼミナール(sanosemi.com) → B.講義用補助資料の5→教養演習Aの2015年度授業記録
 
「他社とは異質なこと、他社とは異なることを追及することで競争優位性を追求しよう」とするポーターの差異化戦略
下記サイトのように、一般には差別化戦略というように呼ばれている
「競争戦略(差別化戦略) : まんがで気軽に経営用語」

[調べてみよう]上記サイトにはキーワードに関する誤植が少なくとも1か所あります。それはどれでしょうか?
 
しかし日本では差異化戦略よりも、「他社と同じことをする」「他社の良いところを模倣しよう」という同質化戦略という経営行動がよく見られる
 
イノベーションにおけるユーザーの主導性を主張したHippelの下記著作は、ネットから無料でダウンロードできる。
Hippel,Eric Von(1988) The Sources of Innovation, Oxford University Press,218pp
Hippel,Eric Von(2005) Democratizing Innovation, MIT Press, 204pp
 
 
電子出版(書籍の電子化)というイノベーション
 
15世紀のグーテンベルクによる活字印刷の登場は、手で文字を書くのではなく、機械を利用して文字を打つ機械の登場を促した。すなわち、「同一のモノを大量に印刷するための技術」としての活字の組版による活版印刷に対して、「特定の個人や企業に宛てた手紙や書類など一部しか作成しないものを作成するための技術」としてタイプライターという機械が構想された。
 いくつかの先駆的試みの後、19世紀に多様なタイプライターが登場するともに実用化が進んだ。タイプライターの製品designの多様性は、キーボード配列の多様性にも見ることができる。
 
本WEBサイトに紹介されているように、現代中国では、多種多様な製品デザインのケータイ製品が製作・販売されている。
しかし日本ではそうした現象は見られない。授業ではこうした違いが生じる理由を簡単に述べた。
 
[本日の授業におけるキーワード]

open innovation
user innovation
product design
differentiation

 
[本日の授業テーマ1]イノベーションに関して様々な視点から様々な分類が可能である。
 
1. closed innovation vs open innovation
イノベーションを自社独自に閉じた形で遂行するやり方と、他社と共同するなどオープンな形で遂行するやり方がある。
 
 
2.user innovation
「ユーザーがイノベーションにどのように関わるのか?」という視点からは、最近ではユーザーが主導するイノベーションに対する社会的注目が高まっている。

 

このことは、トフラーのprosumer概念とも関連している。

[本日の授業テーマ2]製品市場の形成初期におけるイノベーションの特徴
製品市場の形成初期には、多様なproduct designの製品が作られる。その典型的な事例が19世紀英文タイプライターのためのキーボード配列である。

上記のような現象が生じる主要な要因としては下記がある。
1.顧客のニーズの多様性
2.企業の差異化(differentiation)戦略

教養演習A 2015.04.21 — イノベーションの分類 はコメントを受け付けていません

情報公共論2015.04.21

[前回の授業内容]情報公共論2015.04.14
[次回の授業内容]情報公共論2015.04.28
  
[授業内容の概要]
— 2015.04.21の授業内容 —-
1.学問的考察のための導きの問い(曖昧な日常的問い) —「私企業が「無料」で提供しているgoodsはpublic goodsなのか?それともprivate goodsなのか?」
  
  
2.財の特性としてのpublic vs privateを論じる視点の複数性
参考WEB
  
基本的区別
free riderを認めない(排除する)— private
free riderを認める(排除しない)— public
  
関連問題
私企業は、「自社製品を有料で販売しfree riderを認めない(排除する)」のが原則である。そうした意味において私企業の活動は privateである。
しかしprivate sectorに属する私企業であっても「free riderを認める(排除しない)」製品・サービスを積極的に提供している場合がある。またその一方でpublic sectorに属する公共的組織や非営利組織であっても、「free riderを認めない(排除する)」場合がある。
  
問1 「free riderを認める(排除しない)goodsの提供に関して、私企業があまり適していないのはなぜか?」
問2 「free riderを認める(排除しない)goodsの提供をおこなっている私企業の例を挙げるとともに、そうした企業がなぜfree riderを認める(排除しない)goodsの提供をおこなっているのかを企業戦略的視点から説明しなさい。ただしその際に、製造原価の構成を考えて議論すること」

 

  
— 2015.04.28の授業で取り上げる予定内容 —-
c.「利用」視点から見たPublic vs Private(2) — 利用の絶対的排除 vs 自由な利用
共有財(commons) vs 公共財(public goods)
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情報公共論2015.04.14

[次回の授業内容]情報公共論2015.04.21
[今週の授業内容–ガイダンス内容]
1.情報公共論関連のトピックに関する理解度についてのアンケート
コモンズの悲劇、アンチコモンズの悲劇、public goodsに関する公共経済学的定義、public domain、creative commons、Open Source Software、Freeware、OpenOffice.org、青空文庫)
  
2.公共財
     

  1. 「所有」視点からの考察 — 国有、公有、私有、public domain
    公海 vs 領海

    無主物
     

  2. 「利用」視点からの考察 — 独占的利用/排他的利用 vs 自由な利用/非排他的利用
     

  3. 「公共経済学」視点からの考察 — 財の非競合性と非-排除性
  4. 「特許」視点からの考察
 
3.情報財
3-A.ハードウェア
  
  
3-B.ソフトウェア
3-B-1 プログラム系ソフトウェア
OSソフトウェア(Linux OS,Android OSほか)
アプリケーション・ソフトウェア(Open Officeなど)
開発言語ソフトウェア
  
3-B-2 コンテンツ系ソフトウェア
  1. Wikipaedia
  2. Open Library
  3. Open contents
  4. Internet Archive
  5. HathiTrust Digital Library,
  6. National Library of Australiaほか)
  7. 青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)
  8. プロジェクト杉田玄白(http://www.genpaku.org/)
  9. グーテンベルクプロジェクト(http://promo.net/pg/)
    グーテンベルク百科事典としての『ブリタニカ百科事典』第11版など
  10. creative commons(http://creativecommons.org/)
  11. VOANews(http://www.voanews.com/)
    VOANews(http://www.voanews.com/) の著作物は、public domainとされている。
    http://www.voanews.com/disclaim/の中のCopyright
    Statementの箇所に、"All text, audio and video material produced exclusively
    by the Voice of America is public domain." と書かれている。
  12. オンラインのフリー百科事典『ウィキペディア (Wikipedia) 』 (http://ja.wikipedia.org/wiki/)
  13. The FreeDictionary.Com(http://encyclopedia.thefreedictionary.com/)
    これらは、GNU Free Documentation Licenseに基づく百科事典(公共財としてのネット百科事典)であり、英語版をはじめとした、様々な言語版の百科事典が現在作成中である。
    『ウィキペディア (Wikipedia) 』プロジェクトを統括しているのは、ウィキメディア財団(Wikimedia Foundation Inc.)である。 ウィキメディア財団は、『ウィキペディア (Wikipedia)』以外にも多くのオンラインプロジェクト活動を行っている。
      
  14. 日本原子力産業会議発行資料の電子図書館
 
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技術戦略論2015.01.09

[前回の授業内容]技術戦略論2014.12.19
[次回の授業内容]技術戦略論2015.01.16
 
[今週の授業内容]
「互換性の有無」および「性能向上の度合い」という基準に基づく技術戦略の分類区別という視点から見た、製品イノベーションにおける技術戦略の考察 —- 「新世代機における旧世代機との互換性の有無」vs 「次世代機における性能向上の度合い」
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技術戦略論2014.12.19

[前回の授業内容]技術戦略論2014.12.12
[次回の授業内容]技術戦略論2015.01.09
 
[今週の授業内容]
「互換性の有無」および「性能向上の度合い」という基準に基づく技術戦略の分類区別という視点から見た、製品イノベーションにおける技術戦略の考察 —- 「新世代機における旧世代機との互換性の有無」vs 「次世代機における性能向上の度合い」
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技術戦略論2014.10.24

[前回の授業内容] 技術戦略論2014.10.17
[次回の授業内容] 技術戦略論2014.11.07

[配付資料]
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技術戦略論2014.12.12

[前回の授業内容]技術戦略論2014.12.05
[次回の授業内容]技術戦略論2014.12.19
 
[今週の授業内容]
1.製品のFunction(機能)とPerformance(性能)の区別という視点から見た、製品イノベーションにおける技術戦略の考察 —- 「次世代機における新機能の追加の有無」vs 「次世代機における性能向上の度合い」
2014-12-19-a
 
2.任天堂の技術戦略の一つとしての「枯れた技術の水平思考」
3.TV受像器に関する製品イノベーション
参考資料
a. TV受像機本体に関する製品イノベーション、および、関連製品・サービスに関するイノベーション
ブラウン管TV→液晶デジタルハイビジョンTV→液晶デジタルフルハイビジョンTV→4K TV
 
1) 解像度という性能に関する性能向上
2) 表示可能色数という性能に関する性能向上 — 色指定情報に関する24ビット(R,G,B 各8ビット)から30ビット(R,G,B 各10ビット)への性能向上
3) ゴースト低減に関する性能向上
 
b. TV放送に関するイノベーション
アナログ地上波放送→デジタル地上波放送、BSデジタル放送、CSデジタル放送 →4K放送 
 
c. 録画装置に関するイノベーション
VHS→DVD→ブルーレイディスク、HDD
 
2014-12-09-TV
4.互換性と性能向上という視点から見た、製品イノベーションにおける技術戦略の考察 —- 「次世代機における旧世代機との互換性確保の有無」vs 「次世代機における旧世代機からの性能向上の度合い」

2014-12-19-b-1

1) 自動車の場合
ガソリン自動車→電気自動車、燃料電池車
ガソリンスタンド→充電スタンド、水素ステーション

自動車産業、電力産業、ガス産業

2) ゲーム機の場合
Gamecube→Wii
PS3→PS4

Gamecube専用ソフト vs Wii専用ソフト
PS3専用ソフト vs PS4専用ソフト

ゲーム機メーカー vs ゲームソフトメーカー

スマホメーカー vs スマホ用ゲームソフトメーカー
 

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技術戦略論2014.12.05

[前回の授業内容]技術戦略論2014.11.28
[次回の授業内容]技術戦略論2014.12.12
[今週の授業内容]製品のFunction(機能)とPerformance(性能)の区別という視点から見た、製品イノベーションにおける技術戦略の考察
 
1.次世代製品開発における「New Function(新機能)」実現問題と「High Performance(大幅な性能向上)」実現問題
本視点からは、次世代製品開発という製品イノベーションにおける下記の二つの技術的選択が問題となる。
1) 「次世代製品にどのような「New Function(新機能)」を付与するのか?」という技術的選択
2) 「次世代製品に付与する機能それぞれに関して、その性能をどの程度にするのか?」という技術的選択
 
2.任天堂DSという次世代製品開発における「New Function(新機能)」実現問題と「High Performance(大幅な性能向上)」実現問題
1) 「ゲームボーイアドバンスから任天堂DSへの製品イノベーションにおいて、どのような「New Function(新機能)」付与がなされたのか?」
「タッチスクリーン」機能、「音声認識」機能という旧世代製品にはなかった新機能を実現することで、同世代競合製品であるソニーのPSPに対する競争優位性を確保した。

任天堂DSに付与された新機能「タッチスクリーン」機能を利用した新しいタイプのゲームソフトに、「脳を鍛える大人のDSトレーニング」がある。同ソフトは、「タッチスクリーン」機能を利用して「計算結果を手書きする」計算20や計算100といったクイズ、「A→ア→B→イ→C→ウ・・・といった順番で文字から文字へできるだけ速く線を引く」順番線引クイズ、および、「音声認識」機能を利用して「計算問題を声で答える」計算クイズ、「画面に表示される「色の名前」の「文字自体の色」をニンテンドーDS本体のマイクに向かって声を出して答える」色彩識別クイズ「1から120まで声を出してできるだけ速く数える」高速数えクイズなどで人気を博した。
2014年3月末時点で同ソフトの全世界での連結累計販売数量は1,901万本である。

任天堂DS対応ソフトで任天堂製のもので最も売れているのは「Newスーパーマリオブラザーズ」で3,075万本、第2位は「マリオカートDS」で2,356万本、第3位は「nintendogs」で2,396万本であり、「脳を鍛える大人のDSトレーニング」は第4位である。
[出典]任天堂(2014)「株主・投資家向け情報 > 販売データ > 主要ソフト販売実績 > 任天堂DS用ソフト(2014年3月末時点)」
http://www.nintendo.co.jp/ir/sales/software/ds.html

 

2) 「ゲームボーイアドバンスから任天堂DSへの製品イノベーションにおいて、主要機能の性能はどの程度にされたのか?」
 授業では、画面表示機能に関して、「ディスプレイ画素数(画面解像度)」性能と「ディスプレイ発色数」性能という二つの性能に関して、ゲームボーイからゲームボーイアドバンスへの製品イノベーション、および、ゲームボーイアドバンスから任天堂DSへの製品イノベーションにおいてどのような技術的選択がなされてきたのかを論じた。
 また、同世代の競合製品であるPSPとの性能比較に関しては、下記資料を基に考察をおこなった。
技術戦略論2014.12.05 はコメントを受け付けていません

技術戦略論2014.11.28

[前回の授業内容]技術戦略論2014.11.21
[次回の授業内容]技術戦略論2014.12.5
[今週の授業内容]「互換性維持を最優先」とする新製品開発と「飛躍的性能向上を最優先」とする新製品開発のトレードオフ関係(再論)
 
ゲーム専用機の新製品開発においては、ゲーム専用機という製品にはPCと異なる固有の製品特性があることを考慮した戦略の採用が必要である。(ゲーム専用機という製品に固有の製品特性の存在は、任天堂やセガが1983年に、ポーター的な意味でのFocus戦略を採用することの合理性の根拠でもある。)
 
1.次世代製品開発(製品イノベーション)における「互換性維持」と「大幅な性能向上」のトレードオフ関係に対する二つの基本的対応
 

a. 「大幅性能向上」重視戦略 — 飛躍的性能向上を最優先とする次世代製品開発
ex.1 ソニーのPSPという新世代製品開発
ex.2 PS2からPS3への製品イノベーションという新世代製品開発
ex.3 スーファミから任天堂N64への製品イノベーションという新世代製品開発
、GAMECUBE など
 
b. 「互換性維持」重視戦略 — 前世代製品との互換性維持を最優先とする次世代製品開発
ex.1 GamecubeからWiiへの製品イノベーションという新世代製品開発
 
2.区別すべき2種類の互換性問題
a. 「同世代」間互換性問題 — 同世代に属する競合製品間での互換性の確保問題
ex.1 1/2インチ幅ビデオ・カセットテープ型世代のVTR製品のVHSとβにおける「テープ素材・テープ幅の共通性」と「録音・再生方式における互換性の欠如」
(アメリカではVCR(Video Cassette Recorder)と呼ばれている
ex.2 「G1規格」世代に属するFAX製品における機種間互換性の欠如
ex.3 8ビット世代に属するCPU製品 — Intel社の8008, 8080, 8085, 8088およびZilog社のZ80といった製品間での互換性の確保、および、それら製品群と互換性のないMotorola社の6800およびMos Technology社の6502
[考察してみよう]
1) 上記の例でex.2だけが他の事例と互換性の意味が少し異なる。それはどういう意味においてであるか?
2) ソフトウェアは大別すると、プログラム系ソフトウェアとコンテンツ系ソフトウェアに分けることができる。上記の例の内でそうした視点から論じることができるものを挙げてみよう。またアナログ地上波放送専用TVからデジタル地上波放送対応TVへの製品イノベーションをそうした視点を踏まえて考察してみよう。

b. 「異世代」間互換性問題 — 次世代製品開発(製品イノベーション)における互換性の確保問題
ex.1 カセットウォークマンからCDウォークマンへの製品イノベーション
ex.2 CD-ROMドライブからDVD-ROMドライブへの製品イノベーション
ex.3 DVD-ROMドライブからブルーレイディスク・ドライブへの製品イノベーション

[考察してみよう]
上記の例と少し異なるが、紙パック式電気掃除機からサイクロン掃除機への製品イノベーションも「互換性」視点から論じることができる。

 

3.区別すべき2種類の互換性問題に関する、「補完財に関するバンドワゴン効果」論からの考察
a. 同世代製品間競争における「補完財に関するバンドワゴン効果」問題 —- 同一世代に属する「ハードウェア」製品と「ソフトウェア」製品の相互補完性に起因するバンドワゴン効果問題
1983年発売の任天堂・ファミコンとセガ・SG-1000という同世代製品間競争における同世代的バンドワゴン効果

家庭用ゲーム専用機なしで家庭用ゲームソフトウェアを動かすことはできない。同じく、家庭用ゲームソフトウェアなしで家庭用ゲーム専用機でゲームすることはできない。
  ↓
すなわち家庭用ゲーム専用機というハードウェアと、家庭用ゲームソフトウェアは相互補完的関係にある。そのため家庭用ゲーム専用機というハードウェアの販売台数が増加すればするほど、そのマシンに「対応」した家庭用ゲームソフトウェアの販売本数は増加する。またその逆に、ある家庭用ゲーム専用機「専用」のゲームソフトの種類が増加すればするほど、あるいは、ある家庭用ゲーム専用機「専用」の極めて優れたソフトウェアが開発されればされるほどハードウェアの販売台数が増加する。
   ↓
そうした意味で、家庭用ゲーム専用機はゲームソフトウェアの補完財であるし、家庭用ゲームソフトウェアは家庭用ゲーム専用機の補完財である。
   ↓
1) 累積販売台数が多いゲーム専用機ほど、ゲームソフトの販売本数がより多いと期待できる(あるいは原則としてゲーム専用機の累積販売台数以上にゲームソフトが売れることはない)。そのためゲームソフト会社はより累積販売台数が多いゲーム専用機(または累積販売台数が多くなると期待できるゲーム専用機)に対応したゲームソフト製品を開発しようとするインセンティブを持つ。
2) 優れた対応ゲームソフトが多種類あるゲーム機ほど、ゲーム専用機間の製品間競争で優位性を持つ。
 

b. 新世代製品間競争における「補完財に関するバンドワゴン効果」問題
b-1. 家庭用ゲーム専用機の新世代製品「開発」において「互換性維持」重視戦略を採用した場合には、下記のようなリソースを補完財として利用することが可能になる。

1) 新世代製品「開発」に利用可能なリソースとしての、旧世代製品「開発」関連の知識・熟練・開発ツール・開発マシン
2) 新世代製品「製造」に利用可能なリソースとしての、旧世代製品「製造」関連の知識・熟練・製造設備
 

 

b-2. 家庭用ゲーム専用機の新世代製品「開発」において「大幅性能向上」重視戦略を採用した場合には、radical innovationにより旧世代機との互換性維持が難しくなるため、下記のようなリソースを補完財として利用することが困難になる。

1) 「利用」者が有する、旧世代機に関わる補完財(ex. 旧世代機専用ソフトウェア)
2) 「開発」者が有する、旧世代機に関わる補完財(ex. 旧世代機に関わる開発のための知識・熟練・開発ツール・開発マシン)
3) 「製造」者が有する、旧世代機に関わる補完財(ex. 旧世代機に関わる製造のための知識・熟練・製造設備)

具体的考察に際しては、開発者に関してソフトウェア開発者とハードウェア開発者に分けて考える必要がある。
 

 

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